俳句庵

7月『花火』全応募作品

(敬称略)

神奈川県     野口 香緒里
窓開けて花火仰ぎてビール飲む
消えそうな線香花火しみじみと
地響きと花火の競演落ち着かず
ネズミ花火くるりん回ってこわごわと
花火の音風のまにまに消え入りて
神奈川県     佐々木 僥祉
揚花火二言三言で間を埋めぬ
暗闇に浮かぶ小庭や持花火
揚花火音に怯えて子の逃げぬ
山頂の小屋より見下ろす揚花火
群衆の二人となりぬ揚花火
兵庫県     山崎ぐずみ
山寺の和尚見下ろす遠花火
花火咲き銀河鉄道遅れをり
手花火を妹にしてやる兄き
墓に穴開けて花火を観るミイラ
花火咲く消えて待つ間や花火咲く
埼玉県     哲庵
天ぷらの煙流れる花火舟
ベランダで老犬と見る遠花火
笑顔満つスマイル花火見る顔も
屋上に車椅子上げ花火見る
手花火を白寿の母と点しあふ
東京都     石見 光夫
ビル谷間屋台に座り観る花火
高層ビルの窓に大輪花火かな
三重県     竹田茶人
小さき窓から乗り出して大花火
花火果つ駅の明かりはひんやりと
三重県     田中 あき子
祖母居らぬ縁側で聞く遠花火
一つ見てまた一つ見る揚花火
息凝らし線香花火見守りぬ
この試験終われば花火大会よ
じつとりと汗ばみながら見る花火
東京都     紫牡丹
誕生日 知るか知らぬか 大花火
遠花火 団十郎の 蔓や見得
末期蝉 ねずみ花火の 如く爆ぜ
東京都     松葉紫
手花火の 煙(けむ)や網戸で 繊六本
花火客 訛りのきつき おのまとぺ
遠雷の 如く轟く 遠花火
東京都     紫柳
大花火 黄昏時では 物足りぬ
朝顔の 蕾へ松葉 火を灯す
大花火 開き点滅 影法師
石川県     鈴木 理絵
平凡な日々に大きな花火かな
川べりに花火見る人溢れおり
大輪の打ち上げ花火いつ上げた
一年を花火にかけたひとの夢
遠花火みているみたい君のこと
大阪府     太田 紀子
昼花火鶏怯えゐたりけり
車中より一発のみ見る大花火
音ばかり仕掛け花火と人の言ふ
愛知県     川俣 周二
落つる間の夢を見てゐる線香花火
耳澄まし行方を探る花火かな
夕餉時音を楽しむ遠花火
音のして慌てて見上ぐ大花火
UFOに見られてをりし大花火
東京都     直木 葉子
きみの目の線香花火の松葉かな
目路はるか花火師の舟闇に消ゆ
愛知県     ―
なにごとかおもてに出れば花火なり
花火消え心に隙間生まれけり
花火見て平和を感じる終戦日
子どもらとねずみ花火が駆け回り
天昇る花火を見上げ手を繋ぐ
神奈川県     重兵衛
渡船過ぐ水面の花火毀しつつ
花火大会終れば黒き大群衆
遠花火眠れる母の口動き
花火大会終りて戻る街の空
揚花火数え数えて子は眠り
北海道     飯沼 勇一
島中のみんなが見上ぐ村花火
線香も三尺玉も消ゆ花火
上がるごと歓声挙がる村花火
大花火眼下に見ゆる天守閣
朝六時イベント実施の花火鳴る
千葉県     隼人
妻と子の肩の揺れたる揚花火
東京都     水野 二三夫
夜の空へ仰角等し恋花火
花火師の黒き動きは淋しからん
ワイキキの独立記念日大花火
山口県     あらちゃん
ツヤピカが お肌も海苔も 上質ょ
黒光り 高級海苔を この時期に
自分では 買えない高い海苔 ちょうだい
値段には 味もランクも あらわれる
海苔とねぎ 納豆菌も 腸活アップ
東京都     蘭丸
妖精を背負ひて終はる花火かな
遠花火いとけなき手の舵捌き
東京都     岩川 容子
消えてなお瞼の裏の大花火
見慣れたる塔浮き立たす揚花火
海昏れて旅の終わりの遠花火
ひと言を聞きそびれたる花火の夜
兵庫県     藤田 晋一
君の目の奥に灯るや庭花火 
須磨の浜君と拾うや花火殻
神木の根元に座る花火かな 
神木に霊気賜わる花火かな
花火殻百物語灯し終え
岡山県     土屋 徹三
じゃんけんで負けても掴む花火かな
大花火落ちた小銭に気を取られ
花火買う不意に恩師に遭いにけり
大花火風にシャボンが匂いけり
大花火全山闇に映し出す
千葉県     横井 隆和
パーッと来てど~んと胸貫く大花火
ポンと咲く傘の裏地に揚げ花火
満ち潮に消されて昨夜の花火跡
ひと風に触れて落ち逝く花火玉
福島県     いらくさ
四分の三ビルに隠れる花火かな
廃院の南病棟揚花火
線香花火乳臭い稚に見せ
遠つ祖の貧しき夜夜や庭花火
手花火や生きていたとて来やしない
千葉県     藤原 純夫
花火より見ゆる河原の艶やかさ
目の中の花火に見惚れ火照り増す
三重県     後藤 允孝
間をおいて幽かに聞こゆ遠花火
フィナーレは花火師腕の見せどころ
揚花火コンビナートの灯と分かち
花火果て空に星座をとり戻す
メッセージ載せて想いの揚花火
埼玉県     もり まさのり
往く夏を 見送るように 散る花火
浴衣着て 一人花火に 手を合わせ
尺玉が 真上で爆裂 音が降る
打ち上げる 風切る音に 胸躍る
屋根の上 遠くに花火 一人酒
東京都     中島寧寧
終いぎわ力しぼりて大花火
粋だねえ江戸の花火とはしゃぐ母
もう一度花火に消されしその言葉
復活の花火腹まで響きけり
雷神のごとく花火を見下ろして
千葉県     山田 香津子
結納日 琵琶湖に花火 とどろかん
うぶ声に 祝い花火や じじとばば
埼玉県     小玉 拙郎
巡回展山下清の花火の絵
埋め立て地花火流れて海の上
大阪府     永田
化学式言ふ間に消ゆる花火かな
新潟県     和彦
子等帰り 妻の手を取る 遠花火
恋告げて 花火のごとき 砕け散り
尺玉が のぼりて君に 恋告げる
花火きえ 君の笑顔が 残る駅
恋敵 二人振られて 遠花火
埼玉県     守田 修治
達花火うなじに薄く天花粉
息をつめ待つ子を花火裏切らず
花火消え再びそこに隅田川
一徹の父の小言や遠花火
お神籤に小吉と出し遠花火
滋賀県     桃の葉
金荒らし 天下崩るる 花火かな
花火咲く 聞こえぬふりした 君の愛
緊張の 夜の心音 花火かな
遠花火 今日は祭りか 飛ぶ鳥よ
大阪府     蓼科川奈
旅先の不意に見つけし遠花火
音のみの風情広がる花火の夜
愛媛県     アリマノミコ
遠花火かんじんなこと闇に散る
神奈川県     永井 良和
師と眺む夜学の窓の遠花火
姉たちをネズミ花火の追ひかける
花火の夜足を濡らして帰りけり
花火見る顔を見てゐし初デート
寂しさや手花火の球地に落ちて
神奈川県     猪狩千次郎
花火揚がりダンスパーティー中断す
残業の窓辺明るし揚花火
鴉帰り蝶眠りたり遠花火
兄弟の喧嘩も花火待つ間かな
一湾を昼と水中花火かな
三重県     吉田 博實
バーガーを喰らひつつ待つ揚花火
揚花火五臓六腑を揺るがせり
海面は点描画なり揚花火
帆船のマストに咲ける遠花火
牽牛も織女も戻り花火果つ
埼玉県     やまちゃん
ほほばりしお喋り弾む花火かな
縁石に座して今かと花火待つ
口開けて花火見上げる癖出でぬ
車窓より花火覗けど眠気催ひ
開け放つ首を左右に花火の夜
東京都     中田ちこう
手花火を前に無言の妻老いぬ
神奈川県     ―
秘めた恋線香花火の灯るごと
岡山県     塩津 誠治
今年また無事ならば良し遠花火
神奈川県     美夜
花火見る私の頭にカメラ乗せ
落ちないで目尻のしずくと線香花火
栃木県     青萄
台湾の屋台のねずみ花火かな
愛知県     古賀 敦子
夕づきて波の音のみ花火待つ
二人には少し小さき花火茣蓙
海原に映りて消ゆる遠花火
潮風に髪の湿りも花火の夜
一湾の静けし波や花火果つ
岡山県     岸野 洋介
我が家より見納めとなる大花火
教え子の先に逝きけり遠花火
花火師が真昼の河原歩きおり
手花火や従弟に会わぬ十余年
宿題を持って今年も花火客
兵庫県     市来 賢一郎
手花火の子らの顔寄せ目輝く
遠花火橋の上から一列に
庭先のバケツ一杯花火後
もうすぐと仕掛け花火のアナウンス
じっとして線香花火無言なり
長野県     伊東けいこ
谷川の橋の真中や村花火
臨時便満員電車花火行
手花火の消えて恋バナ終わりけり
滋賀県     村田 紀子
花火手に子供となった目が六つ
沈黙は線香花火が落ちるまで
静寂を破る花火と鳥の声
父の手を握り見上げた大花火
絵に描いた花火で会話弾けだす
東京都     石川 昇
遠雷を艦砲射撃と聞く母で
多摩川を挟み競演花火かな
ちりちりと線香花火の小宇宙
遠雷や膝に乗りくる三歳児
東京都     石井 昌男
手花火に父が足元バケツかな
手花火のこぼす火明りため息と
しゅるる鳴く玉川沿ひに揚花火
腰かがめ尻を落として庭花火
栃木県     すみ女
大空を狭しと尺玉咲きにけり
遠花火隣の庭も人の影
遠花火門に出て見る割烹着
富山県     岡野 満
尺玉の続けざまなる花火かな
庭先に線香花火囲みけり
打ち上げのシュルシュルシュルと大花火
寝そべって独り占めする花火かな
香川県     紅緒
命日の線香花火しみじみと
猫が追ふ鼠花火の強かさ
手花火の持つ幼子の帯長し
神奈川県     龍野 ひろし
大輪のあとに爆づるや揚花火
和歌山県     中浴 智美
ナイアガラなどと寝床で花火聴く
栃木県     長浜 良
ふるさとは人恋ふところ遠花火
近隣の子等にも伝へ庭花火
ふるさとのはかなき恋や遠花火
岡山県     渡辺 牛二
潔くなりたし空の花火ほど
花火待つ土手の温みに尻置いて
風なくて花火の空のすぐ曇る
おほかたは煙に巻かれて花火果つ
花火果て帰る車列の長きこと
神奈川県     成田あつ子
球音の消えたる空に花火咲く
花火果つ球場の闇深からず
子の顔の虹色に映ゆ花火かな
鼠花火音より声のかしましき
線香花火束の間の星生まれたり
山口県     山縣 敏夫
空耳かサイレンの音(ね)が遠花火
反安保時代遅れの遠花火
朝花火何かありやと胸躍る
反り橋や仕掛け花火の艶を見て
孫が今ネズミ花火に大はしゃぎ
埼玉県     櫻井 玄次郎
揚げ花火押すな押すなの橋の上
東京都     山野柘榴子
カップ麺啜りつつ聴く花火かな
独り身や手花火買う日まだ遠し
ただ一人バーベルといる花火の日
花火の日特等席はテレビ前
花火師の深き皺こそ美しき
宮城県     遠藤 正寿
花火待つ発心のある喉仏
仏燭と燈す花火が家風なり
仏燭に点じ花火の傘を揚ぐ
福岡県     西山 勝男
手花火や嫁ぎ行く子を真ん中に
嫁ぐ子と話つきなき花火の夜
大花火果て墨堤の闇もどる
手花火を囲める子等の真顔かな
手花火の終の火玉を惜しみけり
東京都     岩﨑 ひとみ
大川に横丁に人花火かな
豪快に見栄切っている花火かな
父の背にしがみついたる花火かな
神奈川県     川島 欣也
揚げ花火下向く人のなかりけり
遠花火やもめ暮らしの夕餉かな
花火果つ背なの子重くなりにけり
履き慣れぬ下駄見失う花火終え
遠花火音を肴に手酌かな
静岡県     柳谷 益弘
尺玉に男の夢を詰めて発
大阪府     津田 明美
この星の宇宙シグナル大花火
遠花火星影さらに降りこぼす
喧噪のあとの空虚も花火とす
煩悩の吹き矢となりて花火玉
それなりの日々豊かなり大花火
岡山県     名木田 純子
マンションの円居の横に揚花火
思ひ切り闇を使つて描く花火
手花火に照り翳りする子の笑顔
神奈川県     矢神 輝昭
寝ころんで宇宙の旅や大花火
夕闇に花火仰げばソースの香
湖を仕掛け花火や橋渡し
吾こそは花火のおがる腹鼓
新星座幾つも飛び出す花火かな
京都府     欲句歩
揚げ花火途切れ途切れの謝意に謝意
東京都     カジ
大輪が 消えて闇夜に また浮かぶ
息凝らし 線香花火の 音を聞く 
花火消え 一瞬の闇 手を握る
遠花火 西瓜の種で 吹き飛ばし
手花火の 君が二の腕 星散らし
岐阜県     ときめき人
花火描く山下清の放浪画
神奈川県     谷元 央人
手花火や豆太陽の没しけり
超新星線香花火に生まれたる
手花火や黄燐マッチの匂いして
花火より花火する子の美しく
東京都     谷 えみ
打ち上げの 音に隠した 胸の鼓動
打ち上げの 音に隠した 止まらない屁
わが人生 焦って落ちる 線香花火
バリウム銀 ストロンチウム いや花火は花火
小さな手 夏の終わりの 火薬のにおい
宮城県     福田 良光
人いきれ花火の夜に酔ひにけり
揚花火吐息で終ひ人の群れ
児の脚に鼠花火の絡みけり
渋滞の先に音無し遠花火
喧嘩して手花火ひとり持ちにけり
東京都     笹木 弘
手に持ちて無心の線香花火かな
ふるさとの夜を広げし大花火
手花火に笑顔をこぼす膝小僧
じっと見る線香花火の尽きるまで
一夜明け河原に残る花火屑
千葉県     宝来 龍一郎
垣根から 目覚めて朝顔 夜花火
大玉は 天地揺るがし 夏描く
開いた口 横一列に 花火待つ
猛り来る 大輪の花 降り注ぎ
火の花を 闇に描いて 目に残す
奈良県     平松 洋子
星三つ落ちて花火の輪となりぬ
コーヒーは薄まりてゆく遠花火
新婚の嫁も喜ぶ大花火
東京都     龍臣
街の風いつもと違う花火の日
花火師は黒子なりけり幕上がる
間延びする経費削減揚げ花火
客電の落ちて緞帳大花火
大花火たまにプスッと不発弾
埼玉県     肉球庵
孫は空 見上げて飲めり 大花火
轟音に 握り返すや 幼き手
愛媛県     中川 正子
水系を一切光揚花火
鼠花火も忘却に殺されむ
手花火の夜に光を植えるごと
死も生も燃ゆるは同じ大花火
東京都     岩崎 美範
いつからかふたりつきりの庭花火
度肝抜く十連発や花火舞ふ
復興の誓ひ新たに花火揚ぐ
茣蓙敷いて花火待つ間の長かりき
遠花火初めて好きと言はれし夜
長崎県     内野 悠
揚花火大見得きつてしだれけり
手花火といふ団欒を継ぎにけり
どこからも一期一会や揚花火
揚花火赤は二人の頭に降りむ
手花火をしたる双子のおねしょかな
滋賀県     奥村 僚一
天空の花火のうつす人の顔
隣村の音だけもらう遠花火
音ばかりせがむ子どもの遠花火
滋賀県     入野 隆治
泡はじく ビールの向こうに 咲く花火
時雨去り 夜空に満開 夏花火
ブラジル     林 とみ代
オリンピック開催祝ひ花火揚ぐ
遠き日の線香花火里を恋ふ
イエス像あらはにしたる揚花火
クルーズより眺めしリオの花火かな
仕掛花火待つ群衆や夜の更けて
神奈川県     井手浩堂
開花せる花火の空の深さかな
連発の花火に拍手起こりけり
硝煙の匂ひ残して花火果つ
花火果て漆黒の海広がりぬ
川沿ひに帯なす人や大花火
福井県     半田 信和
遠花火ゆくえもしらぬ恋をして
大阪府     森村 冨美子
遠花火微かに光る闇の中
遠花火時おり闇を照らし出す
神奈川県     泉水
煩悩を破砕一瞬火の開花
草枕頭上の光芒秋花火
秋夜空音と光の花火壇
花火賞で作りし人の労想う
花火会過ぎれば静かに天の川
東京都     かつこ
床の間の線花火を夫とする
愛知県     佐藤 三郎
遠花火青田を渡る風に乗る
上げ花火ラスト爛漫波に消ゆ
夏祭り踊る手かざし花火かな
神奈川県     佐藤 博一
華やぎのやがて寂しき花火かな
目つむれば遠き日のある花火かな
待つほどに闇の整ふ花火かな
一湾の空をはみ出す大花火
手花火を終えたる闇の深さかな
神奈川県     河野 肇
仕掛花火彼の世の友の歩み来し
手花火の青春といふ花火かな
つぎつぎと揚がる花火や山夜行
鼠花火アニメのテロの愉しさよ
かの時の母の鼻歌揚花火
千葉県     柊二
顔・顔・顔三発の花火の合図
北海道     来島月子
この花火 宇宙人にも 見せたいな
空に咲く 花火が水面に 反射した
縁側で 酒飲みながら 花火見る
ヒュ~の音 犬が鳴いて 気付かずに
心臓が 花火の音と 同調す
千葉県     山田 明
手を休め警備見惚れし遠花火
打ち上げし火の玉踊るカ-ニバル
シュルシュルと上がる花火や恋心
山口県     ひろ子
大輪の花火闇夜の晴れマーク
手花火や笑顔が闇に浮かびけり
福島県     ―
残業の 窓から恨む 花火かな
夏風邪や 床から恨む 花火かな
夏の夜に 儚き命 花模様
手花火で 照らす横顔 そっと見る
好きですと 言えずに終わる 花火かな
東京都     石井 まゆみ
抱っこして負んぶして見る揚花火
くらがりに幾何学模様庭花火
ヘルメット赤い火塵も花火かな
闇に湧く三尺玉の大花火
集大成滝が花火の仕掛かな
長野県     木原 登
花火師は揚がる花火を見ざりけり
遠花火消えて亡母の笑顔泛く
老眼の進みて線香花火かな
手花火の憶ひ出子より父母に濃し
洞爺湖の闇のいや濃き揚花火
埼玉県     飯塚 璋
稜線を山の影絵に大花火
遠花火自転車止めて音を見て
花火果て方向感を失へり
振り払ふ手筒花火に胸痛む
人混みを潜りて前へ揚花火
宮城県     林田 正光
花火師や夜空舞台の演出家
クルクルと鼠花火は闇に消ゆ
運よくて明日退院の大花火
花火果て星を数える家路かな
遠花火昭和大正明治哉
東京都     内藤羊皐
空壕に花火の端の懸かりたり
轟きぬ瓦礫の街を遠花火
手花火の爆ぜりて夜の匂ひをる
昼花火眠たきほどの音立てり
かどはさる子の墓とかや遠花火
神奈川県     井上 靖
手花火を 囲む団らん 闇忘る
昇りつめ 花火が爆けて 目を閉じる 
風にゆれ 不意に線香 花火落つ
あなたへの 仕掛け花火は 川をのむ
絵日記の あなたと花火 宝物
神奈川県     守安 雄介
屋形船動いて花火の終りけり
燃え滓の花火のごとき深夜便
光より速くあれ音遠花火
蝙蝠の見える一瞬揚げ花火
揚げ花火隣の顎も上を向く
神奈川県     ギザギザ仮面
君がいる 想いが届くか 線香花火
ドッカーンと 花火光って 子ら遊ぶ
反射する 夏の終わりの 花火かな
花火には 人集まりて 大人気
青花火 静かな君の 孤独とて
愛知県     蒼介
僕よりも花火が君の目を奪い
枯れ木にも花を咲かせる夏の宵
埼玉県     木村 幸代
花火の音 ふと上見れば 大三角
あの夏は 線香花火で 幕を閉じ
夏はまだ あると思って 花火せず
東京都     小野 史
パパの背を よじり見上げる 初花火
大輪の 花火に誓う 夢あまた
満開の 連続花火 謳歌中
だいすきを 花束にして 散る花火
神奈川県     zattuku
花火 宴の昨夜  電光線火
夏化粧 山の麓で 花火1つ
祭りです 打ち上げ花火 空高く
曲線美 色鮮やかに 空に咲く
蛍昨夜  花咲いた すすの跡
三重県     ―
燃えて消ゆ 線香花火 地球(ほし)の生
手花火の 火の粉を留める 夜の土
花火待つ 間の夕闇で 弾む胸
遠花火 はらり散る間の 密やかさ
花火見の 橋から今は ビルを見る
兵庫県     岸下 庄二
手花火の煙隣へ流れけり
遠花火僅かに見ゆる甍越し
手花火の煙漂ふ夕座敷
早々と土手に陣取る花火の夜
大輪の花火の散って空に穴
神奈川県     須山 恵美
被災地の闇夜を照らす遠花火
亡き人もどこかで見ている遠花火
どんと鳴る花火に両目覆う稚児
病室に花火の音がこだまする
岡山県     岩中 幹夫
抱き上げて子供に見せる大花火
東京都     三浦 靖男
夜汽車の車窓を染めて遠花火
いつの日か孫が忘れし花火箱
もうひとつ線香花火飽きもせず
夫婦旅思いさまざま海花火
老いの身に線香花火いとしけり
東京都     南武線の旅人
モノレール 花火を乗せて 滑り出す
スマフォから 顔上げ見入る 大花火
大空に 花火が舞って 万華鏡
東京都     西谷まさる
幻灯や池水騒がす大花火
迎え火や鼠の回す花二輪
坪庭のかしまし娘火矢たぎる
枠の妻線香花火つけてみる
ファイアボール渚の碧い空高く
長崎県     西 史紀
富士山のてっぺんで食む海苔むすび
里帰り待ちゐる母は海苔炙る
海苔ひびの並び一湾鎮めをり
海苔ひびや今朝一湾に波もなく
跡継ぎの婿の見つかり海苔業者
愛知県     幅 茂
孫の手を引いて眺める遠花火
孫の名を仕掛花火に光らせる
雷と混じりておかし昼花火
孫たちを迎えて騒ぐ庭花火
庭花火父の写真も飾りけり
埼玉県     鈴木 哲也
饒舌な 打上げ花火の 語る空
華咲いて 消える間際を 愛でる空
打ち上げて TERRAに魅せるや 花火かな
愛知県     黄昏人
夏祭り 花火待たれど 雨気配
酣に 煙もうもう 宴見えず
宴火見て 茶漬け口に いそいそと
海苔炙る 花火のように パチパチと
海苔覗く 隙間の模様 花火かな
新潟県     近藤 博
大花火闇に爆ぜ飛びまさやけし
漆黒の空の狭しと揚花火
手花火や老いも童子に仲間入り
花火終へ迷子放送頻りなる
揚花火天にまします亡母(はは)までも
東京都     田中 永
音重ね色をかさねて揚花火
神奈川県     塚本 治彦
花火見や妻に押さるる車椅子
点滴の瓶引き連れて遠花火
波立ちて湖面の花火崩れけり
花火舟碇下ろしてよりの波
遠花火夫は夜漁の海の上
岐阜県     金子加行
高層階花火自慢に招かるる
平和なる火薬にほふや花火の夜
大輪の花火に揺れし古き家
花火消ゆ闇の深きに人の住む
大輪や女花火師らしき色
愛媛県     藤原 守幸
春の海瓢箪島は国境ひ
少年の覗き機関春祭り
海老蔵に睨まれに行く春歌舞伎
鶴姫を慕ふかに来る白魚かな
春の海眼下にのぞみ屏風句碑
京都府     中村 万年青
音のする方に顔向く遠花火
甥っ子の瞳に映る大花火
宇治川の源氏浪漫や天の華
琵琶の湖姿見にして揚げ花火
大川や天神祭の花火舟
神奈川県     髙梨 裕
妻看取り縁に独りの遠花火
ビルの間に覗く花火の終わりけり
浜風や後ろも近き遠花火
振り返り振り返りつつ遠花火
空焦がす花火に夜の喜悦かな
東京都     ゆうは
老若よ開く花火と自撮りかな
音数増え夕食漫ろの川花火
年嵩人大呼気を揉む揚げ花火