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- 俳句庵 2015年12月 作品一覧
俳句庵
12月『行く年』全応募作品
(敬称略)
- 京都府 中村 万年青
- 行く年も来る年もなほ平和なれ
- 雪に明け温し師走の京かな
- 行く年や巡る季節のいや早し
- 行く年の巷の賑わふ暮れの街
- 行く年や世相の暗き青い星
- ブラジル 富岡 絹子
- 行く年や祖国を離れ五十年
- 行く年も暑さに耐へる異国かな
- 神奈川県 佐々木 僥祉
- 行く年の積もりて払ふ負い目あり
- 行く年や湯気のゆくへに露ひとつ
- ゆく年や巡りて遊ぶ水の星
- 行く年の火こそ鎮めや箱根山
- 渋色の鳥ぞ飛びゆく年の末
- 東京都 水野 二三夫
- 原節子加藤治子や年は逝く
- 職退くや年逝けばなほ虚ろなり
- あたらしき呱呱の声聞く年ゆけり
- 東京都 紫煤
- 行く年や 帳尻合わせ 忙しなく
- 行く年や ボジョレー呑み止(さ)し 神神し
- 東京都 紫懐
- 行く年や 歯磨きチューブを 思い遣る
- 行く年や 仏頂面の 信号機
- 東京都 去未
- 行く年や 日めくり残余 愛おしむ
- 東京も 行く年慣(な)らい 疾走す
- 埼玉県 長澤 千鶴子
- 行く年や貨車は静かに駅通過
- 行く年の真心込めて礼状書く
- 橋に立ち流るる年の波の音
- コ-ヒ-のカウンタ-あり去ぬる年
- 行く年や愛犬の爪パッチンと
- 東京都 安西 信之
- 行く年の火の粉舞ひたる神社かな
- ペンライト左右に振りて年送る
- 行く年のアメ横今も賑はいぬ
- 行く年や父五十年の忌を修す
- 埼玉県 哲庵
- 年行くや喪中葉書を出しそびれ
- 行く年や偽装疑惑のそのままに
- 行く年や母に新車の車椅子
- 行く年の川下りゆく松葉杖
- 行く年や女系家族に囲まれて
- 三重県 平谷 富之
- 行く年や カレンダーにある 思ひ出よ
- 埼玉県 守田 修治
- 行く年や閂ぴしゃり大使館
- ささやかに馬券的中年行けり
- 行く年や回覧板に訃の報せ
- 行く年やぶっきらぼうの立ち話
- 行く年やまたおいてゆかれるじぶんかな
- 東京都 鈴木 眞由美
- 閑暇得てモカの香りに年流る
- 手伝ひを乞ふ程もなく年逝けり
- 行く年やこの水菓子が買ひ納め
- 吾越えて流るる年のにぎやかに
- 滋賀県 濱本 勝美
- ゆく年を無聊を託つ蕎麦焼酎
- 行く年や良きも悪しきも逝く年や
- ゆく年や切なき巴里へ鐘の音
- ゆく年や遣る瀬なき世ゑ百八つ音
- ゆく年や過ぎし速さをまた歩く
- 石川県 藤谷 幸恵
- 行く年や熊に注意の立て看板
- 行く年や寄席の舞台の帯戸かな
- 行く年や頬かむりする朝市女
- 東京都 岩川 容子
- 土だけの鉢すてられず年行けり
- 行く年やなげしに吊るす娘の晴れ着
- 行く年の人こぼしつつ終電車
- 行く年やひっくり返す砂時計
- 東京都 中田地溝
- 行く年やあすの光をはらむ夜
- 東京都 村上 ヤチ代
- 行く年や血潮を繋ぐ孫生る
- 奈良県 吟梵
- よしあしを袋につめて年行けり
- 橋わたる八十路の足や年流る
- よしあしを袋に入れて年行けり
- 埼玉県 米田 哲
- 行く年は遊行柳に出会へけり
- 行く年や阿蘇が怒ると手帳閉じ
- 行く年や無事なる日々を感謝して
- 行く年や行くなと言ふても詮の無し
- 行く年に全てを託し送り出す
- 神奈川県 川島 欣也
- 年流る億光年の果てまでも
- 年毎に逝く年足を速めけり
- 役目終え名跡消える年惜しむ
- ゆく年や異国五年の吾子帰る
- 行く年や知恵三災に及ばざる
- 愛知県 川俣 周二
- 行く年の音を立てたる配達夫
- 行く年の気配を消して過ぎてゆく
- 行く年の日めくり紙の薄さかな
- 青森県 飯沼 勇一
- 行く年や市立図書館閑散と
- 行く年や鳶の飛ぶ影早きこと
- 行く年や急に退院希望増え
- 小事件百回あって年の行く
- 忌中の字掲げる角や年歩む
- 東京都 蘭丸
- 行く年や医師の仰せに人心地
- 行く年や語れば長し釣り自慢
- 神奈川県 白松 妙子
- 行く年や帰省する子の部屋掃除
- 行く年やテロに失う命有り
- 行く年や生き方も見ゆる春画展
- 行く年や蕎麦屋の屋号夜明け前
- 行く年や骨無き壺の七十年
- 岡山県 渡辺牛二
- 行く年の駅頭に待つ子の帰り
- 歳の差の変ること無し年歩む
- 岡山県 岸野 洋介
- 行く年の暦ゆっくりはずしけり
- 行く年や妻の遺影に独りごと
- 行く年やパソコン日記読み返し
- 柚子の湯にひたり行く年思いけり
- 行く年や酒宴の席に流行語
- 大阪府 津田 明美
- 行く年や遺品となりしお六櫛
- 行く年の性を背負いて人送る
- 行く年や風の向こうを駆け抜けて
- 行く年の風吹き過ぎる分譲地
- 兵庫県 松本 恭昂
- 行く年の湯にやはらかくつかりけり
- 行く年の地になつきたる日向猫
- 行く年の湯気立つ鍋を覗き込み
- 福岡県 風有路
- 行く年や我を誘へる招き猫
- 年流る甲板(デッキ)に見入る泡の筋
- 立読みの占ひ本や年歩む
- 年送る厚みの減りし妻の寝姿
- 年逝くや路地に売家も干し物も
- 山口県 ひろ子
- 行く年や鬼籍の人を偲びけり
- 行く年や無病息災ありがたし
- 流行語反芻しつつ除夜の鐘
- 山口県 山縣 敏夫
- 行く年や初めての古希やって来る
- 我に早や七十回の年流る
- 行く年や如何なることが待ち受ける
- 年ゆくや旧アルバムを仕舞いけり
- 行く年や過ぎしこと早やセピア色
- 東京都 豊 宣光
- 行く年の汚れを落とす長湯かな
- 行く年や残るいのちの日を数ふ
- 行く年や砂利を踏みしむ日和下駄
- 行く年や替はる年神すぐそこに
- 行く年を連れ戻したき未練あり
- 大阪府 太田 紀子
- 行く年や京都へ向かふ灯の電車
- 行く年や団地の全戸に明るき灯
- 兵庫県 山地 美智子
- 行く年や未だ下五が気に入らぬ
- 行く年や終の住処となりし家
- 行く年や我にもう出ぬ国訛
- 行く年の孤独を照らすつくえの灯
- 行く年や夫の机に文庫本
- 東京都 三角 成彦
- 行く年や火灯し頃の窓の雨
- 行く年の水滾々と流れけり
- 雨過ぎし並木の上や年行けり
- 行く年の町広々とあはれかな
- 弟の高き嚔や年は行く
- 神奈川県 塚本 治彦
- 年行くや大河の海へ落つるごと
- 行く年や牛反芻を繰り返し
- 年行くや薬の苦さ残すごと
- 行く年や口中に飴残りをり
- 行く年や忘れ物せし子のごとく
- 岐阜県 ときめき人
- 行く年や先手先手が後手後手と
- 埼玉県 櫻井 玄次郎
- 行く年や白髪混じりの髭当たる
- 群馬県 千島 宏明
- 行く年や赤子はすでに眠りたり
- 行く年の煙草の灰はうずたかし
- 行く年を数えて日記のきりもなし
- 行く年の古書に埃はそのまんま
- 行く年のどこやら聞こえる話し声
- 滋賀県 奥村 僚一
- 行く年や川の流れの速さかな
- 行く年の健やか生きておりにけり
- 行く年や幸い多く顧みる
- 行く年の鐘なる夜の静かなる
- 栃木県 栃木県
- 行く年や小銭の多き皮財布
- 行く年の灯火またたく人だかり
- 行く年の別れは永久の心地して
- 神奈川県 矢神 輝昭
- 行く年に竿の刺せぬの無情かな
- 加速して行く年止まらず干支廻る
- 行く年を送りてけじめ喜寿となり
- 行く年や闇に漂ふ残り香と
- 行く年を平和に繋げバトンパス
- 東京都 右田 俊郎
- 行く年やわずかながらも残る悔い
- 行く年や禍福さまざま糾ひて
- 大いなる禍根を残し年のゆく
- 行く年や時の流れに逆らはず
- 豊かなる思ひ出あまた年のゆく
- 神奈川県 猪狩千次郎
- 年送るきつね尻尾を振りながら
- 年行くや鐘も鳴らさぬ浮世寺
- 年行くやインプラントの歯の白さ
- ゆく年の煮〆て黒き大根かな
- ゆく年ややせ馬に振る鞭の音
- 富山県 岡野 満
- 木枯らしに吹かれ行く年惜しみけり
- 行く年や喜怒哀楽は過ぎて夢
- 行く年の流れに渦の二つ三つ
- 宮城県 林田 正光
- 行く年の 喜怒哀楽を 封印し
- 行く年や 目標未達と なりにけり
- 行く年や 母逝く年と 重なりぬ
- 身勝手に 流るる年は 過去となり
- 日めくりの 残り一枚 年惜しむ
- 神奈川県 石鎚 優
- 行く年や「せんろはつづくよどこまでも」
- 行く年の浮雲に似てオキナワは
- 行く年や卓袱台一つ暮れ残る
- 行く年や海のかなたの自爆テロ
- 行く年の鉄棒カラスに鳴かれをり
- 東京都 鈴木みのり
- 行く年をつげる本屋の暦売り
- 行く年の片手ばかりの成果かな
- 行く年や腹におさめる日本蕎麦
- 行く年に見返しながむ手帳かな
- 行く年やさよならばかりの年が行く
- 東京都 岩崎 美範
- 行く年やジャズを奏でる小三味線
- 初恋の余韻残して年逝けり
- 母の焚く五右衛門風呂や年流る
- 安産を祈る母娘や年歩む
- 行く年や故郷指して深夜バス
- 滋賀県 村田 紀子
- 行く年や南天を手に急ぎ足
- 行く年に市場行き交う白い息
- 行く年を送るがごとく山に雪
- 行く年に猫も子供も忙し気
- 黒豆を煮る火見つめて年送る
- 神奈川県 井手浩堂
- 行く年や絵巻見るごと振り返り
- 行く年のよきこと妻と拾ひけり
- 列島に噴火の多き年送る
- 年行くや世に内戦の絶えぬまま
- 埼玉県 岸 保宏
- 本晴れ禁煙誓う行く年や
- 行く年や形くづせし花時計
- 行く年や漢字一文字思案する
- 熊本県 貝田 ひでを
- 行く年や鬼籍の友のまた増えて
- 成し難き一日一善年流る
- 顧みて可も不可もなき年送る
- 遺す句のほんの二三や年送る
- 行く年の大樹の下に腕組みし
- 神奈川県 佐藤 博一
- 地球儀のくるり回りて年行けり
- 行く年をベートーベンと送りけり
- 行く年を昨日のやうに惜しみけり
- 年行くや古墳は時を眠らせて
- 人と逢ひ人と別れて年送る
- 長野県 木原 登
- 年逝くやすでに根雪の母の墓
- 行く年の雲の言葉を聞かむとす
- 千曲川倦まず弛まず年送る
- 老いたれば年の歩みも石火にて
- 旅宿に寝ねてひとりの年逝かす
- 千葉県 柊二
- 行く年や肩書のなき面かな
- 東京都 内藤羊皐
- 行く年の子に逸れたる渋谷駅
- 行く年の般若の面は息吐きぬ
- 行く年や鱗眠れぬ昏き海
- 大阪府 高塚 政宜
- 行く年や笑みの溢るる写真立て
- 行く年や所狭しと写真立て
- 千葉県 伊藤 和幸
- 吾もまた過客の一人年逝けり
- 行く年や川には出来ぬ後戻り
- 流れ行く雲は戻らず年逝かす
- 千葉県 麻眠
- 行く年や 妙義登りて 深呼吸
- 生業に 追われ行く年 忘れたる
- 行く年や 吾子の未来 祈りけり
- 行く年や 蕎麦片手に 反省会
- 行く年や 一句捻りて 眠りけり
- 神奈川県 守安 雄介
- 晴れ着から春着に変わる終電車
- 行く年の空音をつきし縛り鐘
- 行く年の未練を捨てて旅に出る
- 行く年の終電に乗る門出猿
- 行く年の石段で見るスマホかな
- 兵庫県 岸野 孝彦
- 行く年やさよならだけが人生さ
- 行く年やセーラー服の胸辺り
- 行く年やスカイツリーも空仰ぐ
- 行く年や花は紅鎮魂碑
- 行く年や六十度目の影を曳く
- 兵庫県 岸下 庄二
- 行く年や来し方変へず古稀迎ふ
- 行く年や喪中葉書のまた来たり
- 行く年や余生の余白狭まりぬ
- 行く年や一年の計まだ半ば
- 行く年や柱時計の螺子を巻く
- 岐阜県 金子加行
- 行く年に眠りこけたる夜行バス
- 指折りてよきこと多し年の行く
- 行く年や恋は難関越えぬまま
- 行く年や忘れてならぬ人の恩
- 捨て切れぬ想ひと品や年の行く
- 愛知県 岩田 勇
- 行く年の入り日しばらく眺めゐる
- 医療費を締めて合計年送る
- 燈明をしばし見詰めて年送る
- 騒音の徐々に消えゆき年の逝く
- 舫綱締めて船小屋年逝かす
- 茨城県 たいようたろう
- さりげなく行く年妻のメモ用紙
- 行く年の破顔そろへしジャズライブ
- サイフォンの音のポコポコ年行けり
- 年行かす生花アレンジメントして
- 年行かす父母の星またたかせ
- 新潟県 近藤 博
- 偕に老い来し方偲び年送る
- 行く年や柱時計の音侘し
- 行く年やちぢに心ぞ尽きもせで
- 行く年や哀あり歓ありふり返る
- 戻らぬは時の流れよ年送る
- 東京都 直木 葉子
- 行く年の湖淼淼と暮れにけり