俳句庵

8月『朝顔』全応募作品

(敬称略)

朝顔の紺は出会いし頃の君
朝顔のよく咲きすべて濃紫
朝顔や風青く染め放ちおり
藍深く清風如し朝顔や
朝顔や母なき家の留守居する
朝顔に習う寝坊の早起きかな
朝顔や空の青さに負けやせぬ
コケコッコーに負けじと花咲く朝顔
朝顔市迷うや迷う花が呼び
朝露に起こされほっこりと朝顔
絵日記の朝顔の青はみ出しぬ
出かける家族へ行ってらっしゃいと朝顔
朝露や花弁の中で眠りをり
誘われて朝顔の蔓迷い無し
神様が創りし青に見惚れをり
軒下の朝顔江ノ電すれすれに
朝顔のいくつ咲いたか数えをり
朝顔や小江戸に響く時の鐘
鉢植えの朝顔卓に朝餉かな
朝顔や味噌汁匂ふ袋路地
朝顔に水遣り口出づ「千代女の句」
朝顔や活きてゐる路地ポンプ井戸
朝顔の明日咲く色夢見せり
朝顔の自由研究子の眠し
朝顔や漏斗の重げに今朝の雨
野あさがほ花あたらしく刈られあり
朝顔に長竹立てて茎伸ばす
路地路地に朝顔咲かす寺の町
朝顔の屋根ぬりつぶす蒼さかな
朝顔の蔓のまさぐる空の紺
まだ双葉朝顔市の老二人
朝顔日記つけし記憶のありにけり
朝顔やかくれ体操巫女溜り
朝顔や吾にも紫紺の月日あり
朝顔や土の匂ひの捨畑
朝顔や昔もののふ自刃せり
エプロンに朝顔の種数知れず
朝顔の律儀な一日一花かな
朝顔の咲き放題や居間の窓
水やりに駆くる朝顔係かな
朝顔や研ぎ師遠方より来る
朝顔は行灯作り父掲ぐ
朝顔やそのまま嘘をつき通す
朝顔や蕾のままの観察記
朝顔や母の寝顔を知らぬまま
朝顔の咲けど諍ひ果てぬまゝ
朝顔や山の暮らしに慣れぬまま
このごろは朝顔咲かぬ厠かな
朝顔を育てる水の流れけり
アサガオや今日はどこまで伸びるやら
朝顔をみておはようと口開く
あさがおや命短き晴れ姿
朝顔の井戸の囲いを超えにけり
朝顔や肩に一輪背に二輪
朝顔や主役を張ってつる伸ばす
朝顔のラッパ吹く児や赤ら顔
朝顔を窓辺に仕立て紺の夢
朝顔や大輪ゆれる手元かな
下町に似合う朝顔下駄の音
朝顔の色映したり手に絵筆
黒塀に朝顔はわす粋なまち
朝顔や畳職人三代目 
一鉢の朝顔あればそれでいい
あさがほの明日展く紺葉裏にも
朝顔や木綿のような粋な人
朝顔や家主店子の縁長く
朝顔の芯に情緒がぼけている
朝顔や終の住処として路地に
朝顔を数ふる指の雫かな
朝顔や節電アシスト奏功す
今ここを生きて朝顔つる青し
朝顔のグリーンカーテン涼やかに
催眠を解きて朝顔得意なり
朝顔や入谷の路地に下駄の音
意味ありと朝顔得意に赤青と
朝顔に占拠されたる窓格子
朝顔の咲く朝ハープ稽古する
朝顔やいまだ残りしつるべ井戸
朝顔の昼は無口に過ごしをり
あさがおや子供の頃の空の色
連れ立ちて朝顔市や新世帯
朝顔に別るる蜂や後ずさり
朝顔にテルテル坊主かけやる児
朝顔のカーテンの柄日に変わり
種予約されて朝顔盛んなり
朝顔や足を滑らせ救急車
朝顔へ傘さしかける夜明けかな
朝顔のカーテンの花裏を向き
ヒロシマに朝顔愛でる叔父ありき
朝顔のカーテン茂る空き家かな
初恋や白き朝顔揺るるころ
朝顔に夜半の雨粒あまたあり
鉄工場朝顔咲きて昼餉時
朝顔や今日の青空ことのほか
今朝もまた母子の会話朝顔咲く
垣被ふ今年の朝顔紺ばかり
今年又咲かせて朝顔濃紫
朝顔の終の花なり小さき花
児の日課朝顔数へ体操へ
朝顔や紫紺に染まる風居間に
朝顔や朝刊重き金曜日
朝顔に送られて発つ京の宿
朝顔の咲き継ぐ庭や婆入院
朝顔や海苔お茶ご飯日本人
中を寝かせ朝顔競ひけり
歯磨きを終へて朝顔咲くを待つ
朝顔の薄むらさきに君想う
「おはよう」に朝顔揺れて応えけり
つる巻いて寂しがり屋の朝顔さん
引越しの垣朝顔の乱れ咲く
朝顔と同じに目覚め夜更かしす
雨上がる朝顔市や裾に風
朝顔に元気づけられ電車乗る
朝顔が先かとそっと雨戸開け
朝顔を毎日眺める爺日課
捻じり皺跡形もなし朝の顔
朝上がる小さき花火朝顔の
絵日記に朝顔の花また一つ
朝顔に体操終わりはしゃぐ声
朝顔の紺を絞りて天めざす
朝顔を数えて通る小学生
手作りのアーチをのぼる牽牛花
図書室を覗き朝顔這ひ登る
牽牛花夜は静かに眠りをり
朝顔の名残りの紺の深さかな
隣家より朝顔の蔓延びて咲く
日遮る緑のカーテン朝顔や
朝顔の裏を覗きし赤子の瞳
喧騒やみしぼむ朝顔せみの声
朝顔の咲き放題の無人駅
朝顔を褒めあふ路地の両隣
朝顔の葉陰に逃げる身重猫
絵日記に朝顔描くパジャマの子
喪の家に祈る朝顔咲きにけり
朝顔や千秋楽もすぐそこに
朝顔や咲けば一枚さっと描く
朝顔の徐々に小さくなる愁ひ
朝顔や日記しばらく白いまま
棒たてて朝顔の紺誘導す
朝顔や好きと言えない老いの恋
朝顔の折目正しく咲きにけり
上の句にあいを詠みたし朝顔や
朝顔の 花の笑顔や よき目覚め
朝顔やおいてけぼりをくわされて
朝顔を 愛でて風鈴 鳴らしけり
朝顔を飾りし街の純喫茶
朝顔が 羽を伸ばすや 定休日
朝顔の蔓の伸びゆく虚空かな
朝顔が 咲いて見舞いの 客が増え
朝顔の紺ふるさとの空の色
朝顔や 急いて急いてと 児のじょうろ
朝顔や小走り尼の襷がけ
朝顔が はみ出したるや 日記帳
飛び種の朝顔咲ける縁かな
朝顔市 決まって母は 紺で行く
朝顔や海に想いの日々の紺
朝顔の観察される日々となり
朝顔や無住の家の庭繁り
朝顔のつるのわがまま正しけり
朝顔や凛々として登校す
あの人の笑顔に似てし朝顔や
朝顔や日除けに咲かす定年後
朝顔の蔓に指巻く二人かな
朝顔や今朝の紅白数えいる
朝顔や紺が滲みし茜空
朝顔の紫凋み翁の訃
朝顔や耳を澄ませば父母の声
朝顔に今日一番のありがとう
朝顔や観察日記母の巻き
朝顔や「いつてきます」の通り道
朝顔や潮騒の中雨の中
缶けりをして朝顔の垣根裏
朝顔や今でも在るか君の家
朝顔のねじれ蕾や理髪店
ままごとのジュース朝顔しぼりをり
朝顔のひの字ひの字の葉つぱかな
朝顔の花数記録水当番
朝顔のつぼむやタイムカード押す
朝顔や上中下段今朝上段
朝顔や女の朝は早きもの
押し花の朝顔に消ゆ文字のあり
朝顔に水やる旅荷ほどかずに
朝顔に元気を貰う母病床
朝顔のつぼみ数える子の日課
出格子に絡む朝顔ゆれやまず
朝顔のつぼみふくらむ夕べかな
朝顔の日々好日の始まれる
あした咲くつぼみふくらむ牽牛花
朝顔のソナタを聴いて咲きのぼる
朝顔や誰も使わぬ釣瓶井戸
朝顔や紅殻格子(べんがらこうし)の京町家
朝顔の一鉢提げて向島
朝顔の花に隠れし蕾かな
朝顔の観察日誌捗らず
朝顔の届きそうなるうだつかな
朝5時に咲くあさがおの碧さかな
朝顔の鉢を持ちたる下校かな
朝顔や路地裏駆ける下駄の音
朝顔の雪花菜(おから)売りたる灯りかな
朝顔の蔓は伸びたり天に舞う
朝顔の花に残りし雫かな
朝顔にしばしまどろむ黒揚羽
朝顔や声掛け合うて登校子
朝顔に明けの明星時を止め
朝顔のつぼみはどれも薄みどり
朝顔に吹き抜ける風に目を覚ませ
朝顔の捩れ戻して開きゆく
朝顔にあくび見られて上を向く
朝顔や町内の子はみな元気
朝顔の花びら薄く水含む
朝顔の紫のみとなりにけり
朝顔に水やり汗する一年生