俳句庵

1月『書初(筆始)』全応募作品

(敬称略)

書初の垂れてあかるき廊下かな
書初や意欲を褒めて丸一つ
書初に日の差し昇る三学期
意欲褒め吉書は筆の所為となす
「脱」一字揮毫に秘めて書き初めす
書初もパソコン使う平成児
「脱原発」こころに秘めて初硯
字を忘れ一一一と筆初
筆始 抱負の文字が 酔うている
字をほめて筆を貶しし吉書かな
書初の 筆の勢い 昇り龍
大空を半紙に見立て筆始
寿の墨痕鮮やか筆初め
悪筆の血筋恨めし筆始
筆初め候文で恋文を
少年は誤字と気づかず筆始
書初めや今年を誓う字を書きて
書初や「綱」と大書の新大関
書初めや紙満載に宝船
二浪の子「栄冠」としたため筆始
書初めを金釘流で幸と書き
ひたすらに「祈り」と書く子筆始
書初めや心静めて墨をすり
孫の名を熨斗袋に記すお書き初め
書初めの批評し合うも恒例に
書き初めや禁酒と書いて筆慣らし
筆運び父の血筋を継ぐ吉書
孫来ると聞いて書き初めよしにする
児の手取り書き順正す筆始
書初の白き襷の踊りけり
筆始め一の字ばかり重ねけり
書初の祈の一文字を認めり
書初めの筆を揃えてかしこまり
書初の撥ねに勢いありにけり
ニッポンとカナ書きもある書初めや
書初の筆の穂先の黒々と
筆先を猫見つめられ書初めす
書初の文字細かりし大男
筆始め壽の文字母に書く
書初や文鎮の龍飛ぶがごと
孫の手に優しく添えし筆始め
墨太に「希望」と書けり筆始
墨磨りし少年老いて筆始め
書初や内親王の恋の歌
あと何度希望元気や筆始め
同じ字を幾度も試筆してみたり
黒金の文鎮鎮座筆始め
筆始○と×とを頬べたに
墨模様流れし時や筆始め
黒々と「絆」一文字筆始
書初や母の遺愛の硯箱
俳聖の名句選びて筆始
晴れ着脱ぎ心おきなく初硯
宿題のお手本を書く筆始
書初やくずし字難し万葉歌
書き初めや白寿の翁黒々と
書初や夢は大きく字は太く
書き初めや祖父ご自慢の硯筆
「絆」とは尊き書なり筆始
墨の香の中の正座の筆始
うるはしき言魂えらび筆始
書始洗濯始母こごと
はみだして兜太のごとし筆始
筆始大きい赤の五重丸
書初の個性的とは言はれけり
筆始背筋を伸ばす深呼吸
特選の句を佳しとして筆始
書初の今年の文字を明と決め
墨蹟に齢を見せぬ筆始
墨の香の部屋に満ちきて筆始
祈り込め絆一文字筆始め
まつさらの空気の充ちて筆始
腰浮かせ墨たっぷりと筆始
筆始めはみ出す夢のおおからじ
親と子の書初並ぶ和室かな
見られたし見られたくなし筆始
書初やみみず書きとて孫誉むる
飛行機の空はカンバス筆始
書初の反故散らばりし子供部屋
書初の墨に魂摺り入れる
墨かすれ味はひそれなり筆始
難解な叔母の草書の筆初
書初に箒の如き筆走る
どの子にも新の字多きお書き初め
書初の子のとどまらず運ぶ筆
新鮮な墨の香りの筆初
書初に紙の破るるほど気合い
書初の仮名も漢字も子の息吹
書初に夢も未来も子の記す
半紙より文字の大きなお書き初め
書初の乾かぬ大書子が掲ぐ
書初や奔放の児のはみだす字
書初の書き順問わぬ子の大書
書き初めて筆置く母の頬染まり
学校の書初眺めみな元気
正座するちひさな膝や筆始
書初の絆何枚笑顔かな
筆塚に詣でてよりの筆始
健康か筆の書初癖とする
筆始和服に着替へ正座して
書初でとにかく前へ進んてた
筆始居間墨の香に洗われり
書初でこどものきずなそのままで
墨香が背筋伸ばして書き初めす
書初を憧れスマホしてみたい 
書き初めや墨磨る指も直立し
書初めの声も賑やか児童館
傍らに孫が並びて書き初めし
健康が何より嬉し筆始
書初この時だけは墨をする
息深く吸って挑めり筆始
筆初願ひごとのみ文字にして
書初の墨摺る音の清さかな
書初やどの字も愛し若き母
書初めや半紙はみ出す子の元気
書初や輝く紙の方が好き
こころざし磨いてよりの吉書かな
親戚の旅荷の横の試筆かな
息止めて一気呵成の吉書かな
筆初携帯電話切つてから
書初めや今年は絆と書かまほし
筆始まづは背筋を正しけり
書初めや永字八法なぞりつつ
かつて子とせし書初をひとりにて
筆勢のおもむくままの吉書かな
書初の筆に勢ひのありにけり
しんにょうのはみ出している筆始
丹田におのづと力筆始
書初の正座の脚の痺れけり
書初に適ふおのが句なかりけり
いろは歌んに迷いし筆始
かな書きの余白かがやく筆始
文鎮は三つ爪の龍筆始
書初の勢い漲り龍大書
条幅に墨の香りし書初展
龍の尾のぴんと跳ねたる試筆かな
龍の字を赤く大きく筆始
筆枯れて吉書八十路の華やぎを
書初に父の筆圧たす子かな
書初や絆一字を大書して
端渓の海漆黒に筆始
枯墨濃く磨り勢いの募る試書
正座して永字八法筆始
書初の筆力八十路の怯みかな
書初や弘法縁の筆と墨
自作句の連綿ためす筆始
書初や三人の日のとめはらい
書初や気息を込むる筆の先
筆始春日大社の鹿の筆
夢一杯紙をはみ出す書始め
特選の己が一句を筆始
書初めが終いともなる不精もの
書初やこの一年を筆持たず
書初の貼られて力漲れり
清書とは言えぬ出来栄え筆始
吉書にも迷ひあるかな地震の年
お手本は友の麗筆筆始
一杯に勢ひ借りし筆始
書初のまだ短冊に書けずおり
大陸の父の足跡(そくせき)初硯
壁に貼る己が決意を筆始
書初の今年はまじる漢字かな
被災児の三一一の吉書かな