俳句庵

4月『木蓮』全応募作品

(敬称略)

兵庫県     松本 恵子
白木蓮の少しゆれてる車椅子
木蓮に無という無限空にゆれ
白木蓮や佳人の指は内向きに
あの坂の先に木蓮散るころよ
北海道     藤林 正則
越して来し村の家家紫木蓮
木蓮や疑ひ深き空の青
木蓮の風の囁き聞く夕べ
青空へ駆け出す子らや紫木蓮
紫木蓮宇宙旅行は十年後
京都府     中村 万年青
木蓮の春鷲摑み青い空
木蓮や日毎蕾の膨らみぬ
年毎に白木蓮に親みぬ
木蓮の散りていよいよ春真中
むらさきの木蓮薫る他家の庭
富山県     岡野 満
木蓮の花の散り敷く苔筵
空広く木蓮の花散りにけり
木蓮の花の白さの闇夜かな
愛知県     高木 薫
木蓮の 匙で味わうおままごと
白木蓮言葉少なに誰待つや
木蓮の ひとひら猫の足をとめ
友便り 誘いし主は紫木蓮
木蓮のそばにて葉書笑みて読む
愛知県     石川 順一
紫木蓮中古車販売店を過ぎ
白木蓮と紫木蓮が並ぶ家
木蓮や側道過ぎて右折する
紫木蓮鴉の森を間近にし
木蓮の涙を聞きし夜の闇
神奈川県     佐々木 僥祉
木蓮や秦野の里のあぜ黒き
木蓮や空へ飛び立つ用意よし
帰り来て白木蓮の待ち居たる
木蓮の声微かなり古茶庭
木蓮やスズメの去るを揺れて待つ
東京都     右田 俊郎
白木蓮いなかに独り暮らす母
補助輪のとれた自転車白木蓮
木蓮や背中に余るランドセル
木蓮や集団登校黄の帽子
白木蓮チビのお墓と幼き字
埼玉県     小玉拙郎
寺町は白木蓮の勝ちとする
風待って飛び立たんとす白木蓮
絵にすれば色違えてや紫木蓮
木蓮や場所もあろうに幼稚園
紋のある風呂敷の色紫木蓮
神奈川県     ギザギザ仮面
雨空に 白木蓮の 筋光り
木蓮や 覇気漂いし 大河かな
眩しくも 青木蓮の 反射かな
木蓮や 喉から手が出る モルヒネか
木蓮や 音一切切って 捨て
東京都     石見 光夫
白木蓮峰まで続く赤鳥居
紫木蓮デイサービス車待つ母娘
東京都     上田 みの
木蓮の血脈断たれ落ちにけり
白木蓮の橋を渡りて次の角
白木蓮の雲に溶け込む白さかな
北海道     澤野まひる
廃校を知らず木蓮咲きにけり
木蓮や空の青きを味方とし
栃木県     長浜 良
木蓮の分厚き頃となりにけり
木蓮の咲初む中の昼の月
岡山県     純子
紫木蓮ともに嫁ぎて三十年
白木蓮雲に紛れて雲となる
埼玉県     哲庵
はくれんや大正ロマン匂い立つ
我が骸鳥葬にせよ紫木蓮
紫木蓮部長の耳は驢馬の耳
北を向き復興祈る白木蓮
雨あがり白木蓮のシャンデリア
埼玉県     沼崎 和子
今はなき白もくれんや酒を酌む
新聞の文字にみちのく紫もくれん
ふるさとの手紙ぞうれし花木蓮
東京都     水野 二三夫
木蓮やあかつきの空さしゐたる
掌に母のぬくもりありぬ紫木蓮
ぬばたまの闇夜はるけき白れん花
福井県     岡本 紅
白木蓮かしこで結ぶ文書きて
東京都     丸山清子
木蓮花光まとひて開きけり
木蓮と同じ御空を見上げけり
東京都     安西 信之
晩学のゴールそれぞれ紫木蓮
かなだけの祖母からのふみ紫木蓮
埼玉県     鶺鴒
白もくれん歳古りしつつ主の顔
万福寺鐘のじんじん白もくれん
紫もくれん生まれかはるや僧の袈裟
東京都     岩川 容子
木蓮のひらきて仔牛届きけり
たれこめる雲を押し上ぐ白木蓮
なりたての白衣の天使白木蓮
白木蓮明日は別れの通学路
神奈川県     相模太郎
紫木蓮余生の伸びる思ひして
友多きことの幸せ紫木蓮
里山を歩く楽しさ紫木蓮
木蓮の白きに昼の月あはし
遠山にうす日さしたり白木蓮
東京都     直木 葉子
木蓮の風に真白き割烹着
ひとり仰ぐたそがれどきの白木蓮
北海道     飯沼 勇一
門ごとの木蓮高さを競ひけり
大仏の視線の先の緋木蓮
木蓮の記念樹堂々我は古希
大阪府     永田
アクセスはもくれん続く道五分
岐阜県     ときめき人
木蓮や千手の如くゆらゆらと
木蓮や白き気品のオードリー
山口県     有田 ひろ子
神々し光放つや白木蓮
広島県     石川 結
曇り空 はばたくように 木蓮は
滋賀県     村田 紀子
旅立ちを見送る人に白木蓮
母の声ふと聞えたる白木蓮
木蓮に昭和の父を思う朝
木蓮に声かけられて降りる駅
木蓮の花咲く先に淡い恋
東京都     紫外白内
白木蓮(はくれん)や 一糸乱さず 北を向く
白木蓮(はくれん)の 盛り抜き足 忍び足
東京都     紫蕾
白木蓮(はくれん)や 天へ合掌 祈願中
就活生 白木蓮(はくれん)蕾の 指す方へ
東京都     紫羅針
白木蓮(はくれん)や ホワイト絵の具 より白く
紫木蓮 ポテトチップス 如く散る
東京都     笹木 弘
夕風を裏返し咲く紫木蓮
風止んで星のまたたく紫木蓮
木蓮に覗かるモデルルームかな
会話する白木蓮と紫木蓮
逆光の空にふくらむ紫木蓮
群馬県     クズウ ジュンイチ
木蓮や老いて今なほ大男
東京都     鈴木 眞由美
はくれむの坂に低きや菩提声
木蓮の漂ひありて訃報受く
赤提灯とぼる頃なりもくれんげ
菩提寺の木蓮の下母笑ふ
広島県     ―
退院は大安日とし紫木蓮
埼玉県     守田 修治
この里は伊達性多し白木蓮
無住寺の高き空ある白木蓮
朝日浴び九尺五寸の白木蓮
はくれんの目印となる質屋かな
手放すは土地も屋敷も木蓮も
東京都     村上 ヤチ代
祖母逝く日孫産る日も紫木蓮
千葉県     横田 響
木蓮の白き大木旅立つ日
紫木蓮思い出語る老姉妹
東京都     蘭丸
木蓮や雑談ひとつ形見とす
木蓮や街角に散る無言劇
福岡県     河瀬 周治
邯鄲の夢より覚めて紫木蓮
木蓮の谷に声あり通学路
木蓮や知る名の墓の真新し
白木蓮郷と名のつく土ゆるむ
受け流す風やはらかに紫木蓮
埼玉県     長澤 千鶴子
アウアウと鳴く烏ゐて紫木蓮
夕映えの白木蓮に紅をさす
木蓮の咲く旧家へと郵便夫
通いつめた懐かしき地の紫木蓮
千葉県     犬槇庵 光晴
鶏鳴に白木蓮の耀けり
大阪府     津田 明美
木蓮の解れて空の拡がりぬ
歩に進む天の蓋なる白木蓮
木蓮や花いちもんめ見てござる
神奈川県     矢神 輝昭
紫木蓮妣の銘仙の色移り
数多重の仏包みて紫木蓮
木蓮を一網打尽雨の糸
玉杯でワイン飲みたし紫木蓮
花びらや砂糖菓子やに白木蓮
神奈川県     遊頭
山門の右手巨木の白木蓮
白木蓮あと紫木蓮庄屋跡
一つづつ灯る如くに白木蓮
兵庫県     山地 美智子
木蓮の庭に招かれ訪ふ館
反れば早や盛り過ぎゆく紫木蓮
ご母堂を守る庭なり紫木蓮
木蓮の傍に留まる車椅子
木蓮や母の思ふがままの庭
山形県     ―
木蓮の様に生きたく上を向く
夜を照らす炎に似たり木蓮の花
吸う風にかすかに香る木蓮の春
ばらばらと別れを告げし終の木蓮
木蓮が散りて一夜で白絨毯
埼玉県     米田 哲
木蓮の万蕾向かふ北斗かな
木蓮やけぶる雨先ほのめけり
おほどかに白木蓮や吹かれゐし
木蓮や往還たどる風の源
さんざめく街騒の空木蓮や
大阪府     太田 紀子
木蓮の百花ありけり青き空
字の薄れし山門額や木蓮花
木蓮の滴落ちけり六地蔵
愛媛県     宮下 靖弘
赤く謀れ木蓮の白は白のまま
心臓の色と形へ木蓮は
木蓮の空を刺したる色をして
たおやかな殺意の色し木蓮ぞ
木蓮は皆石女の子宮だった
岡山県     岸野 洋介
主なき庭に白れん賑々し
紫木蓮かがやく先に滝光る
白木蓮ビルの谷間に楚々と咲き
紫木蓮咲けば妻の忌めぐり来る
木蓮の大苞開く花屋かな
神奈川県     塚本 治彦
奈良町の残照の寺木蓮華
木蓮や梢の先に遊ぶ風
秋篠に老いし仏や白蓮華
木蓮や縁切寺の小さき門
木蓮や幼稚園長兼和尚
大阪府     山下 みゆき
白木蓮浮かぶ夕闇海の色
冬枯れの庭に木蓮初々し
木蓮の白の組成を考える
木蓮の薄墨の空に灯りけり
木蓮の夜半に灯っている不思議
千葉県     柊二
白木蓮や祈りの列にこぼれけり
水彩絵雲のなきにし白木蓮
金星の近き地球の白木蓮
白木蓮や涙の闇を慰めり
白木蓮や命包みて風すごし
神奈川県     井手浩堂
托鉢の列ゆく朝紫木蓮
白木蓮ふるさとの山みなまるく
木蓮の飛び立たむかに青き空
地に落ちし木蓮はやも錆色に
遠山の雲もむらさき紫木蓮
埼玉県     櫻井 玄次郎
夕闇に白木蓮淡く灯りけり
東京都     三浦 靖男
木蓮の下眠る友三回忌
木蓮のママ日焼けして港町
雨の朝うなじを濡らし白木蓮
京都府     北谷 匠
木蓮の 海苔の入った こもれびを 
広島県     安冨 正則
未来形ばかりの人世白木蓮
茨城県     たいようたろう
白木蓮に翳ある午後の海の音
考えている白木蓮のほめ言葉
窓よりの目線燃やして紫木蓮
遠き日の胸の傷みの紫木蓮
降りかかる潮騒ひらく紫木蓮
山口県     ひろ子
木蓮の咲けば真砂女の浮かびけり
宮城県     伊藤 立一
天上の誰を手招く白木蓮
神奈川県     佐藤 博一
抱擁を解くごと開く白木蓮
純白といふまぶしさや白木蓮
木蓮や和泉式部の恋日記
真砂女ほど一途になれず紫木蓮
白木蓮天に向かひて合唱す
熊本県     貝田 ひでを
気風よき真砂女のことや紫木蓮
白木蓮は光捕えて輝けり
散り際の風はむらさき紫木蓮
甍より高く木蓮咲き盛る
木蓮の一片風に遠く散る
東京都     岩崎 美範
山路来て婀娜を競へり紫木蓮
白木蓮補陀落指して咲きにけり
白木蓮や少女をんなに化ける夜
白木蓮月夜の空を泳ぎけり
恋の火を壺に閉じ込む紫木蓮
神奈川県     川島 欣也
楊貴妃の住まいの庭や紫木蓮
雨風に堪え下向かぬ木蓮華
木蓮や飛び方知らぬ鳥の群
木蓮や手を大空へ手向けけり
木蓮の咲く畔あたり畑堺
愛知県     米倉 とおる
木蓮の枝間に潜む鬼瓦
白木蓮日本の空を透かし見る
軽々と伊吹嶺負ひて紫木蓮
木蓮や煉瓦煙突矍鑠と
そりかへりそりかえり見る白木蓮
山口県     山縣 敏夫
芳香を放ち誘うか木蓮華
木蓮の香りに満ちた園に入る
街道を抜けた途端に木蓮華
遠き日を想い起すや木蓮華
園に咲く何やら床し木蓮華
静岡県     ―
木蓮の飛び立たんとす蒼天に
大阪府     弗椿
木蓮咲き愛娘は東京へ
木蓮の重なりて白雨に映え
ブラジル     林 とみ代
木蓮の花弁漂ふ露天風呂
木蓮だけ残る生家や廃れ地に
湯煙の纏ふ木蓮目印に
木蓮の風に送られ嫁ぎけり
紫木蓮の思ひ出遠き婚の旅
東京都     北川 京子
木蓮に添う花の無く凛として
木蓮は一番乗りと誇らしく
東京都     近田 吉幸
紫木蓮指たおやかに阿弥陀仏
紫木蓮きな臭きなる地球かな
紫木蓮宇宙生まれる無のゆらぎ
紫木蓮庭の隅なる伊吹かな
紫木蓮同級生はみな老いし
埼玉県     岸 保宏
参道に襟を正せし白木蓮
古寺に大将面の木蓮や
木蓮の散りせし御寺僧二人
木蓮に歓迎されし編路地や
東京都     石井 まゆみ
木蓮や運河沿いの白の舞
皺手待つ木蓮咲いて鍬をろす
空くもるミルク色かなこぶし咲く
木蓮の花びらもまれ嘆き色
3.11香港で愛だ紫木蓮
兵庫県     岸野 孝彦
木蓮や祈りの花と君は言う
木蓮や銀の少女は明日架ける
木蓮や御霊は白き風になる
木蓮の花咲く庭の最期かな
木蓮や初恋眠る里の朝
福島県     黒沢 利明
木蓮の蘖が継ぐ新年輪
北海道     伊藤 哲
理学部の床の軋みや紫木蓮
木蓮やアンモナイトの左巻き
長野県     木原 登
遠目にも白木蓮の花盛り
白木蓮咲くや輝く信濃空
白れんの花に空飛ぶ夢のあり
はくれんは少年紫木蓮は母
白木蓮といへば『白痴』のムイシュキン
神奈川県     猪狩 千次郎
木蓮の花びら流す仕舞風呂
木蓮花深空ばかりを見てしぼむ
木蓮や浜風遠き大仏裡
木蓮の小庭揺り椅子ゆるるまま
聖と清ただに吸ひあげ白木蓮
埼玉県     柏木 晃
キャンドルのような木蓮聖歌隊
散るときは重厚な音紫木蓮
華やぎを少し控えて紫木蓮
駅舎出て白木蓮に癒される
木蓮の距離まで伸ばす散歩道
千葉県     田中 洋子
真白なる乙女心や木蓮花
紫木蓮女将となりて幾年か
思いきり空と友達木蓮花
木蓮花なじみ始めたランドセル
紫木蓮女将手書きのお品書き
静岡県     柳谷 益弘
木蓮の慈悲なる花や咲き誇り
東京都     かつこ
木蓮や行く道一つアンダンテ
木蓮や鏡に笑ふ吾の顔
静岡県     池ヶ谷 しょうご
木蓮やばななの皮を剥く如し
木蓮や訪ねし人の道標
白木蓮の灯ともすように輝やけり
木蓮は高きところに咲きにけり
木蓮を仰ぎて胸襟開きけり
千葉県     江里口 泰一
境内に居場所定めて咲く木蓮
木蓮の位置の確かさ木の高さ
木蓮は庭中にあり屋敷門
塀越しに見る武家屋敷白木蓮
徳川園木蓮並木続く道
神奈川県     守安 雄介
木蓮に風の口付荒気色
白蓮に吸われ白雲過ぎりけり
木蓮に生荒々し風抜ける
白蓮を追いて木蓮咲きにけり
木蓮に緑の混ざる兆しあり
奈良県     和田 康
紫木蓮花はいつきに花となる
木蓮や氷室神社は山の神
斑鳩や白木蓮にめざめけり
木蓮咲く祖父あるごとくあるごとく
木蓮の宙(そら)いつぱいにほしいまま
愛知県     澄海
木蓮や仏に仕え包まれる
木蓮の白きを見れば朝陽差す
手を合わせ白木蓮に包まれる
木蓮や知恵の文殊に誘われて
漆喰の白木蓮やなまこ壁
大阪府     金成 愛
はくれむや丈高き子とひるの酒
兵庫県     岸下 庄二
一枚の栞となりぬ紫木蓮
前庭に木蓮一本町役場
木蓮の咲いて狭庭の華やげる
木蓮の蕾日に日に太りけり
地震に耐へみな上向きに紫木蓮
新潟県     近藤 博
木蓮や座敷のとのもにぬっと咲き
蓮に似し族(まけ)とも思ふ木蓮花
上向きに咲くは(さだめ)か木蓮花
枝先に襟の正しく木蓮花
木蓮や色を競ひて空蒼し
福岡県     平山 なな子
音もなく落ちて木蓮たじろかず
縁側で日がな木蓮見てすごし
青空を白きに染めている木蓮
北海道     みなと
悲しみにもの喰ふをみな白木蓮
木蓮や風となりきる吾生家
木蓮の香や夕風の変はりたる
夕照にふくいくとせり白木蓮
木蓮や「さかさまの空」を鼻歌で