俳句庵

3月『山笑ふ』全応募作品

(敬称略)

神奈川県     佐々木 僥祉
山笑ふ水湧く岩に一休み
山笑ふ後輩ひとり待たせ居り
柔らかき空の広さよ山笑ふ
ともに行く道ゆるやかに山笑ふ
山笑ふ絵葉書に添ふ十七語
東京都     まどん
山笑ふ発車メロディー高鳴りて
山笑ふ地球に青のシート張り
看板に熊注意の絵山笑ふ
駅弁を膝に広げて山笑ふ
愛媛県     めろ
腐葉土を一層重ね山笑ふ
三重県     後藤 允孝
山笑ふまことしやかな嘘ばなし
山笑ふ里は暮ゆき灯が笑ふ
胃の痛み堪えて寝込み山笑ふ
どつこいしょ椅子に声かけ山笑ふ
カラオケの聞くに堪えなき山笑ふ
神奈川県     田中 由起
身長計ストンと落ちて山笑ふ
東京都     安西 信之
山小屋の部屋に山の名山笑ふ
豊満な牛の乳房や山笑ふ
鶏鳴に開くる牧場や山笑ふ
頂の巫女も昼時山笑ふ
茜さす雲の日向や山笑ふ
埼玉県     哲庵
SLの俳句祭や山笑ふ
一病を抱え息災山笑ふ
山笑ふぽっくり寺を訪ぬれば
ドローンで出前到着山笑ふ
山笑う帰郷叶ひし被曝村
北海道     飯沼 勇一
笑ふ山映せし湖も笑ひけり
くすくすと山笑ふ声運ぶ風
一斉に山笑ひだす盆地かな
仮設から還るふるさと山笑ふ
牛の声笑ってをりぬ笑ふ山
北海道     江田三峰
山笑ふ姦し娘馬鹿笑い
山笑ふ笑ひ堪へて山笑ふ
秘境駅廃止決まりし山笑ふ
蝦夷富士や水に行列山笑ふ
蝦夷富士の笑ひ初めに水を汲む
東京都     鈴木 眞由美
山笑ふ陽気も歳ももっそりと
昼酒に迷ひなきなり山笑ふ
山笑ふ経木に隠る天むすび
駅までの道に舞ふ塵山笑ふ
山口県     ひろ子
道しるべ赤き結び目山笑ふ
進むべき一本道や山笑ふ
山菜を見つけて歓声山笑う
愛知県     川俣 周二
名勝に異人賑はひ山笑ふ
ボランティア始めたばかり山笑ふ
天守より見ゆる景色や山笑ふ
山笑ふ本丸御殿再興す
大病の癒えて無欲に山笑ふ
東京都     石見 光夫
山笑ふ蝦夷地貫く新幹線
東京都     蘭丸
迂闊にも検査着似合ひ山笑ふ
落石の音に眼の覚めば山笑ふ
岡山県     名木田 純子
ローカル線日に二便とや山笑ふ
山笑ふこわごわ渡るかづら橋
山笑ひ箸転がりて娘の笑ふ
神奈川県     矢神 輝昭
ハイカーのバス待つ列を山笑ふ
ヤッホーに差し肩緩め山笑ふ
息ひそめ 出番待つ鳥 山笑ふ
源頭の水の緩みて山笑ふ
気の逸る山笑わせて 八が岳
東京都     中田ちこう
山雨来て藍鼠の海笑ふ山
ゴルジュ帯脱け握り飯山笑ふ
東京都     岩川 容子
山笑ふ馬解き放つ草千里
採雲の光とどきて山笑ふ
乳牛のあふれる乳や山笑ふ
太陽に目鼻を描く子山笑ふ
岡山県     渡辺牛二
頂は雲より出でて山笑ふ
山笑ふ産毛のごとく雑木立ち
埼玉県     守田 修治
老いびとの担ぐ柩や山笑ふ
駄菓子屋の子ども集会山笑ふ
きこきこと三輪車来て山笑ふ
旅プラン大小ありて山笑ふ
湖あくび山は笑いの常陸かな
神奈川県     相模太郎
握りめし囲む車座山笑ふ
ひと雨のあとの明るさ山笑ふ
山笑ふ客は一人の渡し舟
山笑ふ信濃の大地蹴る子仔牛
山笑ふ晩年むしろ夢多し
滋賀県     濱本 勝美
山笑ふ安達太良山の青春記
東京都     紫朧
山笑う 珈琲豆を 変えて挽く
牛乳の 温(ぬく)し皮膜や 山笑う
東京都     紫麗
体温計 ピピッと鳴りて 山笑う
水音の 訛りやさしき 山笑う
東京都     紫囀
特急を 降りて数歩で 山笑う
山笑う 地球儀二回 右回し
東京都     紫春
山笑ふ 稲孫(ひつじ)再び 青青と
遺伝子の 如き息吹や 山笑ふ
山笑ふ サンダル履きの泥汚れ
東京都     右田 俊郎
山笑ふごめんと言えぬ意地っ張り
再稼働懲りぬ輩と山笑ふ
山笑ふ仲良き証痴話喧嘩
頑なに閉ざす心や山笑ふ
逆転の婦唱夫随や山笑ふ
東京都     水野 二三夫
山笑ふ受験子も皆笑はめや
大阪府     太田 紀子
山笑ふ輪を描き飛ぶ鳶の影
新しき布靴で試歩山笑ふ
母の背を目で追ふ赤子山笑ふ
岐阜県     ときめき人
青空は青いままなり山笑ふ
広島県     安冨 正則
就活の黒のスーツや山笑ふ
神奈川県     龍野 ひろし
円らかな牛つなぎ石山笑ふ
山笑ふ指揮者操るオーケストラ
山笑ふ土手にあまたのもぐら塚
ダブルスは百五十歳山笑ふ
温泉に浸かる群れ猿山笑ふ
埼玉県     佐藤 茂
バス嬢の「青い山脈」山笑ふ
三重県     平谷 富之
宝くじ 少しも当たらず 山笑ふ
やる事は 全て失敗 山笑ふ
買物の 我を見守る 山笑ふ
埼玉県     出老裡庵
饒舌も 長生きのこつ 山笑ふ
嬰児を 抱きて参るや 山笑ふ
千葉県     黒田一季
五百羅漢気ままの向くや山笑ふ
山笑ふローカル線待つ時つ風
頂きは雪懸け帽子山笑ふ
東京都     豊 宣光
トンネルを出づれば笑ふ山ばかり
山笑ふ内に激しきマグマ秘め
赤児立つ最初の一歩山笑ふ
悲しみを忘れる旅や山笑ふ
山笑ふ古墳の人の目覚めかな
千葉県     横井 隆和
山笑ふほどに急かるる旅支度
山笑う旅のチラシも賑わえり
冨士・筑波覆う美空や山笑う
山笑う陽はせせらぎに乱舞して
山笑う膝もわらうや山寺詣で
大阪府     永田
大小の襁褓干しをり山笑ふ
鹿児島県     松下 静雄
山笑う一直線の散歩道
思い込め子の名初書き山笑う
山笑うランニングして膝笑う
妻こける笑う笑うや山笑う
山笑うスカッと青のハイキング
東京都     龍臣
山の木々山をくすぐり山笑ふ
神奈川県     猪狩千次郎
脱ぎ捨ての印半纏山笑ふ
障子もうまるく破れて山笑ふ
山笑ふ地球そちこち青光り
峠道荷馬にゆづり山笑ふ
笑ふ山折鶴呉るる子と握手
福島県     いらくさ
セシウムを隈なく被り山笑う
山の辺に新しい墓山笑う
エレベータ杣の末裔山笑う
安達太良の山笑う窓嵌め殺し
花も実もまだ設計図山笑う
和歌山県     田村 知子
この辺り風力発電山笑ふ
東京都     かつこ
狛犬に一礼するや山笑ふ
山口県     山縣 敏夫
登下校子等がするたび山笑う
野良仕事精出す寡婦に山笑う
山笑う青年たちのバイク音
山笑う幟はためく村祭り
束の間の夫婦喧嘩に山笑う
埼玉県     櫻井 玄次郎
薄絹を萌黄に染むり山笑ふ
ブラジル     林 とみ代
卒寿祝ぐ友のワルツや山笑ふ
水晶を腹に抱きて山笑ふ
イエス像大手広げて笑ふ山
木の肌に二人のハート山笑ふ
奴隷等の隠れし由来笑ふ山
大阪府     松木 元
くすくすと僅かながらも山笑ふ
山笑ふ大和三山出揃うて
半島の先つぽまでも山笑ふ
山笑ふ新幹線は臍の中
麓より頂に向け山笑ふ
栃木県     長浜 良
分校に女校長山笑ふ
国境のトンネルを越え山笑ふ
美しき校歌の山河山笑ふ
雨降りて笑ひずくめの背戸の山
神奈川県     白松 妙子
川光り海も光りて山笑う
拾ひては捨てる椿や山笑う
ハートチョコ父母に供えて山笑う
蕎麦祭り早売切れて山笑う
山笑う炭焼小屋の煙見ゆ
滋賀県     村田 紀子
背伸びする黒猫に蝶山笑う
釣り糸の横で鯉跳ね山笑う
石畳ハト追う子らに山笑う
山笑い腰を伸ばして立ち話
山笑う翁も畑で腰伸ばす
神奈川県     野川 喜一郎
里山に野鳥行き交い山笑う
裸電球暗き牛舎や山笑う
渓流の音濃ゆくなり山笑う
山笑う路地の駄菓子屋覗きおり 
水温む人の気配に猫走る
神奈川県     井手浩堂
青空を行くゴンドラや山笑ふ
寄する雲去りゆく雲や山笑ふ
湖に遊覧船や山笑ふ
母牛の子牛呼ぶ声山笑ふ
その裾にわが墓座る山笑ふ
千葉県     隼人
千年の杉を宿して山笑ふ
静かに暮らす余生や山笑ふ
長崎県     内野 悠
亡き父母の家の解体山笑ふ
起こしたる遺品の時計山笑ふ
山笑ふことの恵みや海笑ふ
笑ふ山天女のはづすしつけ糸
孫達のいたはりたんと山笑ふ
大阪府     津田 明美
山笑ふ故郷へ続く鉄路呑み
道祖神残す旅程や山笑ふ
山笑ふ後期高齢者と呼ばれ
豪快なおにぎり三つ山笑ふ
結願の同行二人山笑ふ
京都府     田端 欲句歩
勤め上げ二人新人山笑う
廃校は今も学び舎山笑う
埼玉県     岸 保宏
墨汁の香りや窓に山笑う
映画はねビルの谷間に山笑う
釣り糸の揺れる水面や山笑う
東京都     桂 有子
いつもより 赤いルージュに 山笑ふ
山笑ふ 手つなぎ歩く 老夫婦
風見鶏 風に逆らへ 山笑ふ
キャンパスに 方言飛びて 山笑ふ
ランドセル カタカタ鳴りて 山笑ふ
大阪府     森村 冨美子
肩に添ひ眠りに落ちて山笑ふ
山里の足湯にほつと山笑ふ
山笑ふ靴紐締めし登山口
いくつものトンネル抜けて山笑ふ
湖に浮ぶ比良の稜線山笑ふ
東京都     岩崎 美範
復興の槌音ひびき山笑ふ
利尻富士大取つとめ笑ひけり
夢やぶれ帰る車窓に山笑ふ
故郷の改札出れば山笑ふ
ゆで卵ころころ転げ山笑ふ
東京都     田中 永
吊橋の大揺れ小揺れ山笑う
宮城県     狐塚比乃子
跳ねてまた 跳ねども兎 山笑う
山笑い 山に嵐も 桜坂たり
君ひとり 山笑いたり 開きけり
晴れた日に 山笑うから 不如帰
山笑い 我のことかと 振りかえり
佐賀県     桐野みずえ
瑞々しく風透き通り山笑ふ
山笑ふ許したくなる午後のお茶
山笑ふスタッカートが跳ねる窓
歩こうか次の駅まで山笑ふ
山笑ふゼリービーンズ弾け飛ぶ
神奈川県     佐藤 博一
論多き邪馬台国や山笑ふ
福耳と言はれ財無く山笑ふ
あれそれで通じる二人山笑ふ
有るか無き風くすぐりて山笑ふ
山の日の祝日なりて山笑ふ
富山県     岡野 満
山笑う派手なネクタイ選びけり
山笑う歴史舞台の旅に出る
万物が囁き始め山笑う
学び舎に蛍の光山笑う
熊本県     貝田 ひでを
生死読むにはまだ未熟山笑ふ
混浴と言へど足湯や山笑ふ
歩数計の記録更新山笑ふ
万象は変わりゆくもの山笑ふ
山笑ふ齢尋ね合うクラス会
岡山県     岸野 洋介
妻の忌や家族と墓参山笑う
てっぺんに白き大学山笑う
Iタ-ンの田舎暮らしや山笑う
足湯して話はずんで山笑う
ぼけ封じ寺の縁日山笑う
岐阜県     辻 雅宏
鍬を振る翁媼や山笑ふ
山笑ふ釣られ隣の山笑ふ
湖澄みて山の笑ひを映しけり
山笑ひ道の駅にも客戻る
初産の母子健やかや山笑ふ
兵庫県     岸野 孝彦
隧道の果てこそすみか山笑う
人魚より桜通信山笑う
棒道や甲斐より信濃山笑う
限界の集落ばかり山笑う
帆を降ろし北を仰げば山笑う
山形県     佐藤ルカ
傘除けてふと見上げれば山笑う
埼玉県     坂本 凜太朗
星空の色変わるとき山笑ふ
千葉県     柊二
三面に眉を引きたり山笑ふ
神奈川県     塚本 治彦
にらめつこ負けたるがごと山笑ふ
おのが名の校歌を聞きて山笑ふ
泣きべその立たされ坊主山笑ふ
山笑ふ男女の山ガール
爺婆の昼カラオケや山笑ふ
埼玉県     倉野尾 柊斗
山笑ひ明け方巡る野郎かな
埼玉県     山崎 大輔
校庭に降りし思ひ出山笑ふ
長野県     木原 登
みづうみは大地のゑくぼ山笑ふ
海の日の化石を胸に山笑ふ
源流へ三滴こぼして山笑ふ
稜線を鋼光りに山笑ふ
連山のつぎつぎ笑まふ信濃かな
神奈川県     石鎚 優
おのがじし臍ありにけり山笑ふ
軍書読む子規の妹山笑ふ
太極拳生みし故郷山笑ふ
ゆるゆると橋渡りをり山笑ふ
ストリップショーありし世や山笑ふ
大阪府     仙波 哲
がうがうと水はダム湖に山笑ふ
山笑ふ千の鳥居を懐に
なで肩の讃岐の山の笑ひけり
奈良盆地肩組み合ふて山笑ふ
胴震ひして火の山の笑ひけり
埼玉県     柏木 晃
弁当をひろげる家族山笑
音たてて水車回りて山笑う
陽の匂い裾に満ちみち山笑う
子供等とみどりが笑う山笑う
山笑うスカイツリーを遠く見て
宮城県     林田  正光
山笑ふ午後のひとときコンサート
山笑ふケーブルカーの笑い声
分校も今年限りの山笑ふ
眠りから覚めて歯みがき山笑ふ
思い出し笑ひ止まらぬ山笑ひ
神奈川県     川島 欣也
虎刈りの頭変わらず山笑ふ
笑ふ山背中に歩む三里半
鉱毒の山蘇り笑いけり
笑ふ山画用紙丸め覗きけり
笑ふ山映す御釜の碧さかな 
東京都     笹木 弘
禿山に朝日が昇り山笑ふ
柔らかな色を重ねて山笑ふ
麓には造り酒屋や山笑ふ
耳の悪き同士の会話山笑ふ
国境を越ゆ水音に山笑ふ
愛知県     岩田 勇
元気良き児(やや)の一発山笑ふ
親友と小便談義山笑ふ
谷めぐる発破の音や山笑ふ
大仏にからす止まりて山笑ふ
園児等の列長々と山笑ふ
兵庫県     岸下 庄二
山に山重なり合ひて笑ひけり
台風の傷痕抱き山笑ふ
ヤッホーの谺を返し山笑ふ
大の字を包み京都の山笑ふ
湖に逆さに映り山笑ふ
新潟県     近藤 博
足軽るに山道ゆけば山笑ふ
棚引ける豊旗雲に山笑ふ
四方の山胎動きざし山笑ふ
新しき生気みなぎり山笑ふ
たたなづく山は艶めき笑ひ初む
岐阜県     金子加行
母乗せる車椅子の先山笑ふ
頂きのお城重くも山笑ふ
市制敷く頂きなるや山笑ふ
肩を抱くあたたかき手や山笑ふ
山笑ひ人は歌ひて笑ひ酔ふ
東京都     直木 葉子
片頬は翳りたるまま山笑ふ
東京都     内藤羊皐
剥製師の小さき掌山笑ふ
山笑ふじやんけんの拳のいつもグー
山笑ふ耳塚に墜つる禽の嘴
漣の鎮もる湖や山笑ふ
山笑ふ月の兎の隠れ穴
北海道     藤林 正則
終着の駅が始発や山笑ふ
母校いまアトリエ喫茶山笑ふ
無住寺へ説教坊主山笑ふ
山笑ふ村のお寺の落語会
民宿へ青い目の客山笑ふ
京都府     中村 万年青
音羽山峰の松ヶ枝山笑ふ
朝日山宇治川の瀬に山笑ふ
山笑ふ嵯峨の山路ぬかるみて
七重八重熊野古道山笑ふ
丹波路や畦の早蕨山笑ふ
茨城県     塚本 洋子
筑波山やわらかき風微笑むで
山笑ふ筑波の山はやさしけり
野に立てば山を見つめて大笑ひ
ふるさとの山ありがたし笑み溢れ
ふるさとの昔話しに山笑ふ
埼玉県     關口 邦子
爺婆の声軽ろやかに山笑ふ
友禅の風に流れて山笑ふ
楮蒸す湯気の匂ひや山笑ふ
神奈川県     髙梨 裕
混浴の湯は蕩々と山笑う
掘起す畝続くなり山笑う
増毛のシャンプー買いし山笑う
山笑う里に生まれし男の子
痔も癒えてサイクルロード山笑う