俳句庵

4月『「桜」・「花」』全応募作品

(敬称略)

東京都     安西信之
花時の窓辺したしき松葉杖
枡酒にベンチを探す夜の桜
里桜登城の如き人出かな
花筏よその敷物渡り来し
花筏石持つ子供咎めけり
東京都     伊藤はな
普段着も咲けば華やぐ桜かな
絵のやうな文字に墨の香花便り
木の椅子を置いて桜の風の中
観音を映す水面や初桜
五部咲きの今朝の桜や観音寺
千葉県     伊藤順女
象の鼻ぶらりと桜吹雪かな
散りそめし花の朝やかふぇおーれ
満開を待たずに花の散りそめり
チェーホフの桜の園も売られけり
太き根を歩道に延べて老桜
千葉県     伊藤博康
見事でも土手の桜の伐られけり
充分に桜観ずして過ぎにけり
山中の天地覆ふ桜かな
クラスの名開く桜に同化せり
一弁に重さ湛ふる桜かな
神奈川県     井手浩堂
実朝の海を眼下に山桜
対岸のさくら母校の桜なる
段葛白一線に桜かな
玄関の靴と草履に花疲れ
その先に妻の故郷花の雲
東京都     右田俊郎
撫で牛の鼻のつめたさ花の冷え
ふくらめる花の蕾を子がつつく
しかと手をつなぐふたりに花吹雪
吹く風に変幻自在花筏
あと幾度花愛づるをば許さるや
神奈川県     志保川有
満開の桜を前に身震ひが
桜に見入るあれは福島の人
満開の櫻に蚜虫萬
吉野散り満を持したる八重桜
端正な梅を気にせる桜かなーー季重
千葉県     風泉
・舞いに舞う桜吹雪と散れよとは
・ひとひらはなみだのいろやはなあかり
・風のよを耐えて朝日の桜かな
富山県     岡野みつる
ほっこりと咲いた梅花になごり雪
ふるさとの桜を胸に門出かな
夜桜を照らす灯りの恋路なり
愛媛県     加島一善
花の香や衿ぬく芸妓の艶やかさ
白砂に浮ぶ左近の桜かな
花の奥城の石垣崩れをり
鈴の音に桜ひとひら散りにけり
震災地宇宙帰りの桜咲く
富山県     加能雅臣
桜花盲導犬の息づかい
神奈川県     海野優
花を見て花に酔ひたるにはあらず
サクラサクあふれる五音の歓喜かな
兵庫県     岸下庄二
廃校の日まで一年桜咲く
手庇で桜見上ぐる車椅子
堀巡る舟より仰ぐ桜かな
桜咲く伝ひ歩きの一歩二歩
出稼ぎの父を迎える山桜
東京都     岩崎美範
病床の友にと手折る桜かな
淡墨てふその名ゆかしき桜かな
色薄き流人の島の桜かな
業平の和歌をタオルに花の宿
被災地の土手にほのかな花明り
東京都     岩川容子
なまぬるき風に開花の兆しあり
転地よりひとあし早き花便り
桜咲く栄転通知届きけり
墨田川桜の中を流れけり
神奈川県     亀山酔田
もう来ない花便りなり訃報読む
里桜南側へと席を取り
墨堤は風遊ばせて花盛
この土地はまだ冷たかり嶺桜
機首を下げ花の国へと突き進む
茨城県     風峰
ドア閉まるバスに飛び込む花ひとつ
さくらちるちるちるさくらちるうえに
息せき切って浪士駆け込む花の門
ことごとく地球のおもて花吹雪
眼裏を散るみちのくの桜かな
埼玉県     いまいやすのり
鳥も来て人も揃うて桜時
跳び箱に吹き寄せられて桜舞ふ
ゆつたりと鯉の泳ぎに桜咲く
岐阜県     ときめき人
山桜麒麟駈けたる城跡ぞ
戦国の山城険し山桜
飛騨護る円空仏や山桜
東京都     吉田悠二郎
燭の間の衣桁に重し花衣
妻逝くや椅子にふりつむ桜蕊
ちかしきはみな仏にて花の蔭
日暮はや散る花に背を押されつつ
まほろばや空いちめんの初桜
神奈川県     みぃすてぃ
ひらひらりきらきらきらり花の舞
桜舞う男滝女滝や稲荷堂
花満ちて空は欠片になりにけり
とおせんぼ花びらひとつランドセル
黒髪に落花ひとひら月の夜
千葉県     玉井令子
囲ひから根のはみ出たる桜かな
困難に負けるな日本滝桜
五稜郭桜縁取る星の型
さくらちゃん名簿に多きクラスかな
武家屋敷枝垂桜の似合ふこと
ブラジル     玉田千代美
桜道人の心も失せしかな
桜咲く悲しき出来事世界中
新潟県     近藤博
夜桜や灯火明るし遊園地
床に臥し夜桜一句ひねりけり
夕桜湯面にしなだる野天風呂
花咲爺夢にも出でし幼年期
出陣し桜と散りし学徒兵
岐阜県     金子加行
散りぎはも人に惜しまる桜かな
揃ひ咲く息の構へや山桜
一本の桜の村に客溢れ
桜観る余裕の欲しき男かな
幾本の支柱の桜要介護
神奈川県     原川篤子
樹下に入れば鳥籠めくや糸桜
水奔り筏になれぬ桜かな
絵硝子に花咲かせども落花舞ふ
乗り継ぎて鄙の桜に会ひに行く
心の襞伸ばしさくらにあひま見ゆ
埼玉県     吉野 静
世の中の平和願ふや桜咲く
花吹雪なかに溶けゆく三輪車
花吹雪きりんゆつくり立ちあがる
移りゆく静かな時間桜散る
笑ひ声あふるる窓の花の昼
三重県     後藤允孝
花篝その奥にある侘びと寂
夜桜を見に行く化粧待たさるる
川面には離合集散花の塵
人知れぬ樹齢重ねし大桜
五六輪標本木の花開く
兵庫県     高市敦之
何事も 無きかのごとく 咲く桜
お早うの 黄色い帽子に 舞う桜
肩寄せて 海に流れる 桜かな
語りかけ 無言の花を 眺めたる
黄昏の 花の香の道 足早に
神奈川県     佐々木 僥祉
講堂のピアノに歌う三月
髪切りて三月の陽よ吹く風よ
三月の水撥ね散らす銀の魚
三月の土に熱あり芽を伸ばす
彼方なりあの三月の紺袴
愛媛県     佐藤めぐみ
誰が植えし桜見上る翁かな
桜散る夜明けや母の一周忌
初花を透かして見ゆる故郷(さと)の島
又明日元気に生きよ桜花
北国の花の蕾の尖りたる
岡山県     佐藤邦夫
さみしいね花の回廊よんでいる
風誘う土手を彩るはないかだ
愛媛県     砂山恵子
西行も和歌も知らねど夕桜
ぽつねんと古びし歌碑や山桜
泊まる先いまだ決まらず花篝
花便り外出許可に名を書きて
どこ見ても花の吉野の無人駅
兵庫県     はなちる
カフェテラス囁やくように桜散る
桜雨傘の雫の匂ひかな
散りゆきて校舎は染まる夕桜
母と吾と包まれ花の記憶かな
幽玄の闇に紛れて桜散る
東京都     勢田清
桜活けて迎える妻の若々し
西行の奥千本は未だ蕾
花の下中国娘寝てポーズ
彼岸桜咲いて優しき庭となり
初桜澄みし朝日の射す中に
東京都     笹木弘
生と死の隣合はせに散る桜
花びらが白毫となる額かな
大仏の背を少し開け花の昼
桜咲き一年前を思ひ出す
静かなる闇夜に花の息づかひ
神奈川県     三好康子
狂ほしき古木の飛花や墓の闇
川沿ひの桜堤に途中下車
さゆるぎのすはゑの一枝はつざくら
城跡の濠にしだるる夕桜
朝日子の遊ぶ小枝や初桜
山口県     山縣敏夫
半世紀前ウナ電にサクラ咲く
反り橋を渡る袂に朝桜
愛犬の両眼に映える花筏
公園の枝垂れ桜に犬吠える
山間の桜を愛でつ野辺送り
福岡県     紙田幻草
初花をあまねくつつむ日差しかな
島根県     寺津豪佐
広縁を走る仔犬や花万朶
宿一つ借り切った朝花疲れ
花篝我身の鬼を炙り出す
燭の火で渡る廊下や花の宿
湊から駅へ行く坂花の宵
大阪府     室谷早霞
兄弟の跳んでつかんで花吹雪
刈り上げし青き頸や朝桜
異人館ライスシャワーと花吹雪
ままごとの茣蓙へ桜の舞ひ落ちて
鳥羽の海彼方こなたに花の雲
兵庫県     篠原唯夫
サクソフォーンに震える外気花の雨
花飛雨の明けし眼下の大阪湾
珍味佳肴揃え初仕事の花見
夜桜やたばこくゆらす芦屋川
縁側の端に一ひらの花びら
神奈川県     守安雄介
桜散る学食カレー始まりぬ
ビル越えの風花なりや桜散る
太幹のアートネイルや三花咲く
静かなる花見もよろし新コロナ
校庭の語り部桜白寿なり
埼玉県     守田修治
また今年猫の額に桜咲く
引越しを見送るような桜かな
夜通しの雨憎からず桜かな
禅寺の奥に桜も咲にけり
桜咲く静かに笑う隅田川
神奈川県     松野勉
荒れ朽ちし空き家の裏手桜咲く
人に媚びず深山桜の眩さよ
奈良県     上田秋霜
吉野より戻り 三日の花疲れ
吉野より めざす大峰 朝ざくら
吉野駅 三万本の 花の底
夕桜 やはり吉野に 泊まるべし
吉野建 上戸も下戸も 花に酔ふ
静岡県     城内幸江
風は風桜は桜人は人
夕暮れの近づいている夕桜
夕桜呼吸は浅くなりにけり
風の夜に身を任せたる桜かな
ぐっちゃりと枝につかまる桜かな
大阪府     森 佳月
君一途干支一巡の桜かな
雨音に過去偲びをり花の塵
ジョギングや出合頭の初桜
散る桜俗世つかの間覗き見て
散る桜ひとひら妻の髪を恋ふ
福岡県     深町明
初桜鉱山(ヤマ)変はらざる閉山後
朝倉の翁の語る桜かな
密談の庵に枝垂桜かな
大いなる鉱山(ヤマ)の桜にかくれんぼ
見てゐると縞になるなり花筏
神奈川県     杉山太郎
張り付きし桜のままの車窓かな
愛知県     正木羽後子
花冷えや隅田をくだる屋形舟
階を登る吉野の山桜
花冷えや上野の磴の似顔絵師
山桜村は湖底となりにけり
弟も声変はりして花は葉に
三重県     西井治男
桜咲く我の人生いまいずこ
浪速場所桜も四股も奥深し
福岡県     西山勝男
巡礼にほんの一時花見かな
西国をめぐる門出に朝桜
宿願の札所打ち終ふ花の冷
観音の慈顔うるはし花明り
みそなはす初瀬の観音花の雲
埼玉県     水夢
牛舎から何やら匂ふ初桜
校門につげる別れや桜坂
青空へ蛇行する道山ざくら
地の冷えや風のかたちの糸桜
風すこし雨を呼び込む糸桜
宮城県     zazi
桜植う皇紀二千六百年
人を呑む災禍桜の根元まで
山峡の桜小径に果てはなし
百文の山にも桜吹雪かな
五分咲きの桜の夜半のメイドカフェ
千葉県     いなだはまち
へぼ将棋くははる吾も花の人
散りいそぐ花や雌蕊はしたがはず
満開になるまで嬉し桜花
靖国の散るを休らふ桜かな
夜桜やベテルギウスよお前もか
東京都     石井真由美
始発駅ホームの曝す花の冷え
昨夜の雨淀みに浮かぶ花筏
明後日は関東越への花便り
髪切つてマチネのパール桜まじ
つらつらと友の三枚花の事
東京都     石川昇
行く末を案じながらも今日の花
ダム底に眠る学び舎山桜
埼玉県     彩楓(さいふう)
山裾を廻る桜や風甘し
一ピースたりないパズルうららけし
夕空はうすむらさきに初桜
神奈川県     川島欣也
防災の植樹根を張る櫻かな
マスコミの眼集める初桜
露座仏の全身まとふ花吹雪
花片ひらひら車椅子の膝に
夜遊びや夜桜見るを口実に
栃木県     鹿沼 湖
笙の音のひびく社や初桜
桜ちるとてもきれいな水だから
桜さくら謳へよ散りいそぐなよ
夜桜や球場に五基の照明
眼科医の指の白さや若桜
大阪府     佳代
病室の母と見上げた桜かな
病室の友へと届く花便り
夕焼けや主なき庭に桜舞う
神奈川県     皆空亭
妻の名に「桜」一字を贈りたし
老婆見ゆ桜大樹の花影に
晴れ曇り雨も風情の花の刻
東京都     大津武彦
朝開き紅一日仏桑花
静岡県     大澤定男
それとなく思いの人と花見呉座
戦友や桜ひと枝父の墓
花吹雪尽きぬ名残の夜舟かな
黒潮へ浦島太郎花筏
花吹雪肩車などして孫に
奈良県     平松 洋子
惜しげ無く散らすばかりの桜かな
ハミングは瀬戸の花嫁桜咲く
この国に生まれて嬉し桜咲く
埼玉県     哲庵
花見バス走るや帰還困難地
十人に十色の酒と桜かな
花吹雪大手を抜けて搦め手へ
桜花片追ってくるくる一輪車
異国語の四方に湧きたつ花見かな
東京都     中田ちこう
言問の花に沈めり空襲碑
アリの街ともしび消えし花の闇
徳島県     白井百合子
ポストから微かな香り花便り
あと十日満開になる桜かな
花の雨半字がかりの墨の色
桜湯や彼の隣でかしこまる
花便り待ってみようかもう一年
東京都     長岡馨子
歳時記に開きぐせ緋の庭桜
千葉県     長谷川ぺぐ
あどけなき花盗人の母のゐて
大阪府     津田明美
四方の風落花いつしか幻花かな
夜の桜息づく闇の白さかな
真っ白なブラックホールさくらさくら
桜東風何か見てゐて見てをらず
ふりかへりふりかへり行く花浄土
神奈川県     塚本治彦
夜桜の梢の先の真の闇
初桜朝礼台に赴任の辞
花疲れ片手突きたる横座り
陸奥の北の果てなる遅桜
青空に意志あるごとく飛花落花
岐阜県     雅風
公達の愛でたる御所の桜かな
こころざし胸に上京朝桜
病む身とてこれをかぎりの桜かな
ぼんぼりの明かりはんなり花の道
幸せと歓喜のるつぼ花吹雪
京都府     田端敏弘
短冊に去年の投句花の径
桜花お顔も知らぬ御本尊
山桜我家と歳を重ねけり
桜花レリーズの待つ淀の風
桜花母国の暮し聞くシート
千葉県     よひら
晩婚の娘の項花あかり
風触れし処よりかな花三分
老犬に歩みを合はせ初桜
栃木県     渡邉純子
桜めで桜愛した夫の逝き
花埃夢のごとくに逝かれけり
五分咲きの桜もいいね夫のいふ
桜湯の余韻そのまま宮参り
リヤカーのシルバーマーク桜咲く
大阪府     藤田康子
老木の花見事なる忠魂碑
そらおほふうすべにの香や花万朶
東京都     内藤羊皐
共食の神も浴びたる桜かな
夕桜孫へ購ふパンケーキ
幽霊譚遺せし館桜咲く
夜桜や瓢箪池に臭き澱
パレットへ桜の翳を扱き混ぜる
千葉県     入部和夫
大空を透かして光る朝桜
朝明けの雨に散り敷く桜かな
真直ぐに背筋伸ばして花の道
双眼にしかと刻まむ桜かな
今日の日を一途に生きて夕桜
北海道     飯沼勇一
老骨に鞭打つ桜数百輪
武士の見上げし桜吾子見上ぐ
震災の海静か今日桜咲く
花曇り音楽室のトロンボーン
本返し桜の下で別れけり
埼玉県     飯塚璋
花吹雪出前のバイク突っ走る
老犬に留守を任せて花の宴
東京都     尾田 一郎
桜花まどろみ破る風の音
初桜雲吹き散らす強き風
花と葉と遠目にしかと山桜
花近し公園の木々なほ蕭々
花開く自粛をよそに時移る
千葉県     柊二
海鳥や渚を越へて桜ライン
三重県     平谷富之
近辺の川面に映へる桜かな
何よりも長寿の秘訣花見かな
小川から流れは海へ花筏
千葉県     峰崎成規
墨東の堀縦横に花の雨
視線浴びひと日頬染む初桜
酒ありて鈍行ありて花の旅
大川の河口で解く花筏
花冷やひとりが集ふ映画館
三重県     北村英子
松阪の城跡を行く花の雲
花疲れ佐藤健に返信す
告げられし病の祈り花篝
初花や臨死体験したる母
ちょつとだけ年上らしく花衣
奈良県     堀ノ内和夫
災害に耐へ忍ぶ国櫻花
君逝けば君の分まで花の旅
愛知県     木下澄枝
ゆくりなく日差しととのひ初桜
けふあたり母の来さうな花の昼
ジョギングの足をとどめて朝桜
をりからの雨に叩かれ花盛り
満開のさくらに負けぬ青い空
長野県     木原登
蝶もろとも川越す桜吹雪かな
爛漫の花に雪ふる薄月夜
分校は花の雲中千曲川
巡礼桜今年も咲いてくれにけり
雨しづか人をしづかに花の山
大阪府     木山満
みよし野や花二度訪うに足りもせず
河津桜約束のまま夫逝けり
八重桜恵みの雨の重たくて
神奈川県     矢神輝昭
悪疫に花は咲けども遠見かな
花を待つ急かるる動悸如何にせん
恍惚や現世にあらず花の中
満開の桜に人の声漏れて
桜みて上気の弾み梯子酒
山口県     ひろ子
春一番吹けどコロナの居候
桜咲く入学式も中止かな
神奈川県     龍野ひろし
万葉の夢や神代桜咲く
咲き満ちて櫓を隠す桜かな
丸髷に花かんざしや桜どき
散る花や園児は空に両手上げ
ブラジル     林とみ代
郷愁を癒してくるる桜かな
花の宴禁じられたる世相かな
移民等の心の糧や桜咲く
通りゃんせ桜並木に迎えられ
外つ国に敬意表さる桜かな
宮城県     林田正光
思い出を追いかけて咲く桜かな
入籍の朝の桜を見てをりぬ
満開の桜の奥の桜蕊
喪帰りの肩のあたりに花の雨
あの世でもきっと咲いてる桜かな
兵庫県     髙見 正樹
行く人が翳すケータイ撮る桜
京都府     中村 万年青
どの花もほほえんでいる真昼時
鼻の道押し流されし通り抜け
花びらの風と語らひ落花かな
東京都     豊島 仁
赤門の花は咲くやら散るのやら
みちのくへとどけ桜の鎮魂歌
咲く美学散りて浪漫の桜かな
校庭の桜吹雪に遊子なし
帆を上げしこぼれ落ちたる桜かな
神奈川県     髙梨裕
花の世の拾ふ子の骨小さけり
送別の宴に灯る桜かな
ふるさとの桜や母はひとり農
咲き満ちる桜連れ来る去年の妻
ウイルスの空さくら色して花曇