神奈川県 川島 欣也 様
東京都 町田 勢 様
広島県 老人日記 様
ブラジル 林 とみ代 様
安立 公彦
四月の季題は「花の雨」です。歳時記には、桜の花に降りそそぐ雨、或いは、桜の花時に降る雨、とあります。花見のあとのぼんぼりに滲む雨、散り敷く花びらに雨滴の滲むのは、如行にも今日的な物悲しさが感じられなくもない風景です。「日本大歳時記、春の部」には、こう書いてあります。私たちにも馴染みのある季語です。 四月の優秀賞は、神奈川の川島欣也さんでした。この句、上五で、今日は治療中の病気を退院する日と分かります。中七下五に、その日の「花の雨」のことが記されています。この句には、そういう作者の喜びが、静かに湧くように詠まれています。「窓の雨」が見事です。 入賞の三句は、それぞれの人への思いが善く出ています。町田さんの句。「添ふ妻」が、奥さんへの思いを善く表わしています。その奥さんも、いつしか眠りに入ったと見えて、気の付いたのは、「しずか」な寝息でした。「花の雨」が効果的です。平和な、思いの深い句と言えましょう。 老人日記さんの句。「早世」は世を早く去ること。今日はその子の野辺送りでした。雨が降っています。この句、その花の雨が、逝去の子を包むように、良く出ています。 林とみ代さんの句。一転、舞妓さんの姿を写しています。それが「蛇の目傘似合ふ舞妓」で、その華やかな傘とともに、舞妓の姿が思い出されます。「花の雨」に相応しい句です。
今月の佳句。〈お見合ひも別れの時も花の雨 千葉 伊藤順女〉〈人形を抱きあやす子花の雨 埼玉 石塚彩楓〉〈大仏の胸より零れ花の雨 神奈川 沼野大統領〉〈花の雨ひとり汲む酒旅の宿 東京 右田俊郎〉
「選者詠」の選評 「花の雨」がひと時止んだ時の句です。今まで雨に烟っていた軒端がほのかな明りに包まれて、風景に形が見えるようになった折、浮かんだ句です。
◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。
今月の応募作品
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安立 公彦 先生 コメント
四月の季題は「花の雨」です。歳時記には、桜の花に降りそそぐ雨、或いは、桜の花時に降る雨、とあります。花見のあとのぼんぼりに滲む雨、散り敷く花びらに雨滴の滲むのは、如行にも今日的な物悲しさが感じられなくもない風景です。「日本大歳時記、春の部」には、こう書いてあります。私たちにも馴染みのある季語です。
四月の優秀賞は、神奈川の川島欣也さんでした。この句、上五で、今日は治療中の病気を退院する日と分かります。中七下五に、その日の「花の雨」のことが記されています。この句には、そういう作者の喜びが、静かに湧くように詠まれています。「窓の雨」が見事です。
入賞の三句は、それぞれの人への思いが善く出ています。町田さんの句。「添ふ妻」が、奥さんへの思いを善く表わしています。その奥さんも、いつしか眠りに入ったと見えて、気の付いたのは、「しずか」な寝息でした。「花の雨」が効果的です。平和な、思いの深い句と言えましょう。
老人日記さんの句。「早世」は世を早く去ること。今日はその子の野辺送りでした。雨が降っています。この句、その花の雨が、逝去の子を包むように、良く出ています。
林とみ代さんの句。一転、舞妓さんの姿を写しています。それが「蛇の目傘似合ふ舞妓」で、その華やかな傘とともに、舞妓の姿が思い出されます。「花の雨」に相応しい句です。
今月の佳句。〈お見合ひも別れの時も花の雨 千葉 伊藤順女〉〈人形を抱きあやす子花の雨 埼玉 石塚彩楓〉〈大仏の胸より零れ花の雨 神奈川 沼野大統領〉〈花の雨ひとり汲む酒旅の宿 東京 右田俊郎〉
「選者詠」の選評
「花の雨」がひと時止んだ時の句です。今まで雨に烟っていた軒端がほのかな明りに包まれて、風景に形が見えるようになった折、浮かんだ句です。
◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。
今月の応募作品