俳句庵

3月『鳥雲に』全応募作品

(敬称略)

埼玉県      哲庵
鳥雲に入るを見送る夫婦岳
先頭は頭領なるや鳥雲に
鳥雲に我は巣籠もり自粛中
都市封鎖やうやう解けて鳥雲に
金色に輝く鴟尾や鳥雲に
宮城県     zazi
鳥曇旧市街地の駐車場
鳥曇ハローワークに登録す
鳥曇今日も誰かの逝く日かな
鳥曇未の刻の散歩かな
駄菓子屋の間引き点灯鳥曇
静岡県     いたまきし
鳥雲に入る分度器で測れるか
鳥雲にその名くまなく調べけり
北欧へ規制なき旅鳥雲に
鳥雲に乱高下した兜町
愛知県     いちご一会
あの池の名をつけた鳥雲に入る
鳥雲にカメラレンズの増えるまま
埼玉県     いまいやすのり
予定終へ杜氏みちのく鳥雲に
さばさばといつしか疎遠鳥雲に
鳥雲に上毛三山濃くなりぬ
巣立つ子の机そのまま鳥雲に
鳥雲に看取りの未熟ありし頃
千葉県     うだがわくん
未練界眼下に遥か鳥雲に
出世した友あつけなく鳥雲に
少年の見上げる巌鳥雲に
長野県     シュルツ
鳥雲に入るエッセイのゴシック体
長野県     シュルツ
鳥雲に至る大橋珊瑚礁
鳥雲に少女Aを見つけをり
福岡県     すがりとおる
鳥雲に九十九曲りのトレーラー
擦れたる磁北の文字や鳥雲に
鳥雲に釣りの干潟はむつごろう
鳥雲に石炭匂ふ始発駅
商館の緑青の屋根鳥雲に
岐阜県     ときめき人
鳥雲に未来の風を呼ぶ賢治
山口県     ひろ子
村人の別れ惜しむや鳥雲に
鳥雲へ別れを告げるデコイかな
東京都     よしだ悠
乳房なき男の胸や鳥帰る
明日発つと妻子に告げて鳥雲に
ふるさとへ二百二十里鳥帰る
鳥雲や煙忘れし桜島
はつ恋の少女も老ひぬ鳥雲に
東京都     伊藤訓花
とりぐもり涙の跡の浪花節
雲に入る鳥重力の無き軽さ
鳥曇りおてて繋いだひよこ組
国訛り懐かしく鳥風に入る
異国語の永住多し鳥雲に
千葉県     伊藤順女
鳥雲に入りたるやうに人の逝く
鳥雲に波打際に木のオブジェ
鳥雲に入るがごとくに家出の娘
神奈川県     井手浩堂
鳥雲にこのごろ子とのメール増え
すぐ帰る里帰りの子鳥雲に
豆腐煮て妻との夕餉鳥雲に
徳島県     井内胡桃
出港のホーンの余韻鳥雲に
徳島県     井内胡桃
しまなみの海道マップ
磨き上ぐ一枚ガラス鳥雲に
校正の赤ボールペン鳥雲に
鍬休め塩飴ひとつ鳥雲に
大阪府     永田
鳥雲に出処進退師の笑顔
大阪府     永田
鳥雲に見合いの朝の父静か
群馬県     塩原 香子
鳥雲に終の塒へ帰らむと
右肺を病みて臥す日々鳥雲に
夕空を透けて雁一文字
天辺へつばさを広げ鳥雲に
吾の住めるこの世を覗き鳥雲に
大阪府     佳代
果てしない空見上ぐるや鳥雲に
鳥雲に入りて家路の遠からん
鳥雲に入りて明日へと力こぶ
鳥雲に老爺ベンチで一休み
埼玉県     釜田眞吾
野球部の声土手走り鳥雲に
鳥雲に女房とくぐる縄のれん
鳥雲に貨物列車の過ぎる音
愛知県     岩田遊泉
遠吠えの北方領土鳥雲に
神奈川県     亀山酔田
鳥雲に煎餅入れる硝子瓶
マスカラの色明るしよ鳥雲に
鳥雲に貝殻なんぞ投げ上げる
鳥雲に畝歩きつつ帰ろうか
山を越す上昇気流鳥雲に
岐阜県     金子加行
鳥雲に悔いし推敲せぬ手紙
望郷の夢かの母や鳥雲に
鳥雲にかつて鉱山栄へし地
岐阜県     金子加行
鳥雲に希望の余生目指したき
鳥雲に山河を削る重機立つ
秋田県     笹弓
鳥雲に入る声空に残しおり
千葉県     四葩
鳥雲に鞄に残る常備薬
スニーカーの馴染む散策鳥雲に
登校の列のじぐざぐ鳥雲に
三叉路に地蔵立ちゐる鳥雲に
栃木県     鹿沼 湖
一段をとばす雲梯鳥雲に
大阪府     酒梨
仕込み終へ帰る杜氏や鳥雲に
親族どち形ととのへ鳥雲に
北国がぬかるみ始め鳥雲に
どの羽も美しくして鳥雲に
鳥雲に入りて佇む吾一人
神奈川県     重兵衛
東京のネオンは見納め鳥雲に
鳥雲に吉里吉里王国独立す
鳥雲に河童に出会ふ旅に出る
みちのくのなまりなつかし鳥雲に
どうしても思い出せぬ名鳥雲に
神奈川県     上田みつき
鳥雲に琵琶湖の上を線に飛び
暁光の光に浮かび鳥雲に 
石像の声聞くときや鳥雲に 
鳥雲に寺の甍の銀の色  
花添えて棺担ぐや鳥雲に 
大阪府     森 佳月
山頂に電波塔立つ鳥雲に
庭隅に古びたボール鳥雲に
ぐい飲みのちょいと欠けたり鳥雲に
鳥雲に過疎の村にも灯がともる
埼玉県     水夢
鳥雲やつぶやきひとつ残さるる
ビル街に沈む夕日や鳥雲に
思い出を詰めし鞄や鳥雲に
鳥雲や三角ベースに大飛球
洞窟に風葬の骨鳥雲に
福岡県     世良日守
発電の風車ぎぎぎと鳥雲に
配達の牛乳無くて鳥雲に
MOは製造中止鳥雲に
雲に入る鳥や三日月欠けたまま
デュエットの左は鬼籍鳥雲に
東京都     勢田清
鳥雲に消え去るまでを草の丘
鳥雲にこの世去る日をふと思う
鳥雲に遠ざかり行く河川敷
草野球外野守れば鳥雲に
鳥雲に再び会えぬ人ばかり
ブラジル     西山ひろ子
晩年に受けしコロナ禍鳥雲に
鳥雲に昭和は限りなく遠し
鳥雲に地球の翳り如何にせむ
人を避け人恋しくて鳥雲に
仮りの夜に戸惑いつつも鳥雲に
埼玉県     石塚彩楓
今生の記憶消えゆく鳥雲に
鳥雲に墓地分譲地見学会
朗々と地鎮の祝詞鳥雲に
金平糖の角の鋭角鳥雲に   角(つの)
コースターに珈琲の染み鳥雲に
福岡県     多事
また眼鏡代ふる時期かも鳥雲に
鳥雲に丘より臨む八ヶ岳
福岡県     多事
駅舎には空の鳥籠鳥雲に
鳥雲に久しく開く草枕
干潮に顕るる途鳥雲に
香川県     辰野
面会の来ぬ日々永し鳥雲に
槍投げの軌道イメージ鳥雲に
鳥雲に我が故郷に寄らまいか
鳥雲に我が故郷の方向に
鳥雲に波打ち際をゴミ拾い
神奈川県     池田恵美
ふり返る病棟高し鳥雲に
ほころんでゐるズック靴鳥雲に
遅れたる子の泣きやみぬ鳥雲に
東京都     中田ちこう
香けぶる看経とだえ鳥雲に
神奈川県     猪狩鳳保
鳥帰る不要不急の吾置いて
つくばひの水はからつぽ鳥雲に
鳥雲に入り碧天の路千里
あやとりのこんがらかつて鳥雲に
鳥雲に入りて隅田川の灯るころ
千葉県     長谷川ぺぐ
鳥雲に世話も嬉しや母の居て
シンフォニーラストはロンド鳥雲に
鳥雲に人は天にと新コロナ
千葉県     渡邉竹庵
鳥雲にシャッター街となる小江戸
百枚の田は干拓地鳥雲に
三重県     藤田ゆきまち
二日後の時候避き道鳥雲に
鳥雲にどこさ肥後さの手まり唄
知恵の輪をやぶから棒に鳥雲に
千葉県     徳翁
鳥雲に笑みを浮かべし辻地蔵
山を越え未練無さげに鳥雲に
千葉県     徳翁
鳥雲にエンディングノート筆を擱く
何事も無き日の夕べ鳥雲に
生れ家のビルに変わりし鳥雲に
東京都     内山岱鵬
口ずさむ昭和のメロディー鳥雲に
V(ブイ)かへかくの字にもなり鳥雲に
飛行機に追われて夕日鳥雲に
振り向けば彼去る電車鳥雲に
東京都     内藤羊皐
鳥雲に父の忌日を過たず
湯開を伝ふ僧像鳥雲に
鳥雲に牛石の肌の翡翠色
父に似る瓦葺師や鳥雲に
鳥雲に学舎の跡に大クレーン
徳島県     白井百合子
鳥雲に呼吸が見える検査室
寂しさに犬の遠吠え鳥雲に
鳥雲に手術出来ると喜ぶ友
鳥雲にテレビに映る里帰り
鳥雲に月に十日の出勤日
大阪府     八王寺宇保
真実を何も語らず鳥雲に
撒き餌を五袋残し鳥雲に
鳥雲に海を離るる高速道
光芒の中へ一団鳥帰る
隊形を作る旋回鳥帰る
埼玉県     飛翔
鳥雲に飛んで行きたい風見鶏
楽観も悲観もせずに鳥雲に
ポケベルもぴいぴいぴいと鳥雲に
楽しさを半分のこし鳥雲に
空色にからまりながら鳥雲に
千葉県     柊二
大仏の胸中や鳥雲に入る
北海道     風花美絵
鳥雲に入りて林のざわめきつ
洗濯は明日にしよか鳥雲に
鳥雲に我終活の構図練り
北国(ここ)よりもまだ佳き国か鳥雲に
千葉県     風泉
・鳥雲に入る萌え木の道遥かに
・鳥雲に入る望郷の山頭火
・鳥雲に葦原深く巣を残し
・鳥雲にささ波受ける箆の浮子
茨城県     風峰
耳鳴りの音はさまざま鳥雲に
遮断機はゆくり上昇鳥雲に
この星に生きて生かされ鳥雲に
奈良県     平松 洋子
出無精の一日は長し鳥雲に
遮断機は未だ上がらず鳥雲に
故郷を持つは幸せ鳥雲に
埼玉県     宥光
大路から小路へと佳人鳥雲に
鳥雲に駄菓子を選ぶ幼の手
雲に入る鳥を指差す方の雲
ものほしに赤子の産着鳥雲に
城跡の天守の月夜鳥雲に
神奈川県     立野音思
いつかまた会ふ日はありや鳥雲に
石地蔵見上げる空や鳥雲に
旧友を偲ぶ夕暮れ鳥雲に
鳥雲に手つなぎ帰るわらべうた
大阪府     鈴木三津
鳥雲に見舞へぬままの友のゐて
隠沼にさざ波残し鳥雲に
鳥雲に北へ噴煙なびく日よ
大阪府     鈴木三津
旋回に一瞬消えて鳥雲に
追伸に彼女の真意鳥雲に
大阪府     鈴木千年
その後の七人の敵鳥雲に
鳥雲に賀状の癖字なつかしき
先陣は鳥雲に入る後陣は
背比べの柱の疵や鳥雲に
鳥雲に入りて光背残りけり
広島県     老人日記
切り取りし肺美しと鳥雲に
父逝きし齢は遠く鳥雲に
転生を信じたくあり鳥雲に
「拝啓」と書かぬメールや鳥雲に
愛媛県     ビッカリー美和
鳥雲に娘を見送る空港へ
鳥雲に少女の口笛遠くより
千葉県     伊藤博康
羽搏きのデクレッシェンド鳥雲に
打合せ一度もなくて鳥雲に
鳥雲に今頃海の見へる筈
鳥雲に良き日良き時風の良き
渋滞を見下ろしながら鳥雲に
沖縄県     稲福達也
鳥雲に少女のそぶり大人びて
鳥雲に塒に春は来てゐたか
鳥雲に空の果たてに見出でけり
鳥雲に見遣りし君は街騒に
鳥雲に手庇で見るふたりかな
愛媛県     加島一善
墨衣乾ききらずに鳥雲に
今日は来ぬロバのパン屋や鳥雲に
一匹の魚を残し鳥雲に
鍬を置く農夫のかなた鳥雲に
愛媛県     加島一善
鳥雲に一枚燃やす日記帳
神奈川県     海野優
鳥雲にふと思ひ立つ便りかな
片減りの靴目立ちたる鳥雲に
鳥雲に少年何か告げたげに
熊本県     貝田ひでを
過疎なれど住めばまほろば鳥雲に
缶切りの要らぬ缶詰鳥雲に
せがまれて犬と散歩や鳥雲に
鳥雲に傘寿の腰を宥めつつ
鳥雲に眼鏡外して眺めをり
兵庫県     岸下庄二
鳥雲に海峡過る巡視船
地震の地を俯瞰しながら鳥雲に
本籍に大字小字鳥雲に
海を向く師の句碑除幕鳥雲に
故郷は此処より千里鳥雲に
埼玉県     岸保宏
鳥雲に入りてシューズの紐結び
診察の窓より滲む鳥雲に
紙を漉く小窓を分ける鳥雲や
鳥雲に入りて墓前の風がやみ
鳥雲や眠る地蔵も目をあける
岡山県     岸野洋介
妻逝きて早や十二年鳥雲に
コロナ禍の日本さらばと鳥帰る
チョンがーへ小包出せば鳥雲に
まだあったピンク電話や鳥雲に
下の子の下宿探しや鳥雲に
東京都     岩崎美範
涙目で見送る少女鳥雲に
手を振るも詮なきことや鳥雲に
人は人吾は吾なり鳥雲に
東京都     岩崎美範
故郷に帰る家なし鳥雲に
妹の嫁ぐ日近し鳥雲に
東京都     岩川容子
どこまでも空はひとつよ鳥雲に
子には子の生きる場所あり鳥雲に
鳥雲にこの地逃れる翼欲し
鳥雲に入りて小雨の夜となり
千葉県     玉井令子
母と子の些細な喧嘩鳥雲に
友の夫逝去の知らせ鳥雲に
ブラジル     玉田千代美
鳥雲に北の里まで飛んで行く
心まだあきらめ切れず鳥雲に
新潟県     近藤博
鳥雲に見上げ見送る別れかな
群れをなし飛ぶに魅せられ鳥雲に
見上ぐ空狭きとばかり鳥雲に
鳥雲に指針持つがに北に向け
群れをなし一糸乱れず鳥雲に
神奈川県     原川篤子
鳥雲に塗の剥げたる夫婦椀
籠りゐて無為の一日や鳥雲に
箱書きの父の字薄れ鳥雲に
鳥雲に母の縫ひたる衣を解き
叱られて下むく犬や鳥雲に
三重県     後藤允孝
鳥雲に山の降り口登り口
切通し抜ければそこは鳥雲に
リハビリの続く毎日鳥雲に
この山河ありて吾あり鳥雲に
シャボン玉を吹く少年や鳥雲に
東京都     佐藤美智子
株分けの旅立つ苗木鳥雲に
Uターン退職社員鳥雲に
東京都     佐藤美智子
故郷の富士ひかり立つ鳥雲に
車椅子押す施設内鳥雲に
赴任地の息子一家や鳥雲に
東京都     佐藤富幸
夫婦岩砕けし波頭鳥雲に
若人の「蛍の光」鳥雲に
校門に手続きの列鳥雲に
校門の別れに握手鳥雲に
箱根路や鳥雲に往く大社
愛媛県     砂山恵子
トランプのジャック横向き鳥雲に
にはたづみに映る学舎や鳥雲に
鳥雲に入りどこにも行けぬ足
カーテンの薄きほころび鳥雲に
四国とは流人の国か鳥雲に
東京都     笹木弘
鳥雲に季語の一つを記憶して
被災地の復興見つつ鳥雲に
鳥雲に点景となり消えにけり
首と足真つ直ぐに鳥雲に入る
鳥雲に渋滞の無き天の道
愛媛県     山家志津代
いざやいざ目指す産土鳥雲に
売り切れのライ麦パンや鳥雲に
乱丁を整え終へし鳥雲へ
鳥雲に定点Nとして飛たん
広島県     非掲載
鳥雲に愛しのあの子待っている
我一人見つめる彼方鳥雲に
世の中の鳥雲に入る子を見つめ
君は今鳥雲に入る星になる
夕焼けの鳥雲に入るランドセル
東京都     山本貴士
富士の下湯船の親子鳥雲に
百年の檜皮の雨や鳥雲に
鳥雲に夕べ落とした豆一つ
鳥雲に眺む合間の湯呑かな
母なりし煙は融けぬ鳥雲に
山口県     山縣敏夫
雲鳥に入る光景を見てみたい
合わす顔無く鳥雲に入りたい
雲鳥に入るなんて季語知らなんだ
ミスをして小鳥となりて雲に入る
雲鳥に入る様詠んで悦に入る
東京都     山﨑勝久
鳥雲に極の磁力に導かれ
鳥雲に入る息ととのへ合掌
島根県     寺津豪佐
鳥雲に今朝は真青な日本海
友多く残る古里鳥雲に
鳥雲や見上げて猫を見失ふ
鳥雲に美保の灯台一里塚
家路へと引き返す道鳥雲に
神奈川県     守安雄介
若鳥の雲に入りたる門出かな
鳥雲に入るこれが最後や老いの旅
鳥雲に入る君には君の事情在り
鳥雲に異常のありや茜雲
老眼や鳥発てば即霞中
埼玉県     守田修治
糸電話多くは語らず鳥雲に
旅に読む地方新聞鳥雲に
鳥雲に誂え向きの佐渡ヶ島
西方のとある湖より鳥雲に
集ればシベリアばなし鳥雲に
埼玉県     小玉拙郎
鳥雲に旅立てぬ人の時ままに
湖水には風とさざ波鳥雲に
鳥雲に山並みの果て視界没
鳥雲にこの先は海龍飛崎
茨城県     小松崎孝志
鳥雲にラジオ体操始まるよ
鳥雲に入るやSL南へと
鳥雲にスローペースの散歩道
鳥雲にちょっと余白の予定表
退院の踏出す一歩鳥雲に
東京都     松本佳明
鳥雲に白球重なる野球場
鳥雲にまだ見ぬ異国夢を見る
鳥雲に思いをはせて機上人
鳥雲に再会誓う通学路
鳥雲に目を細めてはほくそ笑む
神奈川県     松野勉
連れ合ひと歩む道道鳥雲に
神奈川県     沼宮内薫
鳥雲に鬼呼ぶ声のかくれんぼう
消されゆく飛行機雲に鳥雲に
らくがきを残したままの鳥雲に
駅前の武将の方位鳥雲に
双眼鏡合はす間に消ゆ鳥雲に
静岡県     城内幸江
飛び石は流れ逆らい鳥雲に
鳥雲に離れ広がる太極拳
保育園帰りはおんぶ鳥雲に
鳥雲に幼子のつく嘘ひとつ
校庭に洩れる讃美歌鳥雲に
愛知県     新美達夫
余生てふ言葉が嫌ひ鳥雲に
天を指す石の羅漢や鳥雲に
愛知県     新美達夫
鳥雲に曲線描くハイウエイ
東京都     新保徳泰
鳥雲に入りて湖面の常の景
鳥雲に一途といふは美しく
鳥雲に入りてあとさき考へず
鳥雲に吾子は外つ国へと向かひ
鳥雲に故郷に余生迎へむと
福岡県     深町明
この国の行く末案じ鳥雲に
鳥雲に心赴くまま旅路
鳥雲に吾に四国といふ未踏
約束の羽一つ置き鳥雲に
鳥雲に寅さんは今何処ですか
東京都     水野邦彦
鳥雲にいちにいさんと吾子のいふ
鳥雲に入りて恩師は頭下ぐ
花緒替え足踏み出せば鳥雲に
最終の通学路の先鳥雲に
愛知県     西谷寿
鳥雲に入る空に星ただ光る
鳥雲に夕暮れの海神渡る
鳥雲に入る星ひとつグッドバイと
鳥雲に友も去りゆきひとり泣く
夕暮れに鳥雲に入るからの空
愛知県     斉藤浩美
胸突きの果ての学び舎鳥雲に
鳥の群校歌の空の雲に入る
鳥雲に野心のかけらなかりけり
寝落ちたる嬰をころがし鳥雲に
機体なき天空鳥は雲に入る
神奈川県     川島欣也
鳥雲に一期一会の名刺束
学び舎の止まらぬ時計鳥雲に
神奈川県     川島欣也
列島の転変地変鳥雲に
時ながる昭和平成鳥雲に
鳥雲に朋輩の数指折れる
滋賀県     船岡房公
ポン菓子の弾ける音や鳥雲に
琺瑯の古看板や鳥雲に
鳥雲に方位図法の国連旗
京都府     村田稔子
入試本番 お守り胸に 鳥雲に
鳥雲に 河原でひとり のり弁当
鳥雲に 手には「地球の歩き方」
大阪府     太田紀子
茶髪なる若き医師なり鳥雲に
故郷のはらから遠し鳥雲に
若き友の訃報ありけり鳥雲に
静岡県     大澤定男
鳥雲に写生大会成功裡
鳥雲に肩の初孫ほの温し
鳥雲に野点の傘の客去りて
鳥雲に母の白和えなる一品
鳥雲に陰日向無き祖母との日
和歌山県     中浴智美
子の部屋は今もそのまま鳥雲に
東京都     猪俣ま悠
遊びの輪小さくなりて鳥雲に
自転車のベル無言なり鳥雲に
鳥雲に入る空き瓶の底ゆらり
鳥雲に入るシャンソンの欠片かな
鳥雲に入るごめんねと呟けり
東京都     長岡馨子
鳥雲に再開発の工事塀
茨城県     長洲研志
鳥雲に入りて母の車いす押す
大仏を見上げる先は鳥雲に
鳥雲に入りて幾年介護かな
茨城県     長洲研志
鳥雲にピアソラなんぞ口ずさむ
鳥雲に入りてミサ後の子らの顔
大阪府     津田明美
天地のあわい騒めき鳥雲
鳥雲にそっと引き継ぐ妣の護符
鳥雲に飛天の舞を残しゆく
表札は極太楷書鳥雲に
妣の乗る寂しき列車鳥雲に
神奈川県     塚本治彦
噴煙の棚引く先や鳥雲に
鳥雲に山また山の甲斐の空
山畑に貼りつく農や鳥雲に
鳥雲に爪先立ちの女の童
噴煙の溶け込む空や鳥雲に
栃木県     渡辺輝夫
鳥雲にひつそり疼く親不知
手の窪は孤独の渚鳥雲に
神奈川県     嶋村博吉
鳥雲に智恵子の空の碧過ぎて
駄菓子屋に閉店とあり鳥雲に
自衛官募集貼り紙鳥雲に
大阪府     藤田康子
鳥雲にいづこにか誰もが帰る
旅立ちか帰郷かと問ふ鳥雲に
東京都     二川昌弘
鳥雲に溶け込むような青い空
鳥雲に消えては出でる隅田川
千葉県     入部和夫
雲に鳥ふるさと出でて半世紀
鳥雲にふるさと遠き秋津洲
はや古希を超へし半生鳥雲に
四島はわが国なるぞ鳥雲に
雲に鳥たちまち旧ぶ廃校址
北海道     飯沼勇一
鳥雲に土産話は山ほどに
北海道     飯沼勇一
突然のホームシックか鳥雲に
強風を進む決意や鳥雲に
一羽だけ残して百の鳥雲に
鳥雲に最後尾には親がつく
埼玉県     飯塚璋
鳥雲に遺書読み交はす三姉妹
鳥雲に舳先に靡く大漁旗
群馬県     武藤洋一
留学の準備万端鳥雲に
尾根道の木製階段鳥雲に
特急の通過待つ駅鳥雲に
三重県     平谷富之
コロナ禍の行く末案じ鳥雲に
鳥雲にこの国のこと案じてる
滋賀県     別役昌子
鳥雲に入りて電波塔灯る
南北に長き琵琶湖を鳥雲に
鳥雲に病室女部屋となる
デパートの紙袋尽く鳥雲に
着メロは愛の讃歌や鳥雲に
千葉県     峰崎成規
観覧車空繰り寄せて鳥雲に
再見はやさしき別れ鳥雲に
鳥雲に川面で唸る浚渫船
鳥雲に地上は歴史生み続け
鳥雲に荼毘所の煙けふは無く
東京都     豊宣光
火葬場の煙は細し鳥雲に
どの人も仮面の顔や鳥雲に
鳥雲に影は地上に残りけり
学童の歌声高し鳥雲に
掛け軸の大きな画題鳥雲に
茨城県     豊冨瑞歩
鳥雲に眩暈にゆらぐ空広し
茨城県     豊冨瑞歩
鳥雲に入りて猫背の並びかな
鳥雲に入りて鍼シールの香気
鳥雲に入りて去年の不眠かな
三姉妹鳥雲に入る天城かな
埼玉県     北川清
鳥雲に 天気予報を 窓に貼り、
鳥雲に ロスなく飛べと 風見鳥 
年老いて ちちははの事 鳥雲に
鳥雲に 取り残されし かわうかな
鳥雲に 伊豆沼とびて 日本海
三重県     北村英子
鳥雲に魔法の棒を振りてより
鳥雲に到着地への天気地図
鳥雲に魔女の入れたる薬草茶
鳥居より石段高く鳥雲に
鳥雲に問題集の一問目
奈良県     堀ノ内和夫
あれが殿ならむ鳥雲に
落ちこぼれきつとゐるらむ鳥雲に
今し方賑はいし池鳥雲に
長野県     木原登
鳥雲に入るや津軽に斜陽館
ためらはず鳥みな雲に入りにけり
燦々とアルプスはあり鳥雲に
縄文のビーナス小さし鳥雲に
燈台はどこも無人や鳥雲に
大阪府     木山満
鳥雲に希望の土地に移りけり
鳥雲に太くうねりて北に去り
鳥雲に無事を祈りて諸手振る
鳥雲に打ち上げ花火消える如
鳥雲に惜別の情涙膨れて
神奈川県     矢神輝昭
フェードアウト鳥雲に浮くFinの文字
鳥雲に安否を尋ぬ格子窓
ロードショー余韻の心地鳥曇に
鳥雲に舟を浮かべて送りびと
出稼ぎへ立つ父の影鳥雲に
神奈川県     龍野ひろし
機内からドクターコール鳥雲に
鳥雲に栄華の果の壇ノ浦
出発を待つ車両基地鳥雲に
銭湯の煉瓦煙突鳥雲に
湖は地球の笑窪鳥雲に
ブラジル     林とみ代
余生とは気ままに生きて鳥雲に
身の丈に合はぬ暮らしや鳥雲に
はらからの暮し気遣ひ鳥雲に
コロナ禍の治まり待てず鳥雲に
鳥雲に異国暮らしに住み慣れて
宮城県     林田正光
別離とは鳥雲に消えるが如し
鳥雲にメール送信ノーリターン
上京の固い決意や鳥雲に
夕暮の雲に入りたる北帰鳥
鳥雲に入りて湖沼は抜け殻に
兵庫県     髙見正樹
鳥雲に友に兆せる認知症
ステージのカーテン引かる鳥雲に
術のなきインフルエンザ鳥雲に
フィナーレを飾る晴天鳥雲に
ぽっかりと空きし川面や鳥雲に
東京都     豊島 仁
執刀の医師元気なく鳥雲に
目薬の片目に遥か鳥雲に
東京都     豊島 仁
鳥雲にはぐれて一羽我ヶ事
鳥雲に龍の影あり夜明け前
鳥雲に百羽二百羽また百羽
神奈川県     髙梨裕
鳥雲に往時の空や大伽藍
縄文の遺跡はるけき鳥雲に
鳥雲に夕星ひとつ西の空
鳥雲に入りて裏木戸閉じる音
未踏なる山の嶺嶺鳥雲に