俳句庵

6月『鮎』全応募作品

(敬称略)

鮎食べに来いよと友の電話かな
鮎食べて発車時間に間に合わず
どの山も青し風立つ鮎の川
三人が休暇とる鮎解禁日
鮎談義われには疎き里泊り
若鮎を炭火で焼いて友かたる
鮎解禁はらからなれど釣敵
身を押え一気に引抜く鮎の骨
石苔の腸の妙味や鮎の串
鮎料理まず名水でもてなされ
釣り天狗おらが穴場の囮鮎
鮎食べるきれいな人の箸遣い
鮎と鵜といづれあはれや鵜飼の火
釣り人の腰に釣果の鮎の籠
鮎釣を飽かず見てゐる鮎嫌ひ
故郷の誇りを今に鮎の川
釣り糸に始まる水尾や鮎を待つ
河川には戦場多し鮎を釣る
友釣りの鮎にも似たり人の世は
種鮎の行く手逆巻く荒瀬かな
囚はれの身はしくじりと鮎の口
鮎釣りを語って倦まぬ友も亡く
貴船路や川音高き鮎の膳
隊列の列を乱して鮎光る
この鮎の出自は鳰の湖かとも
激流を小石集めて鮎生簀
鮎の宿魚拓ひろげて夜もすがら
船底を投網とかれて跳ねる鮎
見てゐたり鮎清流をひとつとび
釣る方は人に任せて鮎づくし
香魚食ぶ川音高き宿にして
初鮎の形よく焼けて瀬音かな
山の宿あゆの皿のみ積まれけり
瀬を跳ねる若鮎ありて足を止め
鮎麗し塩乗せ焼かれをりてなを
鮎食べて故郷の話となりにけり
化粧塩に身をおどらせて鮎小さし
鮎の瀬の光に打てる投網かな
鮎解禁待つて怠りなき準備
ガツと来る荒瀬の鮎の魚信かな
若鮎のぴちぴちしたり心燃ゆ
一幅の絵となる皿の鮎の塩焼き
友釣の鮎に似たる友のあり
水系の違いに鮎の異なれり
銀鱗やはねた形に鮎を焼く
びつしりと竿の放列あゆ解禁
一匹の群れを離るる鮎の宿
鮎の身の反りそのままに化粧塩
姿愛で色香を誉める鮎料理
はんなりと骨を抜かるる京の鮎
深緑で川面覆いて鮎解禁
川床の瀬音も一品鮎料理
流れより早き青あり鮎の川
店先でまた繰返す鮎談義
鮎跳ねて早瀬は暫し風の音
残されし骨美しく香魚たり
万緑に溶け込まんとや鮎跳ねる
日の暮れて瀬音の高し鮎の宿
釣り上げて鮎の鼓動を掌に
鮎上る川は光の帯となり
鮎呉れて釣の奥義をひとくさり
快気祝い発送完了鮎を食む
囮鮎やがて哀しく友を引く
鮎抱いて懐深き長良川
串鮎をほおばる子等に峡の風
現役のひたすら奔る香魚かな
鮎釣りや流れの中の杭に似て
ふる里を恋ふる瀬音や鮎の宿
鮎釣りの名手無職と答えけり
鮎の瀬に竿の砲列解禁日
鮎の串女人の指にほぐれけり
初夏の香りいただく鮎料理
串刺され鮎の焼き汁炭火泣き
鮎焼いて夫との日々を想いをり
鮎の宿瀬音の中に眠りけり
故郷を思う縁の鮎料理
鮎を焼くだけの燠火や穂高の湯
鮎焼きや友の講釈なほ続く
川風を添ヘて出される鮎料理
甘露煮の鮎の昆布巻き祖母の味
一振りの荒塩旨し鮎を食ぶ
鮎の香を引立てている蓼酢かな
鮎の身を香を残さずに食べにけり
鮎突いて水の童でありし事
ざるそばに添えて小鉢の鮎の腸
提灯に「あゆ」の二文字鮎の宿
鮎走る川の匂ひの甘かりき
夜通しの全灯消へぬ鮎の宿
釣師みな夜明け待たるる鮎の宿
水系の異なる鮎のすがたかな
化粧塩崩して鮎の香りかな
囮鮎元気なものから買われけり
釣り人の長良川も木曽川も鮎の川
鮎走る光が走る水走る
なにもないがとあゆの塩焼き出されけり
解禁に合はせて予約鮎の宿
眼裏に流るる故郷鮎の川
青笹に包まれ鮎のおすそ分け
鮎釣るや郡上仕立ての解禁日
花嫁を見送る鮎のまた跳ねる
出されしは最後に雑炊あゆづくし
手づかみの苦さのよしや 鮎一尾
店といふ店おとり売る鮎の村
焼鮎や白磁の皿に身を反らせ
豆腐屋も囮あきなふ鮎の村
ちらほらと客来て鮎焼き本腰に
白々としらじら明くるあゆの宿
落鮎や網目模様に水光る
おとり鮎換へて浅瀬を渡りけり
身をほぐし香りかき混ぜ鮎の飯
鮎の瀬に互いに見せ合ふ釣果かな
釣糸の雫ひかりし鮎の影
鮎釣りや人それぞれの穴場あり
幼子の足にまつわる鮎の影
天竜川の鮎の香りのむかしかな
娘へとリピートしたる鮎の宿
姿誉め色香讃えて鮎料理
鮎食べて瀬音残して別れけり