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- 俳句庵 2020年10月 作品一覧
俳句庵
10月『残る虫』全応募作品
(敬称略)
- 宮城県 zazi
- 昼の虫光届かぬ屋敷神
- 虫のなく忍者の潜む奥の庭
- 児等去って子供農園虫時雨
- 虫時雨遠く届いて雨あがる
- 喧騒の出口の見えぬ虫の闇
- 愛媛県 アリマノミコ
- リモートの仕事にも慣れ残る虫
- 千葉県 いなだはまち
- のこる虫のこれぬ虫の明日をなく
- 名曲の余韻の中に残る虫
- 終電の一駅遠く残る虫
- 残る虫年賀欠礼状届く
- 埼玉県 いまいやすのり
- 残る虫終電あとの高架下
- 残る虫厠の窓に里ごころ
- 闇降りて磴を下れば残る虫
- 残る虫為すべき事を忘れゐる
- 切株のあえかな声や残る虫
- 福岡県 すがりとおる
- 袖を引くたつきのゆふべすがれ虫
- どの部屋も花の名に負ふすがれ虫
- 手刀で受く勝名乗りすがれ虫
- すがれ虫奏づるヨイトマケの唄
- トンバイ塀の色だんだらにすがれ虫
- 岐阜県 ときめき人
- 地歌舞伎の仕上げ稽古や残る虫
- 兵庫県 はなちる
- 妣の空の木箱に残る虫
- 残る虫いつかはわかる小さき嘘
- 残る虫猫の影行く散歩道
- 山口県 ひろ子
- 友人の訃報憂うや虫の声
- 濡れ縁に耳をすませば残る虫
- 香り蒸すおしろいばなやちちろ聞く
- 神奈川県 みぃすてぃ
- 残る虫母もひとつの星となり
- 虫鳴くや基地で一晩初電車
- 東京都 よしだ悠
- 人生は長生き勝負のこる虫
- 長生きもほどほどにせい残る虫
- 残る虫ワイングラスの縁に酔ふ
- われゆかばおまえはひとり残る虫
- われを喚ぶ末期の母や残る虫
- 神奈川県 安藤真青
- 残る虫棟の灯見ゆる帰り道
- 斫りの音の止んだベランダ残る虫
- 東京都 伊藤訓花
- 残る虫我とも思ふ夕べかな
- 夫と飲むワインの隣残る虫
- 病みといふ闇の深さや残る虫
- 天上の母と聴き入る残る虫
- 残る虫厨の窓を恋しがり
- 千葉県 伊藤順女
- 残る虫夜半に別れを告げにくる
- 残る虫別れとなると愛おしく
- 残る虫おはようと鳴く小さき声
- 神奈川県 井手浩堂
- 残る虫先師の句碑の裏あたり
- 残る虫故郷の土間の広きかな
- 猫も聴くかそけき声や残る虫
- コンサート終えたる広場残る虫
- 徳島県 井内胡桃
- 本堂へ長き石段残る虫
- 残る虫院の廊下の広すぎて
- 研ぐ米の白き流れや残る虫
- 一筋の声の力よ残る虫
- 花殻を摘む庭の隅残る虫
- 大阪府 佳代
- 残る虫母と繋いだいつも道
- 喜寿の姉共に元気に残る虫
- 残る虫次年をじっと待つ田畑
- エコバッグマスクとコーデ残る虫
- 埼玉県 釜田眞吾
- 窓際にぽつねんとゐて縋れ虫
- 耳の奥静寂の声か残る虫
- 残る虫明日は残れぬかも知れず
- 残る虫声擦りきれるまで全うす
- 土壁にひび割れのきて残る虫
- 神奈川県 亀山酔田
- 小雨降る暮れ方なれど残る虫
- 残る虫鳴く都会をば辞するとす
- 残る虫厨の酒をよくくすね
- 残る虫遊具が揺れているようだ
- 残る虫天下国家を憂へる眼
- 岐阜県 金子加行
- 疲れ切る声もあるかに残る虫
- 残る虫手入れ怠る庭の草
- 残る虫聴きつつ母の逝きし夜や
- 地の揺るる前に鳴き止む残る虫
- ホスピスの母のいのちや残る虫
- 神奈川県 志保川有
- もはや義は色褪せにあせ残る虫
- 残る虫会話ちぐはぐ老夫婦
- 隣室の尿瓶ちろちろ残る虫
- 残る虫ひと鳴きごとに闇の濃く
- 残る虫「城崎にて」を繙ける
- 栃木県 鹿沼 湖
- 残る虫風呂の灯りのゆらめけり
- 独唱のしんみりと夕残る虫
- 大阪府 森 佳月
- 焚口に後悔くべて残る虫
- 京都から異邦人消え残る虫
- 飛火野に鹿居らずして残る虫
- 大過なく過ごして古希や残る虫
- 残る虫認知の妻と縁に居り
- 埼玉県 水夢
- むらさきに明けゆく筑波残る虫
- 古寺の軋む廊下に残る虫
- 巡回のバスを待つ間や残る虫
- 残る虫湯殿に響く桶の音
- 鎮まりし坂東太郎残る虫
- 東京都 勢田清
- 残る虫小さき草むら声ばかり
- 日も暮れて残る虫の音頼りなき
- 残る虫鳴き続け居り昼の庭
- 残る虫立ち止まりても鳴き止まず
- 残る虫空き地の草の疎らなる
- 大阪府 石原由女
- おおいなるものの過ぎゆき残る虫
- 残る虫子の追ふ声にかき消され
- のこる虫こゑつぐやうにつぎつぎと
- 埼玉県 石塚彩楓
- 川岸に積み上ぐ土嚢残る虫
- 残る虫なかなか開かぬ壜の蓋
- 離れ住む友への手紙残る虫
- 残る虫郵便受けに回覧板
- 念仏の長き葬列残る虫
- 埼玉県 川越のしょび
- 何処からか繰りて耳奥残る虫
- 突然の訃報を耳に残る虫
- 畦道といふ花道に残る虫
- 残る虫翅の湿り気重き闇
- 残る虫らしく暮らして井戸の隅
- 東京都 足立智美
- 公園に昼の昏さや残る虫
- 音のせぬラジオに残る虫のをり
- 香川県 辰野
- 点滴の滴下数えて残る虫
- 残る虫自問自答のウォーキング
- 五袋の庭の草捨て残る虫
- 点滴の滴下に見入る残る虫
- 東京都 中田ちこう
- 残る虫オラショの中の風の音
- 残る虫ホットケーキの卵割る
- 神奈川県 猪狩仙次郎
- 雨音や草にかくれて残る虫
- 思ひ出す旅寝の枕残る虫
- 酔ひざめの耳に近きや残る虫
- 残る虫またも振りだす夜半の雨
- 志ん朝を聴いて眠るや残る虫
- 千葉県 長谷川ぺぐ
- 残る虫親父バンドのどさ回り
- 千葉県 鳥越 暁
- 残る虫今宵の共に手酌酒
- 廃校の木立の風や残る虫
- 祖母見舞ふ実家の土間に残る虫
- 井戸端の終はりを告ぐる残る虫
- でしゃばらずただ一哭きの残る虫
- 埼玉県 哲庵
- すがれ虫癌病棟の闇深し
- すがれ虫進級会議深夜まで
- 閉館の老舗旅館や残る虫
- またしても感染の報すがれ虫
- 残る虫電池の切れし電子辞書
- 千葉県 渡邉竹庵
- 残る虫掩体豪の崩れ落つ
- 漆喰の蔵ひび割れて残る虫
- 東京都 内藤羊皐
- 残る虫座敷牢跡と聞きたれば
- 残る虫義母の年忌を数へる夜
- 残る虫月待台の影延びて
- 水抜きし瓢箪池に残る虫
- 幼児いま反抗期なり残る虫
- 徳島県 白井百合子
- 束の間の音色聞かせる残る虫
- 避難所やバケツの底に残る虫
- 病窓を覗く気配の残る虫
- 身を隠す菩薩の足に残る虫
- 残る虫杖を支えに退院す
- 東京都 尾田 一郎
- 残る虫人事苛烈な新首相
- 色づきし金柑甘し残る虫
- 墓じまいしせし日の寒さ残る虫
- 残る虫風に街路樹ただ一葉
- 残る虫落ち葉静かに澄ます耳
- 千葉県 柊二
- 残る虫墓標の影のU字溝
- 北海道 風花美絵
- 残る虫隠れ家探す通学路
- 残る虫あと一品で店じまい
- 残る虫電池マークがあと一つ
- 残る虫ぼんやりながむ庭箒
- テレワーク回線飛ぶよすがれ虫
- 千葉県 風泉
- ・末枯れ虫を避けて打ち出すラフの球
- ・住めぬ家の土間に日暮れて残る虫
- ・老いの身を厭え厭えと末枯れ虫
- 茨城県 風峰
- ゐなくともゐても寂しき残る虫
- 取りの唄響く劇場残る虫
- 残る虫加齢ですよとクリニック
- 残る虫ゴーシュのやうにセロを弾く
- 一時半カラオケ百曲残る虫
- 奈良県 平松洋子
- 残る虫夜更けの庭の部屋明かり
- 人よりも寂しく鳴くや残る虫
- 月光に身を晒されし残る虫
- 福島県 弥生日菜子
- 残る虫お前も此処が死に処
- 残る虫ここはフクシマ生き残れ
- 残る虫歯ぎしりと聞く暁闇に
- 愛媛県 砂山恵子
- この土地に生きよ生きよと残る虫
- 侘び寂びも和歌も知らねど残る虫
- パソコンは異教の世界残る虫
- 残る虫宇宙のはじめ語ろうか
- 残る虫長き夜勤の始まりぬ
- 兵庫県 岸下庄二
- 白壁の古き酒蔵残る虫
- 夕暮れを待ちて鳴き出す残る虫
- 残る虫一夜限りの村歌舞伎
- 残る虫産土神の古鳥居
- 残る虫今は使はぬ登り窯
- 愛知県 岩田勇
- 酔い醒めに風呂に浸れば残る虫
- 敗将の小さき塚や残る虫
- この辺り不破の関跡残る虫
- 奈良県 堀ノ内和夫
- 宮跡の礎石の上に残る虫
- 新潟県 近藤博
- 盛り過ぎか細く鳴ける残る虫
- 死に際の鳴き声哀れ残る虫
- 残る虫一匹捕らえ虫籠に
- 夜を追い鳴き声かそけし残る虫
- 生き残り鳴き声哀れ残る虫
- 埼玉県 飯塚璋
- 真夜中に水飲む厨残る虫
- 残る虫銀座の路地に灯が揺れて
- 牧草の束にまぎれて残る虫
- 神奈川県 芳賀順一
- 振り向けばみな消え去りて残り虫
- 熱燗やひとりことこと残り虫
- 新調のズボンがゆるむ残り虫
- 大阪府 木山満
- 残る虫一人の夜を抱き締めり
- 残る虫添い寝の母は「お先です」
- 残る虫互いに秋をおしみけり
- 独り夜をふわり抱きしむ残る虫
- 独り寝や励ましと聞く残る虫
- 長野県 木原登
- 腰痛に膝痛われも残る虫
- るりりりと日向日向に残る虫
- 閉ざされし牧にひた鳴く残る虫
- わが部屋に残る声出す残る虫
- さびしさは化石流木残る虫
- ブラジル 林とみ代
- 産土の縁遠退く残る虫
- 残る虫子孫繁栄見届けぬ
- 来し方に悔いのあらずや残る虫
- 人並に生きる幸せ残る虫
- 残る虫思ひのままに生きしかな
- 栃木県 垣内孝雄
- 夕暮れて家路半ばや残る虫
- 残る虫老いて俳句を詠みにけり
- 残る虫空地ばかりの分譲地
- をちこちに窓の灯や残る虫
- 残る虫句集開ける文机
- 東京都 岩崎美範
- 残る虫猫の温みに癒さるる
- ぬる燗の恋しき夜半や残る虫
- 残る虫ビルの谷間の首塚に
- 残る虫薄き命の限り鳴く
- 粗挽きのモカの酸味や残る虫
- 大阪府 太田省三
- 月末の退職願残る虫
- 虫すがれハミングだけのコーラス部
- 刈入を明日に控えて残る虫
- 予報士の明日は晴天残る虫
- 真夜中に危篤の電話残る虫
- 千葉県 玉井令子
- 雨音にかき消されたり残る虫
- 山荘の野天にひとり残る虫
- 子ら帰り広場は残る虫のもの
- 心地よき眠りの中へ残る虫
- 英単語暗唱しをり残る虫
- 神奈川県 山田知明
- 残る虫マンション囲む一軒家
- 残る虫昭和生れのラジオかな
- すり切れたカセットテープ残る虫
- レコードの針の飛びたる残る虫
- 中古のカセットデッキ残る虫
- 茨城県 長洲研志
- ひとしれず静寂に住む残る虫
- 探せども向きもわからず残る虫
- 目標は二年越しかな残る虫
- 雨戸しめかすかに気づく残る虫
- いまだけはただ耐えるのみ残る虫
- 埼玉県 北川清
- 月冴えて 眠れぬ夜の 残る虫
- 路地裏で 足を止めると 残る虫
- 残る虫 孫と虫の音 名前あて
- 病める妻 床に寝かせて 残る虫
- 老いてきて 残る虫の音 共感す
- 山口県 山縣敏夫
- 残る虫頑張れど声細くなり
- 千年の都大路に残る虫
- 七十四あとどれくらい残る虫
- 友人の逝きし日残る虫の声
- 吟ずれば早くしろよと残る虫
- 群馬県 堀越浩子
- 蟋蟀の鳴き声消えぬ秋の暮
- 夢に入る残る虫さへ鳴きやみぬ
- 母逝きし夜にか細くちちろ鳴く
- やがて止む蟋蟀の声秋深む
- 残る虫どこかでなほも鳴きとほす
- 大阪府 藤田康子
- わづかなる草むらに棲む残る虫
- 残る虫置いてきぼり食つた者同士
- 兵庫県 岸野孝彦
- 残る虫伊東静雄の詩碑辺り
- 残る虫森の命や夕茜
- キャンパスに人は還らず残る虫
- 残る虫黄昏の棚田に響く
- 非力なる我を励ます残る虫
- 東京都 鈴木はる美
- 残る虫温泉宿の湯のまろし
- 残る虫ブロック塀の薄暗がり
- 曲り家の幽けき灯り残る虫
- 千葉県 伊藤博康
- 残る虫デクレッシェンドとなりにけり
- 残る虫居残り組は僅かなり
- 凪なれば小さき波音残る虫
- 放課後の渡り廊下に残る虫
- 心情をふと重ねたる残る虫
- 滋賀県 別役昌子
- 残る虫手にした本は大活字
- 残る虫還暦祝う届け物
- 残る虫ラジオを消して黙考す
- メサイアの余韻嫋嫋残る虫
- 残る虫引退決めし好敵手
- 東京都 林瑞愷
- 夏の残る虫は寒さを知らない
- 残る虫の叫びに秋の訪れ
- 下町の空に残る虫の響き
- 茨城県 小松崎孝志
- 正調の茨城弁よ残る虫
- 独り居の作る肉じゃが残る虫
- どこからか深夜のラジオ残る虫
- 屋根に雨音床下の残る虫
- 雨音に消されそうなる残る虫
- 大阪府 津田明美
- 残る虫夫と過ごせし狭庭かな
- 残る虫妣は今頃どのあたり
- 残る虫そそげぬままの汚名抱き
- 孤独又楽しからずや残る虫
- 余生てふ一線の涯て残る虫
- 宮城県 林田正光
- 残る虫いずれ残らぬ虫となる
- 残る虫鳴き声日々に静かなり
- 残る虫耳に馴染みし声となり
- ブラジル 玉田千代美
- 夢の無き齢になりつつ残る虫
- 生かされて命大事に残る虫
- 世の隅にわびしさこらへ残る虫
- 世の為に人の為にと残る虫
- 残る虫眠れぬ夜は夫の忌に
- 愛媛県 佐藤めぐみ
- 残る虫山からころころ落ちて来た
- 独り居を迎へてくれる残る虫
- 残る虫あらら山には帰らぬか
- 残る虫娘はつひに妻となり
- 三重県 後藤允孝
- 草叢の最終楽章残る虫
- 本堂の縁高きかな残る虫
- 残る虫岸に積まるる醤油甕
- 残る虫夜を惜しむかにこゑ低く
- コンサートの余韻更なる残る虫
- 千葉県 峰崎成規
- 残る虫今終電が走り去る
- ひと夜ごと闇を深むる残る虫
- 仕舞湯を落とせば響く残る虫
- 鳴く間を徐々に広ぐる残る虫
- 残る虫始発電車に夜の顔
- 埼玉県 小玉拙郎
- 境内に残る虫あり朝体操
- それぞれが命の声や残る虫
- 頻尿の夜を鳴き通す残る虫
- 猫の手を逃れようなき残る虫
- 浮き沈む線路の下の残る虫
- 埼玉県 守田修治
- 残る虫ジャズ聴こゆるは何処より
- 残る虫セロ弾きゴーシュとすれ違う
- 残る虫クラーク指差す開拓地
- 残る虫釧路原野の星の数
- 華やかな銀座の祠の残る虫
- 神奈川県 矢神輝昭
- 残る虫辞世の歌で身を窶す
- 残る虫入れてくれろと縋りおり
- 残る虫連れて下りたし山仕舞ひ
- 残る虫集きしころに思ひ馳せ
- 残る虫唐櫃の蓋覗きおり
- 島根県 寺津豪佐
- 靴濡らす朝となりし残る虫
- 残る虫旅の荷物の単行本
- 木片となりし生家や残る虫
- 抜け路地に雨の名残や残る虫
- 残る虫雨の匂いが分かると言う
- 兵庫県 髙見 正樹
- 残る虫去年と変わらぬ池の端
- 窓閉じてなお耳にあり残る虫
- 残る虫夜更けに辿る家路かな
- 残る虫夜明けの野辺に途切れがち
- 野に置かる廃車の下に残る虫
- 北海道 飯沼勇一
- 残る虫祖父補聴器に手を伸ばし
- 見上ぐれば満天の星残る虫
- 銀座にも居る鈴虫ぞ残る虫
- 残る虫一人は寂し一軒家
- すがれ虫黙れ兄いま虫の息
- 神奈川県 塚本治彦
- 無住寺の無住寺のまま残る虫
- 何虫と分からぬ声や残る虫
- 湯治場の長逗留や残る虫
- 残る虫残業手当てなき教師
- 独唱となりてしまひぬ残る虫
- 千葉県 入部和夫
- 残る虫酒は二合と決めてをり
- 待合に亭主を待てば残る虫
- 父母のありしひと夜や残る虫
- 病床に残る虫聞く闇夜かな
- 病床に臥して幾許残る虫
- 愛知県 岡本圭司
- 茗荷根を 除きし石の 残り虫
- 三重県 北村英子
- 鳴く時を心得てをり残る虫
- 泣く我にエールの声と残る虫
- 残る虫決まりごとなり生と死と
- ハープ弾く音に寄り添ふ残る虫
- 残る虫また会へること知つてをり
- 東京都 松本武雄
- 残る虫間合い気になる床の中
- 寝そびれて残る虫聞く夜更けかな
- 残る虫思い出すがに間を置きぬ
- 残る虫冴経て眠れぬ通夜帰り
- 残る虫睡魔と共に遠のきぬ
- 岡山県 岸野洋介
- わが生家無住となりて残る虫
- キイ叩く手を止め聞きし残る虫
- 残る虫今年は妻の七回忌
- 露天風呂声悲しげに残る虫
- 四阿は公園の臍残る虫
- 東京都 石川昇
- 北向きの宅地は売れず残る虫
- 残る虫涙腺ふいに緩みだす
- 静岡県 大澤定男
- 残る虫無量寿院極楽寺
- 残残る虫津軽平野に父母祖父母
- 残る虫息継ぎ法を変えた朝
- 残る虫落柿舎に夜半遅い客
- 残る虫脱力感と言ふ癒し
- 滋賀県 主藤充子
- 押入の奥へおくへと残る虫
- 東京都 山本貴士
- 残る虫娘五歳の灯りかな
- 残る虫杜の駅舎は建ちにけり
- 子ら歌うきらきら星や残る虫
- 残る虫乗せて聴き入る木馬かな
- 残る虫縦横無尽の寝床かな
- 愛知県 斉藤浩美
- 鎮魂の声被災地に残る虫
- 音色というには小さすぎ残る虫
- 残る虫孤高深めているのかも
- 残る虫翅のすべてを使いきる
- わずかばかり余力のありて残る虫
- 東京都 豊宣光
- 残る虫われと孤独を分かちけり
- 衰えし声のみ聞こゆ残る虫
- 掛け布団厚くなりけり残る虫
- 露天の湯ぬくもりの中残る虫
- 友らみな逝きてわれのみ残る虫
- 静岡県 城内幸江
- 残る虫壊れた如雨露水をやる
- 慰霊碑に何十万の名残る虫
- 足の爪小さくなりて残る虫
- 切れさうな蛍光灯や残る虫
- 四畳半広くもありて残る虫
- 神奈川県 龍野ひろし
- 廃業の宿の暗さよ残る虫
- 忘られし本丸跡に残る虫
- 残る虫塾の灯りの煌々と
- 残る虫組手巧みな指物師
- 残る虫寺に秘蔵の幽霊図
- 神奈川県 飯島まゆみ
- 合唱はもう終楽章残る虫
- 長編はやっと半分残る虫
- 残る虫シーズン初のキムチ鍋
- 神奈川県 原川篤子
- バスを待つ硬きベンチや残る虫
- 残る虫ポンプ錆びつく寺の井戸
- 酔ひ醒ましに歩く道なり残る虫
- 残る虫明日には聴けぬ声かとも
- 残る虫捨てかけし書を読みてをり
- 滋賀県 船岡房公
- 終ひ湯のぬるき夜更けや残る虫
- 読みさしの本また増えし残る虫
- 三成の戦陣址やすがれ虫
- 三重県 平谷富之
- 残る虫 家の近くで ひそひそと
- 神奈川県 松野勉
- ふるさとの風の途切れて残る虫
- 大阪府 太田紀子
- 残る虫終バスはるか去り行けり
- 残る虫山の端の落つ眉の月
- 残る虫隣家の灯り消されけり
- 神奈川県 前田恵美
- 張り紙に閉店とあり残る虫
- 香の物あれば酌む酒残る虫
- 羽織るものかろきがよろし残る虫
- 好きに起き好きに食ふ日々残る虫
- 残る虫錠さされたる井戸低く
- 愛媛県 山家志津代
- 野外フェス果てていつしかすがれ虫
- すがれ虫二日ともたぬキスマーク
- 毀さるる女郎屋の跡や残る虫
- 積ん読の終活ノート残る虫
- 銀髪のジャズシンガーやすがれ虫
- 愛媛県 加島一善
- 残る虫昨日より声細りけり
- 残る虫とぎれとぎれに鳴きにけり
- 残る虫これが最後と鳴きにけり
- 残る虫風に託して鳴きにけり
- 残る虫辞世の羽音残しけり
- 千葉県 山田香津子
- 古墳の里に遊ぶ一日や残る虫
- チバニアンの深淵の黙残る虫
- 奥能登の時忠の墓残る虫
- 東京都 岩川容子
- やり直しきかぬ齢や残る虫
- 供花のなき墓に寄り添う残る虫
- すがれ虫介護の部屋のうす灯り
- ふらついて手のつく先に残る虫
- 愛知県 匿名
- テレビ消し残れる虫の声惜しむ
- 竣工の工事現場に残る虫
- 残る虫妊活の子の誕生日
- 山梨県 森下博史
- 村に残る虫になってという娘
- 残る虫サンダル履きがそっとよけ
- 神奈川県 水野伸一
- 無人駅見送り終えて残る虫
- 残る虫補欠選手の帰り道
- 父母の墓近況を問う残る虫
- 気を張らず緩めず揉まず残る虫
- 居残りの稽古と泣くや残る虫
- 神奈川県 海野優
- 残る虫俗名となる父母の墓碑
- 悔ゆることばかり来し方残る虫
- 残る虫古地図にみゆる生地かな
- 群馬県 武藤洋一
- 残る虫迷ひし軽井沢の径
- 東京都 水野邦彦
- 葉の裏にまあだだよって残る虫
- あきらめと腱鞘炎と残る虫
- 夕まぐれ冬の虫呼ぶ女坂
- 冬の虫箒の先で何思ふ
- 夜もすがら残りの虫のアンコール
- 東京都 松本佳明
- 肌寒く気配で感じる残り虫
- 夕暮れに姿隠して残る虫
- 帰り道耳をすませば残る虫
- 残る虫リフレインする藪の中
- 残る虫ソロでアカペラ寂しげに
- 東京都 右田俊郎
- 精いっぱい悔いなく生きて残る虫
- 残る虫余生になほも未練あり
- すだく音に生きる執着残る虫
- 日を追って鳴き音の細る残る虫
- 残る虫吾が老境に思い馳す
- 東京都 豊島 仁
- 残る虫一声ありてそれっきり
- 残る虫旅の支度はととのえり
- 残る虫泣いているのか夜の庭
- 残る虫口笛吹けど風ばかり
- 残る虫惜しむ今宵の巡礼歌
- 神奈川県 髙梨裕
- 伏す床の闇の底より残る虫
- 里は老い帰れぬままに残る虫
- 残る虫夜の竈に声散らす
- 古井戸の水枯れずして残る虫
- 熱きお茶汲む静けさや残る虫
- 京都府 中村万年青
- こほろぎも良いタンパクと飼育され
- 蟲すだく小人になるも悪くなひ
- 風呂の窓開けるやいなや秋の蚊は