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俳句庵
2月『追儺』全応募作品
(敬称略)
- 情念の猛り鎮めん追儺豆
- 碧眼の大関高く豆を撒く
- 七つ星冴えて今宵の追儺かな
- 社長また溶接工や鬼やらふ
- 邪なこころ見抜くか追儺鬼
- 年の豆七粒拾ふ喜寿なれば
- 通勤の靴にひと粒追儺豆
- 豆打や手術の痕は強く打つ
- 面をとり泣く孫あやす追儺鬼
- 豆撒きの声の残響闇深し
- 「厄は外」拳に力鬼やらい
- 父と子の声をひとつに豆を撒く
- 桃の弓悪さの鬼を狙い撃つ
- 追儺鬼面を外せば美女に雨
- 葦の矢よ悪霊どもを追い払え
- 追儺豆廃屋の隅月照らす
- なやらいの舎人の腕の頼もしき
- 闇に投げ闇に消えたる追儺豆
- 幸福が来ますようにと追儺の儀
- 父逝きし追儺の夜の雨細し
- 鬼やらい般若心経あげて討つ
- 追儺日は仕事の鬼も家の鬼
- 泣いていた吾子が追儺でもっと泣き
- 追儺の灯赤鬼の面より赤く
- 舞台から睨みきかせて鬼やらひ
- 追儺の夜母の布団へ滑り込み
- 歳の数もう忘れたと鬼やらひ
- 豆噛めぬ齢となりし追儺かな
- 追儺豆鬼面を皿に茶請とし
- 兄妹の豆数へ合ふ鬼やらひ
- 庭に向け生豆を撒く追儺かな
- 反抗期礫のごとく豆を撒き
- 追儺豆三粒残して茶請豆
- 園長が逃げるがうれし豆を撒く
- 韋駄天の追儺の鬼や生の豆
- 鬼やらひ炒り豆匂ふ母屋かな
- 追儺豆音も痛さも生が良し
- 鬼やらひ路地に外灯なかりけり
- 妻の豆ほんとに痛し鬼やらい
- 父としてこの大役の鬼やらひ
- 成田屋は東西南北鬼やらひ
- 子らの声噸と聞こへぬ鬼やらひ
- 願わくば海の彼方に鬼やらひ
- なやらひの身に潜む鬼見つけけり
- 追儺寺鳩遊ばて屋根の反り
- なやらひの鬼逃げ回る一日かな
- 生まれ来て満八十の追儺の日
- 泣く子抱き笑む母ありぬ鬼やらひ
- 鬼やらひ豆の流れし神田川
- 鬼やらひ 父の靴中 豆だらけ
- 追儺の日鬼軍曹のフィトネス
- 園児らの 声ユニゾンに 鬼やらひ
- やらはれし鬼の逃げゆく烏夜の外
- 鬼やらひ 園で作りし 紙の面
- なやらひの鬼面外せば父の顔
- 追儺日に 去年(こぞ)の大豆を 見つけたり
- 産土の社賑はし鬼やらひ
- バイト料貰い追儺の鬼の役
- 盾と矛構へ僧正ついな寺
- なやらひの打たるるために鬼出で来
- 空き部屋もなべて明るく鬼やらひ
- なやらひの鬼の扮装念入りに
- 鬼やらふ烏夜の道行き指を指し
- アベックの手をつなぎ居る追儺寺
- 小太りの鬼笑はるる追儺かな
- 子が泣いて追儺の鬼の苦笑ひ
- 鬼どもを子供からかふ追儺かな
- 昼間には出られぬ鬼や鬼やらひ
- 鬼の面外し泣きやむ追儺かな
- 追儺式闇を切り裂く鬼太鼓
- 坂道を夕陽に向かう追儺かな
- またひとつ増えし追儺の豆を喰う
- 青空の水面に追儺の列過ぐる
- 追儺会の親子三代年男
- 鬼やらい職員室より鬼の出ず
- 子の鬼を背負うて帰る鬼やらい
- 鬼役の父を待っての追儺かな
- 形なき鬼こそ怖し鬼やらい
- 子に問はる追儺の鬼の行きどころ
- おにやらい人の貌した鬼が来る
- 子は元気親は小声で鬼やらふ
- 怖いもの見たき年頃鬼やらふ
- 鬼やらふはばかりながら年男
- 利き酒の列の尾につく追儺かな
- 節分の豆持て余す齢かな
- 辛口の酒用意せよ鬼やらい
- 鬼やらひ枕を並べ眠りけり
- 深酒の帰りに追儺の声を浴び
- 窓開けて夜風入りたり追儀かな
- 鬼やらいあす朝きみに求婚す
- 裏口に闇夜迫りし追儀かな
- ははははは闇も笑うて鬼やらい
- 鬼やらひ瞳優しきままにして
- 少年のしどろもどろの鬼やらい
- 出窓より灯りこぼるる追儀かな
- 音羽屋がこの家のあるじ鬼やらい
- 福は内心の中にありにけり
- 相撲部屋追儺の声の太きこと
- 鬼役をアミダで決める追儺かな
- 自らの胸に豆撒く鬼やらい
- 煌々と追儺の後の豆集め
- 箪笥裏追儺鬼まだいる気配
- 箒持ち後固唾けや追儺豆
- 後ろ髪引かれつ闇へ追儺鬼
- なやらいや隣の家の鬼は誰
- 一度出てまた戻り来る追儺鬼
- 鬼を追ふ子ら将来の国守れ
- 鬼やらい終わりし袖より豆ひとつ
- 角打ちに見慣れない客追儺の夜
- 手加減も忘れて豆撒く景気付け
- 豆つかみはにかむ娘鬼は外
- 鬼を付け日頃の憂さを打たせやる
- 学僧の扮する鬼の追儺かな
- 撒くものと思えど口に香ばしき
- 声抑え団地住まいの追儺かな
- 仁王尊の紅き気魄や鬼やらひ
- 孫と爺交互に声の鬼やらい
- 節分の豆撒く力士の大音声
- 部屋隅に夕べ名残の追儺かな
- 福豆や力士の声のよく透り
- 歳の数少なめに言う追儺かな
- 福豆や数え切れざる年となり
- 旦那より女房張り切る鬼やらい
- 花祭りてふ三河路の鬼やらひ
- 満天の星に向かいて追儺かな
- 寺の庭炎え青赤の鬼やらふ
- 息災を願ひ病魔へついな豆
- 裸祭りもみ合ひて触る心男
- 鬼やらい笑って逃げる幼児かな
- 雪の上に点々とあり追儺豆
- 僧正の大音声の追儺かな
- 豆撒かれ鬼の逃げ行く外厠
- 旅にゐて妻子を思ふ追儺の夜
- 狛犬の阿に逃げ込みし鬼の豆
- 千代の富士撒きたる豆を拾ひけり
- マンションの最上階から鬼は外
- 妻の声吾より大きく鬼やらふ
- 横綱の豆をうけたり節分会
- 七十路のいよよはじまる年の豆
- 九つに略し卆寿の豆の数
- 犬小屋の中まで豆を撒く子かな
- 遣らはれし鬼の逃げ込む巫女だまり
- 鬼祓う豆もったいなき御時世や
- 豆噛めぬ孫と祖父母の鬼やらい
- 裃にネクタイも合ふ鬼やらひ
- 社務所ではお茶を淹れるや赤い鬼
- 鬼とでも話したきかな追儺の夜
- 追儺前逃亡経路を鬼思案
- 懸命に生きてゐるらし儺を追ひぬ
- 古すぎて青赤わからぬ鬼の面
- 押入れへ逃げ込む鬼に豆を打つ
- マンシヨンの一室小さき追儺かな
- 鬼やらいふすま障子を開け放つ
- 母と子の父は不在の追儺かな
- なやらいの鬼役の父門に待つ
- 熱の子の横で小さく鬼は外
- なやらいの掌より溢れる年の豆