俳句庵

1月『読初』全応募作品

(敬称略)

広島県     釜山 齊治
読初や心のさびを研ぎすます
雀来て読初の本めくりけり
読初や心の老をきたへたし
読初の新書たのしむひもすがら
親しみて『万葉秀歌』読初す
福島県     櫛田 和子
まだいける辞典を買って読初だ。
読初に八重の生き方学ぶ本
読初に健康長寿の本を買う
神奈川県     井手 浩堂
読初にやや堅き本選びけり
本の香も愛で読初の新刊書
読初の机上に妻の生けし花
読初の窓辺すずめのしやべり初
東京都     有里
読初や 赤い背表紙 手に取りて
読初の 本に師匠の サインあり
読初や 額の髪を あげし朝
埼玉県     清水 真美
読初の 恋の話に 頬染める
縁側で 子猫を膝に 読初す
読初は 私の好きな あの作家
東京都     寺西 輝将
読初の 本を放りて 昼の夢
読初は 二分で終わり また床へ
読初は 新幹線で タブレット
幼子は 読初で訊く これなぁに
しんとした 部屋で読初 茶は香る
東京都     酒井 莉加
バスに乗る 読初の女(ひと) すまし顏
読初の 湯船に富士が うつりけり
読初の 父の形見を めくりけり
石段に 座り読初 テキ屋の子
縁側で 読初とちゅう 富士見えし
東京都     安西 信之
読初の春の歳時記開きけり
読初の絵本の扉開きけり
読初の書架の句集に迷いけり
読初や血肉になりし師の句集
読初めの昨日の栞はずしけり
山口県     ―
連綿の文字うるわしや読み始め
東京都     安達 健治
詠み初めや 父愛用の 眼鏡掛け
読初めや 積る景色を 背に向けて
詠み初めや 手にある本も 遠くなり
読初も 絵本に代わり 新所帯
神奈川県     相模 太郎
歳時記の馴染なき季語読初
読初の昭和史まさに我が一世
読初にしばし富士見る車中かな
つれずれなるままのくだりや読初
東京都     鈴木 護修
本棚に読初候補溢れけり
読初の最中傍ら猫一匹
1ページめくる幸せ読初や
読初で埋まる心の夜が明けて
読初の頃に子供が起き出して
大阪府     永田
読初やここ数年はアンパンマン
神奈川県     溝口 努
読初の書ふせまどろむ炬燵かな
読初や蔵書のしるし昭和かな
読初や猫の尾揺れて午睡かな
兵庫県     石田 幸紀
読初の開きし栞古りにけり
雨音の路地の静けさ読み始む
読初やいつしか夢の頁繰り
訪う人も訪るもなく読み始む
読初の千歳変わらぬ人の性
埼玉県     小玉 拙郎
読初めや赤と白との附箋もて
読初めや平家の滅ぶあたりより
読初めは暮れに逃したホシを追う
読初めや大河ドラマの原作本
東京都     鈴木 眞由美
読初に赤のリボンをほどきけり
旅の湯の読書始となりにけり
初草子著者謹呈の栞かな
北海道     飯沼 勇一
読初や脳鍛えよと啓発書
読初の顔に伏せある俳句本
読初や小さき手で持つ絵本かな
読初や睡魔に負けし朝の酒
読初は例年どおり啓発書
岡山県     信安 淳子
読初や名づけ事典の指栞
読初の画面に触るる指軽き
読初の子にせがまれてアンパンマン
兵庫県     山地 美智子
贈りきし友の自叙伝読初
読初の友の自伝に我の居し
図書館で新刊書借り読初
読初の考に似てきし夫の背な
今年また歳時記となる読初
埼玉県     守田 修治
声に出し万太郎句集読みはじむ
読初は電子書籍の志賀直哉
読初や子規全集の中にいる
千葉県     圓哉
読初やつんどく棚から絵本出す
読初や声に出せば句破調なり
愛知県     山歩
読初や新たに電子辞書買ひて
読初や手元の明かり新しく
読初や背筋伸ばして師の句集
読初や父の遺愛の文机
読初や辞書の電池を入れ替へて
東京都     蘭丸
読初や昼一息の文庫本
読初や高田馬場で降り立ちて
読初の古書の値付けも昭和かな
読初やジャズの音染みる喫茶店
埼玉県     哲庵
日本国憲法九条読初に
読初は「什の誓ひ」を孫達と
読初や友の遺せし全句集
読初に評釈芭蕉七部集
読初の書を選びかね寝入りけり
埼玉県     須田 真弓
輪島塗の栞傍ら読始
ロシア民話の貧しき靴屋読始
読初の句集に金の栞挿す
読初は家庭の医学薬増ゆ
読初は電子書籍のタブレット
千葉県     横井 隆和
読染めに 「ホワイトアウト」を 再読す
東京都     岩崎 美範
読初はいつも去年の日記かな
読初は父の手垢の広辞林
東京都     村上 ヤチ代
読初は電子書籍のベストセラー
東京都     岩川 容子
読初や佳境に入れば日暮れなり
読初や電子書籍を旅の荷に
読初ややさしくなれるみすずの詩
千葉県     圓哉
読初の声に出せば句破調なり
大阪府     のひろ
読初やメガネも一度年を取り
たたみ裏出でし新聞読初し
岡山県     塩津 誠治
読初はまたもや向田邦子から
読初や昭和の匂い欲し「あ・うん」
大阪府     津田 明美
息深くつげば読初む山青し
千葉県     藤原 純夫
読初や 今みゆ我を いきたかく
読初や なつかし我が よみがえり
若き日の 想いさぐるや 読初に
読初や 積まれし本に 光さし
読初や 本をさがして 日がくれる
東京都     岩崎 美範
漱石とカフカ抜き出す読始
千葉県     横井 隆和
読染めは ブルーノートの 喫茶室
読染めや 書店を出て入る 眼鏡店
神奈川県     川島 欣也
文字読めぬ子にねだられて読始
読初や積読本の塵払い
読初の眼鏡探して回りけり
持ち歩くスマホを開き読み始め
読み始めロルムスレムスの物語
栃木県     長浜 良
読初や酒に鬼平犯科帳
端末の頁を繰りて読初む
山口県     山縣 敏夫
図書館の読書始めや鐘が鳴る
詠み初めや何か好いこと起こりそう
図書館に読書始めの子等集う
詠み初めの本より枝折ハラ落つ
新刊の読書始めに身も新た
埼玉県     大野 美波
読初や本の白さが嬉しくて
読初や紫式部になる気分
読初や紫式部になってみる
読初や墨字は大きく読みやすく
読初や朝日とともに読みはじめ
兵庫県     紫水
読初や百名山の利尻山
読初や麦城の関羽に涙
読初は孫から来たる年賀状
読初や赤い表紙の念仏集
読初や父の形見の唐詩選
東京都     酔紫
読初に 新年会の 中座あり
読初の 全集ピサの 斜塔なる
東京都     紫泉
紙の香や 読初夢へと 誘いて
読初や 夫婦阿吽の 栞なり
東京都     紫笑
読初や 御鏡歯朶の 反り返り
読初の 栞となりし 年賀状
三重県     平谷 富之
読初まずは得意のクイズから
富山県     岡野 満
読初や活字小さき文庫本
読初に恋の詩歌を選びけり
読初の新刊本を買いにけり
埼玉県     ちゃんじい
読初や電子書籍の罪と罰
読初やダウンロードは一瞬で
読初やモバイル画面の青白く
読初やアールグレイの茶葉を嗅ぐ
読初や青春時代のベストセラー
東京都     笹木 弘
主人公の気持ちになりて読み初め
読初は「奥の細道」の雲巌寺
読初の栞をはずし又挿せり
船旅の余白急がぬ読み初め
読初の「宮本武蔵」無の心
神奈川県     守安 雄介
アイホーン擦る寝床の読初
読初朝日眩しきアイホーン
読初先ずは老眼探しから
別れ告ぐイーメール受く読初
寿ぎの自作の俳句読み初む
神奈川県     佐藤 博一
読始はアリス・マンロー短編集
東京都     小沢 吐夢
読初や分からぬとおころ小声にて
聞こえくる孫の読初たどたどし
神奈川県     佐藤 博一
読始に漱石選び猫となる
埼玉県     岸 保宏
読初めの推理半ばで客が見え
声上げて一年の計読み初めし
読初めや帯封までがかしこまり
岐阜県     ときめき人
まつさらなココロの泉読初
あらたなる西国の道読初
千葉県     伊藤 和幸
読初や先師の句集「寒九」なる
読初は昔懐かし「若菜集」
読初や邪馬台国に夢を馳せ
長野県     木原 登
読初や読まざる本がこんなにも
読初は詩集北国「元旦に」
若き日は「あした来る人」読初に
去年逝きし人の句集を読みはじめ
読初も詩集・句集となりにけり
愛知県     柵木 充義
万葉の恋は大らか読始
歎異抄問ひに問はんと読みはじむ
読初めの初心に返り虚子俳話
潔き子規の文章読はじめ
読初や手の切れさうな頁繰り
神奈川県     佐藤 博一
読始に奥の細道また辿る
埼玉県     柏木 晃
膝に孫にアンパンマンの読み始め
読初は家庭医学の厚き本
新潟県     近藤 博
幼児も声にす絵本読みはじめ
先達の句集ひもとく読みはじめ
読初や先づは声にす芭蕉の句
行き付けの書肆に立ち寄る読みはじめ
書肆めぐり新刊手にす読初
神奈川県     佐藤 博一
読初や父の手摺れの漱石集
読始はタイトル長き春樹より
北海道     江田 三峰
読初の妻は携帯メールかな
読初はパソコン記載俳句庵
読初や絶滅季語の辞典かな
読初に句集朗読大声で
読初や優秀作品俳句庵
岐阜県     金子 加行
読初の活字小さき一茶集
読初や電子書籍のキーを押す
読初の鉛活字のあたたかき
読初のサラリーマンや専門書
ネットから購う古書や読み初め
千葉県     永井 隆
戸をあけて 舞う葉に驚き 読初
熊本県     貝田 ひでを
読始め子はパラパラと就職誌
読み初めは去年の続きの古典かな
図書館の棚読み初めの書を選ぶ
読み初めは波郷句集と決めてをり