俳句庵

8月『西瓜』全応募作品

(敬称略)

初西瓜子の快復の兆し見ゆ
物差を心に当てて西瓜切る
今の子はスイカのおいしさわからない
冷蔵庫上よ下よと西瓜入れ
大西瓜背負い損ねて涙味
ポンポンと西瓜の頭撫でてやり
スイカ食べ夜中にトイレ何回も
夏風邪のほてりスイカにかぶりつく
合宿の陣中見舞いの大西瓜
蟻の来て西瓜の海を渡りけり
民宿の先ずもてなしに冷え西瓜
西瓜出て喧嘩した子も仲直り
西瓜食ぶ妻の速さの吾の倍
美女の肘つたふ西瓜のしずくかな
少子化の波の八つ割西瓜かな
首に巻くタオル西瓜の色に染め
西瓜旨しボンボンと完熟の音
歯応えのなきを愛しみ西瓜食ぶ
西瓜売る声のなつかし路地ありき
種無しと喜ばれるのは西瓜だけ
腎臓によひとて西瓜あさひるばん
西瓜割り割れて弾ける笑い声
梨ぶどう西瓜初物夏来る
太陽を喰うごと西瓜がぶり喰う
西瓜食べ長幼な心に夢思う
西瓜割り記憶の底の夢叩く
珍しいうちは西瓜も仏前に
食べ頃を西瓜に問うやコンコンと
西瓜食ふ仲良きことは良いことだ
西瓜割り少年に還る一歩二歩
雨止まず西瓜は目に余りたり
西瓜割り自由に動かぬ手足かな
画用紙に収まり切れぬ西瓜かな
甘さにも当たり外れの西瓜かな
爪弾く完熟の音西瓜売り
慎重に切り分く西瓜子沢山
まじまじと子に見詰められ西瓜切る
切腹のごと潔き西瓜かな
井戸のぞき西瓜ひえしと母よぶ子
兄ちゃんガ一片多い西瓜かな
塞き止めて西瓜冷やせる道志川
西瓜割りわざと外して盛り上がり
ぽんぽんと弾かれている西瓜かな
草野球ボールにまじる西瓜かな
青空の音確かめて西瓜選る
威勢よく大玉西瓜売りにけり
西瓜割る竹刀の先に青き空
かぶりつく西瓜の歯型スイカ型
赤子抱くやうに西瓜抱きにけり
井戸に吊り西瓜冷せし昔かな
大皿に残る西瓜の皮の山
冷蔵庫一人占めする西瓜かな
切り売りの西瓜で足れり老い二人
食べ頃の音する西瓜択びけり
なりふりを構わず食べる西瓜かな
西瓜切る市民新聞事件なし
少年の食いつく目玉大西瓜
泣き顔を半分隠す西瓜かな
少年の並んで飛ばす西瓜種
古井戸に放り込まれる西瓜かな
幼子の両手に余る西瓜かな
西瓜玉もチークフロアも寝静まる
西瓜食ふ掬って掬って皮一重
孫の手がしっかり支える西瓜かな
割れぐあい吉兆占う西瓜かな
叩かれて抱かれ買はれる西瓜かな
樽神輿西瓜の前に止まりけり
帰省子のすぐかぶりつく西瓜かな
葉を被り素知らぬ顔の西瓜かな
口中に甘さ冷たさ西瓜ぶ
切り西瓜ラップかぶりて知らん顔
西瓜割り竹刀を持って現れし
西瓜割り目隠しされて覚悟決め
夫の皿西瓜の種の残らざる
西瓜食べ兜虫にもお裾分け
西瓜割る感を頼りの二歩三歩
無心の子一心不乱に西瓜食ふ
割りて売る団欒の無き西瓜かな
青空を割つてこん棒西瓜割る
かぶりつく西瓜の汁を頬につけ
三世代真中に赤子西瓜切る
西瓜切る等分たしかむ皆の目
切り分ける先から手が出る西瓜かな
血糖値上がると知りて西瓜食ぶ
叩かれて抱かれ買はれる西瓜かな
大きなる西瓜近所でおすそわけ