俳句庵

5月『ソーダ水』全応募作品

(敬称略)

ぷくぷくと気持ち浮かぶソーダ水
サングラス額へづらしソーダ水
夏祭り浴衣の君とソーダ水
ソーダ水コップを頬っぺに押し付けリ
ソーダ水この一口でよみがえる
ソーダ水ストローの先に紅の跡
ソーダ水束髪美女のにつこりと
ソーダ水底の方から吸いにけり
デパートのお子様ランチとソーダ水
ソーダ水赤マニキアの指長し
素顔にて合へる友なりソーダ水
湧き水の淀みに浸すソーダ水
土産にと手提げに貰うソーダ水
放課後の駆けっこ一番ソーダ水
つれづれに書く献立や白魚椀
ソーダ水妻に一本庭の午後
半泣きの妹なだめソーダ水
優勝の球児迎へるソーダ水
ソーダ水竹馬の友のちりじりに
ソーダ水ゲップに思ふ過ぎし日々
触れないに越したことなしソーダ水
試合終へ一気飲みするソーダ水
遠く聞く祭囃子やソーダ水
ソーダ水初恋の頃思い出す
ソーダ水午後のテラスの卓の上
爽やかな君の笑顔とソーダ水
もの憂げな女の化粧ソーダ水
ソーダ水水風呂浴びて客を待つ
ソーダ水結論未だ出ぬ会議
泡だちて昭和の色のソーダ水
口紅の跡の残れるソーダ水
語らいのしばし途絶えてソーダ水
ソーダ水友情シュワーッと消へる泡
口紅がソーダ水を吸い上げる
何気なく泡つつく指ソーダ水
うたがうを識らぬ少女のソーダ水
香りたつはじけた泡にソーダ水
晩学の休憩時間ソーダ水
ソーダ水キンと冷たい音がした
ソーダ水きれいな嘘を聞いてをり
母がつぐソーダ水から想い湧く
ソーダ水いずれが男女かな
はじけてる娘のようなソーダ水
ソーダ水思ふ人には思はれず
幼子が顔をゆがめてソーダ水 
割勘で払ふ気安さソーダ水
生き返るソーダ水飲む父が言う
はち切れむ二の腕まぶしソーダ水
ソーダ水あわの向こうに波の音
泡粒の貌に弾けしソーダ水
乙女らの炭酸抜けしソーダ水
ニニロッソ聞いて一口ソーダ水
泡立ちてシャガールの夢ソーダ水
予備校のベンチの影でソーダ水
初恋や熱き唇ソーダ水
ソーダ水予備校通いし日は遠し
ソーダ水バブルが消えて君来る
誰も居ずきりきり冷えたソーダ水
ソーダ水地球は熱くなりにけり
眼裏に星のとぶ日やソーダ水
一点差勝ちのたかぶりソーダ水
ソーダ水人のせてとぶ宇宙船
水の星に住みソーダ水喇叭飲み
ソーダ水身内にひそむ怠け癖
ソーダ水半分残し「飲め」と父
ソーダ水ストロー二本似合ふ仲
乗り換えの列車待つ間のソーダ水
ソーダ水クレオパトラの鼻に泡
気疲れを癒すソーダ水一気飲み
ソーダ水唇濡れし君を恋ふ
刻通り来ぬバス待ちてソーダ水
ソーダ水似合ふ女でありにけり
ソーダ水思い出映す泡模様
ソーダ水体を風の抜けてゆく
ソーダ水直ぐ青春に戻りけり
見あぐれば大気ソーダ水のごとくなり
もどかしくストロ-捨て飲むソ-ダ水
なつかしき写真にありしソーダ水
じわじわと喉元滲み入るソ-ダ水
青色の海をかき分けソーダ水
ラムネ玉びん底ころころ音も飲む
ソーダ水カランカランと夏が鳴る
喇叭飲みごくごく音よしラムネ瓶
青空は一人に一つソーダ水
自販機の音の賑はう缶ソ-ダ
ソーダ水湖面に富士の揺れにけり
飲み干して逆さに一滴ラムネ瓶
ソーダ水掲げ幼子走り来し
ソーダ水町にサーカスやってきた
ママ叱りパパがなだめるソーダ水
横丁のケンケン遊びソーダ水
ソーダ水泡のひとつがまだ消えず
コップ越し海を見ているソーダ水
饒舌の帰りし後のソーダ水
砂の城波がつれてくソーダ水
首細き夢二の女ソーダ水
貝殻を耳にあてをりソーダ水
ソーダ水気泡に大正ロマンあり
飛び出したソーダ水から飛魚が
街路樹の昔の銀座ソーダ水
帰りたいあの日あの時ソーダ水
ソーダ水コップに昔が跳ねている
ソーダ水しゅわっと遠き日の記憶
透明になるために飲むソーダ水
ソーダ水抜けばあふるる幼き日
ソーダ水与謝野晶子の詩をぬらす
遠き日の縁台将棋ソーダ水
ソーダ水ネオンを映す池之端
下校して一気に飲み干すソーダ水
道細き砂町銀座ソーダ水
ソーダ水飲めば童心あふれけり
空腹の一時凌ぎのソーダ水
ソーダ水漢一人の仏間かな
老いた母時間をかけてソーダ水
ソーダ水とは青春のハイボール
十五度にベッドを上げてソーダ水
語り継ぐ速さは徹子ソーダ水
湯上がりに下着も付けずソーダ水
二股に吸ふソーダ水発車ベル
ソーダ水散髪終はり駆け比べ
あの時は父もいたっけソーダ水
ギヤマンの泡の深海ソーダ水
このひとはこんなこといふソーダ水
ストロー持つネイルはブルーソーダ水
富士八合あたふ萬金ソーダ水
ソーダ水クリーム入れて山手っ子
泡越しの銀座まぶしきソーダ水
ソーダ水舌を見せ合う腕白ら
叱られし上目に泡のソーダ水
江戸切子タンゴ踊るやソーダ水
初デート一瓶の甘いソーダ水
ソーダ水一気に飲み干し染み渡る
海水とソーダの香り入りまじり
のどもとに季語とも知らずソーダ水
数式に向かう子机のソーダ水
春耕や夫をうるおすソーダ水
古喫茶の昭和の名残ソーダ水
青春の昭和をのぞくソーダ水
「ソーダ水」暖簾の文字に立ちどまり
向かうから子供の目玉ソーダ水
少年の兄いもうとにソーダ水