俳句庵

5月『祭り』全応募作品

(敬称略)

鳳凰は入道雲の上を飛び
賀茂祭待つ群衆に置く身かな
母の灯は祭り囃子の尽きた先
老美妓の語る昔の賀茂祭
無人駅降りれば早やも祭り笛
賀茂祭通る装束重たげに
老人の眼のひかり祭笛
料亭に居て宵宮を楽しみぬ
祭待つ男だらけの背中かな
お旅所へ着きて祭と別れけり
出不精な父が浮き立つ祭り笛
先陣は笑いさざめく祭の子
重い尻軽くなる父夏祭
参道に湧き出す巫女やみたま祭
御隠居の小言取り去る祭り来る
震災の気持ち振り切り夏祭り
片肌の女御輿に父毀れ
褌のくいこみ痛し夏祭り
下町の血が脈々と夏祭
新足袋を何度もほぐす祭宿
ストレスを御輿をもんで吹き飛ばす
駅前は茶髪ギャルらの山車廻る
荒神輿よおっと締めて宮を出づ
祭りの夜魂ぶつけ男気に
ぴいひゃら喨々たるや祭笛
目くばせで抜け出す二人宵祭
宵宮の露店のガス灯幼き日
子神輿や背丈揃はぬ子ら仰ぐ舁ぐ
夏祭日本の元気ここにあり
後れ毛は許さぬ粋や祭髪
塗り替えに祭り氏子の気のそぞろ
きっちりと揉めごと納め祭酒
新しい法被眩しい氏子デヴュー
飲み助で無口で不器用祭好き
男祭り山車を曳けずに泣く娘
白粉を鼻に一すじ子の祭り
祭笛夜の川面を渡り来る
青竹を四囲に御輿の輝けり
掛け声の揃ひて上がる大神輿
脛毛なき漢の担ぐ神輿かな
神妙に祓はれてゐる神輿衆
路地と路地つなぐ祭の笛太鼓
祭神は女神に御座す荒神輿
祭笛ひびく真闇の湖の底
山車を引く法被の子らや豆絞り
旅のバス村の祭の中通る
宵の雨上がりて祭囃子かな
空いつぱい星現はるる夜宮かな
我が孫は皆混血児移民祭
採用通知とどき祭の人となる
東北とつながる心もて祭り
笛方に吾子ゐる祭囃子かな
青い目も大名行列祭りかな
旅の指土に減り込む荒神輿
遠き日の父に負われし祭りかな
朗朗と親父仕込みの祭り笛
眼鏡顔多き子供の神輿行く
夏祭り 浴衣の女性に 振り返り
それぞれの祭囃子やビルの谷戸
稲穂重たく 秋まつり
着飾りて歳の判らぬ祭り巫女
祭りの後 かがやく命 蛍いっぴき
祭り馬鼻先の飾り煩わし
夏祭り 道を照らすは 蛍なり
夏祭り半被渦巻くビルの谷戸
夏祭り 我ただひとり すくえぬ金魚
足捌き三社で違う神輿舁
フィナーレの 打ち上げ花火 夏祭り
鎮魂の祭となりし今年かな
夏祭り ホタルさかなに 一人酒
数多なる人連れ行くや祭笛
ぶんかさい 衣装の着物 我龍馬なり
集まりて祭始まる鎮守かな
水打たれ神輿の道の整えり
つくづくと日本に祭ある暮らし
隅田川祭のほてりゆらぎけり
遠近の祈りに充つる祭かな
半被借り三社祭の渦の中
人もまた神になりたる祭かな
祭終え静かに消える屋台の灯
樽神輿西瓜の前に止まりけり
列島の今こそ祭アホタワケ
ふるさとの近づく祭囃子かな
隣の子毛槍投げてる祭りかな
風のごとこゑおき去りに樽御輿
赤信号祭囃子の鳴りやまず
チラシのみ残りしものや祭り後
工場も小学校も祭りかな
白塗りの眉も凛々しく祭髪
野良着きて祭りの市をのぞきけり
締め込みは男の気概夏まつり
被災者の子のきりきりと祭髪
境内に獣医も待機牛祭
避難先自粛モードの祭りかな
水浴びて暴れ神輿となりにけり
人の波浅草の祭り呑み込みて
高張の祭提燈かぜ強し
青き眼の捻り鉢巻宵祭り
肩上げのまだ下ろさざる山車曵けり
被災者の足踊りだす祭り笛
宵宮や留守居守るも旨き酒
神田川影流れ行く祭衆
三代のこの血騒がす本祭
お囃子の風に分け入る祭かな
手をにぎる祭囃の遠きより
七変化夢見る童や祭り店
渋滞のそはそは待ちて神輿かな
紙細工見惚れる先の艶浴衣
祭囃子行李の奥に子の半纏
舞い下ろす鈴の音すずし祭髪
人垣となりて祭りのおもしろさ
忘れゆく旧町名や祭笛
夏祭り母の背中に眠りけり
深川の意固地でありし祭笛
夏祭りペットボトルの水撒けり
神楽坂ちかづいて来る祭笛
顎引いて歯をくいしばり神輿かな
阪妻の祭太鼓を真似てみる
幾万の男の背中夏祭り
娘らのままごとに似て祭ずし
夏祭り警察官は動かざり
古書売りて祭囃子のなかをゆく
一人づつ祭りの輪より抜けにけり
樽酒をどんと開けたる祭かな
江戸っ子の代々続く祭馬鹿
まつり酒肩いからせて漢来る
祭馬鹿それも一興血の騒ぐ
父あらば共に行きたし祭りかな
仕事など二の次三の次神輿来る
先達の氏子の笛の音色澄む
祭笛それも取柄や法被着て
優雅なる祇園囃子に鉾進む
巡査まで法被着ている村祭り
興奮のるつぼに鉾の辻回し
おふくろの味と云われて祭寿司
巡行の山鉾囃子の鉦太鼓
拍子木の一打鎮める荒神輿
町衆の財と英知の祭り鉾
負ふた子の祭半纏笛の音
祭笛高音低音と鉦に和し
若衆の足は二拍子祭笛
友老いぬ祭囃子に風を切る
提灯の昭和をひらく祭かな
祭笛吹けば皆の衆男前
硬骨に生きし男の祭り笛
今何処肩車した男の子
中止ビラ風に揺れたる春祭り
集まりし老人ばかり子規祀る
祭り無し滑らかに春流れけり
村祭お骨となって帰られし
アセチレン赤く流れし祭りかな
武蔵野の欅総立つ祭りかな
だんじりがごうと繰り出す夏の宵
祭り来て旧町名がよみがへる
初恋の浴衣娘や里の川
股間から撥を一振祭太鼓
交番の留守を守って祭の灯
刺青の漢が似合ふ大神輿
外つ国に里の自慢の郷土祭
裏道に逸れて床しき女神輿
好きな子に知らんぷりされ夏祭
火男の身振り手振りの山車の上
手脚はやサンバの様に夏祭
夏祭近し週間天気予報
外国によさこいソーラン郷土祭
弟が泣いて父との祭りかな
外国に根付きし阿波の祭かな
ふるさとの訛りテレビの祭りかな
出番待つ彩鮮やかな祭笠
人がみな耕し尽くして神をまつ
子は己が祭化粧に見惚れをり
夏祭りサンバ踊って楽しめり