俳句庵

2月『梅』全応募作品

(敬称略)

神奈川県      佐々木 僥祉
鴎立つ水の青さや今朝の春
宮城県      石川初子
梅の香やひと日優しさまといたり
愛知県      岩田遊泉
健脚と言ふも殿梅探る
蝋梅のとろけ出しそう庫裡の縁
蝋梅や陽の燦々と長屋門
白梅を過ぎて紅梅優しかり
氏神の天神様や梅二輪
神奈川県      守安雄介
梅が香や三年二組黒光
爺が描き孫が紅注す臥竜梅
臥龍梅画竜点睛幹の二花
笠雲と梅の間の真白富士
補聴器も拾えぬ音し梅開く
新潟県      近藤博
手折り来て梅一輪を夕餉卓
花期はやもちらほら笑むか梅の花
庭一樹老梅なれど咲きそむる
梅が香や手もて掻き寄せ嗅ぎにけり
梅咲きて花も佳かれど香りまた
岐阜県      金子加行
梅の里獣害防ぐ柵の内
人に似し決意のあるや固き梅
新しき恋始まるや梅の下
幾百の梅の木担ふ村おこし
梅三分郵便箱によき報せ
千葉県      柊二
花嫁の列にかざして枝の梅
神奈川県      佐藤博一
梅一輪こころの隅に灯を点す
日々務め日々新しく梅の花
神の梅あまたの願ひ結ばれて
梅の花闇にふくらみありにけり
梅仰ぐこころに詩の浮かぶまで
神奈川県      入江雅子
梅かおるいにしえ辿り哀しくも
梅の香折れし心を労りて
優しさか梅一輪に謝のこころ
天守閣梅のかおりか古の
母の梅優しくかおり涙かな
千葉県      鎌田敬一郎
還暦の 手習い始め 好文木
手をとめて 香に誘われし われは鶯
われ待ちぬ 早く咲けよと 花の兄なら
木漏れ日に 背を伸ばしたる 冬の梅
いつまでも 咲けよ古木の 母の梅
大阪府      金成愛
梅が香をつもらすぼんのくぼにキス
梅三分寿蔵のこととつれのこと
愛媛県      渡邊國夫
老梅に偲ぶ町家のくらしぶり
梅が香や菅公御座す社より
痛む膝かばひて巡る梅の園
天正の戦場なりや梅二月
石垣はかすがひ積や梅真白
長野県      木原登
母が名はうめのや即ち梅が好き
樹齢三〇〇樹根隆々臥龍梅
予備校へ吾子の旅立つ梅の花
咲きそめし梅に果して今日も雪
爺逝きて盆梅われに戻りけり
神奈川県      河野肇
浮雲や父母を訪ふ梅の里
まみどりの子蛙跳ぶや梅の花
探梅や山を下れば相模灘
山村に餅つく音や梅の花
浮雲に見とれし日々や梅の花
兵庫県      紫 桔梗
枝垂梅堀の水面に着くほどに
梅の香も絵筆にのせて描きけり
二階から今年も隣の梅愛でる
境内に紅白梅の競ひ咲く
梅咲ひて単身赴任終へるころ
岡山県      八木 五十三
絵馬並ぶ社の梅に蕾かな
梅の香の如く娘の親離れ
子離れを梅一輪に問ひかけり
梅の香を母に伝へて親離れ
梅咲きて二人きりなる畳の間
福岡県      西山勝男
国東の名刹めぐる梅日和
句碑の辺の梅の香ほのと朱鳥の忌
梅が香や滔天生家開け放っ
梅園の旧家をさぐる梅日和
烈公の治世ひもとく梅匂う
滋賀県      了庵
夕空へ梅のつぼみの枝走る
梅林に夕日真っ直ぐ届きけり
税金の少し戻りて梅ふふむ
梅匂ひますと梅の間に通さるる
塵焼いて白梅の空汚しけり
静岡県      長田友子
お手玉のひいふみいよ梅ふふむ
どの道を行くも梅の香曽我の里
ほんのりと梅の社の常夜燈
梅咲くやハミングで読む音符句碑
梵鐘の古るき緑青梅ふふむ
神奈川県      猪狩 千次郎
流鏑馬の鞍に手向くや梅の花
東京都      岩崎美範
忘れじと東風に吹かれて梅匂ふ
復興の風に吹かれて梅ひらく
誰挿すや無人の駅の梅一枝
宮城県      林田正光
咲き初めし何を囁く梅の花
梅林を歩くデニムの家族連れ
盆梅の小さな宇宙手のひらに
老梅や無住の寺を守りをり
桜より梅に願いを託したし
京都府      欲句歩
梅の里無人の駅の切符受け
梅まつり来て良かったと杖の音
梅の花趣味の小物の並ぶ店
野面積灯籠二つ梅香る
東京都      内藤羊皐
紅梅や社へつづく甃
喪の家を紅梅香る夕かな
乳母車仔犬貌出す梅日和
白梅や昼月宿す潦
白梅や姉が妊婦になるといふ
神奈川県      白銀
梅の木 庭先に生え いきいきと
梅干しの ちょっぴりした 恋心
梅松に 鶯鳴くよ  春先で
梅毒  病に侵され  あたふたや
神奈川県      白銀
梅もどき  柔和な心  刹那と和歌
ブラジル      西山ひろ子
梅一輪一筆書きの墨絵かな
梅の香の匂ひ袋に寧ぎぬ
梅の香や歴史を紡ぐお線香
東京都      住澤義英
梅林に際立つ一輪亡父の顔
梅うるむ競って咲いて日の出待つ
幼子が梅に届や親の手と
青空にメジロがはしゃぐ梅の里
息留めて鳥声聴き入る梅小路
神奈川県      井手浩堂
そこまでと娘を送る夜の梅
一本の梅の香りの中に入る
電車より短いホーム梅香る
渓流の音に沿ひゆく梅日和
吟行のいつか床几に梅見酒
滋賀県      中島光汰朗
寒梅や正座が楽と僧の言ふ
無住寺に灯ともす門徒梅の花
白梅や昔女優のわび住まひ
真青なる湖北の空や梅二月
寒梅や雲水凛として素足
熊本県      貝田ひでを
白梅のけふ一輪の日差しかな
園児らの太鼓マーチや梅日和
湯気の立つものよく売れて梅の苑
この頃の気違ひ陽気梅盛り
神奈川県      芳浪
寒過ぎて梅にたずねる春は何処
梅の香をひゅっと吸い込み鼻に冷たく
梅匂ふ風に押されて早歩き
梅ひらき滴り落ちる紅の花びら
糸切れた凧を見上げて梅ふふむ
兵庫県      岸野孝彦
梅狩りや二つ三角梅むすび
紅梅や翠の堀に紅き夢
潮騒や想いは重き花の兄
海遥か二万本の梅見かな
お四国の菅笠飾る梅の花
千葉県      みやこまる
梅一輪主(あるじ)への風待ちにけり
残り香を闇に散りばめ梅の花
仏像の手に水掻きと梅の香と
言の葉に代へ梅の香を献上す
梅咲きて終の栖となりにけり
神奈川県      下嶋恵樹
梅の香や鎌倉行きの足軽し
東京都      岩崎美範
丑年の丑の日生れ梅真白
道真の果てし処や梅真白
三重県      平谷富之
梅の香よ届けよ届け病む母に
梅の傘上に広がる青き空
大阪府      森村冨美
風吹きて髪に梅香残しゆく
夫のあと遅れぬやうに梅めづる
滋賀県      村田紀子
白梅を見上げ語らう老い二人
梅一輪手にして跳ねる赤い靴
梅の香に誘われ迷う小路かな
アメリカに梅はあるかと亡き人に
子の便り梅と私が踊ってる
東京都      坂田誠太郎
梅の花咲き上りたる急斜面
梅の坂便り手にして郵便夫
枝引いて梅の香りを確かむる
紅梅の蕊金色に匂ふごと
男坂上り境内梅盛り
千葉県      伊藤博康
大声を慎むごとく梅ひらく
すでにして梅を愛でたる童かな
岡山県      岸野洋介
山国の友は梅見ず海眺め
亡き妻の植えし梅咲き気をもらい
梅の山仰ぎて腰を伸ばしけり
中天に昼月淡し梅の花
道真の腰掛岩や梅匂う
大阪府      津田明美
梅の香の社の闇の広がりぬ
梅の香や天地百歩の外になし
老梅の枝隆起して時滲む
古の時の移ろい梅香る
梅が枝の百相こぞる香りかな
福岡県      たこ
梅林に 匂いつつまれ 老い二人
合格を 祈りて北野の 梅を見る
信楽に 今年も咲いた 祖母の梅
梅の香を ポッケに入れる 帰り道
冬天に 耐えて咲かん 梅一輪
山形県      斎藤ひろし
梅蕾みぞれの中に顔を出し
梅咲いて塀越しにみる我が家かな
病臥に臥す我が身重ねし老梅に
我が家の古梅にみたり母の影
主なき家に咲くや梅寒し
静岡県      城内幸江
蘊蓄の止まらぬふたり枝垂れ梅
訳ありて通るこの道夜の梅
花壺の水清らかに梅の花
小料理や銘酒の揃い梅の花
白梅や初孫高く上げる父
三重県      遊眠
切通し抜けて梅が香深まれり
蒼天を螺鈿となして梅光る
天目を満たす濃茶や梅白し
梅が香に合格祈る古刹かな
潮騒の駅のホームや梅暮るる
神奈川県      塚本治彦
そこここの津波の痕の野梅かな
散骨はここと決めたる野梅かな
江ノ電に沿うて歩きぬ梅日和
ハミングや梅の香の外厨
梅の香の車椅子まで届きけり
愛知県      佐藤三郎
白梅や花綻びて庭清め
老梅や幹を寝かせて陽を迎え
梅咲いて偲ぶ太宰府天満宮
埼玉県      櫻井 玄次郎
梅一輪客をもてなす亭主かな
東京都      豊宣光
梅の香や合格祈る絵馬並ぶ
職人は梅花に似せて餅をこね
一本の紅梅活けて四畳半
坪庭に臘梅香る町家かな
梅の花移ろふ季節運びくる
奈良県      一人坊
梅訪ね 氏神様は 幾年や
進学に ランドセル跳ね 蕾む梅
歩を休め ほのかに香る 梅を見て
紅梅も 遠慮なく咲き 白梅町
淡き香や 梅林小屋も 鬼は外
東京都      一軒
あてやかな万朶の梅よ君の忌よ 
ははそばのははの遺愛の梅かをる
梅東風の吹けば優しき人逝けり
神奈川県      矢神輝昭
まだ咲かぬ隣家の梅に気を温め
もてなしはけな気を装ふ門(かど)の梅 
動かじと片意地張りて梅の花 
長屋門主偲ばる梅の花
梅待つは水平線の日の出かな
奈良県      平松洋子
紅梅や頰の紅よりなお紅し
梅満ちて娘の神籤結びたり
しだれ梅一輪咲く日就職す
東京都      右田俊郎
梅ふふむこの子もうすぐ一年生
陽を浴びて翁ふたりの梅談義
梅愛でる祖母の手を引く幼き子
梅が香に誘はるままに町巡り
盆梅や近江の古き漬物屋
神奈川県      龍野ひろし
梅林の緩き起伏を抜けて行き
埼玉県      琴吹痴庵
梅ふふむ花芽に夢を抱きつつ
床の間に梅一輪の演技力
梅ふふむ双子の孫の寝顔かな
梅林へ人の気配を消して入る
天守閣借景にして枝垂梅
岐阜県      蛙田 環
盆梅の幹に魅せられ息を呑み
散る梅も香り残すや薬師堂
風しずか朗報待ちて梅ひらく
梅が香をひとみ口元褒めたたへ
朗報に無人駅舎の梅ひらく
三重県      後藤允孝
梅林の色整ひし香に浸る
紅梅の色は青空奪ひあひ
一片ごと日の差し入りし梅の花
茶会席梅一輪はひつそりと
大吉の神籤結びし宮の梅
大阪府      椋本望生
セルカ棒にポーズ決めたる梅の紅
飛梅に駆け寄る米寿追ふ卒寿
中天に吸ひ込まれさう梅の白
日本海に佇つ梅の陽梅の道
飛梅や一番星を侍らせて
千葉県      伊藤和幸
梅の香にひかれ寄り道廻り道
探梅やうめより先に地酒の香
富山県      岡野満
白梅の仄かに香る闇夜かな
梅林を抜けて開ける富士の峰
心地よき疲れを残し梅見かな 
梅咲いて紅白の風生まれけり
紅白の風にそよぐや梅の花
千葉県      横井隆和
・移り香の梅よ鏡に帯を解く
・便り聞き待てず点てたり梅昆布茶
・待つほどに待つを楽しむ梅日和
・忍ばせるマスクへ梅の一・二輪
埼玉県      よしこ
梅咲きて青空小さく穴あけり
梅三分抱つこで見るは親子かな
ひとりごとやつと二輪の梅の花
梅咲きて笑みの中より里訛り
梅の香や空き家の辺り漂うて
埼玉県      西村小市
紅梅の陰白梅は光吸う
自由という鎖を解きて梅咲きぬ
星雲の指示受け梅のほころびぬ
バカボンの親父のごとくひらく梅
切られて切られて切られて梅の咲く
神奈川県      髙橋榮一
梅に立ち白富士眺む爺と婆
爺ちゃんと孫が見上げる梅の花
当然か自然小輪梅こぼる
枝垂梅句会を待ちてひらきけり
さきがけし梅を囲みし莟かな
京都府      村田高久
露地の香や見越に梅の見つけたり
天神を少し離れて梅の咲く
梅の香や上七軒を漂えり
紅梅やいやじゃいやじゃと散りにけり
天神で矢立て買いしや梅の花
埼玉県      彩楓(さいふう)
理科室のフラスコに挿す梅二輪
石段を登る青空梅の花
光琳の梅かと思ふ緋色かな
乳母車紅梅の坂下りて行く
紅梅の空切り裂くや戦闘機
ブラジル      林とみ代
梅の香を纏ひて逝きし母偲ぶ
梅の花被ふわが里紀伊の国
探梅の列に加はる一日かな
梅の香に誘ひだされて園巡る
一服す梅の花びら舞ふ野道
京都府      渋谷真由子
梅東風や門前に売るあぶり餅
野仏の微笑もらひ梅ふふむ
紅梅やかって街道分かれの碑
東京都      伊藤訓花
おむすびに梅一輪の愛を添へ
梅の花ひとひら流る水ごころ
白梅や日暮に仄と灯りをり
梅が枝を鳴きて移ろふ鳥の声
梅東風の髪の乱れも香しき
東京都      長井美佐子
梅一輪 紆余曲折の枝に咲き
神奈川県      成田あつ子
分校は梅の里なり裏高尾
梅開く隙間の空の蒼さかな
白梅や形見の墨の香りたつ
ビル狭間小さき稲荷の梅開く
紅白に波打つごとく丘の梅
岐阜県      ときめき人
地歌舞伎の一芸光る梅一輪
東京都      佐藤博重
早梅や誓子分骨埋塋所
梅一輪絵馬に母校の名を読みぬ
滋賀県      一斤染乃
梅蕾真珠一つを抱きをり
つぶやきに耳傾けて梅蕾
悔恨を一つ捨てたり梅の花
北海道      吉岡 亨徹
小波の混ぜて離るる月と梅
蒼に月秘めたる矜恃の梅に艶
風はこぶ梅破れし夢のかほり
ブラジル      玉田千代美
祝ひ事近付く庭に梅の花
語らひの声も優しく梅の花
秘め事を胸におさめて梅の花
梅の花匂ひ懐かし里の庭
岡山県      渡辺 牛二
奔放に育ち空家の梅の花
塀高し中に椿に梅に桃
梅東風や二階の窓を開け放ち
新潟県      のばら
紙芝居従兄弟と梅ジャムとりあって
梅一輪甘さを友にひとり旅
女学生笑い通るる梅の路地
優しき手梅見ゆ我の鼻先に
埼玉県      守田修治
臥龍梅の意志つぐ力士横綱に
探梅や吟行多し根津湯島
歩み止め今年の梅の声を聞く
船頭が竿で示すや堀の梅
梅咲いて混声合唱聞こえけり
栃木県      長浜 良
紅梅を折れて新居へ案内状
麗しき緋袴の人梅真白
東京都      中田ちこう
融け入りて浮かぶ伽藍や梅暦 
夜の梅天衣のひだへ香の潮目 
梅匂ふ襟を色取る梅がさね
大阪府      太田紀子
娘逝き白梅庭に咲き始め
谷川の水音高し梅の花
黒猫の爪の白さや梅の花
神奈川県      フローラ
借景の梅見下ろせる大玻璃戸
紅白梅媼翁の立ち姿
兵庫県      安東優汰
胃と舌と 心さっぱり 梅の粥
梅の実が なるころ雨が 降っている
種埋める 甘酸っぱい 恋の味
梅の酒 大人になるまで 待っている
たまにくる 梅のおにぎり 食う欲望
千葉県      小草
雪野原蠟梅独り凛として
寒空に蠟梅香り春招く
蠟梅の香りかぐわし風の息
梅咲きて和靖が鶴の飛び来る
花落ちて土に梅香残りける
東京都      蘭丸
老梅やなかりしことにする話
老梅や念を押さるる無縁墓地
東京都      岩川容子
絵馬百に百の願いや梅ひらく
馥郁と濃き香淡き香梅日和り
遅咲きの牛久の里に梅咲けり
梅が香やわけても今日の紅深き
千葉県      隼人
喘ぎつつ上る坂道梅日和
梅林を走りて燥ぐ吾子二人
愛媛県      アリマノミコ
白梅や清友と観る朝の庭
主おう飛梅ありや大宰府に
歩み遅しわが庭なれど梅香る
山梨県      堀内郁恵
梅ふふむ枝に列びし鳥何羽
白き富士裾の庭に梅香らん
愛媛県      高橋美弥子
父の忌や寒紅梅の匂ひけり
早梅や風の吹くたび香を運ぶ
東京都      かつこ
杖をつく夫の左手梅一輪
亡き友の更地に残し梅の花
東京都      まどん
主逝く追うて妻逝く梅の花
筆買うて天神さんの梅ふふむ
埼玉県      小玉拙郎
檀家には知る人多き庫裏の梅
おみやげの梅は落雁紅と白
SLの右も左も梅の丘
岡山県      名木田純子
梅の香を裏返したる絵馬の風
梅の香を広げる空のありにけり
神奈川県      海野優
梅が香や躙り口まで匂ひけり
一輪の梅の香りし茶席かな
東京都      皆川里枝
梅咲くや白寿の伯父のほほゆるみ
梅咲いて故郷の便りを待ちいづる
東京都      紫鴬
サクラサク 天神梅の 任重く
梅白し 新横綱が 誕生す
梅林や 八分咲きなり ラビリンス
東京都      烏梅
梅の枝 御籤の白き 結び花
梅日和 美空ひばりを エンドレス
梅ふふむ 味噌汁いりこ 出汁をとる
東京都      十六年
梅ふふむ 最低気温 更新す
梅月夜 日本酒抱え 友来たる
梅日和 マイルス・デイビス 大音量
神奈川県      長瀬正之
梅の香や明の三日月冴え冴えと
梅ひらく長くなりたる立ち話
温暖化香の未熟なる野梅かな
盆梅の蕾数へる幼の手
風はこぶ梅の香ちらす風の午後
千葉県      二階堂脩一朗
琴の音や猫も見あぐる枝垂れ梅
神奈川県      川島欣也
築山の梅変わりなき廃れ寺
天神へお礼まわりや梅ふふむ
天神の梅にみくじやかた結び
盆梅の気品百年失わず
梅一輪茶室の闇を点しけり
三重県      阪倉弘一
咲いている 鉢より暮るる 梅の花
それぞれに 彩もちており 梅の花
木簡の かけら出てきて 梅薫る
観梅の 香りて空に 展(ひろ)がりて
廃校の 梅のさかりを 誰も知らず
千葉県      山田香津子
口笑う抱き上ぐ嬰や梅ふふむ
在りし日の友のお点前寒紅梅
蔵の街過ぎゆく先や梅真白
愛知県      川俣周二
水清き長良の畔梅香る
移築せし茶室に白き梅一輪
膨らみし梅の蕾の息吹かな
氏神を代々守る梅古木
人知らぬ小さき社の梅白し
福島県      いらくさ
白梅の今朝試し打ち二三発
真夜に来る猫祖母梅の順番よ
四人の媼の梅に操らる
探梅や後ろ手の手の微笑みぬ
さんざめきの周波に起つや臥龍梅
埼玉県      哲庵
別れなど無きかの如く梅薫る
裂帛の気合い漏れ来て梅真白
残業の我を迎える梅の花
満開や父の遺せし臥龍梅
気がつけば紅梅多し裏通り
神奈川県      重兵衛
長旅の終りて家の白き梅
引越のその日の朝の白き梅
白梅や合格通知待つ夕べ
かはたれの境内の隅梅白し
梅真白晩成横綱良き口上
兵庫県      西山恵美
梅の花木にとりつけて愛でる子よ
太宰府や梅の鉛筆かじり解く
梅の酒あなたの移る香りせり
神奈川県      髙梨裕
病室の窓ひと枝も梅の花
暮れる日を惜しみつ梅と佇みし
礼拝堂梅の香誘う瑠璃の窓
去りがたき恋も幼き梅の里
縁側の猫も居眠り梅の花
長野県      星野勝
花もよし幹もまたよし梅見かな
日溜りの梅の大樹やもう蕾
老梅は朽るでもなく蕾つけ
老梅の幹黒々と鱗立て
ごつごつの梅の木昇る夢を見る
東京都      ゆり
梅咲くや香りほろ酔い母の庭
梅ちらほら絵馬裏返す親子かな
京都府      中村万年青
盆梅や年経る幹の傾ぐ影
紅色の傘開きたるしだれ梅
探梅や若い人見ず梅の園