俳句庵

2月『早春』全応募作品

(敬称略)

京都府     中村 万年青
早春の梅の盛りを見逃しぬ
早春の桶の薄ら氷日に透けて
早春の京の屋根に雪の降る
天神の早春の庭梅薫る
紅白の梅早春の花暦
埼玉県     哲庵
春早し土柔らかく崩れゆく
早春の動物園の風甘し
春早し白く輝く波の泡
早春の弓道場の的光る
土手走る稽古着の列春早し
東京都     内山  光弘
早春の白き道行く野良帰り
早春やコーヒーの湯気揺れ写生会
早春やおニューの靴でスキップして
ふる里は昭和の記憶早春賦
早春や野面も膨れ匂い立ち
東京都     碩 真由美
早春やトートバッグに鳥図鑑
早春の針山に刺す赤い糸
滋賀県     濱本 勝美
しみじみとモーツァルテイアン早春賦
東京都     鈴木 眞由美
太もものしびれ摩りて春早し
早春や赤い袋の守り札
春さきの鉛筆に問ふ三択肢
この道に早春着きし気配かな
岡山県     名木田 純子
早春の風の影引く砂丘かな
早春の光を求め出漁す
早春の牧に響ける朝の鐘
大阪府     -
初春やただただ募る恋心
東京都     安西 信之
隅田川早春の波煌めけり
早春や波のまにまにビルの影
早春の双の轍に潦
東京都     龍臣
早春の手の冷たさよ薪を割る
早春を誰かが運び置いてゆく
泥濘のわが道行くも早春譜
早春の海をも這って広がりぬ
カーテンに木々の揺れるや早春譜
埼玉県     守田 修治
早春や新装開業釣具店
早春や江戸の古地図の坂歩く
春早し十四勝の賜杯かな
早春や十年前の上着着て
早春や富士は目覚めて御座候
福島県     いらくさ
早春を透明ないとこと遊ぶ
早春や鎖骨の入江ひかり曳く
早春や死者見せに来る翼かな
早春のそのなかに日をふたつもち
早春や遺失物とて象届く
北海道     飯沼 勇一
早春や北窓開けて換気せる
早春の工場に爆ぜし火花かな
早春や海峡越へをためらひて
ドア開けて少女早春連れ帰る
早春譜牛舎の牛に聞かせけり
東京都     石見 光夫
早春や百歳翁の百メートル
東京都     岩川 容子
早春の土押し上げる命かな
宿木に早春の色まどかなり
早春やいつしか淡き海の色
早春の町に未来の青写真
東京都     蘭丸
早春の鈴の音屋根に上がりけり
早春や細目になりて裁ち外れ
愛知県     岩田 勇
早春の万歩コースに人の声
早春の山河まどろむ大八州
早春の児(やや)のはいはいはづかなる
早春の上信越に深呼吸
早春の谷谷めぐる発破音
神奈川県     田中猫丸
早春のひかり交差す江戸切子
早春の風待つメトロ2番口
岡山県     渡辺牛二
早春賦とは朝を鳴く鳥の声
早春の山路に残る融雪剤
福岡県     風有路
早春の川ふたたびの珠の音
早春にまづは触れたる耳と鼻
早春の波たはむれてゐはせぬか
早春の一つに地図を開くことも
早春の川の飛び石児の挑む
東京都     村上 ヤチ代
早春のスキップ高く膝高く
大阪府     永田
早春やポニーテールが三つ行く
東京都     直木 葉子
春兆すおんもをせがむ双子どち
早春の光に濡れてあめふらし
東京都     中田地溝
早春や 煌めく水脈を 追ふかもめ;
早春や にじゅうごふんの 二度寝かな
栃木県     長浜 良
早春の風のきらめく雑木林
早春の雨となりたり山の音
日表に出て早春の川となる
東京都     水野 二三夫
早春の貝ひいやりと掌に収む
ひかり濃き早春の野に風熄まず
早春の闇外堀に沈みをり
岐阜県     俳徊人
早春の朝を駆け抜く三歳馬
早春や乙女の胸はそわそわと
学び舎をオルガン響く早春賦
早春の旅に出ましよと誘う妻
早春の風やはらかし目に耳に
大阪府     太田 紀子
トンネル出で野は早春の色となり
早春や花壇の土の芳しき
早春やギブス外せし手の細さ
岐阜県     ときめき人
早春の消えない日あり陸奥の国
栃木県     青萄
六根清浄早春の背負ひ水
早春のひねもすうすき絹の海
早春や懐妊の日をたどる旅
千葉県     隼人
早春や未だ片言英会話
早春や濠に映ろふ二重橋
早春や牧場で遊ぶ御崎馬
三重県     平谷 富之
早春や 穴も心も いきいきと
早春や 球音響く キャンプに
東京都     豊 宣光
早春賦流れる店にぬくもりぬ
早春の山河の返す谺かな
早春の土に種まく農夫かな
たたずめばいま早春の穂高川
早春の風に少年頬を染め
神奈川県     龍野 ひろし
早春の宙に舞ひたる鉋屑
早春や旅先に買ふ硬切符
早春や馬車が駆け出す風の道
早春の光を紡ぐ糸車
早春の色を岸辺に確かむる
大阪府     津田 明美
早春の街の息吹きや風見鶏
早春の光り戯る水面かな
早春の号砲響き女子ランナー
早春や君のソプラノ野山越え
早春の街俯瞰して風見鶏
神奈川県     白松 妙子
希望の欠片束ねて歩む早春かな
芽いでし育む時間早春かな
歩幅合う二人で歩く早春かな
路地裏に機の音聞く早春かな
早春の恋の行方は儚くて
千葉県     横井 隆和
春兆し四隅で探る床の冷え
春兆す床より猫も顔を出し 
そこかしこ人立つ畑や春兆す
鶏一羽鳴いて早春あかね空
そこかしこ野火立つ畑や春兆す
神奈川県     矢神 輝昭
早春や忍び音漏らす谷の深(ふけ)
尋ぬるは早春息吹く源流へ
早春の野道の風やアスリート
早春や金糸ひとすじ光りおり
早春や陽光白し角砂糖
千葉県     伊藤 和幸
早春の社を囲む鳩の声
無人駅ホーム端より春兆す
谷根千の街騒すでに春兆す
静岡県     池ヶ谷 しょうご
早春や毛穴閉じけり開きけり
日に一度はふと口ずさむ早春賦
早春の雲の出入りや身を慣らせ
早春にマーマレードを煮詰めをり
神奈川県     川島 欣也
早春や土手を行きかう人の数
早春の砂浜走る球児たち
早春や紫雲取巻く富士の山
早春賦学びの窓を開け放つ
春浅き旅情の詩や千曲川
埼玉県     櫻井 玄次郎
早春の風に遊ぶや森の精
福島県     梅宮 勇造
阿武隈の若草萌ゆる翁しのびて
月ノ輪の津(わたし)の跡の福寿草
早春のヨモギが萌える土手の上
芭蕉翁月ノ輪の津こえノミの宿へ        
曽良連れて月ノ輪の津こし瀬上へ
山口県     山縣 敏夫
初春や何か良いこと有りそうな
早春の気配漂う里景色
粛々と奏でる調べ早春賦
早春のどこか浮き立つ佇まい
湧き上がる春の初めの息吹かな
東京都     かっこ
早風やせせらぎの音靴の音
広島県     安冨 正則
早春や綿毛ふわふわ枝の先
埼玉県     柏木 晃
母親は昭和一桁早春譜
店先に早春を置く青物屋
電線に鳥の楽譜は早春譜
黒板のチョーク粉散る早春譜
女子校の早春の音動き出す
神奈川県     井手浩堂
早春の風をまとひて野の仏
江ノ電に早春の潮匂ひ来し
早春の光は波の尖りにも
早春の旅ときめくや地図広げ
早春の野ややはらかき風生まれ
神奈川県     石鎚 優
早春やわたしに恋をした案山子
早春の渦潮を漕ぐ小舟かな
早春や子は飛ぶやうに坂くだる
早春や鴨の池見る母の背な
早春や切株に射す朝日影
東京都     岩崎 美範
早春の空滑りゆくグライダー
早春の息吹ついばむ藪雀
早春の小風たゆたふ隅田川
早春の気の満つ朝の二月堂
早春の窓に萌黄の干支の申
神奈川県     相模太郎
早春の眩しく回る水車かな
風の音去りて水音春浅し
早春の東京駅に降り立ちぬ
早春や昨日とちがふ足の裏
早春の座席の人の眠さうな
滋賀県     奥村 僚一
田水落つ音早春の賦となりぬ
早春の土の匂いをもらひけり
早春の垣根に遊ぶ群雀
岡山県     岸野 洋介
早春や小川に雑魚の影走る
縄跳びの児ら早春の風まわす
散策の身に早春の風固し
早春や吉備路マラソン人の波
早春の空を震わすヘリコプター
三重県     後藤 允孝
吹く風に早春の息吹をひろふ
早春の尾根より高き鳥の声
早春の朝の散策歩をひろふ
キャンパスに学生集ふ早春譜
早春の大空突きて欅伸び
熊本県     貝田 ひでを
早春の高さを競ふ街のビル
早春や舟にペンキを塗る漁師
早春の寺千畳は湖のごと
早春の艇庫にガッチリ南京錠
早春の駄菓子屋に子ら入り浸り
山口県     ひろ子
笹鳴きの声聞くあした初メール
春浅き陽ざしを受けて立志の日
神奈川県     猪狩 千次郎
春淡し金平糖の丸き角
早春の浪乗りきれず波に堕つ
春浅し稲妻形に登山道
早春や小貝ことりと水吐きぬ
早春のジェット機白き尾を曳いて
神奈川県     塚本 治彦
早春や涙のごとき高嶺星
早春の水溢れたる魚市場
早春の幣に風吹く地鎮祭
早春や歩めば転ぶ小さき靴
早春の鳩舎から鳩一斉に
兵庫県     岸野 孝彦
早春や茜は茜空は空
早春の雨に濡れたき夕べかな
早春の風に吹かれる平和かな
早春や便りのごとく光る海
早春や影は短し地蔵尊
神奈川県     野川 喜一郎
早春の樹木の膚の瑞々し
早春の山間に聞ゆ早春賦
早春や足柄の野の隅にまで
早春や百畳の間の座禅会
宮城県     林田 正光
早春やテニスコートの土匂ふ
早春のまだ肌を刺す陽の光
気まぐれの早春の雨すでに止み
みちのくへ早春の旅バスの旅
五年目の早春の日や海に佇つ
岐阜県     金子加行
早春により輝くや白き城
早春の山河の音と光なり
早春の明るき旅のプラン組む
早春のひかり打ち込むコンクリート
早春をぽつりぽつりや雨の音
鹿児島県     伊集院静
早春やフルマラソンの高き壁
早春の桜島まで走りけり
早春や一直線の散歩道
早春や右に酒左につまみ
早春が笑いかけるが気付かずに
千葉県     柊二
早春や蝶の夢うつ朝日堂
神奈川県     佐藤 博一
早春の窓に映りし空を拭く
早春や入れては出してランドセル
早春の風は無添加深呼吸
早春の光あふれる山野かな
早春の土の微熱をてのひらに
長野県     木原 登
早春の野に早春の草の花
早春の音を奏づる水ぐるま
早春の空に麒麟と亀の雲
早春の天城峠を越えにけり
早春の星空に泛く故友かな
兵庫県     岸下 庄二
早春の朝の日時計七時指す
早春の白燈台の輝けり
早春の渦潮跨ぐ鳴門橋
早春の水車の飛沫煌めけり
早春の駅に降り立つ一人旅
東京都     大槻 実
早春の ポスト飛び込む 合否の紙
神奈川県     守安 雄介
早春のトワイライトへ始発バス
早春の赤き満月白帝城 
早春の果てなき海へ孫発てり
早春の幹に樹液の滾る音
東京都     笹木 弘
早春のトンネルを抜け海光る
早春の路地を曲がりし一輪車
早春の石段登る柔道部
早春の海を真っ直ぐ豪華船
早春の夢の膨らむチャペルかな
新潟県     近藤 博
早春やとのもは未だし冴え返る
早春やしはぶき販ぐ朝市女
神杉の木漏れ日やんわり春早し
何となく季の移ろふや早春に
早春といふも草木の眠りけり
東京都     内藤羊皐
早春や逆上りする女の子
早春の目薬零るるばかりかな
早春や爪の伸びたる薬指
早春の暗渠に韻く禽の声
早春の雨に濡れたる石窟庵
奈良県     堀ノ内 和夫
早春の風に震ふや玻璃の窓
早春の花芽の少し太くなり