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- 俳句庵 2017年07月 優秀賞発表
- 俳句庵 2017年07月 作品一覧
俳句庵
7月『空蝉』全応募作品
(敬称略)
- 東京都 安西信之
- 空蝉の崩るるを待つばかりかな
- 岐阜県 金子加行
- 空蝉の命に風の通り道
- 空蝉と並びベンチに吾れ独り
- 空蝉を踏まず里山遊歩道
- 空蝉や表札の文字増やしたり
- 空蝉の拝む姿勢のまま吹かる
- 埼玉県 飯塚璋
- 空蝉や風に吹かれて用水路
- 新潟県 近藤博
- 蝉の殻そちこち落ちし枯山水
- わくらばに縋り哀れや蝉の殻
- 空蝉や枝に縋れる六肢もて
- 空蝉や殻と言えどもはかなさよ
- 皮脱げど命あるがに蝉の殻
- 千葉県 柊二
- うすものをつくらふ糸や空蝉の
- 広島県 永野昌人
- 空蝉の風に吹かるる軽さかな
- 空蝉の貌生き様か死に様か
- 空蝉に苦悶のかたちありにけり
- 蟬鳴くや昨夜の空蝉ありし辺に
- 生垣に小さき空蝉五つほど
- 岐阜県 ときめき人
- 空襲のサイレン響く空蝉ぞ
- 愛知県 岩田遊泉
- 空蝉の身の幸せを想いけり
- 空蝉の累々として古戦場
- 空蝉の乾坤一擲勝負せり
- 空蝉を避けて通らむ万歩道
- 空蝉のへばりついたる掲揚塔
- 宮城県 福田良光
- 成虫の合唱を聴く蝉の殻
- 空蝉を残し鳴きたる一週間
- 空蝉や生きた証しの固き殻
- 空蝉の標本並ぶ整然と
- 広島や空蝉絡む木々数多
- 大阪府 藤田康子
- 空蝉に何の未練も蝉に無し
- 空蝉をあはれと見るは人のみぞ
- 神奈川県 佐藤博一
- 言い残すことのあるかに蝉の殻
- 風来れば飛び立つ構え蝉の殻
- 空蝉の風に吹かるるいのちかな
- 空蝉の天を仰ぎて吹かれけり
- 空蝉を宝のやうに子が拾ふ
- 東京都 内藤羊皐
- 竹取の翁空蝉拾ふかな
- 空蝉やあさましかりし恋のせる
- 空蝉は月の光を蒐めをり
- 空蝉の千尋の空の底撃てり
- 空蝉の稽古始まる地下通路
- 兵庫県 紫 桔梗
- 空蝉をしっぽり濡らす小糠雨
- 魂のなき空蝉の目に力
- 空蝉の背の裂け目の痛々し
- 空蝉の抱く朱塗りの大鳥居
- 其処此処に空蝉宿す楠大樹
- 岐阜県 長谷都代
- まだ恋し狭庭に残る蝉の殻
- 空蝉となれず葉裏の跡哀し
- 絵本持て空蝉説く娘母となり
- 空蝉や地蔵の膝に抱かれをる
- 空蝉を見つけ怖がる三歳児
- 兵庫県 噂野アンドゥー
- 都会では ミンミンゼミが 聞こえない
- 空を飛ぶ セミの抜け殻 土還る
- 路に敷く 蝉の死骸や 夏終わる
- 空蝉や 命儚い 恋の唄
- 夏休み 騒音被害 蝉の聲
- 京都府 欲句歩
- 空蝉や爆心囲う樹は育つ
- 空蝉や爆心と有るモニュメント
- 空蝉や筆其々の心と教
- 千葉県 伊藤博康
- 児が採りし空蝉そっと母に見せ
- 成り立ての空蝉風に揺らぎけり
- 空蝉や大木の在る通り道
- 篭の中空蝉ばかり集めけり
- 白壁に空蝉二つ並びをり
- 大阪府 金成愛
- 空蝉や憤怒に在す飛鳥仏
- 島根県 湧雲文月
- 空蝉を叩き安堵に終はる雨
- 空蝉やしがみつきたき君の腕
- 空蝉や主の声は知らぬまま
- 空蝉や主は先に身罷りて
- 空蝉や内耳へ響くほどの雨
- 神奈川県 守安雄介
- 空蝉やセーラー服を脱ぎすてぬ
- 空蝉に残る気管や内外皮
- 空蝉や人は現身 抜けられず
- 空蝉やお前は何処で如何してる
- 空蝉やこの木疱瘡患える
- 岡山県 岸野洋介
- 空蝉のバッジ得意げ四つの子
- 空蝉の梢見上げて動かざる
- 軒下の空蝉の数二つ増え
- 空蝉も里の土産ともち帰る
- 妻の墓空蝉そっと草むらに
- 滋賀県 了庵
- 空蝉の背に深傷のありにけり
- 空蝉や妻はいつから認知症
- 空蝉を胸にすがらせ下校の子
- 空蝉の塵に混じりて掃かれけり
- 空蝉の鋼のごとき六肢かな
- 神奈川県 石鎚 優
- 空蝉を子の拾ひけり墓参り
- 空蝉を珈琲カップの横に置く
- 丈たかく揺るる花あり蝉の殻
- 空蝉や「線路はつづくよ どこまでも」
- 捨てられし野のマネキンや蝉の殻
- 埼玉県 岸保宏
- 空蝉や回り灯篭不乱なり
- 空蝉や絵日記の中主かな
- 空蝉や風のなすまま従へり
- 神奈川県 原川泉水
- 空蝉が語る土中の永き営(えい)
- 難産の証とどめる蝉の殻
- 空蝉やあとは風雨にゆだね逝く
- 空蝉や樹林に記す健闘史
- 蝉殻を一顧もせずに大空へ
- 宮城県 林田正光
- 空蝉の前世を偲ぶ人のあり
- 空蝉や一つひとつに個性あり
- 空蝉の対極にある甲かな
- 空蝉を真綿に包み抽斗に
- 手のひらの空蝉風に動きけり
- 愛媛県 加島一善
- 風吹きて樹皮に縋るや蝉の殻
- 母の忌の空蝉跨ぐ墓地の道
- 樹に登り蝉の抜殻空掴む
- 空蝉や何を問うても無言かな
- 蝉の殻転がり溜まる社殿裏
- 三重県 治もがり笛
- 決めポーズ歌舞伎役者か空蝉は
- 忍者道空蝉楯に技磨き
- 東京都 腹胃壮
- 空蝉を踏めぬ命の軽さかな
- 野良猫と遊んでをりぬ蝉の殻
- 空蝉の掴まる幹やはぐれ雲
- 空蝉の掴まる傷の残りけり
- 空蝉の翔べぬ容に残りけり
- 東京都 岩崎美範
- 空蝉に念仏唱ふ老婆かな
- ままごとの夕餉の菜は蝉の殻
- 空蝉に残る眼の哀れかな
- 空蝉や花に埋もれし母の骸
- この夏をどこで鳴くやら蝉の殻
- 山口県 山縣敏夫
- 動乱の世に空蝉が騒ぎをり
- 空蝉に言っておきたい事多し
- 空蝉が日々懸命に生きてをり
- 空蝉に家路を急かす犬がおり
- 静かなる空蝉たちの集うとこ
- 長野県 木原登
- 空蝉は胸章なりし少年期
- 空蝉やわれら喜寿なる同期生
- 空蝉を拾うて枝に戻しけり
- おのが身の最後を見むと空蝉は
- 空蝉になほもかがやく命あり
- ブラジル 西山ひろ子
- 触角をきれいに残し蝉の殻
- どの蝉の種類分からず蝉の殻
- 泥少しつけて分身蝉の殻
- 下の葉に 固まって付き蝉の殻
- 空蝉の軽き重さを手の平に
- 長崎県 内野 悠
- 土深く空蝉の子や育ちをり
- 空蝉や五人の子には母ひとり
- 空蝉の時を食べたる軽さかな
- 空蝉や百歳の死もこのやうに
- 一匹を出し空蝉となりにけり
- 神奈川県 井手浩堂
- 空蝉の風に吹かるるまま孤高
- あづかりし空蝉や手にもてあます
- 空蝉の爪の食ひ込む桜の木
- 空蝉の生あるごとき眼の光
- 空蝉とミニカー並ぶ子の机
- 東京都 勢田清
- 空蝉をそっと手に取り日に透かす
- 空蝉や宴の日々も夢のごと
- 空蝉のあまりに軽し掌
- 空蝉やべっこう色の宇宙服
- 空蝉の巨樹登りたる勇姿かな
- 三重県 遊眠
- 手のひらの空蝉にある温さかな
- かなしみは空蝉の背の飴の色
- 空蝉の主はいまごろいづこにや
- 山口県 ひろ子
- 空蝉を集めて少年気勢揚げ
- 空蝉や脱皮の瞬間見て居りぬ
- 空蝉のはかなさ憂う訃報かな
- 兵庫県 山地美智子
- 空蝉や叔父叔母さえもなき故郷
- 空蝉の意志ある如く縋りつく
- 空蝉や子供に尽きぬ好奇心
- 飛び立ちしばかりと見ゆる蝉の殻
- 空蝉や逝けば戻らぬ者ばかり
- 神奈川県 塚本治彦
- 空蝉や女は過去にこだはらず
- 空蝉に夜の匂の残りけり
- 空蝉やウルトラマンの背にチャック
- 空蝉の生あるごとき琥珀色
- 空蝉の鼈甲色や朝の月
- 静岡県 城内幸江
- 空蝉や母やはらかく庭を掃く
- 花壇には花咲き乱れ蝉の殻
- 大阪府 津田明美
- 空蝉の裂けて現世朽ちにけり
- 空蝉の軽き執着掌に
- 空蝉の離れがたくて親なる樹
- 空蝉となりても祈る親ごころ
- 空蝉の移し世眺む虚ろの眼
- 東京都 穂坂俊一
- 空蝉の衣脱ぎすて旅立ちぬ
- 空蝉の雨に打たれし骸かな
- 空蝉の裾に縋れし野の仏
- 空蝉や高みに遺す夢の跡
- 空蝉の七年七日の生きの様
- 奈良県 平松洋子
- 山風の吹きて散らばる空蝉や
- 空蝉や僧侶の手の中遊び出す
- 空蝉を軽く吹いては児の玩具
- 東京都 佐藤博重
- 空蟬を縋り付かせてランドセル
- 空蟬を園児らどつと取り囲む
- 神奈川県 白銀
- 空蝉が 恋しくなるに 夏の夢
- 空蝉に 感動するに 我が想い
- 俳句にて 空蝉調べ もう一句
- ひぐらしの 空蝉はまた やわらかい
- 空蝉が 脱皮する初夏 蝉羽化する
- 福岡県 たこ
- 空蝉を 見せる童の 笑顔かな
- 梵鐘に 空蝉ゆれる 遍路道
- 空蝉が 風に舞い落つ 関ヶ原
- 空蝉や 千年杉に しがみつく
- 東京都 伊藤はな
- 空蝉の風に転がる軽さかな
- 空蝉や全ての役を終へてをり
- 空蝉の背には子宮の割れてをり
- ビニールの紐絡まりし蝉の殻
- ブラウスをしかと掴むや蝉の殻
- 神奈川県 矢神輝昭
- 空蝉の手に取り上げて末思ふ
- 空蝉や沈思はたまた深眠り
- 空蝉や遺恨残して前の爪
- 空蝉を籠に集めて得たり顔
- 空蝉の黙の修行や三年目
- 神奈川県 龍野ひろし
- 空蝉や生きる形をそのままに
- 神奈川県 川島欣也
- 空蝉やすべて捨て去る潔さ
- 空蝉や煩悩すてる禅の道
- 泥ひとつつけず空蝉生まれけり
- 空蝉やかわれる前の姿見せ
- 空蝉の足の食い込む大欅
- 大阪府 森村冨美子
- 空蝉の透きくる軽さ掌に受けし
- 空蝉の乾きて風を纏ゐたる
- 枝先に空蝉そつと戻しけり
- 蝉の殻枝に残して幹で鳴く
- 空蝉に優しさ纏ふ風のあり
- 栃木県 長浜 良
- 空蝉を匹と数ふるせつなさよ
- 空蝉を腕に乗せやり旅の空
- 兵庫県 岸野孝彦
- 空蝉やそれぞれの生そして死
- 空蝉や茶色い戦争ありまして
- 空蝉や粉々にして母を待つ
- 空蝉や命の重さ幾何ぞ
- 空蝉や善根宿の道遠し
- 愛知県 西谷寿
- 空蝉の主消えてなお心打つ
- 空蝉に心奪われ時忘れ
- 夜店にて空蝉色の浴衣着る
- 空蝉と遊んだ昔薄れゆく
- 空蝉を見つけて娘涙する
- 熊本県 貝田ひでを
- 空蝉の憂鬱の眼の左右かな
- 手に乗せて風の軽さや蝉の殻
- 命とはまことに軽き蝉の殻
- 空蝉の土の匂ひのまま枯るる
- 大阪府 永田
- 空蝉を内に抱ふるひとを恋ふ
- 千葉県 隼人
- 空蝉や元彼待ちて銀の鈴
- 空蝉や校舎の脇に尊徳像
- 頑陋といふ空蝉脱ぎにけり
- 東京都 右田俊郎
- 空蝉や思い出したくない記憶
- 空蝉の背なの割れ目や罪と罰
- 恐々と蝉の抜け殻触れて見む
- 魂の抜け出た跡や蝉の殻
- 空蝉や生きた証を残す意思
- 東京都 かつこ
- 空蝉の琥珀の色に幸もらふ
- 愛媛県 アリマノミコ
- 空蝉の声きくパリの自爆テロ
- 空蝉や第3帖をひもとけば
- 神奈川県 重兵衛
- 蝉の殻背のジッパーはもう閉めぬ
- 空蝉のしがみつきたる流人の碑
- 石仏の群ある洞や蝉の殻
- 空蝉の並ぶやここも順位あり
- 点線のグラフをなして蝉の殻
- 三重県 後藤允孝
- 空蝉や世の変貌を嘆きけり
- 気がつけば空蝉そつと旅立ちぬ
- 空蝉の眼は少年を見てゐたり
- 空蝉や嫁ぐ娘を案じをり
- 空しさも歓びもあり蝉の殻
- ブラジル 広田ユキ
- 抓まれて空蝉しかと爪立てし
- 空蝉や茂吉の墓の一位の木
- 蝉の鳴くほどに空蝉見つからず
- 空蝉の放さじと抱く椰子の幹
- 古里の産土の森蝉の殻
- 神奈川県 海野優
- 読経聴く少年空蝉もてあそぶ
- 空蝉や悪書とならぶ哲学書
- 埼玉県 よしこ
- 空蝉に遠く聞ゆる子らの声
- 空蝉の青空仰ぐブロック塀
- 飛ばされさう飛ばぬ空蝉草の上
- 空蝉にやはらかさうな夜明かな
- 空蝉の鳥居に縋る日暮かな
- 東京都 住澤義英
- 空蝉や命短し世の無常
- 空蝉や飛ばされまいぞ今日の日も
- 蝉の殻難産あとの割れ姿
- 空蝉や今が落ちなんそよ風と
- 空蝉や生きているやら今いずこ
- 東京都 中田ちこう
- にらみるや空蝉の空深き星
- 北海道 飯沼勇一
- 空蝉の十はをりたり蝉時雨
- 空蝉に寄り添う如く蝉留まる
- 空蝉や少年野球観戦中
- 空蝉の背を丸め雨跳ね返す
- 空蝉の睨みつけたる蟻の列
- 宮城県 北村さとみ
- 空蝉を集めて競う夏休み
- 東京都 早川高典
- 蝉の殻いだきし松や親ごころ
- 空蝉や菓子喜ばぬ子の背中
- 空蝉やけふもきのふのくりかへし
- 物言わず空蝉裂くやまごむすめ
- 大阪府 太田紀子
- 空蝉にたまる雨水の光をり
- 空蝉のゐる生家今空家なり
- 空蝉にすがりし蝉のまだ白し
- 千葉県 山田香津子
- あえかなる源氏空蝉夜の秋
- 空蝉やうつしよの愛聞くもがな
- 並びゐし蝉の脱け殻牛舎跡
- 神奈川県 成田あつ子
- 箒目に風より軽し蝉の殻
- 渾身の力で脱ぐや空蝉は
- 殻抜けて空蝉蒼き空を見む
- かさかさと空蝉音を零したり
- 穴の数子は空蝉を探しをり
- ブラジル 林とみ代
- 古の王の別荘蝉の殻
- 空蝉の身となる余生虚しかな
- 出稼ぎの多き僻村蝉の殻
- 宿題の一つとなりぬ蝉の殻
- 蝉の殻脱ぎて第二の人生へ
- 大阪府 椋本望生
- 空蝉にならねばならぬ寂しさよ
- 園児らの紙飛行機と空蝉と
- 空蝉の国かと思ふ垣隣
- 空蝉よそろそろちから抜けないか
- 恋しらにこころ赦すや蝉のから
- 千葉県 横井隆和
- ・万象に一直線有り蝉の殻
- ・空蝉を砕く戦時やカルシュウム
- ・空蝉の去年へ今年の一尾添い
- ・卒塔婆より空蝉コロリ激し雨
- 滋賀県 村田紀子
- 葉に揺れる空蝉に見る祖父の家
- 父思う枝に隠れた空蝉に
- そよ風に揺れる空蝉十代の我
- 空蝉を数え母待つ線路際
- 埼玉県 小玉拙郎
- 空蝉や虫一匹の解脱跡
- ひと朝の命の名残り蝉の殻
- 空蝉や七年の刑を務め上げ
- 空蝉や帰らぬ旅の置きみやげ
- 東京都 岩川容子
- 空蝉や巣立ちていきし子等の部屋
- 空蝉を捨てると知りて拾いくる
- 鳴くために耐えた長き日蝉の殻
- 松林ぬければ海や蝉の殻
- 東京都 遠山比々き
- 空蝉の白く塗られて瓶にあり
- 踏まれたる空蝉の腹天を向く
- 空蝉の脚を掴んで風の幹
- 空蝉の集まつてゐる排水溝
- 工作や空蝉白く塗られをり
- 東京都 野島正則
- 空蝉の集合住宅ある葉裏
- 空蝉に色塗り自由工作に
- 一つ葉に重なる空蝉三つ巴
- 空蝉や柳生の里の一等石
- 空蝉の取り合ふ枝のありにけり
- 埼玉県 彩楓
- 空蝉のからっぽといふ重さかな
- 居酒屋の酒器棚へ二個蝉の殻
- マー君の宝の箱に蝉の殻
- 空蝉の葉先より垂れ大揺れに
- 空蝉や登る形にのけぞりぬ
- 愛知県 石川順一
- 人の詩がメロディーとなり蝉のから
- 足で踏みその空蝉の重大さ
- 信心が起こる空蝉幾つもに
- 空蝉に群がる子等を走り過ぎ
- 空蝉や道路に出てはならぬ時
- 兵庫県 山崎衣玖
- レストラン横の空蝉こぼるる木
- 空蝉の開き代はりを求めけり
- 空蝉や茶畑の一枝にあり
- 翡翠色なる羽生みぬ空蝉は
- 空蝉やゆつくり開けし玉手箱
- 埼玉県 守田修治
- 空蝉を皇居散策記念とす
- 空蝉の黙して見入るかくれんぼ
- 空蝉や木々を従え古寺の庭
- 空蝉を五匹集めてまた明日
- 空蝉やそこは兄貴の墓だけど
- 東京都 まどん
- 空蝉や継母なれど母は母
- 夕風に空蝉揺るる御苑かな
- 神奈川県 佐々木 僥祉
- 空蝉の掴む楠宮の朝
- 空蝉を琥珀の如く見る子の目
- 空蝉に潮風通る松林
- 空蝉の額突く巌苔深し
- 空蝉の掴む木造廃校舎
- 千葉県 下総真里
- 空蝉の爪のひとつは風を掻く
- 空蝉の背より夜明の始まりぬ
- 一匹はもう空蝉になれぬ色
- 神奈川県 髙梨裕
- 空蝉のしかと取り付く葉の光り
- 空蝉の過ぎたる命風と消え
- 空蝉や巣立ちし部屋はからっぽに
- 空蝉や母亡き母の白絣
- 摘みたる空蝉指の弾くかな
- 京都府 中村 万年青
- 空蝉を十指に付けた幼き日
- うつせみの目玉光りて青葉風
- 空蝉や背中丸めて土に向く