俳句庵

7月『梅干』全応募作品

(敬称略)

梅干して雑言飛ぶや星の庭
焼酎に梅干一つ入れにけり
ふる里やすっぱい梅干母の味
梅を干す妻の手つきの母に似て
ブランデー梅干ぽとりとどめおき
梅干にしばし言葉を失いし
老いの指梅干サンド宴かな
梅干を地雷の如く握り飯
梅干や袖赤く染め白い服
頼らるも生甲斐梅を干す
若者や梅干入れてお好焼
離れ住む子を思ひつつ梅を干す
コロッケの中から梅干顔を出し
青空を隈なく使い梅を干す
梅干の天ぷら食べる子大きな目
梅干して梅の効用ひとくさり
梅干と白米腹に剣にぎる
梅干を茶請けに恙無き暮し
梅干のお結びありて伊達強し
梅干して試食してみる塩加減
梅干のたかがされどやにぎり飯
梅干を薬の如く朝の膳
里の叔母紫蘇の梅干出しくれし
身の丈に会わす暮らしや梅を干し
こめかみに梅干貼って頭痛を治す
梅干の色極めたる紅さかな
大粒の梅干朝の潤滑油
梅干や折詰の蓋紅く染め
走り出す雲見送つて梅を干す
梅干に母の温もりありにけり
梅干に驚いてゐる眉毛かな
梅干に詰まる想い出幼き日
白米に一番合うのは梅干しだ
梅漬けて母のレシピを思い出す
梅干や炊き立てめしに蹲り
風邪ひいて梅干粥の遠き日々
梅干をのせる真白きご飯かな
梅干の小粒を選ぶ子供かな
郷愁てふ病癒さる梅干かな
梅干に母の半生思いみる
梅干や母の手作り待ちわびて
梅干に元気を貰い登校す
梅干に砂糖やさしき宿の朝
梅干や割烹着の母若かりし
梅干しや母の手皺を映すかに
梅干に不覚の顔をしかめをり
梅干をつけたる母の手のしわかな
つましさがいつか身に添い梅を干す
うめぼしをごはんにのせたらJapanの味
梅干や酸いも甘いも噛み分けて
梅干でご飯食べたり満足か
満天の星に干梅預けたる
梅干をご飯で包み遠足か
梅干に風味を添える風の道
梅干の強いみかたはごはんなり
梅干に箸の重みの風邪の床
何もなくご飯のあては梅干か
太陽を一人占めして梅を干す
友と語り杯かさねし枝豆か
梅干の風の鍛えし紅さかな
うめぼしのすっぱさひろがる口のなか
梅干を朝餉に添えて恙無し
干梅の何時になく空仰ぎけり
梅干や肩を落して皺を寄せ
枝豆の運ばれてくる下駄の音
梅干の手塩をかけし酸味かな
ばあちゃんの味をいつしか伯母が継ぎ
梅干を恐々嘗める子供かな
梅干のあれば事足る朝の膳
梅干や隠し切れない胸の内
テーブルにいつもうめぼしある暮らし
不揃いな梅を揃えて干しにけり
起き掛けの梅干ひとつ目覚ましに
にぎりめし中から小さく顔出す梅
干し梅を漬ける手に染む紫蘇の赤
梅干しの香りただよう土用干し
梅干やまんまん中に昼迎ふ
つぼの中早く熟せ梅干しよ
梅干の顔を顰める 日の重み
太陽が梅干してらす夏の味
梅干の噴出す塩の正方形
晴れた日に干されて赤に変わる梅
梅干は宝なりけりパリの宿
梅干しのまだ若き日はにがにがし
梅干の壷やしんがり引越し荷
お茶漬けに梅干ひとつ味わいぬ
梅干しを食べるとみんなおちょぼ口
梅干の骨の芯までしょっぱくて
ただ一つ梅干しあればすすむ飯
お茶請けに梅干ひとつ形よく
夕焼けの色に似てるね梅干しさん
梅干に祖母の想いをいただけり
梅干や口のほころびととのひて
純白のごはんにひっそり梅ひとつ
生涯をあるてふ梅を又干しぬ
梅ひとついろんな想いありにけり
しょっぱさは梅か涙か母の形見
梅干にはるかな祖母を想いけり
塩梅を忘れし初漬けの梅よ
日本人梅干熱くいただけり
倅へと梅干す三日三晩かな
梅ひとつそれで弁当腐るまじ
梅を干す母のもんぺは紺がすり
弁当に毒消しの梅ひとつ入れ
梅干や一年物の恋の味
梅干せばぽとりぽとりと紫蘇の汁
梅干はすっぱいけれどかかせない
梅干して明日を占ふ晴れか雨
梅干しの香りで旨し茶漬けかな
梅漬ける甕(かめ)に思ふや亡母(はは)の顔
梅干の母の苦労や少年期
梅干すに天日気随に翳りけり
梅漬けて吾を労わる妻なりし
干梅や一つ一つに皺違ふ
年老いた海女も梅も干されけり
姑の視線気にせず梅漬ける
干し梅に日の匂いする夜の静寂
狭筵に隈なく並べ梅を干す
日の匂う干し梅反す夜の軒
夜干しせし梅の匂ひく稿(こう)の部屋
梅干や白きご飯の峰高く
干梅や庭で採りたる地産もの
梅筵日を吸ひ赤き地表かな
梅干して年中行事はこれぞのみ
梅干の蔵となりたる生家かな
干梅に皺の目立つも吾若し
梅干や時超えて来し母の味
梅漬けて脇に姑我流なる
亡き母の漬けし梅干無尽蔵
干梅やそれぞれ皺に個性あり
梅干の口に広がる地熱かな
朝明けの風の匂ひや夜干梅
梅干の上に砂糖を山と積み
為さるままじっと堪ふる夜干梅
梅干の紫蘇の染み出る白砂糖
梅干して明日はど゛の色思ひ待つ
塩噴きし梅干蔵す古常滑
梅漬ける襷の妻は亡母(はは)に似て
こめかみの梅干白く輝きて
梅干や甕に仕込み日亡母(はは)の文字
白飯に梅干一つ乗せただけ
若い面急に老いる魔法の実
婚の荷に祖母の梅干し積みにけり
辛いとき梅干し食べてリフレッシュ
梅干や引き出す祖母の知恵袋
梅干して日向ばかりを追ひにけり
梅干のほどよきが良し皺の数
梅干の句をひねるだにつばき出づ
梅干や中央の席譲らざる
梅干の減塩実にたよりなき
梅干の種を割ったと自慢の子
梅干が鰯の煮付けに紅くさえ
梅干の色に生唾のみにけり
梅干の塩辛さこそありがたき
梅干を食べて三毒絶ちにけり
梅干や夜雨のようなわびしさよ
一粒の梅干でよし手酌酒
梅干や母が送りし味便り
わが暮らし中の下で良し梅を干す
梅干をぽつりと海苔と置きにけり
梅干に母のやさしき手塩かな
梅干を白飯置いて皆同じ
母在るはきのふノ如く梅を干す
梅干や最期に思う母の味
梅干を粥に埋めて掘り出して
梅干や母のむすびの固きかな
梅干を食べて沈黙ありにけり
故郷や梅干の粥の味よし
白粥に梅干一つ京の宿
うめぼしマン日本がつくったスッパーマン
梅干して母の手にある手塩かな
干柿と梅干だけは祖母の味
梅干してけふをきれいに過ごしけり
梅干しで思い出したわおとらさん
梅干は母の思い出握り飯
梅干を2キロ持たせて見送りぬ
手間暇をかけて梅干す一日かな
梅干や母の形見の塩加減
梅干して明日の晴れを疑わず
恋心梅干しみたいに甘酸っぱい
梅干を含み無口となりにけり
おにぎりにやっぱり合うのはうめぼしだ
梅干も主役の一人運動会