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- 俳句庵 2012年09月 優秀賞発表
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俳句庵
9月『虫一切』全応募作品
(敬称略)
- 動物園の檻みな静か蝉時雨
- カチャカチャと草むら鳴きぬ轡虫
- 蜩の迫り寄せくる別れかな
- 松虫や人待つ貌の待つ虫か
- 邯鄲やページ繰る指つと止まる
- 蜩の風になるまで鳴きにけり
- 絵扇に写し取りたし虫時雨
- 道なりに行けば道なり虫しぐれ
- 逢ひに行くひとのいた町赤蜻蛉
- 栗虫の狼藉すでに秋深き
- 射的小屋浜に傾いで赤蜻蛉
- 鈴虫に沈思の間合ひありにけり
- 金糸雀の墓にこほろぎ鳴きにけり
- 血圧を測ってをりぬ虫の夜
- 嫁ぎきて鈴虫の声聞き初めし
- 残る虫七七日も過ぎにけり
- 嘶けば飛蝗とび出す飼葉桶
- 沙汰やみのあとの静けさ火取虫
- 丹精の庭も小叢にちちろ鳴く
- こおろぎや眠れぬ夜の友とする
- 鳴き通す鈴虫昼は寝て過ごす
- 夜のとばり待ちいしばかりに虫の鳴く
- こほろぎや押せば出てくる手水入
- 偕老の夫婦言なく虫の夜
- 刀剣で目を打つ碁盤鉦叩
- 虫すだき闇夜つんざく大合唱
- 古民家の土間の暗がりちちろかな
- 蟋蟀や脚鋭角に弾きおり
- 今生を必死に生きよ鉦叩
- 虫の声静かに流すイバリかな
- 蟋蟀に耳をすまして独りの夜
- 蟋蟀の確かなる歩を刻みけり
- キリギリス二晩生きて果てにけり
- 鈴虫の縁側灯り消して聞く
- すいっちょん窓ノックしては立ち去りぬ
- 足音の途絶えてよりの虫時雨
- 轡虫トラクタ通過せし後に
- 虫の音を愛でて退出したるかな
- 目ん玉を上流に向けオニヤンマ
- 無人駅降りれば故郷虫時雨
- 馬追いの馬の足許潜めけり
- 虫の音に心の武装解きにけり
- 蝗食ふ母魔女の如見る娘
- 特急の通過待つ駅ちちろ鳴く
- 外出後メールもなき子虫時雨
- 虫の闇ナースのひそと巡回灯
- 虫鳴くと言ふが響くは風ばかり
- 虫篭と子が飛び出して新幹線
- 子午線を越えてばったの飛び行けり
- 測られてゐるこほろぎの廃屋かな
- 虫すだく閉ざししままの竜隠庵
- 宿下駅のゆるき鼻緒や虫の声
- 終電を降り虫の街一丁目
- 銀座路地の女将を偲ぶ虫の声
- 虫しぐれ一里先には原発基
- がちゃがちゃの鳴けば何かを思ひ出す
- 厨より虫の声する飲み屋かな
- 浴室を跳びはねてゐるつづれさせ
- 一人逝きまた一人逝き虫の鳴く
- 安らぎはチェロの音にありきりぎりす
- 目を閉じて最終電車で虫を聞く
- 何となく眠気を誘ふ昼の虫
- 病人は虫聞くたびに弱音吐く
- 昼の虫遠くでボールの弾む音
- 頭上から 足下へさやか 虫時雨
- こほろぎや一人の夜をもてあます
- 月の出を 草野に担ぐ 虫時雨
- うたた寝の酔いから覚めて虫の声
- 憑いて来るものの気配や虫の闇
- 蟋蟀のどこぞと見れば鳴き止みぬ
- 通夜帰り闇の深さの虫時雨
- 月影や蟋蟀の翅照らしけり
- 味噌蔵の土間に塩吹くちちろの夜
- 鈴虫の帰宅の妻に著く鳴く
- 神木の洞に蛇住む虫時雨
- 回覧板届け鈴虫もらひけり
- 虫時雨スカイツリーの灯が落ちて
- 蝉鳴くや校庭駆くる部活の子
- 句日記に虫の句を得て闇深し
- 庭石に蜥蜴しの字のまま止まる
- 追われきて草になりきるキリギリス
- 朝市の賑はふ宮や蝉時雨
- 駅の灯を借りて鈴虫売られけり
- 網を出す男子に蝉の尿かな
- 立ち入れぬ廃炉の村の虫時雨
- 虫の音や10年ぶりの里帰り
- 下駄音にピタッと止みし虫時雨
- 昼の虫コーヒ樹海に寝転んで
- 五線譜の闇をはみ出す虫の声
- 雨にも負けず風にも負けぬちちろかな
- 虫鳴けば籠の中でも鳴きにけり
- 戸隠の牧に鈴振る草雲雀
- 物置に父の残した虫鳴けり
- 火の山を三重に囲める秋の虫
- 家系図の途切れて繋ぐちんちろりん
- こほろぎと乗りたる旅の夜汽車かな
- 灯が点り一歩退く虫の声
- 終電の尾燈を蔵ふ虫の闇
- 夕風をはたと止めたり虫しぐれ
- 日だまりの石に来て鳴くすがれ虫
- 鈴虫の声は遠かり母の墓
- 虫の宿芭蕉の道のあとさきに
- 背を向けて鳴く虫のあり朝の風
- お地蔵がうらめし虫の声の中
- 雨止めどまだ降りしきる虫時雨
- 虫が鳴きもう一仕事祖母が立ち
- 擦れ違う高温処暑人と虫
- 児が肩に虫を止まらせ自慢する
- 地下道の入口出口ちちろ虫
- 赤とんぼ絵筆にとまる昼下がり
- 野に放つ子の掌の子鈴虫
- 今日よりよい明日はない蝉時雨
- 鳴く虫の虫の鳴まね訛りあり
- 妻の留守ひとり酌む夜虫時雨
- 鈴虫のエサ当番はいつも母
- 今朝も又蝉仰向けに命絶え
- 腹を見せ雄コオロギの曳かれゆく
- いづこよりこおろぎ集う立ち飲みや
- 風止まり独唱寂し鈴虫や
- 喧噪のメトロ上れば蝉時雨
- 輪塔の梵字すがる枯蟷螂
- 蓑虫の内緒話に耳澄ます
- 虫の夜や喜寿となりしも母を恋ふ
- 何匹と言えぬ鈴虫鳴いている
- 名刹や写経半ばの虫すだく
- 鈴虫やひとりの時間また楽し
- 言ひだせぬことのいくつか虫の夜
- ちょびちょびと酒なめにけり鈴虫よ
- 火取虫老いても論は譲られず
- 鈴虫に音痴一匹いないかな
- むなしさのまたも襲える虫の夜夜
- 鈴虫や飛べぬかわりに歌いけり
- 虫の音や意識をしてもしなくても
- 鈴虫やどんな曲より涼しけり
- ちんちろやジャズボーカルの稽古して
- 子ら帰りにわかに虫の夜となりぬ
- 虫の秋神も仏もそばにをり
- 民宿に眠れぬ一夜虫しぐれ
- 鈴虫の秘密の部屋に入りをり
- 虫鳴くを妻に言はれて気つ``きけり
- 虫の声子らと出会ひし奇跡かな
- 薪風呂の奥の暗がりいとど跳ぶ
- 月鈴子宇宙の中の私かな
- いよよ澄む継ぎ目なき空残る虫
- 虫時雨思えば遠き里の夢
- 芋虫やいつかこの子も飛び立つ日
- 虫かごや集めた命土還る
- つながらぬ夢をつないで鉦叩
- 虫の音や縁で教えし父となる
- 黒色の蟋蟀トイレから逃げて
- 鈴虫ややがて悲しきドラマ見る
- 羽蟻(はあり)見る申請に行く直前に
- 虫の音や命ふるわす老いの夕
- 蟷螂と蝉が戦ふ庭を見る
- 蟋蟀のようなる叔父の死に目かな
- 抜け殻と化した蝉引く車かな
- 化野の古き石より虫の声
- 家の中入れば蟻どち生きられぬ
- 虫の音や庭園灯はまたたかず
- 揚羽蝶つがひで斜めに飛び上がり
- 息継ぎのように休むよ鉦叩
- 虫の音の待っておりけり露天風呂
- 片付けを終へて小庭の虫の声
- 奥美濃の虫鳴く朝の直売所
- 虫時雨佇む夫に声かけず
- こほろぎを乗せたるままに連結器
- ひたすらに鳴いて朝のつづれさせ
- こほろぎの迷ふ新築村庁舎
- 前髪の分け目変へをり月鈴子
- 下山道里道となりきりぎりす
- こほろぎや皮の栞はパリ土産
- 残業の如く鈴虫鳴きやまず
- パソコンの画面光れり虫よぎる
- こほろぎの飛び乗る列車無人駅
- 寡黙なる人も語るや虫の声
- 苫屋こそ我が王国やちちろ虫
- 鉦叩今日も来てゐし仏間かな
- ちちろ虫死んでも離さぬ闇の色
- 誰叩くチンチンチンや鉦叩
- 校庭に闇迫り来て虫の国
- スカイタワー見ゆる路地裏螻蛄なきぬ
- セロ弾きのゴーシェ加わる虫時雨
- 邯鄲やほそき声する高尾山
- こおろぎの配布に並ぶ親も子も