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- 俳句庵 2018年10月 優秀賞発表
- 俳句庵 2018年10月 作品一覧
俳句庵
10月『夜長』全応募作品
(敬称略)
- 宮城県 石川初子
- 寝るでなく語るでなくて夜長かな
- 岐阜県 金子加行
- パソコンを切りて夜長をオフとする
- 家計簿に減る速さある夜長かな
- 母介護言葉戻りし夜長かな
- 読めぬ書の多し夜長に積み直す
- 古文書の一字が読めぬ夜長かな
- 栃木県 垣内孝雄
- 蝋燭の炎かすれる長き夜
- アナログの音に聞き入る夜長かな
- 雨音の静かに過ぐる夜長かな
- 長き夜やスーツ姿の梯子酒
- 寝室に耽くる読書や妻夜長
- 愛知県 遊泉(ゆうせん)
- 「砂の器」佳境に進む夜長かな
- 妻とみる家族写真の夜長かな
- 昭和史の夜長いよいよ佳境なる
- 眠られぬ夜長激しき救急音
- 秋の夜の愈々長き能登泊り
- 愛媛県 砂山恵子
- 棚の奥に古きカルテや夜長の灯
- 長き夜や急患ひとり送りゐて
- 本人に余命を告げて夜長かな
- 長き夜やまだ急患の知らせなく
- 思ふより重き石蹴る夜長かな
- 千葉県 柊二
- 袖長き作家犇めく夜長かな
- 大阪府 藤田康子
- 余生にさらにおまけのやうな夜長
- 気のせいか手足の伸びし夜長かな
- 新潟県 近藤博
- 夜の長し寝ぬを惜しみて俳誌読む
- 一句二句ひねる俳句や夜の長く
- 妻と吾趣味はそれぞれ夜の長く
- 隣家とて窓の灯明く長き夜
- 妻寝ねど推敲重ぬ長き夜
- 島根県 GONZA
- ジャムパンを手に張込みの夜長かな
- 献杯やバーボンの封切る夜長
- 長き夜の畑に居やるごんぎつね
- 義士死んで劇の終わりぬ夜長かな
- カラマーゾフ読む少年の知る夜長
- 長野県 木原登
- 逝いて十年なほ友おもふ夜長かな
- 砂時計いくたび返す夜長かな
- 窓開けて湖の星見る夜長かな
- 羊が一匹未が二匹夜長し
- ゆく川の音の聞こゆる夜長かな
- 兵庫県 噂野アンドゥー
- 夜長く 昼短しや 老い求め
- 締切日 夜長徹して 一句詠む
- 寝る前の あそびあそばせ 夜長かな
- ペガサスや 夜長の翼 夢を見て
- 朝が来る までが長いよ 今日の夜
- 神奈川県 月のうさぎ
- チャルメラの絶滅危惧す夜長かな
- 兵庫県 岸下庄二
- 長き夜や振り子時計の螺子を巻く
- 全集をまた読み直す夜長かな
- 長き夜や枕の合はぬ坊泊り
- 糶に出す子牛撫で遣る夜長かな
- 長き夜や昨夜と同じ夢を見る
- 香川県 紅緒
- 君を待つドボルザークと長き夜
- 夜の長しペンが進まぬ方程式
- 退屈をもてあましてゐる夜長かな
- 将棋指す無口な父の夜長かな
- 漱石の本の乱れや長き夜
- 東京都 五十嵐顕人
- 長き夜をギターに聞くやローレライ
- 神奈川県 吉良水里
- まなこ閉じ靴音を追う夜長かな
- 終活の一つをしたり長き夜
- 長き夜の背骨辺りの棲み心地
- 千葉県 伊藤博康
- 夜長なり声出してみる独り言
- 読み疲れ本を閉じたる夜長かな
- 簡単に悩みの解けぬ夜長かな
- 嫌なこと先送りなる夜長かな
- 長き夜や話し相手の不在なり
- 東京都 笹木弘
- 鉛筆に句帳一つの夜長かな
- コーヒーをもう一杯飲む夜長かな
- パソコンに遊ばれてゐる夜長かな
- 一人には独りの夜の長さかな
- 縁側で爪切る音の夜長かな
- 山口県 山縣敏夫
- 夜長し尽きせぬ祖父の武勇伝
- 過ぎし日の名画を語る長き夜
- 青春を語れば尽きぬ長き夜
- 推敲に時を忘れる夜長かな
- この地球(ほし)の行く末想う夜長かな
- 東京都 石井昌男
- フロワーのチークへ変わる夜長かな
- 大三元刻子か槓子夜長かな
- 自転車と自販機響く夜長かな
- 国士無双頭待たれし夜長かな
- 自販機のゴロリと一つ夜長かな
- 広島県 永野昌人
- 長き夜のホテルの棚に聖書など
- スタンドを消しては点ける夜長かな
- 後朝と言いし昔や夜は長き
- モルダウを聴く長き夜のヘッドフォン
- 遠き日の日記など読む夜長かな
- 大阪府 木山満
- 長き夜を虫尽くしせむ我一人
- 拡大鏡外し夜長の闇覘き
- 体調の悪しき告げ得ぬ夜長かな
- 長き夜を虫すだくのみ草の海
- 独り居に慣れても長き夜長かな
- 東京都 石川昇
- 長き夜や鉱石ラジオに耳澄ます
- 大活字の本に親しむ夜長かな
- 神奈川県 佐藤博一
- これからが私の時間夜の長し
- 犯人の目星付かざる夜長かな
- 一つずつ消して一つを夜長の灯
- 食卓は妻の文机夜長の灯
- 一灯を妻と分け合ふ夜長かな
- 愛媛県 渡邊國夫
- 持て余す一人に長き夜のしづか
- 近況を祖先に報ず夜長かな
- 飲み比ぶ地酒三種や夜の長し
- 長き夜を風の騒ぎし山の宿
- 夜長し干物つまみの独り酒
- 山口県 ひろ子
- 深夜便ラジオ添い寝の夜の長し
- 長き夜や据え膳ととのふ旅の宿
- 兵庫県 髙見 正樹
- 二度寝して寝過ごしている夜長かな
- 長き夜やソフトで作る住所録
- ミステリーつい読み進む夜長かな
- 兵庫県 はなちる
- 気づいたら好きになってた夜長かな
- 湯上りに夜風ささやく夜長かな
- 手習いの縫い目大きく夜長かな
- 子守唄眠りいざなう夜長かな
- 湾岸線唸るバイクの長き夜
- 東京都 岩崎美範
- 通夜終へて真の夜長の始まりぬ
- からくり時計タンゴを踊る夜長かな
- 妻と子のおしやべり続く夜長かな
- 長き夜や漢字ドリルの帰国子女
- 初孫の産声を待つ夜長かな
- 兵庫県 山地美智子
- 長き夜や死支度てふ話題あり
- クロスワード一人楽しむ夜長かな
- クッキーにまた手が伸びる夜長かな
- CMの長き夜長のテレビかな
- 籠り居て独りに灯す夜長の灯
- ブラジル 西山ひろ子
- 長き夜を週に何度か長電話
- 仏壇を閉めて夜長の灯を消しぬ
- 長き夜を病む人胸に睡りかな
- 割烹着脱ぎて夜長の灯を点さむ
- 煎餅の旨き音出し夜長妻
- 神奈川県 夏陽
- 良きことを忘れむとする夜長かな
- 良きことを忘るまじとす夜長かな
- 奈良県 堀ノ内和夫
- 川の字に縄文の世の長き夜
- 遠国のスポーツを見る夜長かな
- 愛知県 寺尾当卯
- 贋作の上手く仕上がる夜長かな
- 心音のシンコペーション夜の長き
- 長き夜や校閲室の窓灯
- 長き夜や消費期限にまだ三分
- 長き夜や混信したる周波数
- 徳島県 白井百合子
- 思い出も形見分けする夜長かな
- 絵手紙の色迷うほど夜長なり
- 膝痛み摩りながらの夜長かな
- 帰り来ぬ人を待つ身の夜長かな
- ラインする俳句回しの夜長かな
- 神奈川県 亀山水
- 足先の冷えて夜長の虫封じ
- 表紙から繰りて夜長の写真集
- 村里は大宴会の虫夜長
- 手酌酒テレビ相手の今日夜長
- 熟睡の顏羨まし夜長かな
- 静岡県 城内幸江
- 猫の尾の伸びきっている夜長かな
- プレゼントりぼん解けぬ夜長かな
- 艶やかに髪を梳かして夜長かな
- 栞からインクの匂ふ夜長かな
- 神奈川県 井手浩堂
- グラス置き夜長の読書はじめけり
- ひとり居の五木の『他力』読む夜長
- ゆつくりと二度寝あじはふ夜長かな
- 神奈川県 後藤真子
- 人恋し汽笛の耳につく夜長
- 星辰や夜長の聖書深く沁む
- 長き夜や過去と未来の夢を見し
- 長き夜のふたりふた猫ひざにのせ
- 層雲峡滝の音澄む夜長かな
- 東京都 勢田清
- 雨音にじっと聞き入る夜長かな
- 母の作る鍋焼き饂飩食う夜長
- 灯り消し夜長に想うこと多し
- 参考書寄せて夜長の饂飩食う
- 勉強の区切りつきたる夜長かな
- 東京都 ―
- 長き夜やグラス傾け動く喉
- 長き夜や煙草くゆらすビルの風
- 路地裏に酒と肴の夜長かな
- 豆電球ページをめくる夜長かな
- 長き夜や待合室に祈る声
- 神奈川県 萩原照代
- 老眼鏡 かけてスマホの 夜長かな
- いで湯より のぞむ漁火 夜長かな
- 岐阜県 ときめき人
- 夜長かな明治奏する蓄音機
- 兵庫県 岸野孝彦
- 蝋燭の人魚は哀し夜長かな
- 文庫本夜長に開く栞紐
- 父母ともに写真になりし夜長かな
- 無人駅遍路は眠る夜長かな
- 早よ寝なと梅おむすびの夜長かな
- 東京都 伊藤はな
- 一冊の中に棲みつく夜長かな
- 母の生家探す古地図の夜長かな
- 長き夜のあるじ無き椅子父の影
- 長き夜を縫ひつぎて又縫ひつぎて
- 有り余る時と折れ合ふ夜長かな
- 奈良県 平松洋子
- 夜長にて母の話の終わらぬに
- 童謡に童話たっぷり夜長かな
- 一杯の茶に癒されし夜長かな
- 青森県 竹浪誠也
- 長き夜や縁の欠けたる判を押す
- 独り居の居間に居座る夜長かな
- 長き夜の相槌多き会話かな
- 読みさしを開き夜長のプロローグ
- 校了の雨の夜長となりにけり
- 神奈川県 原川泉水
- めいそうに苛立つ夜長持て余し
- 学術書睡魔に抗す夜長かな
- 吉祥夢厠さえぎる夜長かな
- 夢の中仔犬とじゃれる夜長かな
- 管制の夜長煌煌責勤むいらだつ
- 大阪府 津田明美
- 夫待てば夜長のラジオ終わりしを
- 長き夜の君を待ちいる一人膳
- 双輪に夜長かき分け終列車
- 逝く人に夜長の終わりなかりけり
- 旅宿の波音高き夜長かな
- 神奈川県 塚本治彦
- 印度洋航く船旅の夜長かな
- 刺網を張りたるあとの夜長かな
- 船旅の夜長赤道越えにけり
- 眠剤の増やす一錠夜長かな
- 新宿の漫画喫茶にゐる夜長
- 富山県 岡野満
- 行間に思いを馳せる夜長かな
- 読書する夜長を睡魔弄ぶ
- コーヒーのお代わりをして夜長かな
- 東京都 内藤羊皐
- パソコンに映画席得る夜長妻
- 離乳食煮こめるまでの夜長かな
- 検索の窓の重なる夜長かな
- クロスワードパズル夜長の母の問ひ数多
- 鉄色の鳥居夜長の灯りとす
- 東京都 豊宣光
- 長き夜の夢を楽しむ早寝かな
- 新刊の読書はかどる夜長かな
- 独り身は夜長の時間持て余し
- 部屋明かり夜長の闇のやわらかし
- 長き夜や盃進む独り酒
- 埼玉県 まんたろう
- 長き夜や一句作つてなほ余り
- 着信音メールの返事夜長かな
- 長き夜やふと目覚むれば屋台の音
- 長き夜や折りし朝刊また開く
- テレビ消し又消してゐる夜長かな
- 三重県 後藤允孝
- パソコンに向かひすなわち夜長かな
- 震災の大停電となる夜長
- 古文書を読み解きほぐす夜長かな
- 晩酌を息子と交わす夜長かな
- 酔へばまた自慢話となる夜長
- 神奈川県 矢神輝昭
- 父危篤おろおろ夜長始発待つ
- 漏れる灯に母のまろし背夜長かな
- 大宇宙広がる絵巻夜長駈け
- 明日は発つ娘を思ふ夜長かな
- 真犯人夜長に囲ひ追い詰めん
- 福岡県 紙田幻草
- 五十にして資格試験の夜長妻
- テレビ見るだけの夜長を持て余し
- 深夜便てふラヂオ放送夜の長し
- 東京都 かつこ
- 若者の居る明るき夜長かな
- 介護する孤独を愛す夜長かな
- 神奈川県 松風子
- 懐旧のパイプを吹かす夜長かな
- 長き夜の不寝の打ち分け噺かな
- 知慧の輪を脳がまさぐる夜長かな
- 目醒めても続きある夢夜長し
- 諍ひに目覚まし時計鳴る夜長
- 神奈川県 月野木潤子
- 秋の夜のクンパルシータ―久に聴く
- 鉛筆でなぞる古典や夜の長し
- 入院の夫の手さする夜長かな
- 長き夜の水仕の音と人影と
- 長き夜の電話一本ひたに待つ
- 神奈川県 龍野博史
- 秒針の規則正しき夜長かな
- アイドルの目鼻を評す夜長かな
- 長き夜のいまだに解けぬミステリー
- 神奈川県 守安雄介
- 題詠の迷路にもがく夜長かな
- パソコンの写真俳句を観る夜長
- 婚活の検索迷う夜長かな
- バスタブにどっかと浸る夜長かな
- 大鼾叱れば鎮む夜長かな
- 福岡県 西山勝男
- 想を練る一句に執す夜長かな
- 夜長の灯分けて妻との写経かな
- 吉報に自祝一盞夜長酒
- 長き日や法話聴き染む坊泊り
- 栃木県 鹿沼 湖
- 静けさにただただ浸り夜長かな
- 雨音の中にひとりの夜長かな
- 飼ひ猫の膝に丸まり夜長かな
- 膝上の猫の寝息の夜長かな
- 岡山県 名木田純子
- 町屋筋軒の低きに夜長の灯
- 子の寝顔厭きず見てゐる夜長かな
- 宮城県 林田正光
- 病棟の夕餉終わればはや夜長
- パソコンのフリーズ溶けぬ長き夜
- 長き夜にここ十年の断捨離す
- 千葉県 桑島幹
- 長き夜や今は動かぬ大時計
- コンビニの立読の増え夜長かな
- 明日の診断結果待ち夜長かな
- ボジョレーの空き瓶となり夜長かな
- 会議室吸殻の増え夜長かな
- 神奈川県 川島欣也
- 大時計なる夜や長し峡の宿
- オペ終わる病床の日々夜や長し
- 続く地震インフラ止まる夜や長し
- 天井の鼠ごそごそ夜長かな
- 遠近の夜長を走る救急車
- 千葉県 山田香津子
- 大安に書く招待状夜の長し
- チバニアンの模型画夫の夜長かな
- 大活字の更級日記夜長かな
- 神奈川県 河野肇
- 主なき部屋の土偶も夜長かな
- 夜長かな昔男のオッペケペ
- 月面に土偶一体置き夜長
- 長き夜川面で歌ふオフィーリア
- 長き夜やもう眠り給へハムレット
- 東京都 右田俊郎
- 夜長とてひとりパイプを燻らせる
- 夜長とてメールの会話佳境なり
- 傍らに本を積み上げ夜長かな
- 夜長ゆへ愉しきことの多かりき
- 敗着をAIに問ふ夜長かな
- 神奈川県 猪狩 千次郎
- 眠られぬ患者隣す夜長かな
- 行く末のすぐそこにある夜長かな
- 線香の煙横這ふ夜長かな
- ちやん付けでいまも呼ばるる夜長かな
- 長き夜やそつと帰宅の猫の脚
- 神奈川県 成田あつ子
- 逝く日近き犬の息聴く夜長かな
- 句作りに夫と分かつ灯夜の長し
- 帰国してまた地図開く夜長かな
- クルーズの湾の灯遠く夜の長し
- 時差疲れ眠りの浅し夜の長し
- 新潟県 じゃすみん
- 赤色燈囲む野次馬夜長かな
- 長き夜や老眼鏡を三個持つ
- 広辞苑の栞三本夜長かな
- 愛知県 新美達夫
- 山車組の会所に集ふ夜長かな
- 春樹派も周平党も夜長かな
- ありさうな都市伝説や夜長し
- 原案の異議無く通る夜長かな
- 愛媛県 加島一善
- テレビ見る夫婦無言の夜長かな
- 庭先に猫の目光る夜長かな
- 天井の木目の化ける夜長かな
- 星の数千まで数ふ夜長かな
- 駆け込みの女二人来夜長かな
- 神奈川県 三好康子
- 点鬼簿のほつれ繕ふ夜長かな
- 地図広げ指で旅する夜長かな
- ねもころに夫の耳掻く夜長かな
- 仮名書和紙前に墨磨る夜長かな
- 小半(こなから)の酒酌み交はす夜長かな
- 東京都 佐藤博重
- 子のメール羽田より来し夜長かな
- 長き夜や帰国せしとの子のメール
- 長き夜のテニス選手の朱き靴
- 大言海の父の書き込み読む夜長
- 帰国デッキよりメール着く夜長かな
- 東京都 中田ちこう
- 地震暴れ灯火戻らぬ夜長かな
- 埼玉県 岸保宏
- 塾の子のなお賑やかな夜長かな
- 薪積む犬の遠吠へ夜長かな
- 守衛所の灯り濃くなる夜長かな
- 北海道 飯沼勇一
- 夜長し夜長しかな夜長し
- 夜長し本閉じてまた本開く
- 避難所のブラックアウトの長き夜
- 母危篤夜行列車の長き夜
- 後悔の海へ漕ぎだす夜長かな
- 大阪府 山岡和子
- 夜の長し10年先を考えて
- 考えのどうどうめぐりして夜長
- 寝るは惜し俳句読まねばこの夜長
- 読書して夜長の夫婦向き合わず
- 東京都 山宮有為子
- 長き夜や 古いアルバム 出涸らし茶
- 長き夜や 障子に伸びる 桟の影
- 長き夜や 泣き寝する子の 髪なでて
- 岡山県 岸野洋介
- ああ夜長同じニュースを三度見る
- 妻逝きて吾に夜長のはじまれり
- 若者が酒肆を梯子の夜長かな
- 夜長とて家族それぞれ部屋籠り
- 水害の故郷思う夜長かな
- 千葉県 横井隆和
- ・長き夜の母のハミングミシンの音
- ・精読や夜長も速し茜窓
- 埼玉県 小玉拙郎
- 念入りに芯を尖らす夜長かな
- 酒やめて夜長を夜長と満喫す
- 長き夜を黒々と行く夜汽車かな
- 昭和史の付箋の数や長き夜
- 東京都 岩川容子
- 茶を淹れて読書三昧長き夜
- 失いし時を憶えり長き夜
- 長き夜無口な夫をもてあます
- 長き夜や電話の横に椅子ひとつ
- 京都府 山辺木綿子
- レコードの針新調す夜長かな
- 夜長なり筆先遊ぶ和紙の透け
- 妹の失恋ばなし夜長かな
- ブラジル 林とみ代
- ファドを聞く島の夜長を楽しめり
- 先駆者の功績称ふ夜長の灯
- 旅立ちの準備急かさる夜長かな
- 点滴を数ふ夜長の疎しけり
- 母と娘の旅の夜長を惜しみなく
- 千葉県 入部和夫
- 心地よく寝ぬ晩歳の夜長かな
- 神奈川県 皆空眞而
- 長き夜を愛の行き交うスマホかな
- 音遠し夜長の貨車が時刻む
- 墨薫る半紙五枚の夜長かな
- 活字浮き踊る夜長の冒険譚
- 千葉県 四葩
- 街の灯は遠し夜長の句に遊び
- 厨事仕舞ひてよりの夜長かな
- 漱石も太宰も遥か夜の長し
- 長き夜の夫婦異なる愛読書
- 手仕事のための夜長と思ひけり
- 埼玉県 櫻井俊治
- 書きて消す父母への手紙夜長の灯
- 三重県 平谷富之
- 介護士と苦楽を共にする夜長
- ヘルパーとクロスワードする夜長
- 神奈川県 白銀
- 夜長思い 月見の席で 寄席木細工
- 月夜なら 哀愁漂う 夜長かな
- 失墜の わが振り見ぬ 夜長なり
- 夜長にて 臆面一途な ススキの風
- 夜長で 中月の盆に 踊れ闇夜
- 神奈川県 ぐ
- 長き夜やMS-DOSのゲーム音
- 右は歯ぎしり左いびきの夜長かな
- 長き夜を片付け始め片付かず
- 地球儀の戦地をなぞる夜長かな
- アルバムをめくる匂ひの夜長かな
- 三重県 西井治男
- 眼が醒める夜長の一分一時間
- 足音も消えずに響く夜長かな
- 埼玉県 哲庵
- 長き夜や始末書何度も書き直し
- 車中泊雨の音聞く夜長かな
- 雨漏りの音絶え間なき夜長かな
- 読み聞かす絵本五冊目夜長し
- 通販の声甲高き夜長かな
- 東京都 遠山比々き
- エンディングノート見直す夜長かな
- 埼玉県 守田修治
- 印刷所音のこだまの夜長かな
- 先斗町奥の深さの夜長かな
- 天上の知人数える夜長かな
- 風呂道具さびしき音の夜長かな
- 煮詰まってジャム唄出す夜長かな
- 大阪府 椋本望生
- 長き夜のオペ行く末を待ち焦がれ
- 凹の字の字画を数ふ夜長かな
- ティッシュペーパーくつついて出る夜長
- 天井の沁みをなぞりて描く夜長
- 墓のことまたも持ち出す夜長かな
- 福岡県 多事
- 飲みたきは電気ぶどう酒夜長し
- 黒猫のやたら寄り来る夜長かな
- 貨物車の鼓動微少へ長き夜
- ランタンの小さき照顧や夜長し
- ゲシュタルト崩るるペン字長き夜
- 神奈川県 月野木 若菜
- 続編も夜長の椅子の傍らに
- ひとりでは持て余したる夜長かな
- けふのことけふ伝えたき夜長かな
- 思い立ちミルクジャム練る夜長かな
- 歳時記の季語から季語へ飛ぶ夜長
- 千葉県 みやこまる
- 窓ひらく月の色した夜長かな
- 兵庫県 ぐずみ
- さきのことおもふてみたる夜長かな
- 危な絵を秘蔵の閨や夜長の灯
- 長き夜や歯磨き終えて金平糖
- 平成の起伏を辿る夜や長し
- 語り部の背中にケロイド夜の長し
- 千葉県 堀川真里
- ようやくに生家閉じ終え夜長かな
- 麺麭種を寝かせ無為なる夜長かな
- 長き夜の眼鏡の螺子の緩みけり
- 埼玉県 彩楓(さいふう)
- それぞれの部屋に籠れる夜長かな
- 探偵の崖に謎解く夜長かな
- 離れ住む友に手紙を書く夜長
- 東京都 豊島 仁
- 友帰りマーラーを聴く夜長かな
- 天に地に阿鼻叫喚の夜長かな
- 黒鯛のあたり遠のく夜長かな
- 茶柱に仲人受ける夜長かな
- ポワロさん謎は深まる夜長かな
- 京都府 中村 万年青
- 街灯の仄かに灯る夜長かな
- 長き夜の庭の楽隊宴たけ
- 古里の友垣恋ふる夜長かな
- 東京都 飯田 哲司
- 世直しや夜長を楯に江戸壊す
- 今何時聞いて驚ろく夜長かな
- 七つだち夜明け目覚めぬ夜長かな
- 神奈川県 髙梨 裕
- 長き夜の居間のエプロン無言なり
- 長き労酒と語るる夜長かな
- ひつそりと暮らす母いる夜長かな
- 夜長ならシナトラでいいマイウェイ
- 長き夜の静寂に写経する時間