| 下町の風に馴染んだ夏暖簾 | 光指す麻目鮮やか夏暖簾 |
| 若者の透明になる夏暖簾 | 路地の風 つれてくぐるや 夏暖簾 |
| 寅さんのひょいと顔出す夏暖簾 | 山海の珍味のにほふ夏暖簾 |
| 夏暖簾空気のちがう裏表 | 小気味良き包丁捌き夏暖簾 |
| 坊ちゃんが下駄で駆け込む夏暖簾 | 蒲焼の匂つて来たる夏暖簾 |
| 呉服屋の風しなやかな夏暖簾 | 夏暖簾透けて町家の通し土間 |
| 朗々と江戸紫や夏暖簾 | 夏暖簾くぐりて長き石畳 |
| 白樺の葉はうすみどり夏暖簾 | 坪庭の透けて朱色の夏暖簾 |
| 湯上りのほとぼり払ふ夏暖簾 | 門前の手打ちの蕎麦屋夏暖簾 |
| 亡き妻の衣擦と似て夏暖簾 | 夏のれん涼の一字が風に添う |
| 周首相偲ぶホールの夏暖簾 | 夏のれん掛けたる日より新メニュー |
| 黒光る土間玄関の夏暖簾 | 夏暖簾磨きぬかれた京格子 |
| 夏暖簾お客呼ぶよに揺れてをり | 夏暖簾板場よりくる酢の匂い |
| 夏暖簾白地に紺を染め抜きて | ゆうれいの出番待ちする夏のれん |
| 佃島江戸の味ある夏暖簾 | 銀座には銀座のセンス夏暖簾 |
| 創業者は近江の出とや夏暖簾 | 夏暖簾脛の白さを覗かせて |
| 向かひ会ふ本家と元祖夏のれん | 夏暖簾たまとぽちとのご挨拶 |
| 揉み手して主出で来ぬ夏のれん | 下町の老舗のそば屋夏のれん |
| 夏のれん老舗を仕切る若女将 | 江戸前のそばの香りや夏のれん |
| 婿取りの話まとまり夏のれん | 夏のれん白地に青き河童の絵 |
| 製法を一切変へず夏のれん | 雨宿り鳩居堂は夏のれん |
| 夏暖簾替えて良き風待ちにけり | 湯波半は東山向く夏のれん |
| 大店の歴史を守り夏暖簾 | 夏のれん白無垢乗せた人力車 |
| 夏暖簾軒先深き老舗かな | 銀座には女優の声する夏のれん |
| 歌舞伎座の千秋楽の夏暖簾 | 空也もなか売り切れ候夏のれん |
| 鰻屋のうの字の揺れる夏暖簾 | 夏のれん路地に舞妓の下駄の音 |
| 夏暖簾潜り役者の楽屋入り | 夕風に吹かれてくぐる夏のれん |
| 指切りの小指あらはや夏暖簾 | 夏のれん老舗の時の過ぎゆけり |
| 胃カメラを終えてくぐるは夏暖簾 | 京和菓子さそわれくぐる夏暖簾 |
| 夏暖簾米寿の母の浅眠り | 夏のれん分ける芸妓の白き指 |
| お見合いやこころを散らす夏暖簾 | 老舗には老舗の決まり夏暖簾 |
| 夏暖簾くぐればそこに穴子飯 | 夏暖簾奥に聞こゆる京ことば |
| 腰かけて素足ぶらぶら夏暖簾 | 夏暖簾街の虚飾を遮断せる |
| 創業は宝暦といふ夏暖簾 | デパ地下の夏暖簾街流しけり |
| ぼんやりと月ある路地の夏暖簾 | 百店に百店の風夏暖簾 |
| 一人入りひとり出てくる夏暖簾 | 夏暖簾かすかに漂う醤油の香 |
| 夏暖簾一寸お寄りと翻り | 露天湯や空より青き夏暖簾 |
| 夏暖簾煙を添えて誘いけり | 夏暖簾潜る舞妓や京の風 |
| 夏暖簾二酸化炭素抑えけり | 茶の入荷手招き戦ぐ夏暖簾 |
| 夏暖簾すでに暮れてる店の中 | 半眼光下す大仏夏暖簾 |
| 麻暖簾店の気遣い透けており | 濃き藍の不意に波打つ夏暖簾 |
| 水玉も魚も青に夏暖簾 | 風なりにはためく三文字の夏暖簾 |
| 軒連ね大内宿の夏暖簾 | 夕暮れに抜き文字残る夏暖簾 |
| 染め上げて油麩店の夏暖簾 | 割烹着の似合ふ女将や夏暖簾 |
| 銭湯の風と分け入る夏暖簾 | 家ぬちの透けし老舗の夏暖簾 |
| 和菓子屋の紺匂い立つ夏暖簾 | 白抜きの丸に三越夏暖簾 |
| 花菱の老舗蕎麦屋の夏暖簾 | 百年の老舗染め抜き夏暖簾 |
| 夏暖簾木曽も奥なる蕎麦所 | 鶴と亀左右に描き夏暖簾 |
| 夏暖簾掛けて病間の閉めらるる | 右下に屋号の有りし夏暖簾 |
| 夏暖簾掛けるや否や風通る | よりわけてくぐるが楽し夏暖簾 |
| 消エネと取り出し懸くる夏暖簾 | 老舗なる「あ」の字「の」の字の夏のれん |
| 懐かしや町屋に見付けし夏暖簾 | ひと声がつい長ばなし夏暖簾 |
| 染め抜かる老舗の名揺る夏暖簾 | 麻暖簾さっと払ひて寄席帰り |
| 染め好きの亡母(はは)の遺せし夏暖簾 | 雨来るとラジオの告げる夏暖簾 |
| 赤提灯脇にひんらり夏暖簾 | 柄杓持つかひなの白さ麻暖簾 |
| 奥座敷続く廊下に夏暖簾 | 夏暖簾奥より凛と京ことば |
| 風通しよきがとりえや夏暖簾 | 夏暖簾向かひに旅の衣解く |
| 夏のれん褪せし歳月佃煮屋 | とんかつやのいろは文字染む麻暖簾 |
| 雨に褪せ日褪せ老舗夏暖簾 | 下賀茂の菓子の老舗の麻暖簾 |
| 夏のれん陰に仲居の割烹着 | 川端道喜「御ちまき司」の夏暖簾 |
| 夏のれん麻の手織りの白さかな | 夏暖簾大福帳と算盤と |
| とり替へし掛軸とり替へし夏暖簾 | 白のれん何処かやさしい風が吹き |
| 閉じた店夏暖簾のみ残りをり | ケータイに彼の絵文字や夏暖簾 |
| うなぎ屋のうの字の長き夏暖簾 | 夏暖簾祖母に手紙を書いてをり |
| 夏暖簾今は聞こへぬ流し唄 | 夏暖簾くぐる真珠の薬指 |
| 夏暖簾くぐれば笑顔なじみの娘 | 襟足に午後の日射しや白のれん |
| 夏暖簾音無くくぐる在りし母 | ゴーギャンの女が揺れる夏暖簾 |
| 色白き娘が仄か夏暖簾 | 水菓子の甘さ老舗の夏暖簾 |
| 夏暖簾仏にゆるき風送る | 繁盛の老舗の歴史夏暖簾 |
| 酔いさます月は朧や夏暖簾 | 水羊羹老舗の味や夏暖簾 |
| 夏暖簾上げれば海は蒼きまま | 店頭の水羊羹や夏暖簾 |
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