俳句庵

12月『おでん』全応募作品

(敬称略)

ほろ酔いや茶飯で締めるおでん酒
友人と会社帰りのおでん鍋
おでん煮て母一泊の旅に出づ
赤提灯おでん程良く染み込んで
おでん屋の暖簾の招く路地あかり
大家族あっという間のおでん鍋
一串百両候ふ書きのおでん食ぶ
おでん鍋囲み家族の和がなごむ
おでん煮て二泊三日のひとり旅
遠き日の思い出を煮るおでんかな
茶に染みて祖母の煮込みし大根は
大根の味しみたりておでんかな
図らずや公私混同おでん食む
献立に困る女房のおでんかな
相槌を打って屋台のおでん酒
予想せし夕餉はやはりおでんかな
旧交を暖めているおでんかな
かにかくに家内平安おでんかな
種選ぶ楽しさのあるおでんかな
おでんだね味噌にくぐらせ名古屋ふう
ふうふうと吹きつ相槌おでん酒
さえずりや関西おでん色薄し
コンビニのおでん種にも湯気立てり
おでん屋の女将きりりと割烹着
出来合ひのおでん種とてよき塩梅
おでん種思わぬ量に鍋をかえ
おでん屋の暖簾くぐらば湯気顔に
横丁を曲ればおでん法善寺
管巻ける隣る空席おでん酒
不機嫌を慰めているおでんかな
ぐちぐちと煮えるおでんに小言聞き
コンビニのおでんの向こうに家想う
関東風、関西風自説譲らぬおでんかな
路地裏に風の道ありおでん酒
繰り言は肴にならぬおでん酒
友招きアリゾナの夜のおでんかな
おでん煮えぐちぐち小言は受け流し
アリゾナのおでんの味もお母譲り
妻翳みおでんの湯気立つ厨かな
一品はおでん屋台の隙間風
おでん屋の親爺高声「へい毎度」
ひとり酒昨夜のおでんを温めり
鍋小さく種の食み出すおでん鍋
ふる里をおでんの具にも尋ねけり
ガード下屋台梯子のおでん酒
おでんとも思ふ宝石とも思ふ
鍋山におでん煮て発ち妻は旅
おでん屋の通る時刻はお昼時
碁敵と勝ちはいずれかおでん酒
おでん屋の鈴の音聞くは何時も昼
常連の説教を聞くおでんかな
おでん屋に集う合縁奇縁かな
おでん鍋めがねの曇る家族をり
大根が先の慣はしおでん酒
おでん屋ののれん千切れて色褪せて
おでん鍋ダイコンじっとたじろがず
おでん煮て「あっためてね」とのメモのあり
おでんふく美しき口すきな人
おでん鍋囲む団欒福の顔
おでん手ににソシュール論ずる鳶半纏
おでん鍋「あちち・あちち」と孫の食ぶ
おでん派と焼き鳥派いるけふの酒
酔いどれの隣気にせぬおでん酒
愛想良くおでん自慢の老姉妹
三角や四角に丸ありおでん種
目くばせで誘ふ今夜のおでんかな
おでん屋の親爺気遣ふ酔歩かな
屋台にておでん食べたり友を呼ぶ
おでん鍋飲めぬ酒にも酒欲湧く
客を見て取り分けているおでんかな
ねた足せど直ぐに底つくおでん鍋
おでん屋の話す話しに杯すすむ
犇きて煮上がり競ふおでん種
無造作におでん鍋ごと差し入れぬ
舌焼くも熱熱旨しおでん鍋
おでん屋に故郷談義熱くなり
一通り食べねば済まぬおでんかな
煮返してまた味を増すおでんかな
炬燵にて家族団らんおでんかな
生国を問われて始まるおでん酒
温もりを求め分け合ふおでんかな
おでん屋の湯気に誘わる帰り道
それぞれにこだわりを持つおでんかな
屋台にて肩すれあいしおでんかな
嬉しくて久し出会ひのおでん酒
二次会はおでん屋台の忘年会
話したき種の尽きざるおでん酒
おでん鍋父の帰りを待つ母子
久闊の友の来たりておでん酒
おでん鍋父の帰りを待つ母子
レジの横つい手が伸びるおでんかな
迷い箸行き先探すおでんかな
結論をおでんに持ち越す会議かな
古里の違う夫婦やおでん鍋
おでん食べ深まりあうは夫婦かな
具沢山母丹精のおでんかな
おでん食べ箸も触れ合う夫婦道
おでん煮て人恋ふ齢重ねけり
日も落ちて二人でつつくおでんかな
幸せとおでんの湯気に搖るる顔
久久に歓談尽きぬおでん酒
心まで暖かくするおでんかな
碁敵も酌むは別なるおでん酒
木枯しを聞けば味増すおでんかな
猪口チビリおでんの煮えを覗き込み
それぞれに味を出し合ふおでんかな
「お・で・ん」染め小さき暖簾に大き文字
四十九日終へておでんを煮るとする
それぞれの持ち味生かすおでんかな
妻強しさしすさされておでん酒
おでん屋の一子相伝隠し味
コンビニのおでんを囲む夫婦かな
コンビニのおでん生きいき午前様
おでん屋の鈴の音ほのか屋台行く
芋大根豆腐の三強おでんかな
手間暇を惜しまぬ母のおでんかな
懐のさびしき時のおでんかな
おでん屋に常連集ふ宵の口
おでんだね道に迷いて箸はこぶ
古里の味のしみこむおでんかな
煮卵に母想い出すおでんかな
おでん鍋父母の思い出ふつふつと
おでん鍋ふたを空ければそろい踏み
煮卵を真っ先に食ふおでん癖
おでん屋に袖擦れ合ふも縁かな
江戸っ子の味の染み入るおでんかな
賑やかが好きな母なるおでん鍋
おでん鍋囲みて一日の丸く
独り身はコンビニで買うおでんかな
本音かと質されてをりおでん酒
ふるさとの雪は深いかおでん食ぶ
コンビニにおでんの湯気の馨しく
母の味大根のよく染み込んで