俳句庵

12月『古暦』全応募作品

(敬称略)

神奈川県     髙梨 裕
還暦も暮れて六十路の古暦
家守り重ねる年の古暦
父逝きてペン跡残る古暦
薄れゆく刻も薄れし古暦
語らへばあの日あの月古暦
京都府     中村 万年青
カレンダー柱に掛けず新(さら)のまま
木枯にパタパタなびき古暦
書き込みの消化不良や古暦
東京都     ゆり
大安に最後隠し絵古暦かな
古暦裏は見本の写真かな
北海道     藤林 正則
巣立ちたる子の部屋アニメの古暦
教室に残る一枚古暦
廃屋や映画スターの古暦
もうだれも住まぬ生家や古暦
厠には亡父の掛けたる古暦
兵庫県     山崎衣玖
休の字をひたすら書きて古暦 
渋滞に詳しくなりて古暦
二三言交わすお礼や古暦
古暦会ひたき人の名を記す
古暦未定の旅を練り直す
兵庫県     山崎ぐずみ
宇宙船J丸捨てぬ古暦  
新石器探す旅路の古暦
古暦古の字に合点のいかぬ人
古暦捨てかけ戻す庭箒
千葉県     土井探花
看護師の朗らかに嘘古暦
ブラジル     林 とみ代
古暦捨つるに惜しくそのままに 
うかうかと我も老いたり古暦
暦終るモネの庭園巡りして
なんとまあ企画ばかりや暦果つ
月々の払ひきちんと古暦
大阪府     椋本望生
徒で済まぬぞモナリザの古暦 
古暦焼いておさらばせり写楽
めくらざる日々もありしか古暦
古暦丸むや犬の擦り寄りて
古ごよみ換へる幸せ今朝の古稀
大阪府     太田 紀子
古暦外せし跡の壁の色 
手の残る白き埃や古暦
亡き夫の予定書かれし古暦
岡山県     渡辺牛二
古暦ジェームスディーンセピア色 
家捨てし日のまま残る古暦
埼玉県     守田 修治
捨てようと思うとき光る古暦 
○の日は母の忌日や古暦
覚えなきメモが三つも古暦
古暦ぶっきらぼうに退場す
古暦捨ててきっぱり大団円
岡山県     土屋 徹三
古暦春秋成して獲麟す 
不意に出し壁の落書き古暦
来年の診察日ある古暦
ロシア語の分からぬままに古暦
母の忌に赤丸残る古暦
東京都     まどん
老眼のだましだましや古暦
北海道     飯沼 勇一
通院の文字で埋めらる古暦 
古暦父逝きし後の余白かな
古暦哀しみばかりが詰まりけり
古暦十冊誇る九十歳
古暦せめて古稀まで戻りたし
栃木県     長浜 良
一年の歳のまたたき古暦 
切取し女優の写真古暦
出張は月曜多し古暦
三重県     平谷 富之
たくさんの 思ひ出残し 古暦
千葉県     山田 香津子
カタカナの母のメモ書き古暦 
めいめいの四色のペン古暦
みそか日に感謝の門司や古暦
リビングに家族と一緒古暦
古暦上総に生まれて土と生く
東京都     豊 宣光
吉凶に惑ひし日々や古暦 
古暦一枚ずつが思ひ出に
古暦燃やして過去を捨てにけり
浮世絵の江戸の香りや古暦
亡き父の筆跡残る古暦
東京都     岩川 容子
燃やすには惜しき美人画古暦 
余生にも照る日曇る日古暦
古暦我が来し方も塵とせり
古暦外せば壁の白さかな
ブラジル     玉田 千代美
思ひ出の遠くなりゆく古暦 
古暦過去の思ひ出なつかしく
古暦丸印つけ頼りにす
暮れて行く刻惜しむかに古暦
古暦老いて我が身について来し
愛媛県     アリマノミコ
引き継ぎを済ませ茶室の古暦 
避難所の窓際のかべ古暦
東京都     蘭丸
古暦いま在りし日を軸に据ゑ 
古暦祖母の高さに残る釘
東京都     山野柘榴子
丁重に剝ぎ取られゐる古暦 
残る日も平々凡々古暦
うすじろき金具を拭い古暦
仏壇に古暦あり一周忌
古暦か弱き風になびきけり
ブラジル     富岡 絹子
富士の絵を捨つをためらふ古暦 
半世紀異国に暮し古暦
美人画を仕舞ひて二年古暦
矢の如く月日は流れ古暦
古暦慌ててて書きしメモ残る
神奈川県     重兵衛
古暦○と△なんだつけ
古暦嫁ぎし娘の部屋の壁
ごみ捨ての古りし暦にある笑顔
ひと月は書込みのなし古暦
雨天決行朱き文字あり古暦
東京都     中田ちこう
暮れ果てる日の残りなく古暦
三重県     後藤 允孝
古暦嬉しき一事ありにけり 
入院をした日のままの古暦
病院と書くこと多き古暦
恙なく生きたあかしや古暦
古暦余白なきまでメモとして
埼玉県     哲庵
大安もあと一日や古暦 
古暦一日一句書き付けて
古暦一時帰郷の日を記す 
焼肉の脂の滲む古暦 
孤独死の部屋に残りし古暦
千葉県     横井 隆和
来る年へ繋げよ平和古暦 
三月のまま廃墟なり古暦
蔵入るを前に塩打つ古暦
金婚や山積む平和古暦
愛知県     斉藤 浩美
古暦ひときわ大き手術の日 
古暦わが家の匂い吸い込んで
指を切ることも仏滅古暦
余白には子らの落書き古暦
裏までも予定記され古暦
愛媛県     丹下 寿人
風が描く道のカンバス散紅葉
福島県     いらくさ
地震の日に〇を付けたる古暦 
葬送と桜にも〇暦果つ
月齢の絵の飛び交うや古暦
暦の終忌日ばかり数えて
十年飾る外つ国の古暦
兵庫県     中田 修
壁紙はそこだけ白く古暦 
古暦柱の傷は丈比べ
この家と今日でお別れ古暦
定年の文字うす暈ける古暦
いずこからともなく鐘が古暦
神奈川県     志村 宗明
旅に出づ日のかずかずや古暦 
返らざる月日を破り古暦
古暦ふり返ることまた楽し
岐阜県     蛙田 環
それぞれの文字捨てがたき古暦 
集う顔古暦に似て年とりぬ
捨てがたき苦楽を刻む古暦
古暦踊る絵文字や捨てがたし
帰省する無人駅舎に古暦
京都府     村田 稔子
花嫁の 父は笑顔で 古暦 
大地震 はがれた壁に 古暦
古暦 まとめて捨てる 旅立ちの日
孫誕生 日記にい綴じる 古暦
埼玉県     琴吹痴庵
しつかりと生きた証や古暦 
ポジションを奪ふルーキー古暦
喩ふれば余命いくばく古暦
神奈川県     成田あつこ
古暦われだけの知る印あり 
巻癖の取れし頃果つ古暦
子のつけし花丸赤き古暦
悪しきより良きこと多多や古暦
記憶なき印うすれて古暦
滋賀県     村田 紀子
赤丸が元気に跳ねる古暦 
母の手の温もり残る古暦
輝いた日もあったねと古暦
古暦横眼で眺め眉を引く
人去った窓辺に残る古暦
滋賀県     一斤染乃
ポタポタと蛇口刻めり古暦 
お役目を終ふる軽さや古暦
秒針に微か共振古暦
用無しとなれば愛しき古暦
加速して過去なる予定古暦
埼玉県     彩楓(さいふう)
特養への入所日のまま古暦 
アフリカの土壁海の古暦
遅滞なき地球の自転古暦
古暦裏にいろはの仮名稽古
浜風に端を捲られ古暦
北海道     栃木 渡
一葉が往生悪しき古暦 
君のごと女優微笑む古暦
友の死に黒丸つけし古暦
愛知県     佐藤 三郎
老いらくの行事彼是古暦 
年の瀬や共に暮らせし古暦
古暦除夜の鐘まで壁にあり
大阪府     鈴木 健夫
過ぎし日を鋏で切った古暦
神奈川県     龍野 ひろし
古暦心もとなき薄さかな
岐阜県     ときめき人
古暦曜日忘るる父を看る
神奈川県     矢神 輝昭
古暦煤けちまった初心かな
古暦コンロの下に葬られ
書き込みは殴り書きなり古暦
戦士らの疲労を染めて古暦
お待ちどうやっと日の目の古暦
神奈川県     海野 優
記念日と書かれしままの古暦
古暦懸けられしまま送る日々
神奈川県     原川 泉水
心急くあと数枚の古暦 
古暦経にし一年夢の中
古暦砂丘の風紋見る如く
良し悪しき均しく慣れる古暦
今はただ綾なす内省古暦
大阪府     永田
古暦書き込みあふれやや重し 
シュレッダー使わず手で裂く古暦
古暦ピン跡四つ残しけり
島根県     GONZA
慶き事の書き込み多し古暦
大阪府     津田 明美
母生きて墨痕遺す古暦 
古暦思い出語る余白文字
しばらくの日和賜わる古暦
古暦はずし柱の翳ぬぐう
古暦希望の欠片繰越ぬ
奈良県     平松洋子
古暦毎日埋った嬉しさよ 
富士旅行文字の弾みた古暦
古暦嫌な記憶をそっと消し
家族皆誕生日に丸古暦
古暦日記代りのメモも有り
岡山県     岸野 洋介
メモ書きをふり返り見る古暦 
老い鰥夫黙し替えたり古暦
古暦メモ多ければ捨てられず
亡き妻に声かけ替える古暦
あちこちに句のメモ残る古暦
兵庫県     岸野 孝彦
古暦もう終りねと妻の声 
古暦続くがごとく新暦
古暦流れる音は砂時計
燃えるゴミ悲しみ刻む古暦
明日だけがとわに続くや古暦
山口県     ひろ子
ひととせの短きことよ古暦 
災難の多き歳なり古暦
息災の日々を感謝や古暦
愛知県     寺尾 啓一
書き込みも一緒に焼くや古暦 
思ひ出は分別できぬ古暦
思ひ出も分別されて古暦
京都府     村田 高久
廃屋の住めし記憶古暦 
故郷の十月捲らぬ古暦
佳きことの多かりし年暦果つ
空き家に百恵ちゃんといる古暦
一と年の諸々去りて暦果つ
東京都     池本一軒
燦々と夕日の中の古暦  
古暦過ぎたる日日の美しきかな
古暦その書き入れのあれやこれ 
千葉県     伊藤 和幸
闘病も過去のことなり古暦 
抜け落ちし空白は何古暦
余生にも山や谷あり古暦
埼玉県     櫻井 玄次郎
気に入りし写真残すや古暦
神奈川県     長島 マミコ
その日々をやぶり捨てたし古暦 
古暦夫の小言は多かりき
古暦過去は言うまい言わせまい
神奈川県     井手浩堂
挫折せし日もその内に古暦 
故郷の煤けし壁の古暦
向き合うて茶をすすりをる古暦
古暦祖父と燃やしし遠き日よ
掛けし日のこと思ひ出す古暦
長崎県     平坂 謙次
年よれば時は束の間古暦 
一年の恥はかきすて古暦
一年のあれやこれやと古暦
書き込みの文字列辿り古暦
一年を表彰するよ古暦
東京都     神無
指先に未練残りし古暦 
古暦二枚残して冬となる
茨城県     あまちてる
古暦 裂いた月日は 我にふり 
あの日から 日付変わらぬ 古暦
熊本県     貝田 ひでを
顧みる訃報吉報古こよみ 
つくづくと後悔多し古暦
可も不可もなきを過ごして古暦
東京都     加果生
古暦とて気を抜くまいぞ申の乱
茨城県     須田 祥太朗
古暦 一日ずつが 近くなる
埼玉県     小林 桂子
体重は少し増えたり古暦 
思ひ出は思わずにおく古暦
古暦たれが決めしか去年今年
何もない日々を良しとし古暦
捨てかねて絵だけ切り取る古暦
神奈川県     川島 欣也
納屋棚の農事記録や古暦 
用済みのわが身にかぶる古暦
古暦焼却できぬ過去の傷
色模様を切絵に残す古暦
冬暦天動説に変わりなし
サンパウロ     西山ひろ子
和語ポ語とそれぞれ記し古暦 
一と年の我が家の日記古暦
誕生日命日も在る古暦
捨て切れぬ郷の鮨屋の古暦
奈良県     一人坊
何やかや 否応なしの 古暦 
今年こそ 今年こそはの 古暦
枯葉舞う 畑の小屋の 古暦
飲み会に 古暦肴に 釣果競う
数え年 古希も過ぎたり 古暦
千葉県     隼人
限りあるもの美しき古暦 
年月の過ぐるは早し古暦
古暦最終ページとなりにけり
充実の日々を重ねて古暦
大阪府     青星
古暦 ゆつくり閉じる 参考書 
鸚緑(おうりょく)の湯掴み想う 古暦
古暦 さえずり増える 小鳥かな
珈琲の 苦味深まる 古暦
飼い犬の 鼻息強く 古暦
静岡県     城内 幸江
父の部屋今なき店の古暦 
古暦娘の髪の黒くなり
古暦置いたまんまの電話帳
古暦母リハビリのなくなる日
神奈川県     塚本 治彦
平凡の続きし幸や古暦 
見飽きたる名所旧蹟古暦
憶えなき電話番号古暦
知らぬ名の記されてをり古暦
旋盤の油飛び散る古暦
山口県     山縣 敏夫
面白くやがて悲しき古暦 
騒がしき世なれど何時か古暦
古暦今年の顔が浮かび来て
何かしら明治懐かし古暦
古暦歩幅大きくなりにけり
千葉県     二階堂 脩一朗
数々の思い出めくり古暦
沖縄県     輝 龍明
父母(ちちはは)の皺気付くごと古暦 
古暦今日といふ日をしがみつき
古暦木の葉三枚居残りぬ
僕の部屋夕陽に染まる古暦
積み上げしガラクタ高し古暦
三重県     遊眠
地球儀を回して外す古暦 
古暦震度3には驚かず
厨房の君が手漉きの古暦
ときめきを静めて外す古暦
単身や捨てかねてゐる古暦
東京都     岩崎 美範
古暦三・一一の黒き丸 
あちこちに妣の文字あり古暦
古暦有馬記念で幕を閉ぢ
記念日に花丸つきし古暦
またひとつ馬齢重ねり古暦
東京都     内藤羊皐
古暦模造の般若面傾ぐ 
見逃せし絵画展あり古暦
ベンツにて僧は出にき古暦
湯の宿に日差し匂ふや古暦
古暦火曜日ばかりの丸印
愛知県     新美 達夫
一日を余して仕舞ふ古暦 
古暦意味の分からぬ走り書き
愛媛県     渡邊 國夫
めっきりと減りし飲み会古暦 
赤丸は娘の誕生日古暦
古暦デスクプランの旅ばかり
地震噴火豪雨の暦終りけり
暦果つ世のため何もできぬまま
新潟県     平田 由香里
古暦 めくる指紋の かさつきや 
古暦 小さき母が めくる朝 
透析の 古暦だけ 時止まる
古暦 あの店主もう いなくなり
朝ドラの 後でめくりし 古暦
北海道     ― 
せせらぎに 風景写し 秋流れ 
キムチ鍋 会話も煮込み 笑みこぼれ
震災で 呼べど答えぬ わびしさに
春の海 いづこに消えし ー人眺むる
春の海 呼べど答えぬ わびしさに
埼玉県     勝浦 敏幸
古暦逝きし友あり出会いあり 
古暦宇宙の果ての有無いずれ
夢破れ戻りし故郷古暦
地震続く地の客の来て古暦
強風に飛ばさるる日々古暦
宮城県     林田 正光
あの日から日にち薬なり古暦 
米印通院の日々古暦
楽しき日ところどころに古暦
古暦来るべき日来てまた待つ日
古暦裏を返してリサイクル
兵庫県     松下 孝裕
古暦気忙しき日の並びたる 
古暦やり直したきことありて
十一枚めくり今年の古暦
神奈川県     守安 雄介
古暦外せば壁に窓の明く 
一昨年の暦色褪す山家かな 
動きなば壁に揺れたる古暦
見返せば妻の字ばかり古暦
誕生日転記し捨つる古暦 
千葉県     柊二
ペン先に壁紙の音古暦
神奈川県     芳浪
隅っこに婆さん見つけ古暦 
忘れたいこともなくなり古暦
肩に落葉お疲れさまと古暦
片付かぬ婆さん一人古暦
老友と生存かくにん古暦
東京都     石川 昇
公も私も揺れた一年古暦 
断捨離を果たせぬままに古暦
神奈川県     佐藤 博一
喜怒よりも哀楽深き古暦
忘れたきことも思ひ出古暦
用件や予定を残し古暦
逢へし人別れし人や古暦
思ひ出を終ふが如く古暦
長野県     木原 登
シルクロードの旅の暦も果てにけり 
古暦今年成したる句いくつ
癌告知妻と聞きたる暦果つ
古暦妻に感謝のあるばかり
温故知新やよ励めよと古暦
東京都     住澤 義英
古暦我が人生と重ねけり 
鐘の音残り日数え古暦
古暦年惜しみつつめでたしへ
古暦明日が最後か箸を置く
懐かしやうれし恥ずかし古暦
宮城県     佐藤 公則
仏壇を 拝す老母と 古暦 
古暦 父を偲んで 老母の手
目をそむけ 埃に埋もる 古暦
笑顔して 子のめくりたる 古暦
年経りて 心で焚ける 古暦
千葉県     伊藤 博康
古暦余白は全てメモで満つ 
一年を切り取り終へし古暦
岐阜県     金子加行
よきことの歩みのメモや古暦 
崩れたる風景残す古暦
耐へ抜きし仕事の跡や古暦
古暦佳きこと幾つ二重丸
凡々の日々の軽さや古暦
埼玉県     岸 保宏
孫の顔良きことばかり古暦 
忘れ物探しに戻る古暦
花咲いてまた花咲いて古暦
神奈川県     パラレル
初孫のできた日のまま古暦 
減るほどに粗雑にめくる古暦
画鋲錆びいつ落ちるやら古暦
幾たびもメモ代わりとし古暦
古暦画鋲の穴も広がりて
京都府     真本 笙
デジタルよ資源よされど古暦 
歳毎に早終いかな古暦
京都府     北谷 匠
旧暦の 喜寿祝い酒 海苔づくし
兵庫県     藻川亭河童
三毛猫の太郎人語喋りぬ古暦      
縁談のまとまる気配古暦
同胞はみなお浄土へ古暦
にんげんの土に溶け逝く古暦
猿梅の塩吹き上がる古暦
滋賀県     了庵
この家の悲しみを知る古暦 
古暦丸め一年覗き込む
荒屋の柱になじむ古暦
古暦落書帳となりにけり
悩ましきマリリンモンロー古暦
京都府     欲句歩
特選の文字の赤丸古暦 
削除する友のアドレス古暦
古暦思い出せない走り書き
神奈川県     白銀
二十年 月日を経ても 古暦 
古暦 時間が立って メビウスの輪
還暦 十五年の  古暦
古暦  トイレに飾る 大雪日
古暦  かけ通し共に  苔生きる
新潟県     近藤 博
古暦終(つひ)の一枚感無量 
指(および)もて残る日数ふ古暦
戻りなく捲るに万感古暦
古暦ちぢに思ひの募らるる
古暦年を跨ぎて捲るとす
神奈川県     河野 肇
君の名をたづねし日あり古暦 
古暦富士山麓に父の影
古暦はるかなること美しき
ここにもゐる森の石松古暦
山麓に母のゐませり古暦
愛知県     岩田 勇
古暦幾人(いくたり)別れ来たりしか 
僅かにも病む妻無事や古暦
一年の無事収まりて古暦
古暦擦れし赤のサインペン
来る年の書き込みあまた古暦
兵庫県     岸下 庄二
その都度の句材メモある古暦 
古暦捲り今年を顧みる
作業場の日記代わりの古暦
帆船の写真切り抜く古暦
古暦良きも悪しきも知りにけり
宮城県     石川 初子
通院のしるし残るや古暦