俳句庵

4月『新社員』全応募作品

(敬称略)

日経をこれ見よがしに新社員
はいはいと 笑顔のあなた 花になる
一目見てすべてガチガチ新社員
職場では あちらこちらで 花が咲く
社内皆青一色の新社員
新社員慣れぬ手つきのお茶を注ぐ
新社員先ず場所取りのそこかしこ
パソコンの扱い上手新社員
初出社身支度よきかと親ごころ
新社員言葉使いが気にかかる
新社員上司に呼ばれどぎまぎす
満員電車に押されて乗りし新社員
電車なか着慣れぬスーツ新社員
ロボットに使われてゐる新社員
研修終へ心身きりっと新社員
敬礼で朝のあいさつ新社員
給料の振込み知らぬ新社員
作業服に袖を通して新社員
初月給嬉し明細親に見せ
パソコンを難なく使ふ新社員
ふるさとへ動画写メする新社員
食堂の隅を陣取り新社員
宣誓の握りこぶしや新社員
花見席陣取ることの初仕事
素手まくるトイレ掃除や新社員
新社員無垢の机の一輪花
終業のためいき三日新社員
蛍雪の四半世紀や新社員
歓迎会びくとも酔はぬ新社員
初夏近し背広も熟れ新社員
社長とは打ち解け訛る新社員
新社員おんな上司の半歩あと
何もかもマニュアル通り新社員
お辞儀する角度で決める新社員
意の外の社風なじめず新社員
新社員無垢一色の日の出かな
新社員末は社長と憚らず
新社員まづ居酒屋の下座かな
新社員スーツ姿も板に付き
新社員黒きスーツの緊張感
公と私を未だ分け難き新社員
新社員立つて飯食ふ立ち食い屋
先輩を師とも仰いで新社員
名刺入母に買はせて新社員
星雲の匂いのついた新社員
遠足のしんがりにつく新教師
新社員スーツの肩が凝っている
黒板に新任教師の名や四月
新社員部所の隙間を捜してる
アラフォーが仕分している新社員
清々しい風を連れ込む新社員
新社員ラッシュの波に乗りきれず
新社員脱いだスーツが固いまま
食堂の隅にかたまり新社員
ビルの骨ニッカズボンの新社員
新社員ネットで探す裏情報
礼深く黒衣眩しき新社員
パソコンの指の速さよ新社員
喜びも悲しみもあり新社員
新社員リクルートスーツ昨日まで
百人に百の背中や新社員
新社員ビジネスノートの真白かな
ネクタイに個性を見せて新社員
訓辞聴く茶髪ピアスの新社員
迷路かと 資料かゝへて 新社員
新社員辞表を胸に研修へ
先輩は さいころとなり 新社員
昼休み鳩に餌やる新社員
新社員 蒼い匂いで 駆けぬけり 
厚化粧威風堂々新社員
新社員 哀れ倒産 旧社員
ふるさとの風の迎える新社員
新社員 お尻につきし 卵殻
東大も 派遣も同じ 新社員
メトロ乗る 花のお江戸の 新社員 
新社員 夢も鞄に 詰め込んで
制服の ミニスカ眩し 新社員
ネクタイは皆ストライプ新社員
短髪の襟足青き新社員
誰彼となき低頭や新社員
新社員睡魔にあがく通勤車
電話鳴る度のたじろぎ新社員
新社員敬語の舌にのせられず
大志秘め社会へ羽化の新社員
研修に姿勢正すや新社員
坂の上の雲を目指せよ新社員
新社員野望を包む紺スーツ
新社員草食系の男子の増ゆ
腰の角測られており新社員
荒海にいざ漕ぎ出でな新社員
新社員雇用保険を学びけり
逆上がり達成感か新社員
神殿へ鳩もぺこぺこ新社員
多弁なり雑学長ける新社員
肩揉むも多少の縁ぞ新社員
念入りに髭剃る息子新社員
新社員ディストラの記事読んでおり
ポケットの目薬ぬるき新社員
新社員山岳部卆と胸を張り
地雷など踏まずに進め新社員
始めての名刺は母に新社員
そちこちに龍馬気どりの新社員
初給料仏に供ヘ新社員
新社員晩成するまでいてくれろ
定食の味に馴染みて新社員
新社員酒の誘いを一蹴す
パソコンを上司に教ヘ新社員
新社員「まじすか」やめろの小言く
早速の戸別訪問新社員
新社員見つめくる眼のひたむきさ
新社員緊張ほぐす夜の街
情熱と若さ眩しき新社員
新社員少し甘えも見えにけり
新社員声上ずって自己紹介
新社員首に重たき社員証
新社員職場にパッと咲ける花
ぎこちなき礼好もしき新社員
あんなころ俺にもあった新社員
新社員お辞儀ばかりの外回り
ネクタイに個性を主張新社員
新社員仮面はがさる仕事振り
友なれど明日はライバル新社員
新社員出し物悩む歓迎会
新社員母より届く長き文
新社員腰折る角度指摘され
新社員ようやく運がむいてきた
新社員席次に声の掛け分けし
新社員スーツの下の可能性
世の中を 肌で感じる 厳しさよ
新社員ひときわ目立つ外国人
桜咲く 石の上にも 席をとる
授業にはないこと学ぶ新社員
転んでも 己を信じ 前を向く
末っ子のスーツデビューや新社員
魚でも 活きのいい目が 売れてゆく