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- 俳句庵 2016年11月 優秀賞発表
- 俳句庵 2016年11月 作品一覧
俳句庵
11月『帰り花』全応募作品
(敬称略)
- 岐阜県 ときめき人
- 帰り花傀儡師の糸光りけり
- 富山県 岡野 満
- 嬉々として青葉の中の帰り花
- 帰り花庭のひと隅照らしけり
- 帰り花見つけて今日の嬉しさよ
- 兵庫県 山崎ぐずみ
- 帰り花買はず仕舞ひの宝くじ
- 帰り花ガラガラポンの赤い玉
- 帰り花ダウ平均値頭うち
- 帰り花ただいまだけを愛づるべし
- 福島県 いらくさ
- 染屋の庭のどの花が帰り花
- 様々の小さき地形帰り花
- 計画の看板古るび帰り花
- 廃屋の甘やかすぎて帰り花
- 横文字の花もまとめて帰り花
- 群馬県 冷林
- 帰り花お呼びじゃないぜせっかちめ
- 病床の母へのたより帰り花
- 神奈川県 重兵衛
- あの笑窪昔と同じ帰り花
- あの顔とあの笑い方帰り花
- 老妻の真紅のマニュキュア帰り花
- 老画家の描く湯浴み図帰り花
- ドガ描く湯浴みの女帰り花
- 大阪府 椋本望生
- 子の部屋はかの日のままに帰り咲く
- 返り花ヒッチハイクのできぬ世に
- 仮の世にひそと咲きます忘れ花
- 帰り花奇しき話に咲きにけり
- 福岡県 西山 勝男
- 寂として梅の一輪返り花
- 帰り花日の斑まぶしき爆心地
- 返り花そのー輪を栞とす
- 晩学の吾にひとひら帰り花
- 老いてなほ初心いまだに返り花
- 埼玉県 高島三郎
- 帰り花 居を去る吾の 佇まい
- 千葉県 土井探花
- 帰り花いつもと違ふ坂に星
- 愛媛県 アリマノミコ
- 突然の別れも慣れて帰り花
- 勘違いふりして電話帰り花
- 埼玉県 守田 修治
- 帰り花おみくじひいて吉と出る
- 仏事ありこれは彼だと帰り花
- 臍曲がり兄七回忌の帰り花
- 根津谷中居酒屋さがす帰り花
- ゴッホ展出づるやさっぱり帰り花
- 千葉県 山田 香津子
- 海を恋ふ真砂女の句碑や帰り花
- 誰を待つのかいといけな帰り花
- あじさいのかぐはしに咲く帰り花
- 屋根葺きの昼の休息帰り花
- 我を待つ木瓜ほほえみの帰り花
- 埼玉県 こさめ
- おかえりと 頭を垂れる 帰り花
- 帰り花 すまし顔して 立っている
- 霧深み 帰り花かと 赤椛
- 帰り花 冴える寒空 良く香る
- あの人に どこか似ている 帰り花
- 千葉県 藤原 純夫
- 帰り花妻の言葉に重なりて
- 帰り花何か言いたげ我をみる
- 刑場に人去りて咲く帰り花
- 墓地はずれ地蔵微笑む帰り花
- 雑踏に気づく人なし帰り花
- 三重県 平谷 富之
- 散歩道 一際は目立つ 帰り花
- 長野県 ももみ
- 部屋に吊る民芸の毬かへり花
- 中古車の窓の反射や帰り花
- 東京都 住澤 義英
- 帰り花 見あげた空に なに思う
- なぜ今か 通い細道 帰り花
- 大丈夫 今日も生き抜く 帰り花
- 急ぎ足 声を掛けられ 帰り花
- 帰り花 終わりし年に 振り返る
- 岡山県 岸野 洋介
- 通り過ぎふと引き返す帰り花
- 茶のみ友杖さす先に帰り花
- 二輪だけ寄り添う木瓜の帰り花
- 日溜りのここがエデンと帰り花
- ときめきは彼の日のままに帰り花
- 愛知県 斉藤 浩美
- 自分史に恋の脚色帰り花
- 帰り花乳首をさがす嬰の口
- 忘れ花煙を吐かぬ陸蒸気
- 帰り花ここは芭蕉の生誕地
- 帰り花そこから上が空である
- 埼玉県 森 正徳
- 透き通る 白い息切れ 桜揺れ
- 千葉県 横井 隆和
- 返り花一輪挿しのナース室
- 躊躇うてやがて手にあり返り花
- 病む床の長きを知るや返り花
- 東京都 岩川 容子
- うたかたの日々惜しまるる返り花
- 舞い散る葉行く手に白き返り花
- 後戻り出来ぬ人生返り花
- 忍ぶれど色にでにけり返り花
- 東京都 まどん
- 約束を夢の祖母とす帰り花
- 岡山県 渡辺 牛二
- 城跡の高きに二つ帰り花
- 帰り花影なきほどの薄日中
- おしやべりの人には見えず帰り花
- さりげなき事を良しとし帰り花
- 帰り花小さき二葉のその先に
- 山口県 ひろ子
- 樹齢のび永遠の命や帰り花
- 禅寺の梅なつかしや帰り花
- 愛知県 古賀 敦子
- 帰り咲く杜若の色の濃かりけり
- 切り岸に傾れ山吹帰り咲く
- 帰り咲く八重山吹の二三輪
- 蒲公英や山の日向に帰り咲く
- 帰り花尼僧とかわす遠会釈
- 千葉県 ほうりゅう児
- 人混みを 嫌いてひとつ 帰り花
- 秋晴れの 白髪見やる 返り花
- 秋に咲く 桜愛しや 可憐なり
- 君と我 晩年なれど 帰り花
- ふと見上げ 寄り添う二輪 笑みこぼれ
- ブラジル 玉田 千代美
- 静かなる庭を覗けば帰り花
- 帰り花誰を待つやら庭隅で
- ブラジル 林 とみ代
- 病癒えし友と再会帰り花
- 異国に咲く大和なでしこ帰り花
- 老いて尚夢見る余生帰り花
- 貧しくも健気に咲いて帰り花
- 遠慮するも世過ぎの手だて帰り花
- 東京都 蘭丸
- 石階に呼びあへるほど帰り花
- 大阪府 古田 秀雄
- 舞鶴港傷痍を乗せて帰り花
- 大阪府 古田 博子
- 生家跡の空地に咲くや帰り花
- 東京都 笹木 弘
- 海見える丘に風あり帰り花
- 頑なに操を守り返り花
- 陽だまりに三個かたまる帰り花
- 良く見ればまだまだありし帰り花
- 追分の道灯すごと帰り花
- 埼玉県 琴吹痴庵
- 渓流の元は一滴帰り花
- この先は入山禁止帰り花
- 埼玉県 哲庵
- 肉弾を志願した日や帰り花
- 停車場に万歳の声帰り花
- 二年後に届く訃報や帰り花
- 九段坂ゆるり上れば帰り花
- 靖国の標本木に帰り花
- 岡山県 土屋 徹三
- 山間の近所付き合い帰り花
- 陽だまりに笑い泣きする帰り花
- 道迷う辻に佇む帰り花
- 野仏に誰が手向けし帰り花
- 帰り花墓前賑わし散りにけり
- 兵庫県 中田 修
- 電力計動かぬ家に帰り花
- 芭蕉句碑を巡り疲れて帰り花
- 帰り花クラーク博士の指の先
- 帰り花舞台の袖で待つ女
- 表札の無き家に咲く帰り花
- 岐阜県 ―
- 狂い咲き花も私も疲労気味
- 桜花秋の祭りも花を添え
- 返り花藤棚狭き門となる
- 返り花妹招き帰り人
- 可憐さを秋風匂わす返り花
- 栃木県 長浜 良
- 警策に打たれし朝や帰り花
- 早暁の淡き二色帰り花
- 杣の家の祝歌朗々帰り花
- 東京都 中田ちこう
- 薬医門覗くさくらの帰り花
- 三重県 後藤 允孝
- 人知れず歌碑に寄り添ふ帰り花
- 墓碑銘は黒く苔むし帰り花
- 帰り花古書の栞となりにけり
- ひつそりと空家の庭の帰り花
- 山郷は抜けゐる空や帰り花
- 神奈川県 矢神 輝昭
- 恍惚の闇に朱を見る帰り花
- 帰り花いつか来た道妹のなく
- 二日酔い二度寝の夢に帰り花
- 同窓の老ゆらくの恋帰り花
- 浦島のあだ花なるや帰り花
- 埼玉県 櫻井 玄次郎
- 結願の袈裟納むるや帰り花
- 神奈川県 成田あつ子
- 鈍色の空に灯のごと帰り花
- これよりは入れぬ鉄扉帰り花
- 再会の互いの老いや帰り花
- 遠慮して小さく咲きたり帰り花
- 千葉県 小田中 準一
- 廃屋の庭に一輪帰り花
- 亡き母の化身と思ふ帰り花
- 路地裏の光の道に帰り花
- 凛と咲く空に一輪帰り花
- 忘られぬ人胸に咲く帰り花
- 神奈川県 原川 泉水
- 陽だまりに帰り花観る山の裾
- はと見上げ心温む帰り花
- 帰り花今日一日の労忘れ
- 帰り花天に授かるギフトかな
- 帰り花立去り難くたちさりぬ
- 静岡県 柳谷 益弘
- 神さまの寵愛受けし帰り花
- 遠慮がち楚々と咲きたる帰り花
- 埼玉県 占部 耕三
- 訪ねたる 友の庭先 帰り花
- 忙しさ 忘れさせたる 帰り花
- 膝に猫 乗るタンポポの 帰り花
- たどり着く 約束の地に 帰り花
- 迷いごと 振り払いたし 帰り花
- 沖縄県 輝 龍明
- 帰り花賑わう街を後にして
- 帰り花梢の上を跳ねにけり
- 帰り花白き花びら空に揺れ
- 人ならば個性と言おう帰り花
- 帰り花お調子者のふらふらと
- 東京都 まだら
- 帰り花ひとり眺める今年かな
- 東京都 石川 昇
- 人生の出会いにも似て帰り花
- 帰り花人の心はすぐ変わる
- 東京都 右田 俊郎
- 帰り花学校帰りの秘密基地
- 叱られて居残りとなる帰り花
- 帰り花子ら集まって悪だくみ
- 辛きこと多きがための帰り花
- 奇をてらふことにはあらず帰り花
- 埼玉県 彩楓(さいふう)
- 返り花も一度逢ひたき人二人
- 旧姓に呼び止められて返り花
- ひそひそと内緒の話返り花
- 後何度逢へるのでせう返り花
- 返り花軌道修正する覚悟
- 愛知県 寺尾 啓一
- 咲きだせば戻りもできず帰り花
- 旬のない胡瓜を食ふや帰り花
- 人類の恋は何時でも狂い花
- 狂い花咲かせ悦ぶ人の業
- 旬と句は似ているよほで返り花
- 神奈川県 長島 マミコ
- 半襟の白粉あとや帰り花
- 北海道 栃木 渡
- 赤きまま頭の垂る帰り花
- 種子ひとつつかぬを承知狂い咲き
- 忘れ花尽きるも早し夕まづめ
- 千葉県 クラレこじろう
- 小春日に 桃花見つけ 父想う
- 頑張れよ 我も負けぬと 帰り花
- 良き此の日 見つけた偶然 帰り花
- 桜花 包み薫る 金木犀
- 千葉県 中原 政人
- 桜木の返り咲き見す二つ三つ
- 枝先にピンク見するや返り花
- 東京都 枯紫
- 帰り花 揺らすや風の 嫉妬心
- 枡酒が 欲張る妻と 帰り花
- 帰り花 胸算用が 下心
- 東京都 紫風
- ケータイを 切って見つめる 帰り花
- 帰り花 鈍色空を より低く
- 面会の 父との話題 帰り花
- 東京都 紫雨
- 帰り花 卒寿の祖父を 呼びに行く
- 帰り花 写メの画角の 定まりぬ
- 帰り花 時雨が香り 奪い去る
- 奈良県 平松洋子
- 眼鏡かけ今日は過去まで帰り花
- 会いたいの父母又見たい帰り花
- 又来てね孫の成績帰り花
- 岡山県 名木田 純子
- 帰り花風を透かしてをりにけり
- 帰り花十の視線にこはれさう
- 東京都 浮いたか瓢箪
- 観劇の 帰り花買う 大年増
- 帰り花 枯れ木見渡し 自慢顔
- 帰り花 見上げて年増 顔を染め
- 帰り花 実をつけずして 散るさだめ
- 木枯しも そっと撫でゆく 帰り花
- 大阪府 津田 明美
- 大局に照らせば浮世帰り花
- 化野の道の果てかや帰り花
- 佳きことのありそな予感帰り花
- こころなき風もとどまる帰り花
- 登り来る人を迎えて帰り花
- 山形県 ゆずまる
- 開店へエールを送る帰り花
- 夭折の息子よ何処帰り花
- 集まりし野点の人へ帰り花
- 天国の母の笑顔や帰り花
- 廃墟ビル往時を偲ぶ帰り花
- 山口県 山縣 敏夫
- 千年の古都に現る帰り花
- 忘却の彼方の人の狂い咲き
- 温暖化お前の所為だ帰り花
- 一瞬の闇に漂う帰り花
- 美しく悲しくもある帰り花
- 岐阜県 ―
- 信号で 止まりて見える 帰り花
- 愛犬と 散歩がてらの 帰り花
- 犬が嗅ぐ いつもの道に 帰り花
- 東京都 伊東 由紀子
- 昔ここに秘密基地あり帰り花
- 産土の社は小さし帰り花
- 山口県 草如
- 葉にもまだ緑残れり帰り花
- 来て見よと誘われて野の狂い花
- 廃校の錆びた鉄棒忘れ花
- 故郷を捨てきれずいる帰り花
- 軒低き峡のたつきや帰り花
- 三重県 阪倉 弘一
- 眞正面から見て帰り花楽しめり
- ゆるやかにあなたを愛し帰り花
- 帰り花詩へのあこがれ燃えよる
- 早速にスマホにおさむ帰り花
- 楚楚と咲く仰ぎて見たる帰り花
- 滋賀県 幸湖
- 帰り花老木に色戻りけり
- 帰り花慣るる足音近づきぬ
- 今一度諦めきれず帰り花
- 帰り花誰も気付かぬ無人駅
- 帰り花気付く人なき空き家かな
- 神奈川県 猪狩 千次郎
- 釣橋や右岸左岸の帰り花
- 待つひとのゐるらしや手に帰り花
- 石棺に溜る雨水帰り花
- 経文を回す水車や帰り花
- 帰り花世を諦むるろばの顔
- 滋賀県 村田 紀子
- 風の音モズも戸惑う帰り花
- 帰り花返事が出来ぬ風が吹く
- 蔦からむ空き家に同じ帰り花
- 帰り花仰ぐ人あり赤い靴
- 友帰る垣根に枝あり帰り花
- 岐阜県 蛙田 環
- 哀れなり誰が折り捨てし帰り花
- こぞことし同じ小梢に帰り花
- 七つ八つ園児の声や帰り花
- 誰が植えし荒れたる庭の帰り花
- 帰り花陽かたむきぬ過疎の町
- 静岡県 城内 幸江
- 帰り花かまどで炊いた飯の宿
- 黒板に消し忘れあり帰り花
- 鋸の音谷響く帰り花
- 帰り花遠くで母を呼ぶ子供
- 隠れ宿ひとりで泊まり帰り花
- 神奈川県 塚本 治彦
- 神々の遊び心や帰り花
- 帰り花匂もほんの二輪ほど
- 夫婦神祀る社や帰り花
- 旧友に遇ひたるごとし帰り花
- 帰り花天使の白き羽根のごと
- 大阪府 ―
- 帰り花 夏の想い出 いま一度
- 返り咲き 八十路の身には 厳しけり
- 神奈川県 守安 雄介
- 帰り花空の青さを纏いけり
- 帰り花双葉の街に戻りけり
- 花弁にやつれ漂う帰り花
- 帰り花紀香の鬢に白髪置く
- 放射能浴びたる婆の帰り花
- 千葉県 隼人
- 湯煙のたなびく鄙や帰り花
- 夕暮るる頬紅き君や帰り花
- 山門に匂ひほのかや帰り花
- 寺町の苔むす塔や帰り花
- 手の平にはらりひとひら帰り花
- 東京都 岩崎 美範
- 薄日さす地震の岬の帰り花
- 青春を過せし街や帰り花
- 散りゆかば栞に入れむ帰り花
- 激戦の島に慰霊の帰り花
- 夭折の姉の御霊か帰り花
- 愛知県 渡辺 佳幸
- 五月病乗り越えひとり帰り花
- 兵庫県 松下 弘美
- 帰り花出過ぎぬ色を失はず
- あの人を決して忘れぬ帰り花
- 帰り花空へ微笑む徹夜明け
- 一年に一度は帰れ帰り花
- 何度でも戻っておいで帰り花
- 茨城県 あまち てる
- 帰り花 男やもめの 忙しさ
- 東京都 稲垣 周
- ひとり咲き冬の見張りか帰り花
- 早熟の帰り花告ぐ温かさ
- 帰り花探して長い散歩道
- 枝先の帰り花にみる希みかな
- 遠くとも春予告する帰り花
- 愛知県 佐藤 三郎
- 葉桜や日差しの枝に帰り花
- 帰り花残暑つづいて二度花見
- 人生や海山千里帰り花
- 杖ついて小春日和や帰り花
- 長崎県 内野 悠
- みちのくの海に絶やさず帰り花
- 帰り花サーカス村の匂ひ立つ
- 閃きを授かるごとく帰り花
- 爆心地の魂によりそふ帰り花
- 妣はもう人に戻れぬ帰り花
- 神奈川県 佐藤 博一
- 幼児の見つけし手柄帰り花
- 老いてこそ思ふ青春帰り花
- 残照のゆるき坂道帰り花
- 帰り花効くやも知れぬ薬飲み
- 行き過ぎて振り返り見る帰り花
- 東京都 池本一軒
- 同窓の喜寿の集ふや帰り花
- 帰り花深く生きるといふことを
- 遠き日の原書繙く帰り花
- 帰り花何か大きな忘れ物
- 帰り花父母の遺影のいつも笑む
- 神奈川県 井手浩堂
- 母残し急ぐ家路や帰り花
- 葬送の庭に一輪帰り花
- 海辺まで下るこの道帰り花
- 吟行の人みな寄れり帰り花
- 銭湯の無用の煙突帰り花
- 東京都 塩田 芳孝
- 古寺や帰り花咲く雨の午後
- 帰り花見る国東の磨崖仏
- 急坂を上がりソウルの帰り花
- 埼玉県 采野 功季
- 帰り花 去りゆくことは 十承知
- 紅き日に 白く色づく 帰り花
- 千葉県 伊藤 博康
- さよならと手を振る先に帰り花
- 角曲がり思いもよらず帰り花
- 三重県 遊眠
- 帰り花何ごともなく百か日
- 帰り花母の遺品の仏和辞書
- 遺作展見て乃木坂の帰り花
- そこだけは小さな宇宙帰り花
- 帰り花船笛遠き異人墓地
- 宮城県 福田 良光
- モノクロの世界にカラー帰り花
- 三四郎池の畔に帰り花
- 帰り花西方浄土の贈り物
- 悲しくも雨に濡れたる帰り花
- 帰り花あの雰囲気は躑躅かな
- 熊本県 貝田 ひでを
- 帰り花母の墓への径閑か
- ウオーキングの記録更新返り花
- 暮れ方の野を燈すかに帰り花
- この頃の気違ひ陽気返り花
- 東京都 大槻 実
- 五十路なり 同窓会の 帰り花
- ソプラノの 音が空抜け 帰り花
- 年老いた 親を見送る 帰り花
- 滋賀県 中島光汰朗
- みづうみに傾く並木帰り花
- 業平の墓訪ぬれば帰り花
- 無住寺の庭に水音帰り花
- 表札は男の名前帰り花
- 信長に焼かれし寺や帰り花
- 埼玉県 鈴木 とくえ
- 帰り花 風に似合わぬ 香り撒き
- 帰り花 一度に済まぬ 洗濯機
- 思い切り 剪定せんや 帰り花
- 二度咲いて 喝采浴びや 帰り花
- 手に届く 幸せ見ぬや 帰り花
- 埼玉県 岸 保宏
- 陽が返し少し騒がし帰り花
- 休耕田主役ならむと帰り花
- 墓の道客足止める帰り花
- サンパウロ 西山ひろ子
- ゆったりとはたまた慌て帰り咲く
- 一早く朝日捉へて返り花
- 園児等の歌声桃の狂ひ咲く
- 幼き日の孫の微笑み帰り花
- 笑窪ほどの二つの桃の帰り花
- 神奈川県 須山
- 被災地の町に見つけた帰り花
- 路地裏のバーに見つけた帰り花
- 兵庫県 岸野 孝彦
- 君の名は三葉と瀧の帰り花
- 浦島に似たるがごとき帰り花
- 帰らざる風に吹かれて帰り花
- 若き日の本の栞や帰り花
- さよならの言葉呑み込む帰り花
- 東京都 梶浦 公靖
- 束の間の父の元気や帰り花
- 何事か必死な様有り帰り花
- 吐く息の白き向こうに帰り花
- 帰り花翌日眺める恐ろしさ
- お前もか捻くれ者の帰り花
- 長崎県 西 史紀
- 訣別の意志を固めて帰り花
- 目瞑れば昭和はそこに帰り花
- 認知症とて母は母帰り花
- 棺桶の蓋に寄せ書き帰り花
- めしひたる背にギター負ひ帰り花
- 東京都 小野 史
- さすらいの 恋を楽しむ 帰り花
- 厳格な 父が摘み取る 帰り花
- 帰り花 見つけた母の 今日の幸
- いっときの 儚き命 帰り花
- 帰り花 遠きパパへと 贈る子よ
- 大阪府 藍青
- 白無垢に 母がほほ笑む 帰り花
- 滋賀県 上原 秀雄
- 帰り花 今日の手土産 ノリでうけ
- 孫連れて 家族が増えし 帰り花
- 帰り花 用事も告げず 居なくなり
- 帰り花 ほのかに匂う 酸い甘さ
- 正夢か 帰り花なら もろ手上げ
- 愛知県 家中者
- 帰り花 大器晩成 為る人か
- 台風渦 果敢無い命 帰り花
- 風景が 何時もと違う 帰り花
- 似合うのは 帰り花かな 絵になりて
- 期待する 帰り花こそ 待ち遠し
- 東京都 内藤羊皐
- 帰り花数学教師は猫背にて
- 帰り花端山の里に月匂ふ
- 帰り花姉の齢を越えにけり
- 教会に弔ひあるや帰り花
- 水の輪の底を匂ふや帰り花
- 宮城県 林田 正光
- 昨日今日二日限りの帰り花
- 人知れず咲いて散りゆく帰り花
- 陽だまりに二輪寄り添ふ帰り花
- 村八分視線の下の忘れ花
- 廃校のご免なさいと忘れ花
- 大分県 田中 祐輔
- 遠い轍 遊び疲れた 帰り花
- 帰り花 その名を取りて 子に与ふ
- 帰り花 光の線を すっと割く
- 宮城県 木立慈雨
- 窓際の残日数え帰り花
- 適齢期過ぎた花かなブルータス
- 帰り花初雪一つ受け入れる
- 帰り花背に刃が見え隠れ
- 日溜まりに褒められました帰り花
- 兵庫県 紫 桔梗
- 来し方は人それぞれに帰り花
- 山門の脇の二本に帰り花
- 帰り花引くに引かれず意地とおす
- 今更に咲ひてどうなる帰り花
- 空透かすところどころに帰り花
- 愛知県 とりくん
- 川沿いの紅葉の陰に帰り花
- 君のこと帰り花見て思い出す
- 帰り花気づかれなきよにそっと散る
- 小春日に歩いて気づく帰り花
- 帰り花メジロにそっと教えられ
- 愛知県 幅 茂
- 帰り花都大路に咲きにけり
- 見上げれば微かに開く帰り花
- 憲法を守れと開く返り花
- ラニーニャを知るか知らずか帰り花
- 火だるまの五輪予算や忘れ花
- 神奈川県 河野 肇
- 母を待つ園児らの群帰り花
- 帰り花窓なき家のふえしこと
- 介護士の夜勤明けゆく帰り花
- 帰り花隷書のやうな漢来る
- にんげんの天敵は何帰り花
- 東京都 ふで
- ひとりぼっち よいときもあり 帰り花
- 戻りたき 日も我にあり 帰り花
- 岡山県 岩中 幹夫
- 青春に 限界はなし 帰り花
- 宮崎県 荘子 隆
- 帰り花 冬の木立に ひっそりと
- 咲く季節(とき)を間違えたのか 帰り花
- 樹に咲いて これも個性と 帰り花
- 帰り花 咲いて短し 春遠し
- 山陰の 木立に咲いて 帰り花
- 埼玉県 鈴木 哲也
- 饒舌な 友が来たりて 帰り花
- 帰り花 一輪土産に 妻の元
- 帰り花 夕餉の土産に 写メを撮り
- 天変の 地異と言われず 帰り花
- 帰り花 いと密やかに 消え入れり
- 神奈川県 パラレル
- 元女優暮らす邸や帰り花
- イニシャルを彫られし巨木帰り花
- 参道を外れた路地に帰り花
- 見つけた子誰にも言えぬ帰り花
- 制服の歓声に揺れ帰り花
- 埼玉県 獅子谷 雪
- 足を止め時を忘れし帰り花
- 帰り花少年の嘘包みたり
- 愛しさを指先に見る帰り花
- 青の恋染む心には帰り花
- 時間だけ孤独に背負う帰り花
- 東京都 かつこ
- 友訪ね和みのお茶や帰り花
- 埼玉県 儘田 浩
- うつむきて 遅き家路や 金木犀
- 神奈川県 川島 欣也
- 狂い花処世のすべを心得ず
- 帰り花まいる人なき忠魂碑
- 忘れ物取りに帰るや帰り花
- 反抗期相手にされず狂い咲く
- 目立ち屋のひとり二度咲く夕間暮れ
- 岐阜県 金子加行
- 独り咲く男に似たる帰り花
- 剪定を忘るる街路帰り花
- 生き抜くや都市の割れ目の帰り花
- あすよりの独りの家や帰り花
- 帰り花ささやかながら披露宴
- 東京都 淵田芥門
- かへり花老蝶ながくとゞまりぬ
- 東京都 山野柘榴子
- 吹き付けて苞なほ減らず帰り花
- 帰り花老木の肌やわらかし
- ゆるゆるとまさかまさかの帰り花
- 帰り花これより関東平野かな
- 老木にこぼれて二三帰り花
- 千葉県 柊二
- 野仏にちひさき空の帰り花
- 長野県 木原 登
- 古都奈良の寺を巡れば帰り花
- 忘れ花逝きて帰らぬ友増やす
- 湯のごとき哀しみのあり返り花
- 幸せは小さきほどよし帰り花
- 返り花老いても子には従はず
- 滋賀県 了庵
- ひとしきり鳥の鳴く声帰り花
- 湖の風ふふみて八重の帰り花
- 帰り花湖近ければ湖の色
- 行合の雲に紛れて帰り花
- 帰り花散り徘徊の父もどる
- 愛知県 岩田 勇
- 老木の伐られるといふ帰り花
- スーパーの話立ち消え帰り花
- 久々に参る師の墓帰り花
- よみがえる高橋和巳帰り花
- 帰り花静かに死ぬはむずかしき
- 神奈川県 白銀
- 黄金の 風吹く闇夜の 帰り花
- 一睡の 帰り花咲く 極楽土
- 帰り花 散りて積もるは 寵愛
- 育ちざかり 帰り花の実 今もなお
- 花満開 牡丹灯籠 帰り花
- 京都府 真本 笙
- なるべくしなつて二夜の帰り花
- 帰り花懐いた風の後を追い
- 新潟県 近藤 博
- 帰り花咲きて花期とも思はせる
- 帰り花きらり遊歩の足を止め
- 淋しげにぼつんと咲きし帰り花
- 花期ならず咲きて目を引く帰り花
- 淡みどり葉すら返るや帰り花
- 宮城県 石川 初子
- 帰り花ひ孫の名前忘れたり
- 母も見て曾孫も見ている帰り花
- 神奈川県 髙梨 裕
- 手桶置き戻る参道帰り花
- 渡し舟戻りし岸の帰り花
- 木の根坂先は見えずに帰り花
- 嫁ぎしや庭に一輪帰り花
- 薬師寺や仁王の目にも帰り花
- 京都府 中村 万年青
- 寂し気に薄日に咲くや忘れ花
- 風に散り花びらヒララ帰り花
- 桜木の遠慮がちに狂ひ咲き
- 東京都 ゆり
- 返り花児女の手平の温きかな
- 返り黄花二の膳如の嬉しかな
- 返り花廃園砂場淋しけり