俳句庵

6月『梅酒』全応募作品

(敬称略)

シェーカーに梅酒と氷鬱も入れ
梅酒初むキッチンドリンク入門者
遺されし梅酒熟成琥珀いろ
柔らかに心清まる梅酒かな
母おもひ梅酒飲みたし異国の夜
色変えぬ実のみ残りし梅酒瓶
母漬ける変わらぬ風味この梅酒
嫌な事洗い流すや梅の酒
朧げに母思う日や梅酒開け
実の細る前に底尽く梅の酒
亡き母の思い出と飲む梅酒かな
夕餉前二人静かに梅酒かな
梅酒かぐ娘に映る母の笑み
浸けた日の昭和の文字や古梅酒
梅酒瓶覗けば祖母の笑顔かな
年を経て染まる梅酒の出来不出来
義母が来て梅酒の秘訣ひとくさり
うすまれど緑に透ける梅酒かな
主婦三人昼の乾杯梅酒らし
飲み物の中に梅酒や屋形船
腹痛の薬は祖母の梅酒かな
着きしなに梅酒梅干し川の音
祖母ちゃんの秘蔵の梅酒あと僅か
梅林を眼下に梅酒呑みゐたり
嫁姑梅酒を造るころとなり
黒塀の使者や梅酒が出来たとか
晩酌は妻の造りし梅焼酎
恵比寿壜お多福壜の梅酒かな
梅酒ビン眺めて母の顔を見る
古り出でし梅酒宇宙の闇の色
五年もの梅酒飲みほし赤くなる
へたを取るどんな梅酒に育つやら
手に持った梅酒の香り酔い誘う
リカー酒を青梅かける白い滝
カリカリとかじる梅酒の青い梅
どんな夢今宵見せるや梅酒飲む
好奇心最初に飲む酒梅酒かな
一杯の梅酒に和みゆく夫婦
乾杯は梅酒に決まり家族では
点入る度一口の梅酒かな
琥珀色梅酒に溶けし君の里
一杯の梅酒がひらく豊かな夜
梅酒飲む過去と未来は夢の中
手造りの梅酒にひとつ梅を入れ
梅酒割るタイタニックの氷かな
梅酒呑む昭和の歌など口ずさみ
セピア色梅酒は揺れて何もかも
手づくりの梅酒のまろみ琥珀の夜
梅酒飲む娘はもはやアラフォーに
あなた様と杯せまほし梅酒よ
頬染めて梅酒を含む乙女かな
床下の梅酒誕生昭和なり
転勤の任地の梅の梅酒かな
梅酒すら酔うと云いしは結婚前
梅酒瓶日付は昭和の終の年
ささやかな夕餉なれどもう梅酒そえ
ひらがなの母のレシピの梅酒漬く
移りゆく世なり梅酒のブランデー
いささかの梅酒の酔いや早寝せむ
かざし見るワイングラスの梅酒かな
梅酒漬く夜は指先に梅匂ふ
ラベルには昭和とありし梅酒かな
瓶に古る梅酒の梅の琥珀かな
甘き香よ別れ話で飲む梅酒
こまごまと家伝のレシピ梅酒壜
お祝いの言葉始まる梅酒かな
賞味期限なくて楽しむ梅の酒
祖母の手に刻み込まれし梅酒の香
琥珀とは正にこの色梅の酒
久方も言葉もなくて梅酒つぐ
亡母(はは)の文字壺に遺され古梅酒
広口の梅酒の蓋に昭和の字
ビン揺すりグラスにとろりと梅の酒
梅酒の実噛めばふるさと濡れている
瓶透けて犇く実の見ゆ梅酒かな
梅酒瓶理科標本のように置く
古梅酒古びし吾の楽しめり
吾は酒妻は一粒梅酒の実
ジムのあと喉に涼しい梅酒かな
人生は酸いも甘いも梅酒かな
祖母つける梅酒にたんとある甘さ
婆ちゃんの知恵が溶け込む梅酒かな
恋人ができて梅酒で乾杯す
母の字の古い梅酒が棚の奥
子どもしかいぬのに何故か減る梅酒
母の分下げ忘れたる梅酒かな
飲むほどに美人になってゆく梅酒
殊更に揺らす梅酒のコマーシャル
風呂上り梅酒かビール迷う指
梅酒瓶天神様が透けて見え
梅酒瓶いつしか減ってしまいたる
世の中に梅酒で口説く野暮が居る
梅の酒母伝来のレシピかな
梅酒にもセレブは使うブランデー
梅の酒母の遺作と言うべけり
鮎焼きに一杯添える梅酒かな
手間暇を惜しまぬ母の梅酒かな
惜別に梅酒を呷り分かち合う
年を経て昔を思ふ梅酒かな
梅酒作り種抜き手伝い参加する
年ごとに思い出熟す梅酒かな
梅酒飲み今日は何だか素直だな
梅酒酌む器は敢へて江戸切子
いい香りリラックスには梅酒だね
慎ましき献立に添ふ梅酒かな
夕飯は梅酒があれば充分ね
梅酒びん貼られし紙に祖母の文字
楷書にて年次貼り付け梅酒棚
お開きは梅酒で締める婦人会
氷砂糖小さき手が出る梅酒漬け
吉日を選びて梅酒漬けにけり
お引越し年代梅酒に遭遇す
晩酌は妻に合わせる梅酒かな
皺ぶれし梅酒の実よお疲れさん
病弱の妻に購う梅酒かな
禅寺の歴史語りつ梅酒かな
水注され煙たがりたる古梅酒
梅酒飲めばとろりと夜の深むかな
三分こそ梅酒ほどよき白磁杯
新婚のころの梅酒と思ひけり
ふくいくと昭和かほるや黒梅酒
梅酒舐め琥珀の海に横たふる
炭酸の割る梅酒かな風呂上り
琥珀色時経るほどに梅酒かな
無二の友右手ぎやまんの梅酒注す
古女房梅酒とともにまったりと
椽下に文字は消えにし古梅酒