俳句庵
季題 8月「天の川」

- 降臨の峰になだるる天の川
- 福岡県 西山 勝男 様

- コッヘルに沸かす珈琲天の川
- 東京都 伊藤 はな 様
- 異国とは言へぬこの国銀河濃し
- ブラジル 西山 ひろ子 様
- 日々きみと生くるしあはせ天の川
- 神奈川県 後藤 真子 様
- 故郷はむかしのままや天の川
- 安立 公彦
安立 公彦 先生 コメント
今月の題は「天の川」。歳時記にはこのように書かれています。即ち、「澄み渡った夜空に帯のように白々とかかる無数の恒星の集まり」。この無数の恒星を、辞書は「数億以上の恒星から成る」と記しています。この天の川は同時に「七夕」とも結びついています。「天の川」は皆さんご存知の通り、芭蕉始め多くの古今の俳人に詠まれています。今回の皆さんの句、内容も表現も多様です。
優秀賞の西山勝男さんの句。この「降臨の峰」は、「高千穂峰」。天孫降臨伝説の地です。標高1574メートル。「なだるる」はこの句の場合、「傾るる」。「降臨の峰」と「天の川」の対比が、雄大でまた品格を感じさせる表現です。
伊藤はなさんの句。「コッヘル」は、携帯用の炊事用具。「コーヒー」は「珈琲」としました。山小屋に一泊した翌朝、未明に出発した一行は、途中コッヘルで珈琲を沸かすのです。中天にうすく流れる天の川が、印象深く感じ取れる句です。
西山ひろ子さんの句。この「異国」は、南米ブラジル。日系人は約190万人と言われています。この上五中七を見ると、作者の、この地への愛着が強く感じられます。大気も澄明で、天の川もはっきりと見えるのでしょう。国境を越えた句です。
後藤真子さんの句。「天の川」を仰ぐ人には、それぞれの感情があります。この作品は、プラスの感情を優しく表現しています。「日々きみと生くるしあはせ」に、その全てが出ています。「天の川」がそれを柔らかく包んでいます。
今月の佳句。〈母の忌を修して仰ぐ天の川 佐藤博一〉。〈短冊に真は書けず天の川 白井百合子〉。〈母今も銀河に生きて白寿なり 津田明美〉。<父母なくて故郷遠し天の川 岸野洋介>。夫ぞれ良く出来ています。
◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。