俳句庵

11月『牡蠣』全応募作品

(敬称略)

牡蠣船の幟を立てて船舫ふ
生牡蠣を呑む人とゐる夜の雨
お揃ひの姉様被り牡蠣割女
大盛のキャベツ従え牡蠣フライ
ぷるんと手応へ今日の酢牡蠣は太り肉
生牡蠣の喉ごしさやか見事なり
生牡蠣や日本シリーズ野次りつつ
潮の間を縫って岩牡蠣打ちにけり
生牡蠣に海の匂ひを頬張れり
牡蠣育つ我が故里に似たる浦
相性よき牡蠣とレモンとパリの空
大牡蠣やまず手計りに笑みが増し
晩酌の酢牡蠣楽しむr月
ほめ言葉口元揺るぐ酢牡蠣かな
牡蠣打の干潮に光る手鉤かな
おんぶの子あやしあやされ牡蠣割女
牡蠣嫌ひ牡蠣の産地に生まれしに
牡蠣鍋や八十路のぬくみ湯気のなか
ひと口に海を呑み込む酢牡蠣かな
故郷の訛り耳底に牡蠣を剥く
焼牡蠣の匂ふ松島瑞巌寺
眼裏に母のエプロン牡蠣フライ
牡蠣の殻少しつきたる気仙沼
牡蠣鍋にふるさと思うほのぼのと
牡蠣を剥く海の男の声がする
味噌鍋の湯気立つ底で牡蠣を当て
牡蠣食すつるんと喉に海の味
R無き月の生牡蠣ためらいし
牡蠣の殻風紋に似た波の跡
牡蠣ガラを砕く鶏舎の朝かな
酒の宴出番待つ牡蠣トロ箱で
牡蠣鍋を言葉少なく連れの客
牡蠣鍋を皆で囲んで恵比寿顔
牡蠣鍋やそれぞれにある一家言
牡蠣割って海のミルクを吸ひにけり
オイスターと言えば異国の牡蠣の味
妻は旅酢牡蠣肴に独り酌む
かじかめる手を暖めて牡蠣割女
牡蠣殻の捨て場のなきや浜通り
牡蠣鍋や兄弟船の鳥羽の宿
牡蠣鍋や友の久しく湯気囲む
牡蠣鍋に一家の団欒ありにけり
牡蠣鍋の煮加減幾度も箸突付く
故郷のツーンと匂う酢牡蠣かな
湾巡り生牡蠣出さる遊覧船
牡蠣飯や海のオゾンを散りばめて
てんこ盛りまたもお代り牡蠣御飯
潮騒も消えて牡蠣打つ媼かな
牡蠣めしの牡蠣を選り出し椀に盛る
学生街母似の女将牡蠣フライ
生牡蠣の仰向き喉を滑り落ち
牡蠣鍋や父差配する鍋奉行
松島や生牡蠣食べつつ遊覧船
牡蠣フライタルタルソースとよく似合う
自生せしコロンコロンの牡蠣食みて
土手に塗る味噌香ばしき牡蠣の鍋
少年の小さな冒険酢牡蠣食ふ
松島や海光揺るる牡蠣筏
洋食や父と食べたり牡蠣フライ
古里を出て五十年牡蠣の味
幼児を眼で追いつつも牡蠣割女
牡蠣鍋や会話の弾む夕餉かな
生牡蠣に白ワインといふ至福かな
干し柿のフライと思う牡蠣フライ
貝塚や原日本人も牡蠣好み
牡蠣鍋と聞いて微笑み電話切る
一仕事終えて一献酢牡蠣かな
アリゾナで小ぶり生牡蠣馳走なる
牡蠣鍋は一子相伝母の味
牡蠣殻の無骨なかほを裏返す
悴める指に息吹き牡蠣割女
牡蠣鍋の土手作りは夫任せ
牡蠣筏星空仰ぐ夜釣りかな
歳月の海の恵みや牡蠣美味し
いただきてフライグラタン牡蠣ごはん
牡蠣舟の昭和は遠くなりにけり
牡蠣食へば海の鳴るなり能登の果
牡蠣食めり風通りゆく森の香よ
牡蠣鍋の煮えて宴の始まりぬ
荒波の牡蠣のゆりかご静かなり
豊穣の海が育む牡蠣の味
生牡蠣やギヤマンの皿にレモン添へ
大勢で食べる旨さや牡蠣雑炊
海鳴りの音を食べてる酢牡蠣かな
冷やされて海の香漂ふ生の牡蠣
ガラス皿牡蠣の香りを映しをり
ふらんすへ行きたし牡蠣とシャルドネと
殻開けば海の宝石牡蠣白し
牡蠣フライ夫はいつも笑顔です
牡蠣好む厳格な父笑みゐたり
帰省子の所望に母の牡蠣フライ
牡蠣食めば口に広がる日本海
頬被りして朝市の牡蠣剥き女
鍋の牡蠣海の小さく固まりぬ
殻つきの牡蠣の焼かるる炉辺かな
ゆりかごの赤子のごとし殻の牡蠣
レシピ付き産直の牡蠣着きにけり
武装せど心清くと牡蠣を剥く
海鳴りを子守唄として牡蠣育つ
大殻の小さき牡蠣に当て外れ
土手鍋の牡蠣の温む旧き縁
牡蠣を打つ音に夕日の沈みゆく
にぎやかに黙々さばく牡蠣割女
泣く声や背なの子あやす牡蠣割り女
牡蠣船や机も揺れる忘年会
牡蠣啜るのどごし海のうねりかな
牡蠣割って女ばかりの笑い声
生牡蠣の喉ごしさやか杯すすむ
淋しさや食わず嫌いの牡蠣海鼠
牡蠣かきの手の荒れるまま痛ましき
牡蠣の香や冷たさ感じる水の色
旬の牡蠣啜る一日や途中下車