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- 俳句庵 2018年07月 作品一覧
俳句庵
7月『晩夏』全応募作品
(敬称略)
- 愛知県 遊泉(ゆうせん)
- 三山を巡りて帰る晩夏かな
- 伊吹山(いぶき)より琵琶湖眺める晩夏かな
- 微睡めば少しくまぶし晩夏光
- 農終えしトラクターの列夏深し
- 晩夏光映えて静まる余呉湖かな
- 大阪府 藤田康子
- 一抹の夢かたはらに晩夏かな
- 哭くことも追ふこともなき晩夏かな
- 新潟県 近藤博
- 青の峰たなびく雲に晩夏光
- なほ強く晩夏の日差し肌を刺す
- 草も木も茂り落ち着き夏深し
- いくそたび指折りひねる晩夏の句
- 晩夏光はるか海境(うなさか)落暉かな
- 兵庫県 岸下庄二
- 工場のサイレン響く晩夏かな
- 日めくりの嵩低くなる晩夏かな
- 故郷の一足早き晩夏かな
- 単線の特急待ちの駅晩夏
- 文机に小さき地球儀晩夏光
- 大阪府 金成愛
- 晩夏光再た読みだしぬ古事記かな
- 世界平和あしたもつづく晩夏光
- 千葉県 冨田柊二
- 参列の夫婦(めおと)の杖や晩夏光
- 愛媛県 渡邊國夫
- 紙漉の町のうだつや晩夏光
- 一病は長寿の因や夏深し
- 老犬の小屋の並びて夏深む
- ふる里の訛のまじる晩夏かな
- 愛用の古しワープロ夏深し
- 東京都 石川昇
- 素麺を食い尽くしたる晩夏かな
- 余生にも明暗ありて晩夏光
- 東京都 岩崎美範
- モダンジャズ狂ほしく鳴る晩夏かな
- またひとり畏友旅立つ晩夏かな
- コーラ飲む原爆ドームの晩夏かな
- 天使住む新大久保の晩夏かな
- 果てしなく線路の続く晩夏かな
- 神奈川県 佐藤博一
- 雲にまだ力の残る晩夏かな
- tシャツもくたびれ果てし晩夏かな
- 宿題のやっと終わりし晩夏かな
- 砂の城波が引き去る晩夏かな
- 老い二人少し息抜く晩夏かな
- 岐阜県 金子加行
- 旅鞄疲れの目立つ晩夏かな
- 点滴に注射に慣れし晩夏かな
- 大旅行終へたる疲れ晩夏光
- 耐へ抜きて魂売りて晩夏かな
- 病む母を慰む努めはや晩夏
- 長野県 木原登
- いつも来る赤松林けふ晩夏
- 流木に残照われに晩夏光
- 少年が沖見つめゐる晩夏かな
- ゆく雲を追うて晩夏の雲来る
- 牧牛の遠く草食む晩夏かな
- 千葉県 伊藤博康
- 晩夏とは言へど猛るや庭の草
- デモに行く気持ち先行晩夏なり
- 牛啼ひて晩夏の昼を迎へけり
- 川幅の細くなりたる晩夏かな
- 忘れ物思ひ出せなき晩夏かな
- 神奈川県 守安雄介
- サンダルの鼻緒の切れる晩夏かな
- 返事無き友へのメール早や晩夏
- ビーナスの笑窪懐かし晩夏かな
- 浜に積むボートの覆い夏終わる
- 水切りの二十を超える晩夏かな
- 東京都 安西信之
- 老い二人雨の外ゆる晩夏かな
- 栃木県 鹿沼 湖
- 鉛筆の短くなりて晩夏かな
- 海岸の夜気まとはりて晩夏かな
- グローブとボールを置きて晩夏かな
- 中指の包帯ほどけ晩夏かな
- 食堂の献立減りて晩夏かな
- 神奈川県 白銀
- 晩夏の頃 蝉鳴く時期に 夕映えの詩
- 山からの 雄叫び声は 晩夏に沈む
- 明け方の その物語 晩夏という
- 夏が来る 切ない愛の 晩夏歌
- 晩夏とは 秋暮れている 1人静
- 東京都 片桐啓之
- ふと風の心地好き晩夏の夕暮れ
- 雲の間の空の青濃き晩夏かな
- 落日の朱く大きな晩夏かな
- アルヘイ棒回り止まない晩夏光
- 海晩夏寄せ来る男波また女波
- 徳島県 白井百合子
- 野の花を生けて一輪晩夏なり
- 薄着して鼻水すする晩夏かな
- とぎ水もバケツに溜める晩夏かな
- 雨あがり虫賑やかに晩夏なり
- 宮城県 林田正光
- 甲子園汗と涙と晩夏光
- 晩夏とは旅の終わりの静寂かな
- 晩夏光遊び疲れた昭和の日
- 青森県 竹浪誠也
- 腕白きままに晩夏の入院棟
- 縄文の土偶の笑みや晩夏光
- 水底の魚影くろぐろ晩夏かな
- さよならの残像いまだ晩夏光
- ミルク飲めば晩夏の駅のせはしなし
- 埼玉県 岸保宏
- ツアー客大あくびする晩夏かな
- 無人駅ノート隙なく晩夏かな
- けもの道うっそうとする晩夏かな
- 兵庫県 はなちる
- 砂浜に陽花の骸晩夏かな
- 静寂の木に見ゆる影晩夏かな
- ビル風の海に向かひて晩夏かな
- 晩夏光ビンに集めし思い出を
- 波高くパラソル褪せし晩夏かな
- 兵庫県 噂野アンドゥー
- 夕暮れの 暑さが残る 晩夏かな
- 宿題を 三日坊主で 終わらせる
- 涼しさや 冷房切った 夏の夜
- 宿題の 片付け追われる 晩夏かな
- 夕飯の カレーライスが 夏終える
- 山口県 ひろ子
- 暮れなずむ橋にたたずむ晩夏かな
- 福岡県 紙田幻草
- 晩夏光墓にありたる墓の影
- 宮浦てふ大斜坑跡晩夏光
- 紫の煙の上る晩夏かな
- 蛇行して潮目の変る晩夏かな
- 頂上に牛の憩へる晩夏かな
- 東京都 内藤羊皐
- 雨煙る甲武信ヶ岳の晩夏かな
- はらからを逝きたる里の晩夏風
- 墓原を水の滾れる晩夏かな
- 鮫の歯を描ひた飛行機夏深し
- 晩夏かな東京に置く被爆石
- 京都府 田端 欲句歩
- 夏深し時刻の褪せた停留所
- 風見鶏客船の波追う晩夏
- キャスターの壊れたバッグ引く晩夏
- 神奈川県 井手浩堂
- 火の島の噴火おさまる晩夏かな
- 八方に枝張る欅晩夏光
- 江の島のそら鳶さらぬ晩夏かな
- 風晩夏ふるさとの駅降り立ちて
- 晩夏光波あき缶を置きゆけり
- 滋賀県 正庵
- ロシア船多き舞鶴港晩夏
- 生傷の絶えぬ少年晩夏光
- 浦町の潮の香強き晩夏かな
- グローブに残る晩夏の匂ひかな
- 部屋の隅にエキスパンダー晩夏光
- 栃木県 仲川光風
- 晩夏光こまち号の輝ける
- 二番子の口に餌はこぶ晩夏かな
- 寒霞渓真下に望む晩夏かな
- ふる里の姉の痴呆の晩夏かな
- 運転を止せばの声の晩夏かな
- 兵庫県 山地美智子
- 街晩夏席譲られて戸惑へり
- 午後の日の水面に遊ぶ晩夏かな
- 砂黒き三保の松原晩夏光
- 埃まみれの仁王が二体寺晩夏
- ダンプカー疲れ晩夏の駐車場
- 栃木県 垣内孝雄
- 斎了へて畦道もどる晩夏の夜
- あれこれと晩夏に思ふこと多し
- 高音にて晩夏に鳴ける鴉かな
- 故郷にやうやく帰る晩夏かな
- 疲れなどたまる晩夏や茶漬け食む
- 奈良県 堀ノ内和夫
- 廃竪坑天を突くごと晩夏光
- 故里の破屋の揺らぐ晩夏光
- 東京都 勢田清
- 富士山の稜線冴えし晩夏かな
- 暮れかかる晩夏の海や浜遠き
- 富士山の暮れ残りたる晩夏かな
- 突堤の先端に立ち晩夏かな
- 海の色晩夏の空を映しけり
- 愛知県 榊原
- 夕暮れに 晩夏が映える 水面かな
- 宮城県 仙華
- 束の間の晩夏一日に再会す
- 晩夏の夜覚めたる風は浅葱色
- 黒髪の乱れし海の晩夏かな
- 晩夏の夜母の思い出残しけり
- 晩夏光独り一つの恋探す
- 神奈川県 塚本治彦
- 濃くなりしルージュの色や晩夏光
- 耳朶に穴の残りし晩夏かな
- 父親の背丈越えたる子の晩夏
- 骨折の腕を吊りたる子の晩夏
- 声変はりしたる少年晩夏光
- 新潟県 加藤正子
- 海よりも深きものあり晩夏光
- お弥彦の晩夏や赤き大鳥居
- 竿収め光る川石晩夏かな
- 千葉県 河村千怜
- 夕焼けと 母帰り待つ ランドセル
- 東京都 原井 壮
- 老いの身に鞭を打ちたる晩夏かな
- やはらかき知床の風晩夏光
- ビー玉を翳す晩夏の光かな
- 異国語の飛び交ふ街の晩夏かな
- 捲りたる腕の細さや晩夏光
- 大阪府 津田明美
- 風抜けて晩夏の湖面波立てり
- 常夜燈ひそかに灯り晩夏かな
- リベンジを誓う少年晩夏かな
- 白球の一つ残され晩夏かな
- たぐりよす虚空の光晩夏光
- 京都府 山野うさぎ
- 雑草の影の長さや晩夏光
- 晩夏光車窓をはしる空紅し
- 中国語とびかふ京の晩夏かな
- 晩夏光かばんの底の砂ぼこり
- くろぐろと海藻ゆるる晩夏かな
- 山口県 山縣敏夫
- 下校する子等の背中に晩夏光
- 下り立った山の駅舎に晩夏光
- 校庭の砂場を照らす晩夏光
- 夏深しボケッと過す午後の居間
- 本を読む連れ合いの背に晩夏光
- 神奈川県 原川泉水
- 晩夏光磯で干す背に冷しぶき
- 霧ヶ峰風の香に晩夏知る
- 晩夏入り抗暑の意欲萎える午後
- 公園の鳥のさわぎに晩夏見る
- 奥入瀬の水音変わる晩夏かな
- 神奈川県 矢神輝昭
- 退職の挨拶の目に晩夏光
- 老ゆらくの恋は臙脂の晩夏かな
- 夢に見た世界一周晩夏かな
- 長袖を悩む姿見晩夏かな
- 恋の果て列車見送る晩夏かな
- 三重県 後藤允孝
- 甲子園のマウンドに立ち晩夏光
- 陰影のなき晩夏いま風渡る
- 一行詩詠んで晩夏のひとりかな
- うねりきて岩に砕ける波晩夏
- 笑わせて始める法話晩夏かな
- 神奈川県 河野肇
- からからと笑ひて逝きし晩夏かな
- 晩夏光遊びせむとや生まれけむ
- 鉄棒の影の若さや晩夏光
- 帆船のやうに下着干され晩夏
- ふるさとの苗木を植ゑし晩夏かな
- 岐阜県 雅風
- 賑はひの日々を遠くに海晩夏
- 寄せ来ては波の荒らぶる晩夏かな
- 三井寺の時鐘晩夏の湖わたる
- 鳴き砂を踏む音にある晩夏かな
- 忍び寄る晩夏の影や志賀の湖
- 東京都 佐藤博重
- 濡れ縁に下駄脱ぎ捨つる晩夏かな
- 立ち読みは我一人のみ晩夏光
- 福岡県 西山勝男
- 漢江の流れたゆたふ晩夏光
- 大阿蘇の晩夏の色に暮れ初む
- 礎に夕日とどまる島晩夏
- 日矢一条軍艦島の夕晩夏
- ひたむきに土と向き合う晩夏かな
- 埼玉県 櫻井俊治
- 高原の合宿終はる晩夏かな
- 合宿の学生帰り晩夏かな
- 東京都 豊宣光
- 夕映えや晩夏の富士の逞しき
- 稔り待つ晩夏の青き田圃かな
- 絵日記に晩夏の海と忘れ貝
- 移りゆく季節の名残り晩夏光
- 東京へ子ら帰り行く晩夏かな
- 東京都 かつこ
- ピアスして可も不可もなき晩夏かな
- 鶏の声のかすれる晩夏かな
- 神奈川県 ぐ
- 点滴の落ちる一日晩夏光
- 卒寿の腹のうなぎで張りし晩夏かな
- 子をかかへ握る晩夏の処方箋
- 路地裏の小さき神社や晩夏光
- 宮城県 石川初子
- 一冊の本持て余す晩夏かな
- 千葉県 横井隆和
- 闘病の暦へXの晩夏まで
- 片下駄の薄き二の字や季夏の浜
- 暮れて尚白い傘あり季夏の墓
- 大阪府 永田
- 長き名の肩書とれて晩夏光
- 愛媛県 砂山恵子
- 雑踏を外れ晩夏の音を聴く
- 石のうゑに石の影ある晩夏かな
- 街晩夏プラスチックの紅き花
- マンホールの穴に風なき晩夏かな
- シンバルの音の余韻や晩夏光
- 神奈川県 月野木潤子
- ジャズ喫茶にビクター犬や夏深し
- 久に訪ふ晩夏の地なり疎開の地
- ちちははの墓にあまねき晩夏光
- 模様替への居間に差し込む晩夏光
- 街路樹のなりもかげりも夏深し
- 東京都 伊藤はな
- 夕照を背負ひ戻り来晩夏なり
- 晩夏なる午後のコーヒーブラックで
- 夫の背少し痩せたる晩夏かな
- 小糠雨肩に沁みいる夕晩夏
- 背な丸き母の繰りごと晩夏光
- 奈良県 平松洋子
- 晩夏過ぐ庭の片隅散る玩具
- 夫遅し気にもかけずや晩夏の夜
- 飛行機の爆音籠る晩夏かな
- 千葉県 山田香津子
- 晩夏光長き電車の長き音
- 物忘れ時にはありぬ晩夏光
- 手の染みのまた一つ増え夏深し
- 神奈川県 龍野ひろし
- 配達を終へしバイクや晩夏光
- 揺らしたるグラスのワイン晩夏光
- 止まり木に紫煙くゆらす晩夏かな
- 晩夏かな潮の香りのカフェテラス
- 神奈川県 月のうさぎ
- 絵日記の余白を旅す晩夏かな
- 大阪府 木山満
- 独り居の部屋に晩夏の灯を灯す
- 振り向かず揚げたてのひら夏惜しむ
- 変形性不治の病と知る晩夏
- 純愛のきりり直線夏惜しむ
- 風鈴の音衰えて晩夏かな
- 三重県 西井治男
- 人退いて波の静けさ晩夏なり
- 思い出を日記に綴り晩夏かな
- 神奈川県 伊原文夫
- ゴールならず選手うなだれ晩夏かな
- 眼科医のいつになく混み晩夏かな
- 富山県 岡野満
- 草丈の盛りを過ぎて晩夏なり
- 夏深し色とりどりの野菜かな
- 早朝の風が晩夏を知らせけり
- 岐阜県 ときめき人
- 晩夏光原爆ドームの影法師
- 大阪府 山岡和子
- 沈む陽に向かう一舟晩夏光
- 流木の突っ立っている浜晩夏
- 貝殻の捨て場ある浜晩夏光
- 遠浅に白鷺一羽晩夏光
- 愛媛県 加島一善
- 母の顔ちょっと上向く晩夏かな
- ちょっと痩せちょっと気怠き晩夏かな
- 青空の雲がぼやけて晩夏かな
- 孫守りにへばる晩夏の昼下がり
- どの顔も凛と晩夏の野球団
- 埼玉県 まんたろう
- 夕晩夏一人二人と縁に座す
- 人ひとり駐輪場の晩夏光
- 雨上がり遠景筑波晩夏かな
- 一度ならず二度も晩夏の通り雨
- 思ひ出はいつも晩夏の空にあり
- 東京都 中田ちこう
- 草むらのボールは赤き晩夏光
- 滋賀県 村田紀子
- 木霊する山に囲まれ風晩夏
- 犬と子が飛び跳ね踊る風晩夏
- 鍬を手に晩夏の山を背に翁
- 鳥一羽晩夏の湖面に弧を描く
- 子の声が晩夏の湖面揺るがせる
- 千葉県 入部和夫
- 力投の敗戦投手晩夏かな
- 大阪府 太田紀子
- 席譲られ断らざりき晩夏かな
- みずかめ座夕日の後追ふ晩夏かな
- 宵闇にうたたねをする晩夏かな
- 東京都 岩川容子
- 散らばって老いゆく家族晩夏かな
- 絶海の話聞いてる晩夏かな
- 遮断機の赤の点滅晩夏光
- ヘッドフォン外せば晩夏の波の音
- 大阪府 椋本望生
- 長き影踏んでさよならせり晩夏
- 放題に伸ばし寂しき庭晩夏
- 恙なく母を見送る晩夏かな
- 腸のポリプ元気か坂晩夏
- 何もかもキャラメル色やシャツ晩夏
- 神奈川県 月野木 若菜
- まだ続く採用試験晩夏光
- 晩夏光むかし話によく笑ひ
- 読み切れぬ小説放る晩夏かな
- アルバムの一冊増えて晩夏かな
- プロジェクト佳境に入りて晩夏光
- 福岡県 多事
- 長袖の父の背中や晩夏光
- 咬合紙重ねて更けり晩夏の夜
- テラス席白人ばかりパリ晩夏
- クルーズに街の灯うすき晩夏かな
- クルーズの客まばらなり街晩夏
- ブラジル 林とみ代
- 晩夏岩に座せる記念の写真かな
- 行く雲の姿侘しき晩夏かな
- 湯の町に三々五々と晩夏かな
- 娘の休暇に便乗したる旅晩夏
- 郷愁てふ病にかられ月晩夏
- 東京都 石井昌男
- 昼の空色なき月の晩夏かな
- 晩夏光影長くなり空の色
- 六地蔵の胸染めたるや晩夏光
- おちやのみづ博物館に晩夏射す
- 太公望ハミ跡探す晩夏かな
- 長野県 油井勝彦
- 晩夏なり内視鏡飲む午後一時
- 晩夏なり浅間の煙嘘もなし
- 晩夏なりけぶらふ脳をととのふる
- 山形県 斎藤碩志
- 晩夏とは盛りを過ぎた年増女(め)か
- 山里の川辺の花も晩夏光
- 夏惜しむ遅れて老いの身襟正す
- 死に急ぐわが身に重たき晩夏なり
- お茶会に紫陽花見渡す夏深し
- 兵庫県 岸野孝彦
- 母逝きて心は白き初晩夏
- 涸沢で星降る夜の晩夏かな
- 月蒼し白亜の城の晩夏かな
- 帆を上げて疾風抜ける晩夏かな
- 夕茜汽笛が響く晩夏かな
- 北海道 飯沼勇一
- 抜ける風島は晩夏の中にあり
- 晩夏といふ夏を眼下に沖縄へ
- 甘酒が五臓六腑に晩夏の夜
- 観覧車鉄骨抜けくる晩夏かな
- 置き去りのバイクに忍び寄る晩夏
- 埼玉県 哲庵
- 枇杷の木の杖削りたる晩夏かな
- なんじゃもんじゃの木 見上ぐる晩夏かな
- 起重機の吊り鈎光る晩夏かな
- 遠筑波日照雨に煙る晩夏かな
- 豆腐屋の喇叭かそけき晩夏かな
- 愛知県 斉藤浩美
- 単線の鉄路の旅や晩夏光
- ジーンズの膝の穴にも晩夏光
- 聖堂のステンドグラス晩夏光
- 晩夏光ノートの白さなくなりぬ
- 音楽室の写真褪せ晩夏光
- 東京都 遠山比々き
- ワンプレートディッシュで済ます晩夏かな
- 神奈川県 成田あつ子
- 終電で降りたつ子待つ晩夏かな
- 晩夏かな落暉の統ぶる地中海
- 地中海に夕日褒め合ふ晩夏かな
- 潦に流るる雲の晩夏かな
- 犬と歩く動物墓地の晩夏かな
- 埼玉県 小玉拙郎
- 番長に失恋の噂晩夏かな
- 長袖も旅の荷に入る晩夏なり
- 人の来ぬふれあい広場の晩夏かな
- 生菓子の色模様移る晩夏かな
- 神奈川県 海野優
- 悔い残すその一球や晩夏光
- ノーサイドゴールの遠き晩夏かな
- 初めての恋ほろ苦き晩夏かな
- 三重県 倉田 伊都子
- 佳き事は 秘めておきたき 晩夏かな
- 夕暮の カレーの匂ひ 晩夏かな
- 砂浜の 賑わい疎ら 晩夏光
- 埼玉県 守田修治
- 一夜干し添える寝酒の晩夏かな
- 江ノ島に伝言残す晩夏かな
- 宿題の消しゴム激し晩夏かな
- 気の利かぬ下校放送晩夏かな
- 振り向けば昭和名残の晩夏かな
- 埼玉県 彩楓(さいふう)
- 貝殻を窓辺に一つ晩夏かな
- 流木に波の寄せ来る晩夏かな
- 両の手の荷物下ろせる晩夏かな
- 胸元の青き真珠や晩夏光
- 口ひらく貝の歌聞く晩夏かな
- 神奈川県 皆空眞而
- 峠下(お)り晩夏の娑婆に帰るとや
- バス待つや午後は三時の晩夏光
- 麻シャツの皺の風合い夏深し
- シャツの色褪せて晩夏もあと少し
- 東京都 五十嵐 秀山
- ウエストにベルトの跡晩夏光
- 靴下の裏に大穴晩夏光
- スニーカーの紐ほどけたるまま晩夏
- 東京都 飯田 哲司
- さみしさが日々かけ足の晩夏かな
- じりじりと凌ぎきれない晩夏かな
- 東京都 綾部 捷子
- 仕事終え晩夏の土手を真っ直ぐに
- 神奈川県 髙梨 裕
- 夕暮れて瓦礫に晩夏の日の残り
- ひとつ町消えて晩夏の日の落ちて
- 駆け抜ける人馬や北の晩夏光
- 少年の海に晩夏の日が沈む
- 晩夏光少年時代連れ去りし
- 京都府 中村 万年青
- 祇園会の熱気ムンムン晩夏かな
- 川床の料理も涼し晩夏かな
- 晩夏光真っ赤な入日ちと温る