俳句庵

5月『夏木立』全応募作品

(敬称略)

愛媛県     砂山恵子
光悦寺の山門すでに夏木立
夏木立校長の手の万歩計
まだ遠きゴールのテープ夏木立
校風は文武両道夏木立
引き寄せる空の静けさ夏木立
広島県     非掲載
夏木立抜けて愛しの君に逢う
夏木立戦で散った御霊かな
二人きり夏木立の中照れくさく
夏木立元気いっぱい虫さされ
泣きべそが夏木立へと飛んでいく
大阪府     藤田康子
酔ふごとく秀句を反芻夏木立
夏木立麒麟は首を伸ばしきる
兵庫県     岸下庄二
銀輪の風切る音や夏木立
巡礼の登る石段夏木立
夏木立旧街道の一里塚
内海と外海分かつ夏木立
夏木立古き祠の山の神
千葉県     柊二
街道の深き轍や夏木立
埼玉県     飯塚璋
谷川の流れゆたかに夏木立
故郷の少年の日の夏木立
鳩鳴いてペンション村の夏木立
岐阜県     金子加行
夏木立かつて貧しき村を知る
絵手紙にいかに収めむ夏木立
藩校を継ぎし校舎や夏木立
健やかや光と風に夏木立
岐阜県     金子加行
父母捨てし故郷の跡や夏木立
静岡県     いたまきし
夏木立胎児のやうにハンモック
木漏れ日のゆたかに揺れて夏木立
百年の風のうつろひ夏木立
新潟県     近藤博
日差し受け葉の瑞々し夏木立
神域は神木高々夏木立
丈高くなほ亭々と夏木立
葉の繁り神域ゆたかに夏木立
鳥取県     瀬尾 柳匠
石垣に往時のよすが夏木立
木漏れ日は神のいたずら夏木立
星の夜は背伸びしてをり夏木立
かくれんぼのこゑの染入る夏木立
境内に遊ぶこどもや夏木立
奈良県     堀ノ内和夫
黒々と社務所の奥の夏木立
図書館へ風送りをる夏木立
兵庫県     季凛
夏木立夫讃美歌を隆々と
夏木立Uber eatsの休憩所
夏木立鼻血止まって列に入る
除菌除菌呼吸苦しや夏木立
「転勤になったよ」夏木立の夕べ
栃木県     鹿沼 湖
青空へ息づいてゐる夏木立
東京都     岩崎美範
行人の誰もが見上ぐ大夏木
密会を優しく包む夏木立
老いたれど杖を片手に夏木立
狐出るとや大夏木より先に
大夏木こころ淋しき時に行く
長野県     柳沢忠憲
ブランコやサーカスの夢夏木立
長野県     柳沢忠憲
天と地とブランコ揺れる夏木立
今年また仕掛け花火や夏木立
集いけり仕掛け花火の夏木立
歯を見せて大笑いする夏木立
愛知県     西谷寿
夏木立恋人思いただ歩く
夏木立ち空浮かぶ月微笑て
夏木立君と歩いて恋を知る
恋人に告白をした夏木立
夏木立君と歩いた日は遠く
山口県     ひろ子
城山へ案内のしるし夏木立
藪こぎや影を慕いし夏木立
長野県     木原登
四Bの鉛筆画よし夏木立
直線の奥社参道夏木立
地中なる樹根ゆたかに夏木立
図書館は無言の器夏木立
隣る木と影を一つに夏木立
神奈川県     鳥井原弘
レガッタの雫に光る夏木立
病室のカーテン揺れて夏木立
また明日手を振る先に夏木立
晴天に窓開け放し夏木立
トンネルの出口に光る夏木立
神奈川県     守安雄介
夏木立彼の胸板黒かりき
夏木立視界の要らぬ古砲台
間引かれし夏の木立や魚の宿
一枝毎緑違える夏木立
猿の頃君と睦みし夏木立
ブラジル     林とみ代
師の句碑が建ちて久しや夏木立
ブラジル     林とみ代
夏木立貴族の住みし館かな
乳母車の双子眠りて夏木立
高野山の奥の深さや夏木立
安珍の隠れし鐘や夏木立
東京都     伊藤訓花
夏木立コロナ禍にある居場所かな
ざわめきと紛ふ葉擦れや夏木立
夏木立今日も歩けて喜寿となる
夏木立ベンチに一人ページ繰る
夫に手を預けて歩く夏木立
東京都     猪俣ま悠
手土産は羊羹が良し夏木立
柔らかく影重なりぬ夏木立
夏木立湖面に音の無かりけり
故郷にせせらぎありし夏木立
夏木立通りし雨の薄緑
千葉県     長谷川ぺぐ
木洩れ日のきらきらパズル夏木立
岐阜県     ときめき人
酒蔵のトロッコレール夏木立
山口県     槇田敦子
老衰にて逝くはむつかし夏木立
犬小屋にのこる鎖や夏木立
手話の手の泣いて笑って夏木立
夏木立ワクチン予約できました
神奈川県     沼宮内薫
ママチャリの何度も通る夏木立
夏木立煙突白き焼却場
葉脈に濃淡ありぬ夏木立
夏木立チャペルに白き十羽の鳩
雨脚をはつきり写す夏木立
東京都     勢田清
境内に山蟻のいて夏木立
弁当を開く石段夏木立
東京都     勢田清
山の神祀る扁額夏木立
木漏れ日の程よきまだら夏木立
武蔵野のハケある丘や夏木立
群馬県     塩原 香子
夏木立風吹きぬける夕まぐれ
夏木立寄り添へる木もありにけり
雨降りて葉いろ艶めく夏木立
青き空ま白な雲よ夏木立
みずうみに色濃くうつる夏木立
千葉県     伊藤博康
苗木より幾歳今や夏木立
憂鬱の収まりかけて夏木立
夏木立腰の手拭ひ引き抜かむ
本殿の左右背後に夏木立
動かざるゼブラの如き夏木立
大阪府     津田明美
その昔翁も道す夏木立
夏木立青梅街道分岐点
天地の霊気吸い取り夏木立
夜は星と何を話すか夏木立
聞こえ来る札所の鐘や夏木立
島根県     非掲載
夏木立百のジョッキの光りけり
二回目の植樹祭来る夏木立
夏木立葉脈地球五周分
埼玉県     北川清
夏木立 尾根の木々の間 夕日かな
草刈りて 夫婦で茶飲む 夏木立
白き花 群生香る 夏木立
にわか雨 姿かすみて 夏木立
川釣りで 孫と語るや 夏木立
島根県     非掲載
髪キュッと結びて駆ける夏木立
島根県     非掲載
改札を抜けて一人の夏木立
三重県     平谷富之
散歩道 青々光る 夏木立
埼玉県     宥光
消しパンの画架に零るる夏木立
島風のくさやの匂ひ夏木立
道着ぬぐ少年剣士夏木立
荼毘に付す煙見上ぐる夏木立
初産の妊婦のベンチ夏木立
東京都     内藤羊皐
白幣の欠片残して夏木立
羽根音の幾つ重ねて夏木立
影深き夏の木立が児を捕ふ
あかときの雨に匂へる夏木立
禽たちの空を決めたる夏木立
大阪府     木山満
降る雨の束ねて入(い)るや夏木立        
振り向けば我ひとりなり夏木立 
老いてなお滾(たぎ)る想いや夏木立
秘めし過去解き放ちたき夏木立
老いも良し腰伸ばし見ゆ夏木立
富山県     岡野 みつる
逢う人の顔もやさしき夏木立
夏木立こんなに美味い握り飯
夏木立うわさ話が長くなり
東京都     長岡馨子
弁当を工事夫ふたり夏木立
千葉県     徳翁
木々の間ゴールに見立て夏木立
老夫婦手をとり奥へ夏木立
独語する己が声のみ夏木立
幹に凭り物思う我夏木立
日光路武士偲ぶ夏木立
神奈川県     井手浩堂
本殿に続く階夏木立
神奈川県     井手浩堂
夏木立映して静か山の湖
時折は栗鼠の飛び出す夏木立
一本は雀の宿よ夏木立
献血を終へて帰りぬ夏木立
千葉県     長谷川ぺぐ
鬱蒼と魔物ひそむか夏木立
大阪府     森 佳月
子供らは網をふりふり夏木立
秘密基地思い出したる夏木立
まっすぐな小径消えゆく夏木立
春日の神おわす気配や夏木立
滋賀県     中島正則
そのかみの城跡隠し夏木立
走り去るバイクの集団夏木立
ランナーの視線まつすぐ夏木立
ふところに別荘いくつ夏木立
みづうみに木陰をつくり夏木立
ブラジル     玉田千代美
夏木立もう打ち明けて良い頃と
句心に仰ぐ一樹の夏木立
夏木立月を支へて静かなり
徳島県     白井百合子
かくれんぼしてる二人の夏木立
教会にまつすぐ駈ける夏木立
花の香に迷い込むさき夏木立
折鶴や風で飛び立つ夏木立
川釣の影は我なり夏木立
宮城県     林田正光
夏木立抜ける近道父母の墓
大夏木右に曲がれば母校かな
木洩れ陽を見上ぐる空や夏木立
夏木立そこは昔の秘密基地
夏木立噂話のニつ三つ
宮城県     zazi
夏木立病院行きの市民バス
母と子の吐息を包む夏木立
夏木立中間テストただ中に
畦草も稲も育たぬ大夏木
大夏木午睡の中のこども園
長野県     柳沢昌子
ハンモック洩れる夏日の木立かな
ハンモックたちまち舟こぐ夏木立
岡山県     岸野洋介
何もかも許せる齢夏木立
檀那寺無住となりし夏木立
転居に景色変わりし夏木立
雄大な虹の松原夏木立
靄晴れて明るくなりし夏木立
東京都     石井真由美
木もれびやまわり路して夏木立
振りむいて母は電動夏木立
滋賀県     村田紀子
夏木立優しい声を聞きたくて
上り坂休んで行けと夏木立
雨音としゃべりたくなる夏木立
手紙から母の息吹や夏木立
東京都     二川昌弘
なんじゃもんじゃ背が高くなり夏木立
さわさわと涼しく揺れる夏木立
すだじいは何処の爺かと夏木立
日の光見えてまぶしや夏木立
くすのきの若葉広がる夏木立
沖縄県     稲福達也
夏木立渚の風の行き止まり
海鳴りのとどく慰霊碑夏木立
夏木立秀つ枝に病める昼の月
夏木陰嫗三人の昔菓子
沖縄県     稲福達也
朝に日にたれかれ憩ふ夏木立
兵庫県     髙見正樹
参道に砂利を踏む音夏木立
夏木立外は真昼のオフィス街
沢の音獣の過る夏木立
愛媛県     山家志津代
夏木立知恵の輪ほろり解けけり
修司忌の母の消えゆく夏木立
夏木立開通式のファンファーレ
静岡県     城内幸江
夏木立見え隠れする木の名かな
人影を探して歩く夏木立
夏木立光に酔つてしまひけり
グランドの声は響けど夏木立
夏木立不安になりて引き返す
神奈川県     みぃすてぃ
神苑に明るき影や夏木立
石畳続く参道夏木立
夏木立ひかり溢るる日牟禮茶屋
骨董の市の賑わひ夏木立
学び舎の遠くに見えて夏木立
福岡県     すがりとおる
菓子焼く香牧師館より夏木立
松風の唐津街道夏木立
神奈川県     安藤 真青
くもの糸一葉ゆらし夏木立
テニスあと姦し声や夏木立
広島県     老人日記
三年に一度の開帳夏木立
我の名を呼ぶ人のいて夏木立
本尊は一木仕立て夏木立
通り過ぐ雨打つ梢夏木立
東京都     豊宣光
太陽に負けじと高し夏木立
夏木立緑濃くなる雨のあと
東京都     豊宣光
茂る葉の重苦しさや夏木立
換気する窓を開ければ夏木立
夏木立広げる陰に休息す
三重県     後藤允孝
ひた走る風の声あり夏木立
神神の宿る熊野の夏木立
夏木立抜ければそこは吾が影よ
夏木立深閑として神の道
千年の杉や檜や夏木立
静岡県     大澤定男
古戦場乗馬体験夏木立
鍬洗う祖父母井戸端夏木立
教会を一点景に夏木立
水彩画孫へ手解き夏木立
間伐を終えて一ト山夏木立
東京都     松本征枝
深呼吸して仰ぎ見る夏木立
半月も急かす令和の木々の夏
夏の木々生活なじむ一年生
夏木立風に応へるオノマトペ
夏木立噂話しは届かざり
埼玉県     守田修治
夏木立日曜画家とすれ違う
北東に飛行機雲よ夏木立
大空に遊ぶ象あり夏木立
凛として近衛兵かな夏木立
俄雨北斎描く夏木立
愛媛県     山家志津代
夏木立サナトリウムの白い柵
埼玉県     小玉拙郎
動く眼にモアレ模様の夏木立
次々と群れ鳥を呑む夏木立
夏木立離れ小島のごとく在り
埼玉県     小玉拙郎
少年の惑いをつつむ夏木立
維新には戦の地なる夏木立
奈良県     平松 洋子
夏木立フォークダンスの若者よ
せせらぎは心のゆとり夏木立
青空に近づき過ぎる夏木立
神奈川県     矢神輝昭
夏木立梢に雲のさざれ石
夏木立抜けて山道雨となり
夏木立揺るがす響きジャズ祭
夏木立杖を立てかけて雨宿り
夏木立洞を残して鳥やまへ
神奈川県     海野優
夏木立目鼻薄れし地蔵尊
変はる郷変はることなき夏木立
夏木立せし悪戯の隠れ場所
夏木立一木遺す旧家かな
神奈川県     龍野ひろし
夏木立孤独の画家の住み着きし
夏木立抜けてホテルの赤き屋根
京都府     村田稔子
あらここに ありの行列 夏木立
あと百段 社の屋根に 夏木立
水あびて ゆれる墓石 夏木立
茨城県     長洲研志
消毒す植木屋の声夏木立
夏木立肌のかゆみも癒えにけり
夏木立咲き乱す如マスク達
夏木立大気の塵も絡めとり
教会の讃美歌消ゆる夏木立
東京都     佐藤富幸
夏木立分け入る沢の響きかな
夏木立触れる木肌の生命かな
パドックに馬の背光る夏木立
東京都     佐藤富幸
病棟の小さき笑顔や夏木立
夏木立空衝く緑迷いなし
東京都     佐藤美智子
地蔵の手夕日差し込む夏木立
夏木立円陣組みてナイン散り
朝の日に葉音きらめく夏木立
しののめに鳥の声染む夏木立
パドックに走る光や夏木立
東京都     よしだ悠
日盛りの川面に滾る夏木立
埼玉県     いまいやすのり
誰も居ず影深うして夏木立
置かれをる椅子とテーブル夏木立
走り根の迫り出す墓地や夏木立
振り向いて手招きする子夏木立
人去つてよりの静けさ夏木立
東京都     石川昇
歩く虫飛ぶ虫もいて夏木立
横座りしたる黒牛夏木陰
埼玉県     石塚彩楓
一列に光る銀輪夏木立
夏木立ぐるぐる子らの縄電車
百年の木造校舎夏木立
夏木立婚礼の荷の賑はしく
千年の社より風夏木立
千葉県     峰崎成規
風遊び木漏れ日遊ぶ夏木立
仰ぎ見る神の依代夏木立
蒼穹と雲が天蓋夏木立
夏木立独立告ぐる次男坊
病棟の静謐包む夏木立
大阪府     鈴木千年
ここよりは禅定の道夏木立
御熊野の雲をつらぬく夏木立
大阪府     鈴木千年
右箱根左鎌倉夏木立
乾坤の勢しづかに夏木立
カヤツクを漕ぎ上りゆく夏木立
千葉県     渡邉竹庵
川沿いの路はいつしか夏木立
きざはしの長き社や夏木立
別荘の並ぶ湖畔や夏木立
夏木立ひそと夢二の記念館
檀林の大屋根までの夏木立
大阪府     鈴木三津
ざわめいて日のかけら撒く夏木立
糺の森白馬駆けぬく夏木立
藩校跡楷樹楷樹夏木立
図書館より博物館へ夏木立
潮騒のごとき葉擦れや夏木立
埼玉県     眞吾
本宮へ磴延々と夏木立
夏木立泰然として土鳩鳴く
だわだわと湧立つ風や夏木立
千葉県     風泉
・田には水九十九島や夏木立
・フロントガラスを走る蒼さや夏木立
・胸開け仰ぐ冷気や夏木立
・夏木立抜けて潮騒六角堂
愛媛県     加島一善
大夏木ポチの家をも覆いけり
精霊のゐさうな宮の大夏木
福祉バス暫し停まりし夏木立
夏木立終始無言の老夫婦
野良の犬夏木の影を追つてゆき
山口県     山縣敏夫
児童等の下校見守る夏木立
白い砂古刹の庭に夏木立
山口県     山縣敏夫
コロナでも立ち寄れないさ夏木立
夏木立後目にバスが走り去る
夏木立綺麗どころの傍に立つ
北海道     飯沼勇一
夏木立ベンチの上に本二冊
夜行バス故郷は近し夏木立
合宿の掛け声抜け来る夏木立
雨雲の接近ざわめく夏木立
夏木立どこまで往っても夏木立
東京都     安藤ゆき子
口ずさむゲーテかハイネ夏木立
夏木立迷ひ鸚哥の羽根ひらり
夏木立君の笑窪とミントガム
大阪府     福田喜音
相談事またも解決夏こだち
東京都     笹木弘
夏木立の裏側にある弓道場
子供には大きく見える夏木立
山頭火の振り返りたる夏木立
夏木立の右から左抜ける風
パトカーが一気に抜ける夏木立
東京都     中田ちこう
夏木立宇宙膨脹する如し
一両の気動車送る夏木立
神奈川県     原川篤子
走り根に翳さす八ヶ岳(やつ)の夏木立
夕さりて鳥の褥の夏木立
新築の駅舎に続く夏木立
夏木立尽くる処に水の音
夏木立退り仰げば鳥の声
埼玉県     章代
夏木立ゴッホの糸杉巻き込みぬ
八幡坂や青海抱く夏木立
滋賀県     船岡房公
御朱印を受けし三井寺夏木立
滋賀県     船岡房公
木の根道うねる鞍馬や夏木立
夏木立熊野古道の石畳
神奈川県     亀山酔田
夏木立人それぞれに抗えり
整然と夏木立あり漁村過ぐ
人影の次々吸われ夏木立
胸高に帯締め上げて夏木立 
夏木立秘密の触手伸ばし伸ぶ
神奈川県     志摩比魯
医療従事者瞬時の憩い夏木立
シーソーに子の影も無く夏木立し
夏木立ベンチ二つに人一人
大阪府     酒梨
白昼のパワースポット夏木立
木漏れ日が滴つてゐる夏木立
お接待受くる笈摺夏木立
様々な陰を呑みこむ夏木立
ライオンがあくびしてゐる夏木立
千葉県     伊藤順女
やまももの陰深くして大夏木
五十年経ちし団地の夏木立
夏木立のベンチへ急ぐ昼休み
夏木立に入りて匂ひを深く吸ふ
夏木立のら猫のゐる木のベンチ
愛知県     斉藤浩美
神域や夏木立だけが残るのみ
老幹を登りし昭和夏木立
乱世より樹齢重ねて夏木立
紙垂揺れて神木らしき夏木立
神域に穢れなどなく夏木立
東京都     松本佳明
青々と葉に照り返し夏木立
通学路子らが駆け抜け夏木立
東京都     松本佳明
カブトムシ網から逃げる夏木立
夏木立木々の香りに誘われて
夏木立風になびく葉散歩道
埼玉県     水夢
夏木立牧の仔馬の飛び跳ねて
河童橋へつづく歩道や夏木立
五百羅漢恋のささやき夏木立
立ちつくす鹿の瞳に夏木立
夏木立奥の院までつづく道
神奈川県     塚本治彦
磐座の残る上社や夏木立
夏木立奥に荒ぶる三輪の神
健在の大太法師や夏木立
柳生路の首切り地蔵夏木立
鉄格子ある狂院や夏木立
京都府     奥田早苗
さえずりと法螺貝流る夏木立
夏木立清閑の気の降り注ぎ
温泉の一人見ている夏木立
青木立虚空をさして仁王門
夏木陰定位置なるや太極拳
愛媛県     アリマノミコ
夏木立とぎれ靴紐しめなおす
滋賀県     別役昌子
夕風の不在証明夏木立
夏木立自転車押してゆく二人
宇宙から夏木立へと陽の光
木漏れ日は幾何学模様夏木立
夏木立シート広げて寝転んで
徳島県     井内胡桃
牧牛の声伸びやかや夏木立
藁屋根の勾配ふかし夏木立
少年の脛の長さや夏木立
徳島県     井内胡桃
水神の小さき祠夏木立
回廊の太き柱や夏木立
東京都     岩川容子
ぬきん出て天空目指す夏木立
ありなしの風に径あり夏木立
夏木立ぬけて神社の鈴をふる
夏木立奥社へ渡る土の橋
神奈川県     重兵衛
夏木立素木の塔の燦めきぬ
夏木立塔燦然と屹立す
早駆けの道延び行くや夏木立
夏木立人影の無き古舘
夏木立昔牛車の往きし道
東京都     石井真由美
廃校の小枝の庇夏木立
八幡の反る社にも夏木立
福岡県     西山 勝男
寂として英彦の行道夏木立
山頭火籠りし御堂大夏木
坊跡の石垣さぶる大夏木
奥宮へつづく参道夏木立
老いてなほ背筋をぴんと大夏木
埼玉県     飛翔
一村の風を集めて夏木立
遠き日のブランコ揺れる夏木立
ほどほどに風の径ある夏木立
夏木立ぽつんと空に雲
夏木立かすかに聞ゆハーモニカ
三重県     北村英子
新しき命育む夏木立
夏木立陰に集ひし猫二匹
スタミナを保つ術あり夏木立
あちこちに会話の響く夏木立
三重県     北村英子
父母と嬰児守る夏木立
香川県     辰野
夏木立ステンドグラスめいて風
日輪を求め空へと夏木立
夏木立遠足中のエスケープ
夏木立マスク外して深呼吸
日輪を求め伸び行く夏木立
茨城県     小松崎孝志
参道の砂利の足音夏木立
水平に飛び出す鴉夏木立
駅からの「平和通り」に夏木立
法面の太き走り根夏木立
木漏れ日のアート観賞夏木立
埼玉県      哲庵
長崎の鐘鳴り響く夏木立
夏木立見え隠れする白い馬
除染車の二台消えゆく夏木立
夏木立みずゑでで描く昼下がり
約束の指輪転がる夏木立
福岡県     深町明
子ら渡るロープ巡らせ夏木立
いつもより背筋をしやんと夏木立
刻みたる一樹なつかし夏木立
ハンモック架けてひとりの夏木立
神奈川県     池田恵美
この先に古戦場あり夏木立
真青なる空を目がけて夏木立
自転車の子ども集結夏木立
野球帽かぶり直す子夏木立
降つてくる諸鳥の声夏木立
東京都     右田俊郎
木漏れ日と風でもてなす夏木立
息吸って大きく吐いて夏木立
東京都     右田俊郎
夏木立入りて安堵の深呼吸
病棟の窓より見入る夏木立
夏木立優しい風の吹き抜ける
東京都     水野邦彦
マウンドの少女励ませ夏木立
頬つけば吐息も優し夏木かな
夏木立フレアスカート靡く朝
聖歌隊響き合わせる夏木蔭
北海道     風花美絵
駅前に大夏木立あつたはず
福岡県     多事
土手に寝る自転車二台夏木立
点描の人の行き来よ夏木立
夏木立消毒用のミニボトル
海へ延ぶ二本の轍夏木立
夏木立抜けて土俵の朱き盛り
東京都     高橋栄
セザンヌの裸婦のびやかに夏木立
純白の馬の消え行く夏木立
国宝の檜皮の反りや夏木立
ここからは神通う道夏木立
教会に音なき雨や夏木立
鹿児島県     南の島の王子さま
上高地のり弁開く夏木立
木挽き唄聞こゆるやうな夏木立
川下り水面に揺れるる夏木立
遍路みち伊予の海見ゆ夏木立
神奈川県     水野伸一
青空を胴上げするや夏木立
雨風を粛々と受け夏木立
波飛沫拭う岬の夏木立
忙しない野暮を見下ろす夏木立
草野球ボール拾いの夏木立
神奈川県     佐々木重夫
あたらしき銀輪駆くる夏木立
陰日向に小径刻む夏木立
開港の汽笛にふるる夏木立
翻す帆布のサコッシュ夏木立
夏木立父の学びし伊那の園
北海道     小殿原 あきえ
小夜風の産ぶ声しづか夏木立
夏木立われの翳りを隠しけり
神奈川県     髙梨裕
振り掛る雫は雨の夏木立
草上のブロンズの森夏木立
夏木立寂光院の尼衣
剣道着風に干されて夏木立
燦然と武士の門夏木立
東京都     豊島仁
いつもより寺に人あり夏木立
森深き読経流るる夏木立
森の雨きらりとやみて夏木立
夏木立森に独歩の風が吹く
図書館にカレー匂いて夏木立