| 海女の浮き両手に榮螺磯開き |
壷焼の煮立つ動きやコップ酒 |
| 榮螺焼くうない髪解く稽古海女 |
はらわたの苦さ楽しむ栄螺かな |
| 磯の香とさざえが醸す江戸の風 |
落城の途中とおもう焼き栄螺 |
| 大きさを揃へて求む栄螺かな |
栄螺焼く男ばかりとなりにけり |
| 爪楊枝ほじくって出す栄螺かな |
よーいドンマッチ一本焼栄螺 |
| 壷焼きのさざえのキューと鳴きにけり |
ガウデイの城思わせる栄螺かな |
| 壷焼きのさざえの腸のえもいへぬ |
この入れ歯こりこり好む焼栄螺 |
| 灰皿のさざえの以つて瞑すべし |
江ノ島の見えて栄螺の匂ひけり |
| えもいへぬさざえの腸の焼きあがる |
水槽の底に栄螺のうづくまる |
| 故郷は飛騨なり栄螺生かし行く |
さざえ食むふと母の事子らの顔 |
| 口中に異郷の香り広ごりぬ |
思い出をほじくり出せる栄螺かな |
| わが日々は書斎に篭る栄螺かな |
ラビリンスかくやと思ふ栄螺かな |
| 言わぬかな物申いたしてさざえなり |
海女小屋の焚火の隅の栄螺かな |
| 恐恐と栄螺の穴を覗きをり |
げんこつはサザエに似たり七回忌 |
| 年上のひとに教はる焼栄螺 |
壷焼のつぶやく音も皿に盛る |
| 耳に当て潮の音を聴く栄螺かな |
遠き日の町子漫画のサザエかな |
| 地炉端のたしかな記憶焼栄螺 |
壷焼きの匂いで誘う海の家 |
| 栄螺立つかくもあらんかバベルの塔 |
潮の香を並べて売られる栄螺かな |
| 頑固なる父思いだす栄螺かな |
深海の夢取り出される栄螺かな |
| 七輪の網で笛吹く栄螺かな |
磯桶の波に揺れらるる栄螺かな |
| 壷焼や焼かれて噴き出す潮の音 |
そよ風や栄螺と竹の子頂戴す |
| 素潜りの海女突き刺せる栄螺かな |
命綱夫に託して栄螺採り |
| 宴席にまず並びゐる栄螺かな |
断崖へ道の賑はひ焼栄螺 |
| 深海に深き眠りの栄螺かな |
名勝の波音絶えず焼栄螺 |
| なかんずく腸が好みでさざえ焼く |
壷焼に挑む一心不乱かな |
| 灰皿になつてさざえの瞑すべし |
栄螺籠よいしょと担ぐ親子海女 |
| 栄螺焼く磯を目指して急ぎ足 |
笛吹けば切なく聞ゆ栄螺かな |
| 若き海女片手に余るさざえ挙げ |
朝市になまり飛び交ふ焼さざえ |
| 幼子やさざえの苦み覚えけり |
栄螺噴く正油の息に網赤し |
| 一句出ずさざえの蓋を閉じるごと |
壷焼の噴きこぼれたる汐音かな |
| 腸をゆっくり引き出す栄螺かな |
ほじくれば栄螺の秘密出る如し |
| 焼栄螺酒酌み交わす父子かな |
荒磯に止まるさざえ頼もしや |
| 幼子ガ指差入れる栄螺かな |
懐の深きやつかなさざえ焼く |
| 朝市に潮の香並べ栄螺売り |
大きな耳ほじくる仕種さざえ料る |
| 壷焼のさざえで今宵呑み治む |
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