俳句庵

10月『紅葉』全応募作品

(敬称略)

千葉県      柊二
紅葉一本龍神の水の風
東京都      石川昇
高からぬ山も紅葉の盛りかな
上質の風が道連れ紅葉狩
新潟県      近藤博
山紅葉空中散歩やロープウェー
露天の湯屋根をなすがに夕紅葉
日を重ね濃き彩なせる山紅葉
一瀑の飛沫(しぶき)ひたひた谿紅葉
谿紅葉一瀑奥にどどと落つ
神奈川県      白銀
紅葉が 実る三五の  季節なり
我が思い  心の紅葉  ジェラード
いろは坂 くねくね走る 紅葉の木々
紅葉で どきどき鳴るに 心の臓
紅葉が まぶしくてある ひ孫の手
京都府      田端敏弘
三山の今日の紅葉を見る二人
紅葉葉の少し色濃き処まで
紅葉葉や一期一会の躙り口
御神体逃し血染の紅葉かな
いろは紅葉同窓の時巻き戻す
愛知県      岩田勇
何時の日か思い出せねど紅葉川
紅葉山出でて暫く空ろなる
一服のおうすに浸る紅葉かな
禅寺の紅葉かつ散る作務最中
紅葉照る暗闘の碑や名古屋城
埼玉県      飯塚璋
静かなる紅葉映れり山上湖
大阪府      金成愛
寓居ゆゑ押し入る紅葉明かりかな
大分県      小野山 道山
廃城と 廃寺の小径 初紅葉
もみぢ葉や 康成縁(ゆか)る 酒を酌む (久住高
前撮りの 白無垢匂ふ 薄紅葉
紅葉狩 赫きを栞り 山路行く
座右(ざう)の書の 栞にしたき 薄紅葉
神奈川県      森山茂
渋滞の高速道で紅葉狩り
紅葉を栞替わりに配る店
紅葉の流れる水面空映る
続き読む紅葉挟んだ頁開け
東京都      坂田誠太郎
太陽に透けて紅葉の大樹かな
吊り橋を渡りここより紅葉山
紅葉を描く子供らそれぞれに
紅葉の底にダム湖の光けり
紅葉照る水辺にモデル微笑みぬ
神奈川県      守安雄介
千年のドボ影囲う紅葉かな
今年また紅葉に負ける飲み比べ
洋風の邸宅飾る大紅葉
草木にも血栓ありと紅葉山
溶岩の流るる如き紅葉谷
宮城県      福田良光
水を飲むニホンカモシカ紅葉山
紅葉の色まだ薄き「いろは坂」
湧き水の辺り色濃きもみぢかな
紅葉に継ぎはぎしたる針葉樹
拾い上げもみぢ一葉の灯りけり
愛媛県      渡邊國夫
銀杏黄葉限界集落坂多し
紅葉燃ゆ試歩の時間の長くなり
山路来て紅葉の中に瀬音聞く
茅葺の反りのゆるやか紅葉寺
雲去りて紅葉の湖となりにけり
千葉県      伊藤博康
食膳に庭の紅葉を借りにけり
蒼天が紅葉の奥に見へ隠れ
今朝見れば山の紅葉の下りをり
言葉無く紅葉の中に浸りゐる
考へるでもなく歩き散る紅葉
宮城県      林田正光
湖や小島小島に照紅葉
ゴンドラの紅葉の樹海下山かな
誰一人観ることもなく渓紅葉
宿坊に紅葉のための窓三つ
戦国の時代も知るや蔦紅葉
岐阜県      金子加行
未だ誰も踏まぬ山道紅葉色
紅葉に映へる緑や古街道
山ガール数を増したる紅葉山
吊り橋に紅葉眺める余裕なく
風強き標高なるや紅葉酒
神奈川県      佐藤博一
鎌倉や紅葉且つ散る切通し
曲がるたび紅葉濃くなるいろは坂
山山のその谷谷の紅葉かな
かき混ぜてサラダにしたき紅葉山
吊り橋を渡って来る紅葉かな
東京都      内藤羊皐
夕紅葉北野の杜に鬼ありく
翔ぶ天狗紅葉の裾を高尾山
澪尽きて湖を紅葉は燃ゆるがに
まなうらを紅葉の川の映ゆるなり
義仲寺の静寂を紅葉匂ひをり
奈良県      堀ノ内和夫
箱根路の軋む鉄路の紅葉かな
街路樹の坊主にされて紅葉せず
川の音紅葉半ばの湯宿かな
兵庫県      噂野アンドゥー
京都行く 山村紅葉 サスペンス
七輪で 真っ赤に焼けた 紅葉かな
木枯らしが 紅葉紅く 染めてゆく
帰り道 紅葉色の カーペット
雨降って 紅葉彩る 嵐山
アメリカ     鈴木良子
シエラー嶺に映ゆる鉄塔紅葉晴
パサデナで母の産声街もみじ
ロッキーの山岳リゾート夕紅葉
スマホ撮る指先染める照り紅葉
ミサイルの飛ばぬ世界や天高し
埼玉県      岸保宏
塾帰り紅葉の灯り照らされて
奥秩父紅葉の波に櫛を入れ
夕日にも負けぬ紅葉の棚田かな
神奈川県      石鎚 優
怒りといふ美しきもの紅葉せる
胃カメラの臓腑に見ゆる紅葉かな
救急車夜の紅葉を照らしけり
アルバムは破り捨てたり山紅葉
徘徊の母はゐませり薄紅葉
岐阜県      ときめき人
燦々と山門包む紅葉ぞ
東京都      坂本美恵子
もみじ葉は水面に移り色さえて
白杖で山道ぶらり紅葉狩り
滋賀県      東野了
吊橋のロープに触るる薄紅葉
赤色のちびたクレヨン照紅葉
ハイカーは老人ばかり紅葉晴
紅葉かつ散るブロンズの裸婦像に
湖に映る逆さの紅葉山
宮城県      石川初子
「坊ちゃん」に紅葉をはさみ渡しけり
東京都      岩崎美範
はかなきは夏の花火と夕紅葉
杖を手に巡る秩父や紅葉晴
火の鳥と化せり日暮の紅葉山
読みさしの句集に挟む紅葉かな
全山を赤きマントに夕紅葉
三重県      平谷富之
紅葉色わけへだてなく街を染め
心まで燃え尽きさうな紅葉かな
兵庫県      岸野孝彦
石苔の翠重なる紅葉かな
旭岳涸沢吉野の紅葉かな
天ぷらの紅葉は甘き箕面かな
一人行く始発電車の紅葉かな
山ガール想い巡らす紅葉かな
神奈川県      井手浩堂
外国語とび交つてをり紅葉下
回廊は紅葉明りに建長寺
切通し抜けて眩しき照紅葉
笛の音に牛の集まる草紅葉
水音の時に変はりて紅葉谷
千葉県      秋山滋
温泉と酒が本線紅葉狩
紅葉狩駅で配りし名所マップ
崖崩れ見て見ぬ振りの紅葉狩
山姥の戸惑いてあり散紅葉
兵庫県      山地美智子
新しき紅葉一枚苔の上
山紅葉日暮れて彩を失へり
トンネルに入るや瞼に照紅葉
草紅葉踏まねば車避けられず
清水の舞台紅葉の上にあり
東京都      佐藤博重
紅葉狩列車の座席向き合はす
朝紅葉ことことこつとん水ぐるま
奈良県      平松 洋子
紅葉の栞ぽろりと文庫本
初紅葉突いてみたり透かしたり
名水も紅葉の一枚から成りて
山口県      ひろ子
読みふける桜紅葉のしおりかな
草紅葉ゴルフボールのかくれんぼ
静岡県      城内幸江
母の手をやさしく握り初紅葉
暖色のクレヨン縮む紅葉狩
通学路もみぢと歩くランドセル
湖を覗き込みたる紅葉かな
愛媛県      向井桐華
草紅葉母の背まるくなりにけり
櫨紅葉京都ことばのはんなりと
山紅葉裾野はあかくあかく燃ゆ
神奈川県      川島欣也
吹き曝す紅葉且つ散る五百羅漢
歳時記の栞に紅葉はさみけり
白帯を洗う紅葉の大谷川
イロハ坂湯の湖へこえる紅葉がり
ライトアップ沈む紅葉を浮かべけり
山口県      山縣敏夫
トンネルを抜けて左右に紅葉山
もみづるや世界遺産の安芸の島
妻と犬 連れて散策紅葉川
反り橋の上から見遣る紅葉山
大鳥居抜けた途端に紅葉茶屋
神奈川県      塚本治彦
紅葉川かつて獺をりし里
吊橋を猿渡けり紅葉谷
登りつめ紅葉の宿に泊まりけり
宿坊に汲む般若湯夕紅葉
紅葉寺吉祥天の頬染めて
大阪府      藤田康子
夕紅葉さらに夕日の重なりて
足庇ふ姉と訪ねし紅葉かな
東京都      かつこ
枝々に色を重ねし紅葉かな
住む町の紅葉楽しむ老夫婦
長野県      木原登
就中雲場ノ池の紅葉かな
三段紅葉見せてかがやく穂高岳
戸隠の紅葉を映す鏡池
奥入瀬は瀬音入りなる紅葉かな
石投げて紅葉散らせし日のはるか
大阪府      津田明美
石庭に赦す紅葉の一葉かな
それからをはるかに君と紅葉坂
九十九折れみたび振り向く紅葉坂
人生の過客も染めて紅葉坂
躍動は絵になり鎮む紅葉晴
神奈川県      シュリ
もみぢ葉よ干菓子が並ぶ黒き盆
もみぢ葉よお握り冷ます皿二枚
もみぢ葉よ影も朱になる鏡池
もみぢ葉よ幼き口に紅を指す
もみぢ葉よ一筆箋に朱文印
神奈川県      矢神輝昭
涸沢の紅葉追ひ立て山颪
鐘撞堂紅葉はらはら日が沈む
山の茶屋客と店主に降る紅葉
二人連れ手折る紅葉や照れ隠し
老ゆらくの恋を彩る紅葉かな
岡山県      岸野洋介
吊り橋の大きく揺れて谷紅葉
考える人の像前紅葉散る
廃業の湯屋の煙突つた紅葉
谷紅葉名水もとめ人絶えず
ゴンドラに迫る紅葉に息をのみ
三重県      後藤允孝
吟詠は紅葉明かりの寺苑かな
緑なす森に一筆薄紅葉
山肌は火炎に巻かる紅葉かな
紅葉の苑に野点の人集ふ
紅葉は自然織りなす芸術美
東京都      中田ちこう
訪問医待つ窓あふる庭紅葉
ブラジル      林とみ代
遠ざかる鎮守の杜の紅葉かな
手作りの弁当美味し紅葉狩
高野山の紅葉並木に頬染めて
銀杏紅葉目当に訪ふ里の家
ふるさとに名残惜しみて紅葉狩
山梨県      天野昭正
吊橋に来て眺めるや渓紅葉
夢に見し京の紅葉の中にをり
夕暮れや灯をともしたる紅葉茶屋
両岸の紅葉映して神田川
紅葉に遅速のありて国境
神奈川県      松風子
神木の銀杏紅葉の誉れかな
連山に火の手のやうな紅葉かな
てにをはの千変万化紅葉山
奥行きの知れぬ大寺夕紅葉
碑の華やぎにけり紅葉して
奈良県      一人坊
かしわ手と 孫と過ごせる 紅葉狩り
いざ雨後の 夕陽と紅葉 へんろみち
渓流を 見せ隠すして 紅葉路
ブラジル      西山ひろ子
庭の木の紅く黄色く紅葉づりて
絡み合ふ蔓の先より紅葉して
庭隅に家守る南天紅葉かな
紅葉濃く連ねし山の日に映ゆる
立子句碑あるブラジルの寺紅葉
ブラジル      玉田千代美
悪筆を隠すごとくに紅葉入れ
船足をゆるめて眺む紅葉島
機の旅に紅葉手振つて孫可愛い
東京都      伊藤はな
一軒をまるごと覆ふ蔦紅葉
野を渡る風のかたちに草紅葉
新調の釣竿持つて渓若葉
弁当や庭の紅葉に文添へて
夕映にかがやくあかり薄紅葉
福岡県      西山勝男
紅葉晴六郷満山ふところに
言問はば湖東三山紅葉晴
嵐峽の奥より初むる紅葉かなあ
一山の浄土と化する照紅葉
紅葉照る通天橋を影と添ひ
神奈川県      海野優
九十九坂紅葉景色のひとあまり
櫨紅葉裏へ廻れどただ紅葉
紅葉をひとり占めして露天の湯
龍田姫化粧を急ぐ瀬音かな
紅葉狩り言い訳めいて酒の席
埼玉県      よしこ
川縁の紅葉も似合ふ隅田川
一葉を手帳に挟む紅葉かな
灯を点す浮き立つ色の紅葉かな
足止めばいろは紅葉や山の路
けもの道奥の奥まで紅葉かな
神奈川県      龍野ひろし
露天湯や紅葉彩る屏風岩
ゴンドラの一気に迫る谷紅葉
神奈川県      原川泉水
陽を受けて黄葉一枚地に還る
紅葉のきらめき池に照り返し
酒酌みて広葉樹下の談賑し
燗の香を含む黄葉樹林風
山里の容姿変えゆく広葉樹
愛媛県      加島一善
神護寺の一段毎の紅葉かな
青空に血脈透ける紅葉かな
大原の尼僧見守る紅葉かな
ライト点け阿弥陀見返る紅葉かな
門跡に姿映すや床もみじ
神奈川県      皆空眞而
眩(まばゆ)くて少し哀しき紅葉かな
紅葉が崩れて鯉は翻り
紅葉して蒼穹更にあを深し
大阪府      太田紀子
裏山の日影の紅葉色深し
初紅葉団地と道路の境にて
夕紅葉遠ざかりゆく新幹線
東京都      住澤義英
掃く音に鐘音遠く夕紅葉 
今日よりも明日見る紅葉負けはせず
紅さすと鏡のなかも紅葉色
二人旅紅葉の先に今日の宿
観世音積もる手のひら山紅葉
神奈川県      月野木 若菜
生き死にを彷徨へる人薄紅葉
八寸を引き立ててをり櫨紅葉
紅葉一葉挿み入れ封閉ぢぬ
薄紅葉けふ新しき命生れ
密やかに尼寺覆ふ紅葉かな
北海道      飯沼勇一
紅葉に色づく雨滴帰路急ぐ
かざす手の裏まで透かす紅葉かな
初紅葉報道陣の五・六十
一村の紅葉桜紅葉より
窓開ける紅葉山どっと雪崩れこむ
千葉県      入部和夫
足下に見下ろす下界谷落葉
湯の宿に草履を脱いで紅葉山
岡山県      岡村正美
氏神の手水に映る紅葉かな
氏神の手水に紅葉五六枚
夕紅葉ダウンベストの老夫婦
朱の橋を掻き消すほどの紅葉かな
仏間越し枝を縁取る照紅葉
京都府      新井ゆかり
いっぱいの幸せ願う紅葉の手
前を行くあなたの肩に舞う紅葉
神奈川県      成田あつ子
紅葉から紅葉へ渡る橋朱き
色づけばそこに紅葉のありしかと
百号の紅葉の絵なるバスの窓
山裾のもみじ葉纏ふ日の匂ひ
小流れに友禅のごと紅葉かな
東京都      岩川容子
女人堂ひときわ赤き夕紅葉
紅葉燃ゆ不戦の国を誇りたる
昨夜の雨紅葉の紅を深くして
旅したき紅葉の赫の褪せぬまに
東京都      右田俊郎
雨上がり夕日の染める紅葉山
語り部に耳傾けて眼は紅葉
目の見えぬ人に紅葉を語りをり
湯に浸かり紅葉を愛でる至福かな
夕紅葉五重塔の長き影
愛知県      ―
頼るものひとつとてなし草紅葉
山紅葉羽音大きな荷揚げヘリ
山紅葉ものおじもせず下りてくる
名刹の木々にあらねど初紅葉
蔦紅葉礼拝堂を絡めとる
東京都      遠山比々き
鼓動をきく懐紙のなかの紅葉かな
千葉県      横井隆和
・流るるや琴の音裾の紅葉川
・小漆の紅葉燃え立つ丸一山 
・峰白く一夜に湯屋の紅葉晴れ
・銀ママの裾に着流す夕紅葉
滋賀県      村田紀子
読経する水面に浮かぶ紅葉かな
早朝に紅葉掃く音雉の声
猫と子の遊ぶ姿や蔓紅葉
大阪府      椋本望生
紅葉着てノックしてみる濁世かな
ポーズ取る雑木紅葉の顔をして
一拍の長き弔辞や散紅葉
朝な朝な紅葉且つ散る野良着かな
亡き父の柞もみぢを担げくる
愛知県      新美達夫
三尺に満たぬ若木も紅葉れる
巌より出でし小枝も紅葉れる
門前の名代蒟蒻紅葉寺
林道の閉鎖も近し山紅葉
神奈川県      重兵衛
癌といふ友と連れ行く夕紅葉
訪ね来て先ず紅葉を褒めにけり
連山は紅葉の赤と黒き陰
埼玉県      守田修治
紅葉見に今日も出かける車椅子
喜寿となり一人で祝う紅葉宿
正面に紅葉を据えて上棟式
窓開けて一山紅葉茶碗酒
兵庫県      山崎衣玖
ワイパーに紅葉車は里を発つ
紅葉入れ袋掲げる園児かな
川面行く紅葉小人の舟のごと
名所とは知らず紅葉に教へられ
紅葉一片大人へとなりにけり
千葉県      下総真里
ニッカポッカの人が紅葉の目の高さ
紅葉の激しきうちに泣いておけ
ふくよかに白き人骨紅葉山
大田区     飯田哲司
紅葉や日ノ本かざる大アート
有終の色そえ競う紅葉樹
幼子の手のひらしのぶ紅葉かな
神奈川県      髙梨裕
無住寺に居付く紅葉の真っ赤なり
これからも夫婦の湯飲み庭紅葉
農の手の晩酌二合赤紅葉
外灯に照らされ今日の紅葉かな
絵手紙や紅葉一葉をあの人に
京都府      中村 万年青
里山は山の上から黄ばみけり
松の木に一もと赤き蔦紅葉
もみじばの柿の葉寿司の旨かりき