俳句庵

11月『神の留守』全応募作品

(敬称略)

神奈川県     佐々木 僥祉
出る雲抜けたる空や神の留守
東京都     真樹
庭に咲く山茶花知らせる神の留守
東京都     右田 俊郎
神の留守軽く会釈をして通る
神の留守知らず無心に子は祈る
神の留守とて賽銭を省略す
留守電はあるのでせうか神の留守
出雲へと緊急連絡神の留守
東京都     安西 信之
留守詣行く先々に願かけて
神杉に結ぶ御籤や神の留守
鰐口を打てど虚しや神の留守
神の留守ネットに巫女の募集記事
神の留守よろずの神に後託し
愛知県     山歩
街道の間中に鳥居神の留守
神の留守絵馬さかさまに結へけり
神の留守百度参りの母娘
神の留守縁談一つまとまりぬ
神の留守杜に園児のかくれんぼ
北海道     高橋千草
神の留守風止む朝を待つばかり
埼玉県     守田 修治
天空に象の親子や神の留守
神の留守ぶじに一日暮れんとす
湯の宿に四肢を伸ばせり神の留守
酒少し寂返りたる神の留守
大阪府     文香
サウスポー嵐気になる神の留守
繰言の歳かいま見る神の留守
拍手の辺りひびけり神の留守
東京都     紫酔
颱風よ 逸れよと願う 神の留守
神の留守 二礼二拍手 より崇く
東京都     紫泉
高層の マンションの灯や 神の留守
神の留守 賽銭箱の 声低く
東京都     紫淹
そこここに 蝉殻目立つ 神の留守
神の留守 就職祈願の 艶かし
栃木県     久保田 晋一
神の留守神主波に榊振る
神の留守二番稲に積もる雪
この世には諍い多し神の留守
埼玉県     一斗
だとしても何かゐるらし神の留守
社祉の戸は締まり切らずや神の留守
大阪府     太田 紀子
神の留守手水の柄杓新しき
神の留守化粧直せる朱の鳥居
病院の梯子してをり神の留守
千葉県     圓哉
願いはいろいろ神さまはどこかしら
思い切った意見具申は神の留守
車庫入れが仮免のハードル神は留守
置いて来た宝の小箱も神の留守
栃木県     長浜 良
八少女の姉さ被りや神の留守
はやばやと庭の神灯神の留守
竹林に風のめぐりて神の留守
岡山県     名木田 純子
天地を鳥獣の守る神の留守
神の留守さりとて柏手は高く
千葉県     横井 隆和
御不浄も ひときわ清め 神の留守
綻びた 心繕う 神の留守 
大阪府     瀬戸 順治
朝の陽に手合わし祈る神の留守
東京都     蘭丸
根回しが出来ぬ男や神の留守
ひとつだけ買い忘れたり神の留守
神の留守老舗主の声優し
千葉県     横井 隆和
神の留守 授かる宮司の 白き襟
埼玉県     哲庵
宝籤少し多めに神の留守
神の留守そろり這い出す天邪鬼
神の留守竈の神と差し向かひ
神の留守貧乏神も出かけたか
失せ物のひょっこり出づる神の留守
千葉県     横井 隆和
蕎麦の香の 出雲詣でや 神の留守
北海道     飯沼 勇一
神のこと少し想ひて神の留守
神の留守神主氏子宴開く
信じても信じなくても神渡
神の留守氏子は伊勢へ遷御の儀
神の留守境内奔る鶏の群
東京都     鈴木 眞由美
御籤引く指先迷ひ神の留守
非通知の着信残し神の留守
神の留守面相筆に墨ふくむ
神の留守留守居守れし番ひかな
福岡県     桑田 勲
神の留守馬穴干したる舞楽殿
倒木に供米の喜捨や神の留守
一湾に島点々と神の留守
古里の河童伝説神の留守
神の留守釣竿で釣る恋みくじ
岐阜県     ときめき人
原発の復旧計画神の留守
兵庫県     宮脇 靖典
神の留守 出雲式年 人も留守
妻発ちぬ みかん積み上げ 神の留守
ひと心地 天鎮まりて 神の留守
若人の 駆けぬけし風 神の留守
留守なれど 神に手合わす 老女あり
東京都     大石  良雄
神の留守笑むと見えて竈神
神の留守たつぷり神酒いただきぬ
神の旅お国訛りはそのままに
東京都     岩川 容子
真夜中の非通知電話神の留守
神の留守老いの小さな出来心
京都府     丹後太郎
神の留守過去も未来も此処にあり
神の留守潰へし夢を風洗ふ
母いつも長き祈りや神の留守
神の留守絵馬に幼き誤字ひとつ
神の留守空蹴り上げる宮参
神奈川県     守安 雄介
神の留守神子の心を奪いけり
量合わぬ青酸カリや神の留守
神の留守恵比寿の鯛を塩焼きに
境内は鳥の楽園神の留守
運命を決め兼ねる時神は留守
宮城県     石川 初子
なにごとも規則正しく神の留守
神奈川県     佐藤 博一
境内は子らの球場神の留守
埼玉県     大野 美波
神の留守ひたすら母は床拭いて
朝の水少し冷たき神の留守
ビ―玉を畳の上に神の留守
葉が落ちる瞬間を見る神の留守
柱時計ボーンと鳴って神の留守
神奈川県     志村 宗明
出雲とていづこの家も神の留守
神の留守大もの釣りし怪気炎
神の留守妻も留守なり昼の酒
神の留守安全ベルト確と締め
坂道を転ばぬやうに神の留守
山口県     山縣 敏夫
選挙中議事堂今神の留守
払暁の鎮守の森は神の留守
トンネルの奥の暗闇神の留守
黄昏の空の向こうは神の留守
上空を飛ぶオスプレイ神の留守
富山県     岡野 満
色づいて森の社は神の留守
柏手の音は響くや神の留守
氏子らが社を磨く神の留守
埼玉県     ちあん
神の留守宇宙の起源に思ひ馳す
サル山のボス威張つてる神の留守
神の留守初めて買ひし宝くじ
神の留守ワイン一本買ひ足して
神の留守野菜の値上げが止まらない
千葉県     伊藤 和幸
神の留守さてと為すべき事もなし
駅裏に知らぬ道あり神の留守
歩くのも日課の一つ神の留守
東京都     岩川 容子
遷宮に沸き立つ伊勢も神の留守
神留守や別に怠ける訳でなし
大阪府     永田
明け暮れのややぞんざいに神の留守
ひとりごと増え来たりしや神の留守
三重県     平谷 富之
願ひ事祈れど今は神の留守
大阪府     津田 明美
今朝まずは西に手合わせ神の留守
狛犬の視線遥かに神の留守
西方の浄土開かれ神の留守
千葉県     坂本 徹
柏手の響き大きく神の留守
権禰宜の話は長く神の留守
神奈川県     遊頭
中間実力試験や神の留守
境内の箒目正目神の留守
神の留守日曜学校お菓子つき
神留守も二礼二拍手深々と
神の留守金婚式は身内だけ
神奈川県     佐藤 博一
巫女けふはハイヒール履く神の留守
兵庫県     山地 美智子
神の留守鯉に餌をやる宮大工
境内にいつもの親子神の留守
一途なる百度参りや神の留守
長年の株を手放す神の留守
狛犬の俯き気味や神の留守
長野県     木原 登
神木の枝に神鶏神の留守
神留守の日ざしあまねき合掌家
縄文の泉湧きつぐ神の留守
外に出でて星座を仰ぐ神の留守
空は一枚海も一枚紙の留守
兵庫県     紫水
蕉翁の生家訪ねし神の留守
雨しきり鎌倉ぬらす神の留守
飛行船出雲めざせり神の留守
いつの日も父母は留守なり神の留守
手も口も頭も留守や神の留守
東京都     村上 ヤチ代
大吉も大凶もあり神の留守
兵庫県     村山 祥江
石橋を叩いて渡る神の留守
神奈川県     佐藤 博一
宝くじ買っては見たが神の留守
長野県     中田 博美
神の留守出雲の菓子を取り寄せる
埼玉県     岸 保宏
願ひ事たまりたまるや神の留守
縄跳びの子の声高し神の留守
風強し絵馬カタコトと神の留守
神奈川県     川島 欣也
神の留守入院の日を決められず
神の留守騒ぎを止めぬ寝覚鳥
習合の仏に託す神の留守
神の留守賽銭箱を置いてゆき
一升瓶空にし足らぬ神の留守
兵庫県     村山 祥江
神の留守自力で勝負の願い事
神奈川県     佐藤 博一
参道の石に躓く神の留守
狛犬の阿吽の律儀神の留守
埼玉県     柏木 晃
狛犬は番犬の貌神の留守
神の留守荷風の街のカメラ店
神の留守男ばかりの美容室
ここからは拝観禁止神の留守
まほろばの道は東西神の留守
広島県     安冨 正則
運転はロボット同士神の留守
福岡県     紙田幻草
丁寧に掃かれし参道神の留守
出雲にも届け柏手留守詣
鳥居より軽く一礼神の留守
千葉県     小田中 準一
女子会の旅に妻出る神無月
神無月ふるさとの空広きかな
古池の小石の波紋神無月
焼き海苔の香りの満ちて神無月
神無月妻と娘の内緒ごと
愛知県     細井 薫
神さまも お酒片手に 紅葉狩
東京都     杉本 とらを
けもの道覗く幼子神の留守
鳩の糞シャツに掛かりし神の留守
岐阜県     金子加行
神の留守神主酔ひて眠りゐる
良縁の舞ひ込む月や神の留守
雨漏りの拝殿修理神の留守
島民の島守りゐる神の留守
神の留守村を荒らして風雨去る
京都府     鶴野  しょう子
神が留守 旅立つ娘 出雲の国へ
神の留守 ころばぬように 姫になる
北海道     江田三峰
出雲とて神々家を留守にしぬ
カテーテル心臓手術神の留守
神の留守深夜に走る救急車
神の留守妻は心眼持ってゐし
神の留守巫女はそはそは里帰り
新潟県     近藤 博
箒目の重ね重ねて神の留守
去年(こぞ)決めし縁の結びや神の留守
神垣の静寂として神の留守
熊本県     貝田 ひでを
乙女らも合掌神の留守とは知らず
祈るにも心許なき神の留守
境内のがらんと見えて神の留守
巫女たちも余所余所しげに神の留守
神の留守木々の梢が風に鳴る
山口県     ひろ子
晩学の古事記読むなり神の留守