俳句庵

季題 6月「入梅」

  • ウイルスと闘ふ地球梅雨に入る
  • 山梨県     天野 昭正 様
  • 大仏の鎧ふ緑青梅雨に入る
  • 広島県     永野 昌人 様
  • りんの音のかすかに湿る梅雨入りかな
  • 長野県     岩井 馨子 様
  • 髪型をさっぱりとして梅雨に入る
  • ブラジル     林 とみ代 様
選者詠
  • 鶏の眸の浅黄にくもる梅雨入りかな
  • 安立 公彦

安立 公彦 先生 コメント

 六月の題は「入梅」です。歳時記では、「入梅」は時候、「梅雨」は天文の部に載っています。梅雨の期間を歳時記はほぼ一か月と記していますが、辞書には、「六月上旬から七月中旬にかけて、日本、朝鮮半島南部、長江流域地方に起こる雨季、またその時期の雨」とあります。「梅雨」と聞くと、何となく鬱陶しい気分になりますが、この季節は、草木、穀物類にとって、大事な成長期です。
 優秀賞の天野昭正さんの句。正にその通りです。新型コロナウイルス病の蔓延は全世界に及び、加えてその地球の中の日本列島は、「梅雨」に入り、連日の雨とも闘う日々です。 梅雨が明けると盛夏に入ります。一日も早い疫病の終熄を願うばかりです。
 永野昌人さんの句。「鎧ふ」は甲冑をつけて武装することですが、この場合は、長谷の大仏の風姿を思い出します。金銅の阿弥陀仏如来坐像、鋳造で、「鎧ふ緑青」に、その歳月が偲ばれます。折からの梅雨の中、露坐の大仏の、悠然とした風姿が浮かんで来ます。「鎧ふ緑青」の表現がみごとです。
 岩井馨子さんの句。この鈴(りん)は、ベルの類ではなく、鈴(れい)とも呼ばれる仏具かと思います。原句は「りんの音の」でしたが、右に記した言葉から、「鈴」と書きました。「かすかに湿る」が善い表現です。微妙な音色を善く現しています。「梅雨入り」の感じが「湿る」に宿っています。
 林とみ代さんの句。最近は女性の髪形が長くなっているように感じられます。この句はそういう長髪でなく、「さっぱりとして」ですから、紙を切り揃えるという思いかと受け取られます。同時に、「さっぱりとして」には、髪型のみでなく、さわやかに、清潔にして、という心の働きも感じられて来ます。潔い句です。
 今月の佳句。<公園の木々も木馬も梅雨に入る 井手浩堂>。<梅雨入りを女予報士笑みて告ぐ 加藤峰子>。<街商の空を見上ぐる梅雨入かな 岩崎美範>。<隣家より調律の音梅雨に入る 新美達夫>。佳く表現された作品です。

◎ 優秀賞、入賞に選ばれた方には、山本海苔店より粗品を進呈いたします。