俳句庵

12月『餅』全応募作品

(敬称略)

気が置けぬ客のもてなし餅を焼く
塩粒の残りしままのきな粉餅
新庄や優勝祝い餅を食む
風邪寝して餅の溶け合う土鍋粥
焼餅の香りを食べて二度食べる
いつもそう来る日も来る日も餅ばかり
餅二つ逢瀬なきまま溶けにけり
鏡餅供えて歳の終わりけり
餅といふ伸縮自在と遊びをり
黄粉餅食べて黄粉の顔となり
餅の子や膨れっ面がもう笑ふ
餅食べて静かに聴き入る除夜の鐘
チャリティーの餅つき人垣七重八重
お年玉胸膨らませ餅を焼く
故郷は遠くにありて餅を食ふ
幼には一口に切り寒固め
40年過ごしこの国餅飾る
餅焼けば不思議不思議と猫見入る
餅焼けば初夢大きく膨れけり
汁粉煮る甘き誘いや鏡割
餅切るや心に定規押し当てて
餡餅の吹き出す餡をつまみ食い
焼餅のやきもちわくは幼子恋
故郷の大地の匂い寒の餅
故郷を偲ぶよすがの豆の餅
鏡餅割って正月終わりけり
幼児が座って餅焼く父の膝
おさな児の頬の柔らのゆべし餅
餅焼くや百人一首詠みながら
トランプを終えて餅焼く夜更けかな
長火鉢家長の指揮で餅を焼く
歳の数餅を食べたと子の自慢
餅搗や杵の間(あい)の手息合へり
子の机ミニ鏡餅鎮座する
餅食えば故郷自慢の花が咲き
幼子が立って見せたる餅の延び
膨れゆく餅を見詰める火鉢かな
やきもちを二人でやいて焼き餅だ
逆さなる石臼起こし餅搗唄
餅を焼く電子レンジの言うごとく
餅搗機買ふて売りたる石の臼
餅を切る四角四面の六十路なり
搗きたての餅大根に絡みけり
神棚に新餅供え旅に出る
餅焼いてまた読み返す年賀状
大銀座路地を曲れば磯部焼
嫁ぎたる子も今餅を焼きをらむ
餅を搗くハッピ姿の市長かな
餅焼いてしみじみ語る三日かな
餅を搗く園長先生真中に
角餅の焼かれて丸くなりにけり
餅焼けば餅それぞれの個性かな
餅に黴生えて羨む我が頭
腹一杯食べたる頃のお餅かな
餅焼いて夜なべの妻に差し入れる
幼子のおねだりほほは膨れ餅
子のデートふくらむ餅を待ち切れず
帰る子の鞄の隙に餅入るる
餅三日そろそろ茶漬が欲しくなり
餅食べて母餅肌を自慢せり
幼には一口に切り寒固め
餅つきの風物となる相撲部屋
餅焼けば不思議不思議と猫見入る
故里の誰彼の顔雑煮食ぶ
ひと回り違う夫婦や飾り餅
餅切りは父の出番や年用意
丸火鉢囲んで一家餅を焼く
もうもうと噴く蒸篭や餅筵
網の上水餅焼けず焦げにけり
民宿の五平餅焼く囲炉裏端
餅つかず臼打つ杵の天の邪鬼
餅焼けて豊かな気持ち膨らみし
農場の日の出を背なに餅をつく
餅食べて昔話のきりもなし
年老いし母の作るる蓬餅
切りもちのパックから出て呼吸する