俳句庵

11月『酉の市(熊手)』全応募作品

(敬称略)

辺幅を飾らず熊手は小とする
眠り落つ熊手を抱へ席深く
酉の市三本締めやここかしこ
ひとまわり熊手大きく病癒え
爪の幅広き熊手や福多し
願い事十指に余る酉の市
大熊手福掻き込むによしとする
酉の市ほかほかほかのハンバーグ
そのなかに世相もじりし熊手あり
鯛小判揺れてきらきら酉の市
熊手市熊手熊手の擦れ違ふ
三の酉大震災の在りし年
ミニチュアの熊手の寄せる福でよし
お酉さま景気の岩戸開きたも
良き運や熊手を肩の師に出会ふ
ITのマネーは掻けぬ熊手かな
2DK熊手を飾る場所探す
イラストの熊手を飾る仮想店
あちこちの寄り道経たる熊手かな
百円を掻き集めたる酉の市
三の酉おかめ少しく老ひたるか
地下鉄の駅の名前の酉の市
買ひし運肩の上なる一の酉
一人売れ次々売れし熊手かな
酉の市手締め右から左から
時々は空を見あげし酉の市
甘いもの買って戻りし酉の市
酉の市昼と夜とは別の顔
酉の市抜けて茶請けを買いに行く
ゴミ箱に鳩の集まる酉の市
人の波行きつ戻りつ酉の市
酉の市らしく賑わうまちまちや
がんばれの吉祥グッズ熊手にも
家族の手忘れぬ熊手呼ぶケータイ
行く年を熊手ですがる酉の市
仕舞屋の汚れ少なき熊手かな
日本の平和掻き取る大熊手
脇入ればテレビの騒ぐ熊手市
酉の市暮れて昔に逢いに行く
酉の市一本締の多くあり
身の程の手のひらほどの熊手買う
せわしさの気配いよいよ三の酉
酉の市鳥居境に過去現代
万太郎の月上りけり三の酉
手打ちして夜を裏返す大熊手
酉の市榮子の帰る裏通り
放射ゴミ掻き取る熊手今朝の夢
灯きらきら幸きらきらと熊手かな
亡き人の願い集めし熊手かな
銀座線熊手を抱いて隅に立ち
売り上手買い上手いて酉の市
手のひらの熊手がほどの幸でよし
三の酉なくて二の酉あたたかし
風を背にうしろ歩きの三の酉
大熊手買って思案の置き所
肩車もう出来ぬ子と酉の市
合いの手も息の合ったる酉の市
神頼みするも齢か酉の市
天に発ね手締めの音や酉の市
社長室おかめの笑ふ熊手かな
大熊手身をはすかいにバスに乗る
水上バス乗りたくて来し酉の市
境内の鳩はいづこへ酉の市
再建の明日に賭けたる大熊手
胸元に子の脚遊ぶ酉の市
不遇なる去年の熊手を納めけり
酉の市居丈高なる熊手かな
担がれて夜空に踊る大熊手
子を先に立たせて熊手受けにけり
小熊手置き忘れたる神谷バー
身めぐりに風の優しき一の酉
三の酉壁に貼られた火伏札
末つ子のしかめ面来て酉の市
背中の児熊手背負いて泣きじゃくり
はらからと踏みし玉砂利一の酉
荷解きの声をからして酉の市
歩を止めて聴く街騒や三の酉
小銭入れ満腹にして酉の市
酉の市余所者らしくなりにけり
酉の市一筋脇の闇路かな
社運掛け去年より大き熊手買ふ
サイレンを遠くに酉の数を折る
大熊手長屋住まいに不釣合い
一葉の記念館見て酉の市
肩車されて熊手を掲げけり
スカイツリー熊手飾りの隙間より
ことのほか手締め賑やか大熊手
たかだかとおかめ揺れ行く酉の市
半歩ずつ父に手引かれ酉の市
身の丈に添はぬ熊手を購ひぬ
この景気 どこまで続く 酉の市
綿飴の二刀流なり酉の市
酉の市 バブル時代の 夢を見た
息災でありしが宝熊手市
境内に胴間声響く酉の市
浅草の六区で妻の酉の市
ミニ熊手ストラップにする少女たち
ケアハウス母に土産の熊手置く
三の酉火伏せの神も参拝し
浅草へ急ぐ心は酉の市
閑散の店に鎮座の熊手かな
吉原が在りし辺りや酉の市
熊手買い祝儀出さずに手締めさせ
酉の市東北晴れと妻ぽろり
灯の入りて昼より明き酉の市
茜空背負う熊手がかきむしり
酉の市笑顔も買うて戻りけり
ただ祈る家内安全酉の市
人混みが好きで嫌ひで三の酉
幸せの集まりそうな熊手買う
酉の市小さき熊手を買ひにけり
真ん中におかめ大笑大熊手
二の酉や認知症とはボケのこと
暗闇におかめの笑ふ大熊手
吉原も今はむかしや酉の市
人波の頭上を熊手過ぎ行けり
綿菓子と熊手と掲げ家路かな
小福を願ひ小ぶりの熊手買う
居合わせて強し手を打つ酉の市
日本橋本舗海苔店大熊手
新旧の熊手しばしを笑み合へり
酉の市人走らせる不意の雨
その足で夜行列車へミニ熊手
降り出しも止むも突然酉の市
どんじりにめ組控ふる酉の市
雨上がる闇を洗いて酉の市
熊手にも掛からぬ掏摸を口惜しがり
遠巻きで手締め見つめる酉の市
新年に祈る手拍子酉の市
ほろ酔いのはずみで買った熊手かな
夢ほどの極楽色に買ふ熊手
一の酉二の酉逃して三の酉
豊作の喜び浴びにとりのいち
熊手買ひ遊覧船で帰りけり
朝起きて見上げた空にとりのいち
三の酉「繁盛」の気を持ち帰る
今年もきたねあの人と計り市
オリコミの超大見出し熊手市
あの人は今年はいない新たな日
熊手売り三本締めの無骨な手
にぎわいに再会したよ思い出に
熊手売りカン高き声星空に
にぎわいに築きのこころ歩き出す
蛇女てふ見世物も酉の市
寡婦同士誘ひ合わせて酉の市
金銀を夜風にさらし酉の市
酉の市人に酔ふ子に何買はむ
かつぽれの追ひかけて来る熊手市
端に来て連れ待ってをり酉の市
人せわし置いてけ堀の酉の市
まだ熊手買ふやとっくに店畳み
高張りの提灯掲げ酉の市
値切ること姑に教はり熊手買ふ
堂々と参道をゆく大熊手
熊手買ふ独り暮らしとなる後も
今年こそ一つ大きな熊手買ふ
肩車 吾子の顔消え 大熊手
境内に拍子木ひびく三の酉
ジ―ンズの 腰でリズムの 酉の市
目の合ひし巫女より買ひし熊手かな
アセチレンあの香は何処に酉の市
煌煌と浅草田圃の大熊手
目出度さのこれ以上なき大熊手
襟を立て過ぎるもよしと酉の市
どの顔も良き顔をして酉の市
身の丈の幸せ求む熊手かな
見劣りのこれが吾に合う熊手かな
バスの中熊手の幸を貰いけり
賑わいを楽しみ歩く酉の市
常連が店番を買う三の酉
最終の熊手持つ人ばかりかな
神棚の熊手小さきまま二年
熊手手にほろ酔いなるや福の顔
何本も熊手の届く若女将
酉の市待つ境内の広さかな
酔眼にまぶしき限り熊手かな
縁起ものたっぷり小さき熊手にも
熊手置くおかめも鯛も寝てしまふ
掛け声につられて仰ぐ大おかめ
一雨に風尖りける酉の市
極彩の熊手見得切る手打ちかな
細き月すぐに沈める三の酉
この年の愛おしきこと酉の市
酉の市同郷の士の国訛り
泣き顔に化粧をかぶせ酉の市
ふるさとの訛りに出遭ふ酉の市
手を握る強さ丁度に酉の市
人ごみに飛び交ふ訛り酉の市
憂鬱を掃き清めたる酉の市
新婚の仲睦まじく熊手買ふ
人波にふたりの世界酉の市
酉の市手締めの起こる夕間暮れ
地下鉄を上ればそこに酉の市
人の世の出遭ひと別れ酉の市