俳句庵

1月『仕事始』全応募作品

(敬称略)

日本髪結ひて老舗の初仕事
挨拶の長き上司や初仕事
胃腸薬机に仕事始めかな
ゆつくりと書類流れて初仕事
七色のチョーク揃えて初仕事
包丁を研いで厨の初仕事
自転車をぴかぴか磨き初仕事
目覚ましの 針を合わせる 仕事始
はずれくじ捨てて仕事始めかな
米寿にて仕事始の鉋研ぐ
金バッジ重たき仕事始めかな
木遣衆仕事始の声揃う
新人は 明るい挨拶 初仕事
褌へ息の白さや仕事始
製材所仕事始や木の匂ひ
仕事始二日と痴呆独り言
合掌す仕事始の畑向ひ
仕事始日の出の方へ手を合わす
母一番仕事始の厨かな
気持込め仕事始に取る受話器
人は人仕事始の長靴履く
目標を新たに仕事始かな
神官の幣編む仕事始めかな
残業もやむなし仕事始かな
代議士の選挙区廻る初仕事
新手帳仕事始の一ページ
俎板に水かけ仕事始めけり
仕事始まづ安全帽を祓ひけり
初仕事鯛の止めを刺しにけり
水玉のネクタイ仕事始の日
オレオレに母も疑い仕事始め
編集部仕事始の宿酔
孫たちに貢ぐうれしさ仕事始め
時差ぼけを引きづり仕事始かな
俳諧は徘徊なりと仕事始め
板前の純白俎板始かな
また今年貧乏暇なく仕事始め
初仕事素通りできぬ神社前
定年の近きを思ふ初仕事
郵便の嵩いくつもや初仕分
鉛筆を揃えて仕事始とす
パソコンのパスワード入れ初仕事
心変え服変え仕事初めかな
新妻の家事のはじまり目覚めから
ビル未だ温まざるなり初仕事
初仕事欠かせぬ挨拶回りかな
挨拶に倦みたる仕事始かな
茶碗酒くみて仕事のまず初め
空き机仕事始にひとつあり
変りなき仕事始まる有難さ
終業のベル待ち侘びて初仕事
毎日の家事も仕事の初めかな
新しき鉛筆十本初仕事
定年の仕事初めや庭掃除
駅前が仕事始めやギタリスト
ネクタイの赤際立ちて初仕事
待ちかねし待ち人来たり初仕事
仕事始暮れに貰ひしマフラーで
初仕事かねて望みの寺を訪ふ
仕事始一人旅立つ心地のし
客来たり仕事始めに米を研ぐ
仕事始子を負ひて行く母のいて
初仕事指あたためて作句かな
仕事始顔は光の中に置く
小児科の検温時間初仕事
この時季にこぼれる花が仕事始
盲導犬聞き入る声や初仕事
千両のいよいよ赤き仕事始
カレーパン限定百箇の初仕事
けさの茶の水盃なる初しごと
アナウンサー仕事始の鼻濁音
気合いれ 仕事始めに にぎりめし
吉例の箒目たてて初仕事
年明けに営業マンは品納め
パソコンのスイッチ一押し事務始め
手斧始寒気削りし槍鉋
訓示受け神棚拝む初仕事
古希迎う仕事始めの夢を見る
暖簾出し盛り塩済ます初仕事
仕事始め四日の塵を捨てにけり
柏手を打って鉢巻き初仕事
初乗りはポニーテールの運転手
部下の顔疲れてをりぬ事務初
初仕事お掃除ロボのボタン押す
大声で富士に挨拶初仕事
初仕事御神酒交して終わりけり
三禁を口に出しては初仕事
弁当の仕事始は海苔始
野良猫に餌をやりけり初仕事
宮城(ふるさと)の香仕事始に海苔を焼く
初仕事いつものごとく苦情処理
年賀状 ようやく済ませ 書初
契約書署名捺印初仕事
重い腰支えて仕事始かな
馴れぬ身に仕事始めの緊張感
邪気包みこんで仕事始かな
よろしくと仕事始めに机拭く
仕事始め両親未だ会話無く
初仕事所長の訓示ぎこちなし
引継ぎを確かめ仕事始めかな
定年を迎へる年の初仕事
初仕事朝日に当つる緋袴や
初仕事いつもの時間に駅に行く
束ねたる原稿ほどき初仕事
初仕事常の重さの鞄かな
常の如残業となる事務始
暮のメール読むより仕事始めかな
初仕事早や賑やかな輪転機
初仕事句帳に一句したたむる
反故一枚丸めて捨てる事務始
望まれし色紙の揮毫初仕事
新人一人紹介されて初仕事
隆昌の運気の気合い初仕事
合併の噂は消えず事務始
不動尊のお札を飾る初仕事
久々に着る仕事着のぎこちなさ
遷宮の年の希望に初仕事
富士拝し釣り船出すや初仕事
初仕事色紙の揮毫気合い込め
今年限りの仕事始の日なりけり
あと何回 迎えられるか 仕事始
両頬を両手打ちして初仕事
仕事始 お神酒はしごの 初詣
五七五ひねるを仕事始とす
仕事始 挨拶回り 飲み屋だけ
カフカカミュ書架にねむらせ事務始
仕事始 新年会の 打合せ
待つている仕事始の電車かな
杯に仕事始の斧の音
気合いやや空回りして初仕事
かしわ手や仕事始のしわ深し
国旗社旗掲げて仕事始かな
縄手道日の当たりたる初仕事
誰もみな新しき顔初仕事
オムレツに赤く励ます初仕事
にこやかな顔して仕事始かな
西暦は下二桁の事務始
挨拶で暮れ行く仕事始かな
初仕事終えて駅舎のあらけなし
初仕事遅れますよと子を起こす
盛り塩の 老舗に高く 初仕事
起重機の腕高々と初仕事
襟足の キリリと白く 初仕事
注文の電話舞ひ込む事務始
桧の板の 厨に薫る 初仕事
自転車で仕事始のエコ通勤
三台の 目覚まし据えし 初仕事
窓の日に背中ぬくもる事務始
胸に置く 仕事始めの 社訓かな
貯まりたるメールに応ふ初仕事
一礼す 仕事始めの 茜空
電話とて鳴らざるベルや初仕事
込み合へる店の警備の初仕事
その後の酒が楽しみ初仕事
厨より妻の指図の初仕事
パソコンの音は粛然事務始
初仕事ネクタイきりり締めにけり
白銀のアイロン妻も仕事始め
初仕事薪割る朝の空まさを
訓示聞く黒きスーツや仕事始め
晴ればれと仕事始めの朝の街
仕事始め白き風吹くビルの間
腕まくり蕎麦打つ仕事始めかな
バス停のいつもの顔や仕事始め
店頭に仕事始めの晴れ着かな
仕事始め作り笑顔のぎこちなさ
あと三ヶ月 学生生活 満喫するぞ
地下街のシャッター多し仕事始め
初仕事何はともあれ句を捻る
ラッキーだ仕事始めに君と会う
遠吠えが我が家の犬の初仕事
缶コーヒー仕事始めに飲みにけり
事務始め心新たに受話器取る
テーブルの写真を替えて初仕事
情けなや夫婦喧嘩が初仕事
富士山が見える机で初仕事
初場所に懸ける力士の顔新た
初仕事空気の締る音感じ
沿道に箱根駅伝待ちにけり
初仕事働く人は美しき
ビルのなか 一歩踏み出す 初仕事
机上まず整え仕事始めかな
新たなる 決意を胸に 初仕事
パソコンにお久しぶりや仕事始
足取りも 軽やかになる 仕事始
今日だけは愚痴封印の事務始
食って寝て まるまる太り スーツ買う
亡き母の写真を胸に事務始
食って寝て スーツ入らず 金使う
部下も無くたつた一人の事務始
お年玉 あげすぎ注意 貧乏人
年頭の辞を聞き仕事始かな
いそべ餅 お歯黒つけて みな笑う
地下足袋の泥を落して初仕事
餅つけば みんなの笑顔 溢れてる
みちのくに黙礼をして初仕事
稀にみる仕事始めの晴着かな
鉛筆を削り揃へて初仕事
国会の名札あたらし初仕事
神仏を祀り柏手初仕事
仕事始お国訛りのチラとでて
北海道仕事始めは除雪なり
ひるがへる仕事始の日章旗
社運かけ家内工業初仕事
戸一枚開けて物売る初仕事
初仕事前に伝達訓示かな
本調子仕事始めに遠からじ
ポストまで俳句投函初仕事
積み残し仕事始めのふたまたぎ
生甲斐の俳句を仕事始めとす
晴れ姿仕事始めの舞扇
仕事始め終え早々と新年会
のり弁と仕事始めも急ピツチ
日本の仕事始はものづくり
猪罠の繕ひ終へし農始
勤労のサイレンの音仕事始
初仕事獣境の電気柵
振り袖で仕事始の受付嬢
媼一人餅を背負子に山始
仕事始初心忘れず声凛々し
一盞と御幣欠かせぬ鍬始
微醺帯び仕事始めの席に着く
初せりや仮説市場に気張る声
三枚の暦をめくる仕事始
老妻や行きつ戻りつ針起し
秩父見て仕事始めの窓を拭く
トーストのごはんの仕事始かな
古稀迎へ仕事始めの量も減り
定年後 仕事始めの 淋しくて
虫除けの匂う服着る初仕事
今はもう 仕事始めの 無い身かな
初仕事手を凍らせてネギを掘る
女房の 仕事始めを ただ見てる
散らばるる反古紙まるめ仕事始かな
達磨の目大きく入れし初仕事
歳時記の表紙のしみや初仕事
鉋屑ひゅるひゅる伸びる初仕事
厨房に仕事始めや湯気たてて
消しゴムのころころ転げ仕事始
和服着て仕事始めに向かいけり
着物の娘あいさつで終ゆ仕事始
仕事始め実は下着の新しき
目の前にスカイツリーの仕事始
仕事始め午後に休みをもらいけり
シャッターを半分開き初仕事
仕事始め暗証番号忘れたり
天より茶の香りて仕事始めかな
カレンダー 仕事始めを 朱で記す
珈琲の香りて仕事始めかな
青点る 仕事始めの 交差点
合掌し仕事始めの朝餉かな
穴緩め 仕事始めの ベルトかな
屹立と仕事始めの訓示聞く
真夜中のナースコールや初仕事
その昔仕事始めのありし年
整列し仕事始の訓示聞く
先輩の しごき始めの 幕が開く
淡淡と夜勤引き継ぐ初仕事
リフレッシュ 正月ボケを 抜き切って
信号機仕事始の待ち時間
昨日まで 実家で子守の 残業を
ビルひとつ仕事始に壊す音
塩辛い 涙は今年の 報酬へ
一万円新札貰ふ初仕事
ねぇ見せて 今年はあなたの ボーナスを
何もなき机の広さ初仕事
さぁやるぞ 一家安泰 さぁ仕事
パソコンに命を入れし初仕事
まづ畑を見回るだけの初仕事
受話器へもお辞儀をしたる初仕事