俳句庵

1月『初春』全応募作品

(敬称略)

茨城県     あまちてる
初春の 気分も少々 受験生
あと何度 里で迎える 初春や
義父母越し 初春の京 遠くなり
初春に 一家元気の ありがたさ
初春に お帰りと笑む 裏の富士
東京都     池本一軒
初春の和太鼓天地に響きけり 
初春やホップステップジャンプして
初春や魁夷の道をはつらつと
神奈川県     龍野ひろし
初春の浅草に買ふ干支手拭
東京都     岩崎美範
願かくる水天宮の明の春
地震の地の復興祈る明の春
朝刊はいつもどほりに今朝の春
凧あがる異国に迎ふ明の春
朝風呂に皺首洗ふ老の春
愛媛県     渡邊國夫
ともに泣きともに笑ひて年新た
今朝の春いつものやうに猫来たる
老の春赤き花瓶に庭の花
「幸せかい」「ええ幸せよ」千代の春
人並みを願ふ下流の老の春
神奈川県     長島マミコ
千代の春松竹梅の舞扇
初春や所作は「梅にも春」なりき
明けの春まだ見ぬ日々は温かく
熊本県     貝田ひでを
初春や見慣れた景もありがたき
千代の春手帳に予定書き足しぬ
初春の日に日章旗眩しめり
初春や少し張り込む犬の餌
初春の鏡の吾に笑みもして
兵庫県     岸野孝彦
初春や万葉集の末飾る
初春や白亜の城の姫御殿
初春や世界平和と大書する
初春や昼寝の母は仏顔
初春やスマホを撫でる紅き爪
宮城県     林田正光
初春や京の和菓子のお取り寄せ
初春や絵馬重なりぬ昼下がり
初春の皇居一周汗光る
初春の日差しに浮かぶ江戸切子
有明の初春の海始動せり
山口県     山縣敏夫
初春や先ずは一句を詠みにけり
手に余る朝刊開ける今朝の春
おめでとう愛犬吠える今朝の春
初春に夫婦喧嘩を始めけり
古希迎え目出度くも無し今朝の春
京都府     村田高久
新妻の娘来たりて今朝の春
新春の茶湯ふつふつと迎えけり
明の春今年も変わらぬ散歩路
迎春の剪り残したる松の枝
新春の別雷の赤袴
岐阜県     金子加行
初春の北の原野に旅の人
初春の酒に約すや志
初春の航路選びし二人旅
ひとくちの酒で初春迎へたる
志持ちて初春散歩道
神奈川県     佐藤博一
初春や本当の空戻り来る
初春や折り目正しき街となる
もの全て定位置にある今朝の春
東京の軽くなりたる今朝の春
初春や生きとし生きるもの全て
東京都     住澤義英
初春や留める箸先朝ご膳
急ぎ足息の白さや今朝の春
初春や小枝に光る円ら雨
老いの春減りゆく便り年かぞえ
竹の葉に積雪揺れて宿の春
新潟県     近藤博
初春やまづは御明かし掌を合はす
初春や訪ふ人のなき老いふたり
初春やまずは一句をひねりけり
偕に老いともに寿ぐ明の春
朝つとに東雲拝む千代の春
東京都     内藤羊皐
初春の猫の残せる欠伸かな
初春や妻の乳房の湯に揺るる
初春や禽の揺すれる木立あり
初春の碁盤に溜まる陽射かな
初春の空に留まる飛行船
神奈川県     石鎚 優
初春や海に座禅の影法師
初春や空手の子らに波しぶき
初春や西行を見し相模灘
初春や亜細亜の海の祖霊たち
初春や忍び寄りたるテロリズム
愛知県     岩田遊泉
初春や遠く神楽の聞こえ来る
初春の未明の交番旗揚がる
初春の氏神様の太鼓鳴る
髭剃りてさて仏壇へ今朝の春
初春といふても二人酒一合
長野県     木原登
初春の声のびやかに鳩時計
縄文の泉湧きつぐ千代の春
去年逝きし人を瞼に年迎ふ
初春の船笛ひびく神戸かな
たまはりし齢たいせつ老の春
滋賀県     了庵
初春の紺より淡し湖の色
初春の郵便受けに旅の本
初春や神に供へる吟醸酒
初春の珠の音する神酒かな
初春のひかり纏ひて雀立つ
神奈川県     井手浩堂
初春の光あまねし千曲川
なだらかな野山をゆくや四方の春
ベランダに雀来てゐる今朝の春
嫁ぎたる子らも加はり家の春
張継の詩なる軸よ床の春
東京都     かつこ
初春に買ふと当たるや宝くじ
千葉県     柊二
甲冑のおどしを解かれ今朝の春
富山県     岡野満
文字踊る友の賀状や走馬燈
神妙に柏手を打つ淑気かな
健康の知識詰め込む寝正月
風呂敷に願いを包み初詣
フルムーン初湯いただく旅の宿
奈良県     平松洋子
初春のぽっくり待ちし幼き日
初春や父は熱めの燗を待ち
初春の羽根突き空へ高く飛べ
神奈川県     ―
初春の箱根路つなぐ襷かな
千代の春終楽章へたどり着く
折り紙のつる舞う色紙床の春
御籤買う善男善女宮の春
初春の歩行者天国日本晴れ
長崎県     平坂謙次
初春や山から山へ群雀
初春や年輪刻む御神木
初春のお茶に柱のおもてなし
初春の夢じゅんぐりの野原哉
初春の七福神の鼓笛隊
宮城県     石川初子
初春や猫の齢の我を越ゆ
埼玉県     やまちゃん
初春に一句詠みけり清々し
初春やこの青空をひとり占め
初春の浅草走る人力車
初春や手帳に記する句会あり
パラグライダー初春の空高く
兵庫県     紫 桔梗
初春や願ひ食み出す鶏の絵馬
初春や水門川の水清き
初春や少し紅濃く朝市女
初春や孫手作りのカレンダー
初春や振る舞ひ酒に長き列
大阪府     津田明美
初春やどこか華やぐ九十九髪
初春の故山を統べし茜かな
初春や足取り軽き配達夫
初春の水やはらかき厨かな
初春の茜に展ぐ山河かな
東京都     紫寿
季重なり 試行錯誤で 初春句
松籟に 初春らしく 紙垂が舞う
初春や 靴紐解きて また結ぶ
東京都     福紫
初春の 紙垂は情けの ない素振り
初春や 街に溢れる 福袋
初春を 寿ぐ孫の ア・リ・ガ・ト・ウ
東京都     紫酉
初春や 松韻奏す 春の海
初春や 真白き靴に 泥はねる
初春や 傾き正す カレンダー
山口県     ひろ子
初春や孫の受験日迫りくる
掛け軸の初春祝う日の出かな
酌み交わす屠蘇や息災有難し
栃木県     長浜 良
初春や隣人老ひて笑み深し
初春や今朝物売の愛想よき
小吉の巫女の莞爾や今朝の春
初春の潮岬へあらたなり
初春や歩はゆるき観世音
新潟県     のばら
初春に掛け軸鳥も飛ぶような
初春に下ろしたる新歯磨き粉
甘えずに生きて初春一人良し
健脚を願い初春マラソンす
初春の空に願いし平和あれ
神奈川県     塚本治彦
初春や車中に匂ふ髪油
初春の長寿言祝ぎ介護かな
初春の牛舎に仔牛産まれけり
初春や巫女の舞ふ手に鈴の音
初春や河馬長々と大欠伸
大阪府     椋本望生
樟脳に会ふ初春のコンコース
初春の顔して孫を迎へけり
袖に触る初春の風古稀の風
初春と言へど百度の石を踏む
滋賀県     一斤染乃
初春と書く墨の香や一画目
初春や心の皺に陽を当てて
初春の陽の射し込めり母の皺
朝刊の挿む初春届けらる
初春を粧す電車のラッピング
大阪府     金成愛
初春や波打ち際を無我夢中
初春や第二ボタンをはずすふり
初春やたちまち古ぶ詩のあたま
初春にしてもつくづくあをいそら
初春のみてらゆかしくおはすかな
東京都     佐藤博重
初春や句碑の署名は「万」一字
初春やぽつくり履いて石畳
おぢいちやん将棋指そうよ今朝の春
見慣れたる不二の高嶺も今朝の春
はつはるやとんとんとんからりととなりぐみ
三重県     後藤允孝
初春や絵馬幾重にも重なりぬ
初春の雄鶏の声高らかに
訪客はみな初春の顔をして
初春や迎ふる白寿祖母祝ふ
初春にまた書ただす遺言書
三重県     平谷富之
散髪し 心も変へて 初春を
初春の 決意も新た 句に挑む
健康の 喜び噛みしめ 初春を
愛知県     佐藤三郎
初春や四代揃いて屠蘇祝う
植えし木も柱となりし初春や
初春や熱田七里の蛤の里
島根県     柴田
初春はコタツにこもり待つ桜
岐阜県     ときめき人
初春の香り漂ふ朝風呂す
三重県     遊眠
初春や雀三羽の宙返り
小手ひとつ取つて始まる今朝の春
初春の青き地球の香りかな
神奈川県     成田あつ子
初春や朱の塗椀の光(かげ)零れ
初春や富士と対峙の高き窓
初春や半襟代へる絹の糸
初春や仕付け糸抜く鮫小紋
ブラジル     林とみ代
初春の波止にはためく大漁旗
初春の夜空飾れる星数多
初春の海の彼方に里偲ぶ
初春を応化して居る若さかな
初春の句心ゆする山の景
ブラジル     広田ユキ
孫ひ孫初春の顔揃ひたる
初春や異国ぐらしも身に付きて
初春や孫のなん語のきりもなく
この国に老いて悔いなし今朝の春
余生とは云いたくはなし老の春
埼玉県     守田修治
初春や七十六歳無垢の朝
目覚めては猫の子わが子今朝の春
書を売って居間の広さよ今朝の春
初春や服靴帽子九年もの
初春や松が見栄切る寛永寺
滋賀県     村田紀子
初春の雲はにかんで光りだす
初春の鳥居をくぐる喜寿の朝
初春の雲に乗りたい語りたい
若き日の夢語り合う初春や
初春や雀も喜び会いに来る
ブラジル     玉田千代美
初春の突くはずも無き杖を買ふ
語るにも忍ぶこと増え老の春
初春や皆の幸せ祈り居り
ポケットに季寄せ一冊年迎ふ
愛知県     斉藤浩美
朝刊の嵩初春を載せてくる
千代の春地震ふる国に生まれ出て
明の春いまだこの村施錠せず
扁額の一字一字に千代の春
初春や太平洋に勇魚の尾
岡山県     岸野洋介
初春や爺と子らみな日溜りに
初春や緋をひるがえすバイト巫女
初春の五社巡りする歩の確か
初春や茶のみの友の祝詞うく
初春や破顔一笑老い鰥夫
埼玉県     櫻井 玄次郎
初春の歌舞伎座集ふ晴れ着かな
初春の木遣り響くや雷門
初春や浜風抜ける勝鬨橋
東京都     中田ちこう
初春や過去あらためる背伸びかな
京都府     欲句歩
初春の昨日と同じ御漬物
初春やぴったりに鳴く鳩時計
愛知県     川俣周二
初春やひとつ少なき祝箸
初春の膳を供えて祈りける
初春や朝の空気のぴんと張り
初春や熱田の杜に鳩の飛ぶ
初春や少なくなりし日本髪
千葉県     伊藤博康
犬小屋を覗き初春祝ひけり
初春や優しく聞こゆ下駄の音
千葉県     横井隆和
鶏鳴や富士に筑波に今朝の春
初春や阿吽の相に泣く童
開け放つ奥間へ射し来る今朝の春
千葉県     隼人
初春や人で華やぐ仁王門
初春やほんのり赤き頬の妻
儀式張り挨拶交す今朝の春
大阪府     永田
初春や靴下一足買い替へて
初春やペディキュア銀にでもブーツ
岡山県     渡辺 牛二
初春の雀朝よりかしましき
初春や園に鶴舞ふ晴れの国
初春や地酒ぶらさげ友来たる
神奈川県     相模太郎
初春の海苔篊の海耀けり
富士に向かひひたすら走る今朝の春
頂きし米寿の命今朝の春
恙なく迎えし米寿今朝の春
さやかなる米寿の気力今朝の春
千葉県     みやこまる
初春の鎮守の森を透く光
餅の白ほどの倖せ今朝の春
筆文字も墨の香のなき今朝の春
初春の午睡に揺るる御籤かな
初春や虚空蔵菩薩の笑みに触れ
東京都     岩川容子
初春や抱負膨らむ胸のうち
鳥の来て樹と話しをり明けの春
初春にまあるい笑みの孫を抱く
いささかの幸せ願う老いの春
東京都     伊藤訓花
初春のきずひとつ無き空の青
初春や湾一枚の凪畳
初春やうろくずひかる瀬戸の海
初春の老松にふる日の斑
初春やこころの踊る一行詩
埼玉県     彩楓(さいふう)
初春の風の天上麒麟かな
初春のキネマホールのシャンデリア
初春のソファーに眠る稚(やや)と猫
初春の庭やオウムの金の籠
初春の引っ越し火曜大安に
兵庫県     山崎衣玖
初春や赤き花弁を描いてみる
初春へ金銀の枝飾りけり
初春の札九十二枚の記名
初春は会へば寿ぎ溢れ満つ
初春や鈍く光れる石鳥居
埼玉県     琴吹痴庵
初春やお岩木は物言わぬ山
初春の光を集め天守閣
初春や検問する人される人
埼玉県     西村小市
初春や上屋に汽笛の余韻あり
初春や切子の猪口の大吟醸
初春や電子レンジをオフにする
初春や踏切の鐘よく聞こゆ
初春や停戦ならず満つ煙
千葉県     山田香津子
初春や弊新しき村祠
初春や夢にむかいて子はパリに
初春や抱き上げ嬰のあふる笑み
初春やセキレイかるく礼をして
初春や子らのズックを干す農家
静岡県     城内幸江
初春や古伊万里に盛る母の味
初春や書道教室新たな子
初春や野良猫の名のひたつあり
初春や子の着れぬ服溜まりけり
初春や診察券のひとつ増え
東京都     笹木弘
初春の山々つなぐ送電線
初春の陽に光りたる湖面かな
初春の浅草めぐる人力車
初春の天辺賑はふ高尾山
初春の社に集ひ句会かな
大阪府     太田紀子
初春の畔に白鷺舞ひ降りる
初春や五軒の山家に日の光
初春のいつものやうなオリオン座
埼玉県     小玉拙郎
初春や変えないことと変わること
初春やゆうべ揃えた靴を履く
埼玉県     哲庵
初春や祖母丹精の梅開く
初春や浅黄の空を鶴渡る
初春や水穏やかに隅田川
初春や藁で編みたる尾長鶏
初春や三代で踏む鏡獅子
千葉県     藤原純夫
初春に病婦の如く墨を磨る
初春や我を覗きて墨を磨る
初春の祝ふ唄声歩も弾む
初春や寿ぐ読経首を垂れ
神奈川県     重兵衛
朱色なる東京タワーや今朝の春
東京タワーに昇る一家や今朝の春
初春や振袖姿とジーパンと
老若の混じる初春朝賀かな
山国の出で湯の熱き今朝の春
兵庫県     中田修
初春やみくじ引く手はおぼつかず
初春や甲羅干しする亀二匹
明けの春包みの厚さ確かめん
初春や骨董眺めて小半日
路地裏におこぼぽくぽく今朝の春
福島県     いらくさ
初春を父に抱かるる骨の娘よ
明の春小さき者の顎から
初春なれば毀れ家の鬼も舞う
今朝の春我に靨があるらしい
初春や秒針のあるミッキーマウス
東京都     蘭丸
初春や言葉を選ぶ競馬場
初春や拳闘の手は善を積む
兵庫県     山崎ぐずみ
初春や猿を飼はむと夫の言
初春や富士のお山と背競べ
初春に俄か一茶のふて寝かな
初春や七十五億という地球
初春や曲がりなく行くリニアカー
神奈川県     髙梨 裕
初春や実は十両の門飾り
初春の乳房豊かに富の国
初春や生一本の客来り
初春や子と飲む酒の有り難き
初春の神社に鳩の広がりし
京都府     中村 万年青
初春や何かいい事ありそうな
初春や心も軽く身も軽く
大空を飛行機の翔ぶ四方の春