俳句庵

11月『小春』全応募作品

(敬称略)

京都府     中村 万年青
還暦の小春日和の宮参り
小春日に鹿も山より里親し
紅葉寺縁側ぬくし小春かな
七五三の晴着の映ゆる小春かな
小春日や昔懐かし酉の市
北海道     藤林 正則
縁側に犬猫赤子婆小春
鬼太郎に出逢ふミナトや小春風
湯の町の足湯を巡る小春かな
小春日を余さず使ふ老夫婦
小春日や畜舎に猫の二十匹
東京都     紫栗
宅配便 開けてぎっちり 小春里
小春午後 度忘れ急に 甦る
東京都     紫葉
小春旅 少し背伸びし 影法師
小春午後 半袖少し 後悔す
神奈川県     佐々木 僥祉
小春日や術後七日の散歩道
小春日に一つ伸びして掃き掃除
源流の池に映すや小春空
種こぼす草にふるるや小春風
小春日や遊具のゆるむ園近し
広島県     永野 昌人
片付けるために散らかす小春かな
道訊いて道連れとなる小春かな
ひねもすを波無き瀬戸の小春かな
助手席の妻が舟漕ぐ小春かな
出雲より悪友二人小六月
千葉県     祐
小春日や金髪婆の赤き爪
襟足の秘やかに燃ゆ小春かな
刈り上げし襟足かろき小春の日
愛おしき乳房喪ふ小春かな
ゆるゆると小春の朝に鴨ゐたり
大阪府     永田
小春日の予報待ちたり車椅子
埼玉県     米田 哲
白き花赤き蕾と小春かな
老いの驥止まぬ壮心小春かな
東京都     蘭丸
体ごと小春日和に透かしけり
たわい無き話を伸ばす小春かな
埼玉県     哲庵
小春日やハローワークの長き列
街小春キューポラ赤く錆び朽ちて
樹木葬木を選びをる小春かな
エンディングノート広げる小春かな
通販のカタログめくる小春かな
東京都     岩川 容子
俎板に小春の水のやわらかき
松に巻く菰の匂いや小六月
社交場となりし縁側小春かな
ベビーカー集う小春の昼下がり
東京都     安西 信之
交番に蕎麦屋の出前町小春
千葉県     犬槇庵 光晴
この在に余生過ごさむ小春空
滋賀県     濱本 勝美
花嫁の小春佳き日の美涙なれ
小春そら木洩れ日映すなごり葉
小春日の枯葉舞い散る風を侘ぶ
小春日や陽溜まり集いあれこれと
新郎や思いを叶え小春笑み
東京都     鈴木 眞由美
小春日の母のため息眇眇と
はんなりと紫煙をはこぶ小春風
吟行の小春日和の深呼吸
マスターの問はず語りの小春かな
大阪府     石英
小春日や黒猫の住む土手登る
小春日やメロウイエロウ陽にかざす
小春日や学徒真っ直ぐ出陣す
小春日や地面震えるパレスチナ
ゆっくりと小春日に噛む黒納豆
神奈川県     川島 欣也
荒磯のよたり寄る波小春凪
小春日や小言少なき古稀の妻
水掛の地蔵に集う小春かな
小春日や野花手向ける道祖神
赤道を越え仔の帰国小六月
東京都     水野 二三夫
膕(ひかがみ)を撫づる小春のまろき風
小春日のさしたる肌に肩黒子
山口県     ひろ子
公園の猫たむろする小春かな
北海道     飯沼 勇一
小春日や久々に押す車椅子
古民家が深呼吸する小春かな
小春日や法要の読経伸びやかに
小春日や無人駅の笑い声
牧場の牛ら寝そべる小春空
東京都     石見 光夫
尾の動く猫の返事や小春縁
秘湯へと通づる吊橋小春かな
山口県     山縣 敏夫
小春日の庭に干し物かかりけり
愛犬が居間に転がる小春かな
小春日や孫が寝転ぶ畳の間
清水の舞台に群れる小春かな
小春日や反り橋渡る人の群れ
愛知県     川俣 周二
収穫を終へてくつろぐ小春かな
縁側に猫の背を撫づ小春日和
思いきり伸びしたくなる小春空
図書館で借りし絵本や小春日和
小春日や無性に人と会ひたくて
兵庫県     新本 繁樹
枯草に猫居眠りの小春かな
バス停に猫の待ちいる小春かな
埼玉県     長澤 千鶴子
車椅子押して駅まで小春空
パツチンと爪切り小春かな
岐阜県     ときめき人
嗣治の猫絵もあくび小春日ぞ
東京都     三角 成彦
朝戸あけ向かえば温し小春空
出雲路も賑わい初むる小春かな
鶴来る天やはるけし小春月
紅葉せる柿にのこれる小春かな
山寺の鐘に田舎の小春かな
東京都     ―
縁側で 木漏れ日落とす 小春かな
小春日が 冷えた指先 温める
泡沫の 寒さやわらぐ 小春かな
緑茶飲み 家族と笑う 小春かな
小春日よ 瞼震わす 朝の風
神奈川県     塚本 治彦
花嫁の乗る渡し舟小春凪
散髪の小春の鏡無精髭
地蔵の頭転げ落ちたる小春かな
小春日や師弟もろともずる休み
授かりし赤子のごとき小春かな
神奈川県     川口祐子
ガミガミと云わせる子のゐて小春の日
小春日を授かり満員電車乗る
毎日が休みの父の小春かな
鼻歌の妻休戦の小春かな
愛知県     岩田 勇
病む妻の今日よく笑ふ小春かな
魚はねる小春の湾を巡りけり
病棟の窓全開の小春かな
仰向けに豹の伸びきる小春かな
富士の景少しゆるびし小春かな
埼玉県     守田 修治
小春日や舟影多し城ヶ島
小春日や軒の鳥かご空のまま
フランスパン抱えておつかい小春かな
どこからも天守の見えて小春かな
高砂湯煙突背伸びし小六月
大阪府     太田 紀子
一人飲む渋茶の旨き小春かな
鳶の影点となりゆき小春かな
小春日や葉を食ぶ麒麟の黒き舌
埼玉県     櫻井 玄次郎
小春日の犬のあくびにつられけり
宮城県     林田 正光
小春日や 午後のデパート 老舗展
ルビー婚 小春日和の フルムーン
ロトセブン 夢を買いたる 小春かな
東京都     佐野 功
小春日や寝入れば夢のまた続き
小春日やよく伸びきたる猫の背
みどり児や小春握りて夢を見る
縁側や子雀集う小春かな
番犬のおとなしくなる小春かな
岡山県     岸野 洋介
こわごわと吊り橋渡る小春かな
風鐸の揺れのかすかや寺小春
大鳥居あおぐ靖国苑小春
坂のまち猫あちこちの小春かな
京小春他国語きこゆ金閣寺
大阪府     津田 明美
小春凪白き航跡刻む船
歩の遅き夫に寄り添う小春かな
小春日やにわか床屋に蟻迂回
小春日や右舵ぐいと川下り
東京都     直木 葉子
小春日和肩にくひこむおんぶ紐
いい日旅立ち小春日のオルゴール
神奈川県     矢神  輝昭
小春日や同室患者に笑ひもれ
小春日やふと広縁に妣のあり
小春日や仕上げ上々刀鍛冶
旗日なり我が家の門は小春日と
小春日に砂場のままごと夕長し  
東京都     村上 ヤチ代
小春空庭で髪の毛切りませう
千葉県     隼人
小春日や足湯に浸る妻と夫
子六月山間の入り日見ていたり
兵庫県     山地 美智子
縁側に回る小春の御用聞き
千葉県     二階堂 脩一朗
甲羅干す亀のつらなる小春かな
三重県     平谷 富之
診断の 安堵の結果 小春かな
買物の 一歩を早める 小春かな
東京都     中田地溝
気配消すハシビロコウの小春かな
砂山に残るスコップ小春かな
神奈川県     井手浩堂
横浜に妻とパン選る小春かな
小春日やゆつくり開く象の耳
弓なりに出船水脈引く小春凪
船笛の長く尾を引く丘小春
静岡県     柳谷 益弘
小春日や日なたへ向かう車椅子
栃木県     長浜 良
竿売の声細長き小春かな
楽隊の並木通りへ小六月
小春日の夜は慈しむ脹脛
駄菓子屋の空くじ多き小春かな
物売の声高らかに小春かな
滋賀県     村田 紀子
柿吊るす親子の会話小春かな
小春日や枯れ木にモズの澄んだ声
小春日に湖岸を走る影二つ
洗濯を干す手休める小春かな
焼き芋が手に温かい小春日や
茨城県     萱原 祥暢
地球儀の軽ろき回転小六月
コンビニのホットコーヒー小春凪
小春日やGPSで母を追ふ
熊よけの鈴響き来る小春かな
小春日のぐんぐん伸びる万歩計
岐阜県     田中 恭司
日の出には さすがに寒し 小春かな
小春日や 海苔を干す父 忙しく
小春日の 福呼ぶ海苔を 見上げけり
ばりばりと 父が海苔食う 小春かな
一面に 海苔を干したる 小春かな
福岡県     風有路
息ひをる石段にあり小六月
字余りも在りたる虚子の句碑小春
猫来る小春日和の使ひとて
夢鎮めたる壇ノ浦小六月
無精髯小春日和を持て余す
山口県     ―
小春日やベンチに猫の無人駅
神奈川県     相模太郎
お結びのリュックを背負ふ小春かな
蛸壺の山に網干す小春かな
赤ん坊を泣かせてしまふ小春かな
手を上げてバスに乗り込む小六月
亀累々小春の岩を覆ひけり
富山県     岡野 満
小春日や猫の目覚めし大欠伸
碁敵の家へ足向く小春かな
小春日や庭の仕事を急ぎけり
福岡県     桑田 勲
小六月海一望の握り飯
繚乱の足に任せて小春径
指揮棒の一瞬止まる小六月
学生のネクタイゆるむ小六月
最北の海に手を浸け野の小春
神奈川県     石鎚優
小春日や難民の子らはるかなる
はるかなる戦災孤児や小春の日
破滅型半生なりし小春かな
たましひの小春といふを知らざりき
父母も睦み合ひしや小春の日
群馬県     麻眠
小春日や 重き布団を はねのけり
小春野へ 認知の父 連れ出しけり
母の眼の 優しさ包む 小春かな
浅間山 小春燦々 導かれ
窓開き 小春の匂い 香しき
東京都     岩崎 美範
戦禍なき七十年の小春かな
マラソンに復興託す街小春
揺り椅子に舟こぐ妻の小春かな
象の耳ぱたぱた揺るる小春かな
銀座線地上に出れば小春かな
三重県     吉田 雅
開け放つ窓際の指小春染む
日溜まりに残れる小春仔猫寝る
小春日や恋も桜もひらく朝
小春呼ぶまこと清らな空の青
少年の春に小春と言いし日は
福岡県     西山 勝男
小春日の手慣れの鍬に抜かりなし
隣り合う寺と教会島小春
混浴の足湯こみ合ふ小春凪
たたなづく新羅の陵墓墳小春
見学の軍艦島や小春凪
岡山県     渡辺牛二
来客に犬が出て行く小春かな
小春日や一両電車一人きり
小春日の卵生みたる鶏の声
出張のついでの海の小春凪
小春日の鳶をつつける鴉かな
埼玉県     山崎 大輔
長袖の丈は縮んでゐた小春
埼玉県     坂本 凜太朗
小春日の空のオレンジ遠ざかる
埼玉県     赤沼 拓
小春日に君と僕とが別れ告ぐ
埼玉県     才守 有紀
ラジオからジョン・レノンの声や小春凪
埼玉県     倉野尾 柊斗
自転車のかごが満杯小春風
奈良県     堀ノ内 和夫
まずテニスかくて小春の酒を楽しまむ
小春なぎ釣舟の寄る二三隻
小春日や縁に置かれし備前焼
小春日やマラソン人の駆けてゆく
小春日やつがいの鳩の庭に来て
兵庫県     岸野 孝彦
思い出を心にひたす小春かな
小春とは冬の季語なり河童橋
スタンドの小春という名の灯りかな
横尾より小春流れり梓川
山超えて小春という名の娘あり
大阪府     高塚 政宜
紐銭をつける背中の小春かな
紐銭をむすぶ背中の小春かな
出立の袖折り返す小春かな
紐銭をくくる背中の小春かな
東京都     かつこ
上水の流れ静かに小春かな
便り書く窓の外は小春かな
長野県     木原 登
まつさらな畝に湯気立つ小春畑
水飴のとろりと透ける小春かな
子の声のひびく小春の合掌家
春よりも小春が好きになりにけり
「天上大風」すなはち小春日和かな
神奈川県     佐藤 博一
縁側は母の社交場小春の日
一駅は歩き行くべし小春の日
能面の口元ゆるむ小春かな
仮縫いのやうな風来る小春かな
石庭の石の息づく小春かな
熊本県     貝田 ひでを
コンビニの売り子の笑顔小六月
ウオーキングの記録更新小春の日
小春日の未だ確かな腹時計
石仏はなべて笑顔や小六月
岐阜県     金子加行
時刻表どおりバス来し旅小春
小春日や見つけしカフェや穴場めく
小春日や母全快の診断書
小春日や当たる売場へ宝くじ
小春日や友の郷土史成る手紙
千葉県     柊二
小春日和徘徊の母家路あり
パチパチと酵母の樽の小春かな
デズと言う浜のタクシー小春下
埼玉県     佐藤 茂
隠すことなかりし爪を研ぐ小春
顎上げてモアイの顔となる小春
兵庫県     岸下 庄二
長居する小春日和のカフェテラス
小春日や日曜画家の此処彼処
手庇で天守を仰ぐ小春かな
風見鶏のんびりしたる小春かな
二重三重亀の重なる小春かな
新潟県     近藤 博
小春日や心もぬくぬく歩を早む
昼中は上着脱ぎ捨つ小春かな
縁に座すそがひに妻も小春かな
舫とき漁に出づるか小春凪
小春の陽洗濯物のよく乾き
茨城県     たいようたろう
スキップで来る小春日の赤い靴
小春日の笑顔で帰る一年生
わらいころげて涙ぐむ小春空
手をつなぎたくなる夕べ小春凪
日にとけて沈む小春の影法師