俳句庵

7月『胡瓜もみ』全応募作品

(敬称略)

影膳の主へひとしな胡瓜揉み
つましさを今日も揉まれる胡瓜かな
胡瓜揉み嫁入り道具の塩加減
初夏の色と香を揉む胡瓜かな
胡瓜揉み婆の手計り塩加減
残されし胡瓜一本揉みにけり
母の笑み誘ひ出したる胡瓜揉み
胡瓜揉み余った塩で腹を揉み
胡瓜揉み香る鮮度へダイエット
胡瓜揉む妻の背中の丸さかな
いっぽんの胡瓜揉みを喰らいつく
世話女房板についたる胡瓜揉み
あやかしの胡瓜揉み手眺めつつ
胡瓜揉み八十の手に変わりなき
胡瓜揉みひと花さかす夕餉なり
胡瓜揉み故郷の響き懐かしき
しなやかな指が奏でる胡瓜揉み
背伸びせぬ二人の余生胡瓜もみ
今朝採りのとげ手に痛き胡瓜揉み
叱られし母の思い出胡瓜揉み
平凡な事の幸せ胡瓜揉み
いま母のいればと思う胡瓜揉み
つきだしの妻の十八番の胡瓜揉み
母の来て瞬時に作る胡瓜揉み
胡瓜もむ六時のニュース胡瓜もむ
具材にも家伝のありて胡瓜揉み
胡瓜揉む妻の手際や母譲り
胡瓜もみ食べて静かな余生かな
胡瓜揉む手つきも味も祖母譲り
胡瓜揉分ける小鉢やともしらが
胡瓜もみ季節を越えた菜になり
厨より甘酢の匂い胡瓜もみ
厨を満たす緑の響き胡瓜揉み
湯沸しの音に重なる胡瓜揉み
菜園の初料理なり胡瓜もみ
包丁を競う姉妹の胡瓜もみ
胡瓜もむ妻のエプロン板につき
口数の少なき娘の胡瓜もみ
胡瓜もむ母の面影眼間に
飾らない母の人柄胡瓜揉み
胡瓜揉み旬なくなれどやはり季語
時折は不満も入れて胡瓜揉む
大振りの勢い残し胡瓜揉み
胡瓜揉みややは座敷を逃げ回る
胡瓜もみ今なら母に言えること
さっぱりは母親譲り胡瓜揉み
度忘れをひょと思い出す胡瓜揉み
胡瓜揉み母のげんこつよみがえり
ほんたうのおふくろのあじ胡瓜揉み
古稀過ぎて味わい深し胡瓜もみ
胡瓜揉み塩味うすくのこしけり
白胡麻を一振りかけて胡瓜揉み
朝採りの味を揉まれる胡瓜かな
胡瓜揉み塩は天然仕込みなる
傷付けし指に沁みいる胡瓜揉み
しんなりに加え歯ごたえ胡瓜揉み
男には男の流儀胡瓜もむ
酢と塩のきりつとうまき胡瓜揉み
胡瓜揉み勘を信じて妻六十
暑い日の付きだし一品胡瓜揉み
胡瓜もむ妻口ずさむ童唄
胡瓜揉み塩ひとふりの力かな
帰省児が母に所望の胡瓜もみ
晩酌の夫に付き合ひ胡瓜もみ
厨から胡瓜揉むらし香りして
海の幸混ぜて洋風胡瓜もみ
胡瓜揉み夫の好みに酢の加減
肩のこりほぐすごとくに胡瓜揉む