俳句庵
季題 8月「墓参」

- 独り来て黙祷長き墓参かな
- 兵庫県 山地 美智子 様

- 母眠る墓地を抜け行く秋の風
- 千葉県 中原 政人 様
- 父母の背摩るがごとく墓洗ふ
- 神奈川県 川島 欣也 様
- いつの日か入る予定の墓洗ふ
- 東京都 岩崎 美範 様
選者詠
- 声かけて洗ふ子の墓遠ひぐらし
- 安立 公彦
安立公先生コメント
盂蘭盆会は、旧暦7月13日から16日にかけての仏事でした。現在は旧暦7月に加えて、新暦7月、新暦8月で行う所などさまざまです。墓参は、盂蘭盆会に、祖先の墓に詣でることです。従って秋の季語となります。
優秀賞の山地さんの句は「黙祷長き」に作者の思いが籠められています。黙祷の対象は誰なのでしょうか。「独り来て」が、その背景を示しています。一句の調べが「墓参」の季語をよく支えています。
中原さんの句。「墓参」の季語は入っていませんが、まぎれもなく墓参の句です。墓参りを済ませ、母の眠る墓前に立つ作者に、一陣の秋風が吹き抜けてゆく。静かな、そして思いの深い時が流れて行きます。
川島さんの句。父母の背中をさするように、丁寧に墓碑を掃除する姿がよく出ています。それはまた、作者の「父母」に寄せる思いの深さでもあります。この句、原句は「ごとし」でしたが、下五に続くように「ごとく」としました。
岩崎さんの句。墓に這入るということは、自分の死を意味します。それを作者は「入る予定の」と、淡々とした表現で一句をまとめています。そのことが却ってしみじみとした趣の句となり、作品を成功に導いています。
今月は他にも佳作が多く、「嬉しい悲鳴をあげる」という思いを実感しました。
◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。