俳句庵

10月『栗』全応募作品

(敬称略)

弾ける日光を喰らうが栗うまし
声上る方に駆け寄り栗拾ふ
栗飯やいまだ現役母の味
遠き日の坊主頭や栗の毬
笑い栗飛んで弾けて親離れ
弟が反撃をする栗のイガ
栗拾い拾う子供の笑顔かな
遠きこえ鮮明なるや栗ひろい
ねんごろに破顔一笑栗と栗
冷麦を懐かしみつつ栗ご飯
子煩悩な父なりしかな栗ご飯
婦人部の慰安旅行の栗拾い
栗ひらふ保母も園児も重装備
焼栗を食べて歩くやパリの旅
秋冷の栗林公園松ばかり
不精なる夫に栗剥く妻やさし
毬栗を返へしてみれば空の毬
外つ国に生まれし子等に栗きんとん
七十年無骨に生きて栗を食む
栗拾ふ子は一斉に爆ぜにけり
毬栗を返へしてみればただの毬
山栗になほひとしほの土かほり
故郷を思ふよすがの丹波栗
栗刺を見て孫を床屋に連れて行く
栗のイガ母が幼子守るよう
子供らの作品展や栗実る
寄り添ふて仲良く並ぶ毬の栗
一本の栗の木見張る散歩人
栗食めば子供おもほゆ単身者
山栗や茹で炊き焼いてフルコース
栗の毬を踏んで真白な雲を見る
栗飯や我家の味を噛みしめる
噛むほどに少年時代栗の味
栗をむく妻の背まるき夕あかね
栗爆ぜて冥王星は青い星
音なしの厨よどみし栗三つ
いつまでも二人寄り添い栗ひろい
栗飯の数に兄弟目をこらす
吾子歌ふ大きな栗の木の下で
父母をイガ栗にする通信簿
栗おこわ蓋取る時のしたり顔
焼き栗を分け合う二人暖かい
栗剥いて夜なべの母を思いをり
栗の毬剥いて原始の人想う
笑みし栗見上げる枝の栗笑みて
団欒がほっこりとある栗ご飯
勲章のやうに手につく栗の渋
マロン買う夜のマロニエの石畳
垣根越し湯気上げてゐる栗おこわ
焼き栗の甘さのデート中華街
公園の匂ふ向かひに栗の花
栗御飯先づは親しき仏から
100円の栗羊羹のシヨツプかな
栗を剥く母の背中に夕陽射し
栗を食べ冥王星をクリックす
いが栗や嘘の刑には針千本
忍耐が栗の皮剥く渋皮煮
ポケットで栗が転がる虫歯かな
親王を祝ふ夕餉の栗おこわ
知らぬ子に栗剥く寄席のお中入り
栗食べて遠き中国ふと思ふ
栗飯のほっこり家族暖かい
栗よりもうまいと言いて焼芋屋
栗のいが痛し生れて九十年
毬栗や声潜ませて隠れん坊
栗拾いアウトドアーの好きな僕
甘栗の皮割る指の素早さよ
衣脱ぎ栗栗坊や顔を出し
悪妻と言うほどで無し栗を剥く
栗の花放つ匂ひは強烈だ
稜線の昨日より今日栗の毬
鎧着たやつらと遊ぶ栗拾い
栗飯や栗拾われて穴だらけ
孫の来て居間迄香る栗ごはん
リハビリの祖母の手の中栗三つ
笑い栗四方山話で空になり
故郷を父は語らず栗の飯
栗の皮指の皮とも紛戦し
大栗も小栗もありて子の選ぶ
栗落ちる音葉するる音夜も濃く
駅弁や栗を最後の楽しみに
栗皮むくと同時につままれて
窓開けて栗名月を食卓に
皮をむく母の手荒れる栗ごはん
栗拾うこれが幸せかもしれぬ
栗の皮二時間ドラマで剥き終へり
爪入れて甘栗を割る妻ノ技
栗拾い秋の味覚に1ページ
鎧うこと覚え独りの栗の飯
栗ごはん月見の膳に母想う
団欒の隣で一人栗を剥く
手を広げ里で待ってる栗の木かな