俳句庵

7月『夕立』全応募作品

(敬称略)

大夕立流され走る三輪車
夕立来る葉の裏にいる青き虫
大夕立廃炉の屋根を洗ひ過ぐ
誤算てふ乗り換え駅の大夕立
大夕立スカイツリーを丸洗い
夕立に紅緒の下駄の駆抜けり
小夕立悪女の塚を濡らし去る
夕立や傘は要らねど縄のれん
居酒屋の暖簾をめくる夕立風
驟雨来て雨音いまも残りけり
禿頭に夕立一滴渡し船
夕立やいきなり樋のあふれたる
夕立にくるくる回る子らの傘
夕立の一気に来ればいいものを
お迎えのある子とない子夕立かな
日の匂ひ土の匂ひや夕立来
夕立に濡れると決めて歩き出す
夕立のきてコンビニの客となる
夕立に傘のない子の雨宿り
夕立に打たるるままの大鳥居
夕立や試合中断甲子園
夕立や頼るものなき舟下り
夕立や街の熱気を冷ましゆく
図書館にゐて夕立は気に掛けず
廣重の大夕立や橋の景
夕立の凄さ窓閉め切って見る
夕立に濡れたる道や遍路行く
コンビニに客の駆け込む夕立かな
夕立や節電の旗ずぶ濡れて
ガラス戸を押して茶房へ夕立かな
一杯の青汁を飲む夕立晴
夕立やたまには空をみあげるか
夕立に親子喧嘩の流れけり
夕立を敷きつめていくアスファルト
大会を中断させし夕立止む
葉がうけた音で気がつく夕立や
夕立に先生の声消えにけり
足早に行く人一人夕立や
夕立に僧の駆込む乾門
透明の傘の花さき夕立や
夕立は来ないと断言晴男
あの雲の向こうは青き夕立や
もうすでに夕立のやうな顔をして
子らの来て夕立のような家となる
夕立に心洗はれをりしかな
夕立にタクシー乗り場長き列
何事もなかつたように夕立後
パチンコをして夕立の止むを待つ
夕立来てまるでお祭り気分かな
夕立に野師所在なく煙草吸う
夕立に河童のやうな子どもかな
夕立に駅の貸し傘すでに無し
電車より先に夕立来たりけり
青春は夕立の如く過ぎにけり
大夕立流され走る三輪車
夕立や神社の赤旗濡れて濃き
大夕立廃炉の屋根を洗ひ過ぐ
夕立の窓辺涼しく爪を切る
大夕立スカイツリーを丸洗い
打ち水の先手取られる夕立や
小夕立悪女の塚を濡らし去る
夕立や床屋を出でし男前
居酒屋の暖簾をめくる夕立風
夕立に新たな力貰いけり
禿頭に夕立一滴渡し船
ポストまでわづか百歩や夕立くる
夕立を待つか真白き傘ひとつ
夕立やあのあたりかも穂高岳
夕立に天を仰ぎてはしゃぐ子ら
夕立や深き軒ある元商家
夕立や駅をもひとつ乗り過ごし
夕立を物ともせずに下校の子
夕立や軒打つ雫にあるリズム
夕立やビニール傘の二人連れ
夕立や韋駄天走りの餓鬼大将
夕立や置屋の跡の深庇
夕立や幼女の長靴つばさ生え
叱られたやうに夕立の不意に止む
夕立やぶっきらぼうの空である
叩かれて土の匂える夕立かな
号外の見出し熱持つ夕立かな
夕立の去りて浄土の風生まる
けんかして走り来る子や大夕立
夕立ちや土つぶて乗る八つ手かな
洗われて水色の空潦
土のにほい夕立が連れる異空間
夕立にプール帰りの子ら歓声
夕立に嬌声上げて走り去り
七色のバームクーヘン虹四切れ
古稀七十照る日曇る日夕立の日
ここは雲の真底夕立は真上から
街中の罪科を流す夕立かな
夕立今オシロイバナの咲く時刻
踏切で吾に追ひつく大夕立
一瞬の夕立に濁る都市河川
大佐渡を隠す夕立となりにけり
鎌倉に夕立ありし石畳
湯帰りの女走らす白雨かな
鎌倉の甍に音の白雨かな
葉の先に残る夕立の虹しづく
夕立に濡れて自転車こぎにけり
寺の軒夕立避ける鳩が列
海ほたるの沖より馳せし白雨かな
大空を夕立洗い花火待つ
平成の皇居を洗ふ白雨かな
夕立や濡れて野仏泣き笑い
白雨来て大きな虹の生まれけり
夕立や逃げるピエロとすれ違い
肩と肩 庇う驟雨の ふたり傘
夕立が過ぎ去る街は暮れ始む
夕立ちの 路地に跳ねるや 土埃
夕立の端を見たことわが自慢
夕立ちや 野に遊ぶ子を 狙い討ち
夕立の真只中を子は走る
しとど濡れ 夕立ち仰ぐ 廃炉かな
夕立避くジャズ演奏の蔵茶房
満面に 夕立ち仰ぐ 喜悦かな
野球の一時中止や大夕立
街灯を点して消して夕立去る
夕立の始まる前の静かさや
夕立や笑ひさざめき下校の子
増水に中洲の人の救助かな
トンネルを抜け来て大夕立の中
夕立に車の洗車する人も
バス停の人みな無口夕立中
子らの来て夕立のやうな家となる
畑中に雲湧き夕立の匂ひかな
夕立につばめと話す雨宿り
もう少し遊んで帰ろ大夕立
夕立に揺れる花笑み紫陽花よ
ニコライの鐘の時刻や白雨来る
夕立に傘が彩る交差点
夕立や雨の匂いの宅配便
夕立の声が静まり虹を呼び
夕立や富士も箱根も水墨画
過ぎし日の幻揺れる夕立よ
夕立や駆け込む先は千疋屋
走り出す夕立跳ねる水溜り
夕立や路地に消えゆく下駄の音
叱られたやうに夕立の不意に止む
夕立や襲名披露の祝いかな
叩かれて土の匂える夕立かな
夕立や幼な子庇うヤングママ
自転車で巡る明日香路夕立あと
驟雨茶をもう一杯とやり過ごす
園児達のお昼寝時間大夕立
にわか雨裾を絡げて寄席帰り
夕立の音を遠くにキスをする
夕立や駅舎の鳩も息ひそめ
夕立のまえの匂いよ静けさよ
驟雨誰も戻らぬ駐輪場
美しき赤いポストよ夕立晴
夕立や大地叩いて世を怒る
夕立や自転車こいで濡れてゆく
夕立やふたりの距離の遠きまま
目に見えるものを洗って夕立よ
夕立に吠える子犬のおもちゃかな
夕立できみといっしょに雨宿り
夕立に髪を気にする鏡かな
七分丈のパンツが似合う白雨かな
夕立やティーパーティーの静まりぬ
夕立や球児ら白熱試合中
夕立の夕飯準備豆腐より
夕立に洗われていく心かな
夕立の気配にアロマ焚きにけり
夕立や スカイツリーは 凛然と
ジーパンを二度洗いして夕立去る
白雨中ボンネットバス参上す
夕立や街の虚飾を洗ひたる
街中を洗い上げたる夕立かな
夕立の去りて一山匂ひ立つ
突然の大夕立に逃げ惑ふ
洗車終へいざ出発や夕立来る
夕立で車を洗ふ人をりぬ
宿題を終へた子外へ夕立晴
夕立の真只中の路地の子等
連山に湧く夕立雲見ていたる
夕立に打たれ少年帰り来ぬ
夕立来て有象無象を洗い去る
夕立や裸飛び出す路地の子等
連山の闇解き放ち夕立去る
ぽつぽつと雨粒当たりより夕立
夕立来て車道に川の生まれけり
夕立の後の木立の虫霞
遊び場へ夕立雲が駆けて来る
夕立や生滅激し泡灯篭
夕立や韋駄天となる人力車
夕立の洗い流すや陽の匂い
夕立を涙と思ふ阿弥陀寺
夕立や軒端離るる愛の傘
夕立に昭和の駅は賑ひぬ
夕立や海の濁りは黄滲み程
夕立や十年の関係を断つ
一気飲み出来ぬ山ある大夕立
夕立や蒼きシートを置く胸へ
開店の待つ列散らす夕立や
川面には鳥影もなき大夕立
竹とんぼ夕立晴れの風を切る
クレーン車残り人散る大夕立
夕立やカタカタ走るランドセル
レジ袋提げて眺むる夕立かな
夕立に公民館の賑わいや
夕立雲水の匂ひのせまりをり
夕立やレシピ乱れる台所
夕立が町家の空を丸洗い
夕立に追いかけられて傘もなく
夕立や降る込められた仁王門
君の傘借りて夕立とおりすぎ
夕立や待つ人来る人駅出口
夕立にばちゃばちゃ打たるるトタン屋根
托鉢の僧の菅笠白雨打つ
大夕立止めば青空ほんわりと
白雨という天の恵みのシャワー浴び
夕立来て頻りにあぎとふ池の鯉
夕立がドラムのように屋根を打ち
夕立に頭を守るランドセル
夕立シャワー尊徳像を丸洗い
夕立に咽を潤す鬼瓦
予報士の夕立の予報夕立来る
夕立に達観したる池の鯉
夕立去りカレーの香る学生街
夕立に走り込んだる地下茶房
二階から妻の呼ぶ声夕立来る
下町の情緒濡らしたゆだちかな
昼の部のはねて夕立の落語寄席
夕立に軒下借りて飴貰う
夕立や共に濡れたき友が逝く
夕立や少し狂うた女あり
ふるさとの夕立いつも温かし
夕立の東から来て西へ去り
夕立や人魚となりし人想う
サイダーの泡のよう夕立のぼる
夕立やレトルトカレー妻が言う
夕立を花の匂いが強くして
夕立のあなたのあなた美空あり
夕立雲恋の名残も捨てにけり
夕立にふるさと濡れて君も濡れ
夕立風あの場所へもう戻らない
夕立を百会に受けて鬼瓦
葺き終えし屋根を試すや大夕立
アルプスを二等分して夕立去る
大夕立窓を溶かさず去りにけり
いきり立つ大東京に夕立来る
水捌けを夕立試す競技場
異国語で道問われたる夕立かな
夕立や地球固めてのちに止む
夕立来る赤緒の下駄の女偏
夕立が止みて自分を元どほり
空からの一本道や驟雨くる
夕立にラインを消さる競技場
屋根の無き動物園や大夕立