俳句庵

4月『惜春』全応募作品

(敬称略)

惜春や閉りしままの小さき窓
惜春や 父の写真は セピア色
じやんけんぽん続くあいこや春惜しむ
白線を流して青き春惜しむ
惜春や草競馬観る櫓桝
吟行の現地解散春惜しむ
犬放ち土手に寝ころび春惜しむ
惜春や日毎際立つ山のかげ
いつもより多めの読経春惜しむ
昨日とは違う隅田の春惜しむ
停留所三つ乗り越し春惜しむ
惜春の後ろ髪引く旅の帰路
水槽の河馬を眺めて春惜しむ
旅先の一期一会春惜しむ
毛づくろいする猫といて春惜しむ
退院も決まりナースと春惜む
城跡の石垣に座し春惜しむ
子規堂や女子大生と春惜む
ただ笑う想い伝えず春惜しむ
霊の湯や道後温泉春惜む
仰ぎ見る城の石垣春惜しむ
松山や心行くまで春惜む
香ばしき夜の雨あり春惜しむ
松山や俳句大賞春惜む
大の字になって目を閉じ春惜しむ
ほろほろと逝きし人ごと春惜しむ
惜春や訃報のなきを喜びつ
ほのぼのと過ぎ来し日々や春惜しむ
惜春や寺山修司の嘘遊び
万象の変はり哀しや春惜しむ
惜春や飛ぶように捌く佛袋
惜春といふ軸掛けて春惜しむ
惜春や潮騒めきし町の風
春惜しむ近江の人のやさしかり
駄菓子屋に納まる芸妓春惜しむ
緞帳の天女の舞に春惜しむ
惜春や介護施設となる母校
峡の湯に見上ぐ峰峰春惜しむ
行く春の学舎鋤かれてビル建ちぬ
湯に浸り眺むる出船春惜しむ
スタンプラリー一つ残して春惜しむ
成田屋亡き新歌舞伎座や春惜しむ
道祖神巡り信濃の春惜しむ
旅終えて寛ぐ我が家春惜しむ
惜春や蓼科山は富士に似て
惜春の名残り華やぐ学び舎に
週刊誌伏せて茶房に春惜しむ
古稀すぎて同窓会や春惜しむ
惜春やパンふつくらと焼きあがる
定年の課長の肩 惜しむ春
春惜しみつつ甘口の夜の酒
みぞれるや 杖一本の 雪だるま
春惜しみつつ読み返す師の句集
ようやくに 野を従へて 鳥の立つ
石膏の女神つめたく春惜しむ
春尽きて 梢の笑う 声潤む
リーダーになりし子の背や春惜しむ
ジャンケンに 負けてパー出す 蕗の薹
惜春や腹八分目をよしとして
蟇鳴ける惜春の空薄曇り
惜春やヨットハーバー旗振りて
惜春や人連なりて聯潜る
惜春や西行の月中天に
惜春や野山の彩り柔ら
青々と嵯峨の竹林春惜しむ
バス停に消へる路線や春惜しむ
落柿舎の去来の墓や春惜しむ
山肌を攀じる温度や春惜しむ
何となく身を触れていて春惜しむ
単線の鉄軌の響き春惜しむ
惜春や八十過ぎの同級会
春惜しむ平野育む川の音
時差ぼけや 子の刻ひとり 春惜しむ
春惜しむ都心へ向かふ始発駅
食卓に えぐ味も失せて 春惜しむ
春惜しむ母校の校舎壊される
杯に ひとひら残し 春惜しむ
惜春や明日香の棚田の日のひかり
惜春や子の旅立ちの日の近し
靴下の小さくなりて春惜しむ
惜春の逢ふて間もなき別れかな
妻と乗る大観覧者春惜しむ
惜春や干菓子の色のやはらかき
惜春の釣果なき魚籠提げ帰る
ふるさとへ迎へし人と春惜む
砂文字を消して引く波春惜しむ
短篇を一つ書き終へ春惜しむ
緑濃き峡惜春の舟下り
和紙のごと振る舞ひ春を惜しみけり
春惜しむ願いとともに桜咲く
惜春や風の伝へる人の無事
イチョウの木本を読みつつ春惜しむ
祖父掘りし縄文土偶四月尽
春惜しむ時は進みし夢見てる
教え子の背に祝辞投げ弥生尽
扉開け感じる暑さ春惜しむ
三面鏡どれも我なり春惜しむ
せつけんで思い流して春惜しむ
歳の差は今も変わらず春惜しむ
窓あけて見ゆる青空春惜しむ
山ばかり見て惜春の木曽の旅
春惜しむセリフと共に過ぎていく
惜春や老いて夫婦は手をつなぐ
どこまでも湯気が上るや春惜しむ
惜春やみな古希となる同期生
飛び散つた心情知らず春惜しむ
飲み会の同じ顔ぶれ春惜しむ
色あせた写真並べて春惜しむ
惜春や今別れきし就園児
友達の約束やぶり春惜しむ
古都の街人影の減り春惜しむ
忘れ物鳥がとびたち春惜しむ
古都の鐘余韻の長し春惜しむ
窓の外春惜しみ日は上の空
入園の孫来て帰る春惜しむ
居眠りし大きな光春惜しむ
春惜しむ余韻残してや古都の鐘
春惜しむおちばかちつてことばちる
春惜しむ人影寂し京の雨
出会いにも友情別れに春惜しむ
野の子らや 手に一杯の 春惜しむ
春惜しむ目にうつりしわ涙かな
春惜しむ 厨の母の 早春賦
春惜しむ奇跡を起こし憫笑す
行く春に 逝く君惜しむ 若さかな
春惜しむ帰りし心の夢写し
行く春に 両手合わせて 又やある
変わりゆく景色見続け春惜しむ
春惜しむジグゾーパズル未完成
窓側で本を片手に春惜しむ
惜春や数独未だ解けぬまま
石けつて春惜しむ頃帰路につき
惜春や訃報も混じる同期会
惜春や一枚の葉に刻みこむ
やり残すことばかりなり春惜しむ
春惜しむ思いを胸に空の色
悔いなしと誇る友垣春惜しむ
願っても別れと出会い春惜しむ
惜春ややりたきこととやれぬこと
春惜しむわずかに残る桃の色
肩のうえ 桜舞い落ち 惜春や
春惜しむ気づくとすぐに明日が来る
下宿への 荷造り終えて 惜春か
春惜しむ必ず人は訪れる
通り雨 桜散らして 惜春か
春惜しむ青空ながめ鳥が飛ぶ
卒園の 制服たたみて 惜春よ
惜春の風が来たりて涙舞う
葉桜の 下で酒宴す 惜春か
昇ぼる日のせかしを見つめ春惜しむ
惜春や 故郷を離れゆく 車窓かな
惜春やふと声かける虹の音
惜春や鳴らなくなりしオルゴール
春惜しむ別れとともに散る想い
惜春や白鷺峰を越え行ける
春惜しむ空ににじんだ夢ひとつ
惜春のケーキそへある置手紙
空見上げ雲を見送くり春惜しむ
惜春のまたねといふは良き言葉
汗をかき空見上げては春惜しむ
惜春の覚悟といふをまたひとつ
木の下で団子食べれず春惜しむ
惜春の写経に心追ひつけず
遠き日の思い出情か春惜しむ
惜春の自ずと口に出る言葉
別れ行く手と手を離れ春惜しむ
惜春の振り向く眼濡れにけり
風が吹き葉の音風の音春惜しむ
惜春の旅に出たままそれつきり
春惜しむ心あらずの霧のよう
惜春や溜息とともに吐く紫煙
春惜しむ子の笑い声盛りかな
ジェット雲長き尾引くや春惜しむ
カレンダーめくる少女や春惜しむ
春惜しむ選抜大会終わりけり
春惜しむ旅人をしてわかれ言う
惜春やゆっくり進む車椅子
外に出て背伸びしながら春惜しむ
惜春やベンチで過ごす昼休み
春惜しむ家の楽しみ読書かな
惜春や鳩に餌やる老夫婦
風吹いてカーテン揺らぐ春惜しむ
春惜しむ大川端に芭蕉の碑
春惜しむ一人たたずむ教室に
春惜しむ草の匂いの靴の底
春惜しむむかつくあいつたいあたり
春惜しむ見返り阿弥陀伏し目がち
春惜しむ手のひらの中ありがとう
惜春や偏差値といふ魔物棲む
昔の写真を眺めて春惜しむ
惜春や柳行李の開けにくさ
惜春の人にかくせぬ秘密かな
春惜しむ昨日の友と違う空
地面からもうもうと熱春惜しむ
惜春や進路は地元遠くして
惜春の心微笑む雲の色
春惜しむ田舎想へば山河青
春惜しむいつもの心明日変わる
惜春や町内行事目白押し
春惜しむ友と最後に語りけり
惜春の所在なさげな七味売り
友と会うあの場所思う惜春か
惜春の女湯からも桶の音
惜春の眠る子猫の気持ちかな
好きなだけ土をいじって春惜しむ
家帰りすぐに爆睡春惜しむ
名画座の三本立てや春惜しむ
風吹いて少し温く春惜しみ
惜春や青のブレザーふんぱつす
いつの日か時は流れて春惜しむ
献杯の別れしばしぞ桜ふぶき
旅人の過ぎ去る荒野春惜しむ
花冷えを訪問介護の来にけらし
妻帰りかち割る心春惜しむ
舵取れば伊勢路花散る揖斐の川
室外で食べて感じる惜春か
春惜しむ日向の婆の針仕事
春惜しむ写真一枚落ちている
福島の孫、子も呼べぬ春惜しむ
風ふいてあたたかくなり春惜しむ
惜春のエアーポートの別れかな
ひらひらとゆれるカーテン春惜しむ
惜春や杖を頼りに一人旅
風変わりカーテンひらり春惜しむ
四月尽初心忘れそ登校す
春惜しむ心や本の奥しまう
団.藤逝く惜春の杮落し
春惜しむ箸を持つ手に雨来たる
春惜しむ遠くに望む海の色
さーさーと風がふき込む春惜しむ
春惜しむ麓の町の無人駅
あざやかな花にあこがれ春惜しむ
往く春や我と愛犬ここにあり
春惜しむ小学生の笑い声
四十年我職辞せり四月尽
遠い空夕日見ながら春惜しむ
過ぎし日の名画を見つつ弥生尽
春惜しむ寒かった日を思い出す
連れ合いと土手を歩んで春惜しむ
春惜しむ心の準備ととのわず
惜春の歌懐かしや裏通り
街を見て変わる風景春惜しむ
名画座と本屋が閉じて春惜しむ
風がふくビュービューふくと春惜しむ
王義之の書に魅せられし春惜しむ
惜春や黒板消しの胸の中
さまざまな 花の思ひ出 春惜しむ
鉛筆や削れないのは惜春か
惜春の草色めがね連れて出る
春惜むこたつとうざけ日にあたる
惜春の雨音ショパン奏でにて
春惜しむ花が散っては日が暮れる
惜春の鳥になるなり風に乗る
空を見て故郷を思う春惜しむ
遠くあり惜春いっぱい雑木山
花も散り萌ゆる緑に春惜しむ
惜春の裏山鳥の声のして
数学のノート見ながら春惜しむ
惜春の雲は綿菓子光りいる
春惜しむ今日一番にうれしいな
口笛で了るシャンソン春惜しむ
絵葉書を母に送って春惜しむ
三越のライオン撫でて春惜しむ
春惜しむ衣服をかえる季節なる
あんぱんに銀座の春を惜しみけり
春惜しむ白い雲たち水落とす
ハイボール 惜春の泡 絶え間なく
あたたかい空を見ながら春惜しむ
煮凝りの 口融け良さに 春惜しむ
春惜しむいつかいつかと待ちぶせる
煮凝の 口融け良さに 春惜しむ
春惜しむ心の中に忘れない
就活の 初初しさに 春惜しむ
春惜しむ人にまじりしつかれたな
天つゆに 衣響動めき 春惜しむ
惜春の心ゆれてくあの人へ
微細粒 黄味薄まりて 春惜しむ
春惜しむドアのかぎあなもう開かず
惜春や 飛行機雲の エンドレス
春惜しむ過ぎる季節は悲しかな
公園で鳥に餌やり春惜しむ
春惜しむ空に一つの羊雲
恋人とベンチに座り春惜しむ
惜春にうっとりされてうとうとと
石けりをやって子供は春惜しむ
春惜しむ心はいつも雲隠れ
春惜しむそれだけでいいあたたかき
春惜しむあの時のこと思い出す
春惜しむ余命少なき母といて
道端で別れを惜しむ春惜しむ
デザートのさいごの一口春惜しむ
春惜しむその日の旬が去って行く
惜春や旅の絵葉書見直しつ
春惜しむ森の中での昼寝かな
ほろ酔のひと駅歩き春惜しむ
緑の葉咲く時期になり春惜しむ
赤貝のマリネに春を惜しみけり
朝早く目覚まし時計春惜しむ
惜春の屋根裏部屋のうすあかり
人々の出会いと別れ春惜しむ
惜春の遠のく尾灯滲む街
春惜しむあのあたたかさ心入れ
天平の鐘の余韻に春惜しむ
春惜しむカーテン越しの風の音
露天風呂朝の日ざしに春惜しむ
春惜しむ心の中の希望待ち
ひばくちうことばのありて春ゆけり
春惜しむ大空にまうこしょうかな
春惜しむ山の向こうに白き山
窓全部開いて閉じて春惜しむ
しょうがとう口にふふみて春惜しむ
春惜しむ青春の風少年期
ネクタイを緩めて春を惜しみけり
窓の外景色変わって春惜しむ
惜春や心の釦弛み初む
クラス替え笑顔とともに春惜しむ
惜春や花屋の花の強面
春の風とてもいい風春惜しむ
足臭の戻る玄関春惜しむ
春惜しむ時計の音とさよならと
惜春や電車の席の定まれる
春惜しむえんぴつ持って時を待つ
新しき町に馴染みて春惜しむ
春惜しむ白紙の紙に戻りけり
東北の冬立去れと春惜む
春惜しむ心温か友の声
惜春を我待ちわびた若き日よ
春惜しむ光の空に別れゆく
金平糖こきりと噛みて春惜しむ
惜春の風がふくなか新聞紙
惜春や初恋の人の名空に書く
春惜しむ葉っぱに落ちる雨の音
春惜しむ各駅停車の窓開けて
冬くれて季節来たりて春惜しむ
惜春や約束の地はまだ遠し
夜眠りたびたび起きて春惜しむ
まつもとと駅名響き春惜しむ
暖かい野草残りの春惜しむ
惜春や借りたヘッセのゲルトルート
惜春や都忘れて急ぎ足
春惜しむ川の流れに石投げて
春惜しむ心おちつき咲く桜
春惜や命日過ぎし母想ふ
春惜しむ心のぞけば花畑
白長須鯨のオブジェ春惜しむ
寒い日は春惜しむななにごとも
惜春や甲斐にワインを試食して
春惜しむせみの鳴き声にぎやかに
惜春や指遊ばせて電子辞書
春惜しむ心の中は瞳色
雨脚を眺めひとりの春惜しむ
温かい手招きの先春惜しむ
惜春の郷愁誘う窓明かり
まよわずに木の下でまた春惜しむ
惜春の川面に伸びる杭の影
春惜しむ手には泣を握りしめ
千社札古りし鐘楼春惜しむ
夜の空星が手をふり春惜しむ
春惜しむ 三段飾りを しまいつつ
山吹きがひらひら踊り春惜しむ
惜春や吉野の山を思ふ時
春惜しむ心は桜ピンク色
七福神七つ巡りて春惜しむ
森の姫ドレスを替えて春惜しむ
わが町を見下ろす丘に春惜しむ
見上げると青い大空春惜しむ
うかうかと過ごす月日に春惜しむ
目を閉じて風がささやき春惜しむ
すぐ曇るルーペを拭いて春惜しむ
泣きながら目の前見えず春惜しむ
惜春や川魚を焼いて売る店も
満月に右手にめがね春惜しむ
惜春の鍵束に鳴る鈴の音
外の色トントン過ぎる春惜しむ
惜春の並木通りや影や濃く
旅人の行き着く果てに春惜しむ
惜春や待合室の古辞典
風が吹き枯れ葉舞い散る春惜しむ
法事の日偲ぶは深く惜春や
朝起きてねるのがおそく春惜しむ
天眼鏡落ち着かなくて惜春や
春惜しむあかね色のすずめかな
鳴き砂の砂を鳴かせて春惜しむ
窓あけて人を見るたび春惜しむ
ワイパーで花びら払ひ春惜しむ
春惜しむ瞳の中に並木道
惜春やササール、ドモンジョ、そしてベベ
春惜しむゆがむ自分に水たまり
神島を波の向うに春惜しむ
一人旅悲しみ抱いて春惜しむ
沖をゆく船見て春を惜しみけり
自転車をこぐ足止めて春惜しむ
白虎隊士自刃の墓に春惜しむ
君の背の影に隠れて春惜しむ
惜春や昨日が遠き日のやうに
春惜しむ空を見上げりゃ星三つ
春惜しむ沃野千里の風の道
僕の肩情け知らずで春惜しむ
惜春や岬へ続く峠道
春惜しむ見ゆる世界もまた変わる
惜春や迷いしままの恋心
花びらを追いて遊んだ春惜しむ
惜春や 去りゆく友は 振り向かず
風ふいて地面もも色春惜しむ
惜春や 全開の窓 鳥の声