俳句庵

7月『夕焼』全応募作品

(敬称略)

広島県     
夕焼けに母の眼を重ねみる
夕焼けに向かって叫ぶ馬鹿野郎
校庭の夕焼けこやけまた明日
窓の外夕焼け空に君想う
夕焼けが見守る君の頑張りを
東京都     憂
夕焼けて戦争の炎が近くなる
岐阜県     金子加行
夕焼にすつくり立てと吾れの影
夕焼の富士観るために新幹線
現役の湯屋の煙突夕焼ける
夕焼の染める団地やさらに老い
夕焼の高層階に母独り
栃木県     鹿沼 湖
夕焼に包まれてゐる家路かな
静岡県     いたまきし
夕焼や万年雪は幕を引き
夕焼といふ目薬のしみるほど
千葉県     柊二
富士山のワイングラスに待つ夕焼
東京都     長岡馨子
スリバンに飛び出す五人大夕焼
東京都     岩崎美範
大夕焼車窓の富士を朱に染むる
夕焼背に家路を急ぐ肩車
摩天楼火柱となる大夕焼
仰ぎ見るビルの谷間の夕焼空
まさをなる空を朱に染め夕焼くる
愛知県     西谷寿
夕焼の果てに神国願う君
夕焼に祈る平和はいまだ来ず
夕焼は帰る時刻の目印に
夕焼や二人歩いた思い出を
愛知県     西谷寿
子ども言う夕焼雲は火事のよう
新潟県     近藤博
海原を真っ赤に染むる大夕焼
真っ赤に燃え立ち浮かぶ夕焼雲
天空と海原一重に大夕焼
ほむらごと西空燃ゆる夕焼かな
たたなはる山々夕焼に赤く染む
大阪府     藤田康子
近くとも遠くとも見ゆ海夕焼
夕焼や脚絆の小鉤外す父
東京都     笹木弘
江ノ島の海を真つ赤に大夕焼
夕焼け小焼けの鐘楼に夕焼す
本栖湖に大夕焼の逆さ富士
オカリナの響く河原に夕焼す
西部劇のガンマンの背に大夕焼
長野県     木原登
海夕焼車窓に旅の鈍行車
肩叩く友欲し山の大夕焼
夕焼け小焼けの鐘の鳴りだす往生寺
良寛の像と見てゐる夕焼かな
牧牛の影が草食む梅雨夕焼
埼玉県     岸保宏
夕焼けにスマホをかざす旅の人
夕焼けや机上のノート紅く染め
夕焼けや白磁も染まる陶器市
兵庫県     岸下庄二
夕焼や指切りをして別れる子
夕焼や咥へ煙草の老漁師
憂きことをみな忘れさす大夕焼
夕焼の百選に入る無人駅
海に向く棚田千枚夕焼ける
徳島県     白井百合子
夕焼や窓辺に座る猫二匹
徳島県     白井百合子
夕焼や父母ケ浜の福の神
ポケットに少し夕焼け入れてみる
夕焼や二階の窓を赤に染め
夕焼や校庭に並ぶだんご虫
奈良県     堀ノ内和夫
夕焼けて影絵となりぬ二人連れ
夕焼けや釣り師の見やる瀬戸の海
石川県     めぐみ
遊ぶ子に 母のひと声 夕焼空
銀輪の 背に夕焼の 被さりて
家路へと 急ぐあぜ道 夕焼て
車窓追ふ 海一面の 大夕焼
神奈川県     守安雄介
テレワーク父の背にみる夕焼かな
夕焼や西を向くもの皆茜
夕焼けやお酒の薫る肩車
夕焼けや鴉の森の反省会 
夕焼けに烏競り合う避雷針
千葉県     玉井令子
夕焼や子は稽古事忙しき
夕焼を纏ひて飛びぬヘリコプター
夕焼の砂浜歩む二人かな
夕焼や富士の稜線くつきりと
街路樹に戻る鳥たち大夕焼
神奈川県     志摩比魯
孫に肩揉まれ夕焼雲に乗る
ふるさとのあの山も今夕焼けか
赤煉瓦倉庫夕焼け濃かりけり
岩手県     江原茂実
大夕焼トイレを磨く娘かな
夕焼や腑分けされし罪人墓地
夕焼をリュックに詰めて下山かな
全天の夕焼け子らの小焼けかな
岩手県     江原茂実
夕焼や古代城址の土の壁
山口県     山縣敏夫
夕焼けは 人類みなに 平等だ
夕焼けに 酔うたジイジの 肩車
古代から 夕焼け空は 生きている
コロナ去り 夕焼け空の 夢を見た
沖合に 夕焼け雲が 浮かんでる
福岡県     深町明
ゆつくりと日の溶けてゐる夕焼かな
ああ二十五日のATM夕焼
夕焼や車したがへ耕運機
本当に窓際にゐる夕焼かな
夕焼や車中にマスクせぬ自由
兵庫県     岸野孝彦
夕焼けや町工場の灯がともる
夕焼けの丘に並ぶは過去未来
明日は晴れ夕焼け見ればそう思う
夕焼けや舗道に長き赤き影
夕焼けや今日の務めを終えし人
京都府     村田稔子
夕焼けや 湖面にポツン 竹生島
ネオン街を過ぎ 夕焼けうつくし
車窓には 夕焼けの村 一人旅
埼玉県     北川清
瀬戸の海 宮島鳥居 夕焼けて
夕焼けや 戦艦大和 ドック残し
夕焼けや 屛風ヶ浦か ドーバーか
小豆島 二十四瞳 夕焼けて
夕焼けの 美し景色の 夢をみる
東京都     伊藤訓花
雑踏のざわつく歩道夕焼空
年寄のじっと見上ぐる夕焼かな
ふるさとの山河色めく大夕焼
東京都     伊藤訓花
夕焼の街角匂ふラーメン屋
白髪を夕焼が染むる背かな
奈良県     平松 洋子
夕焼の空を離さぬカラスかな
坂上る夕焼浴びる為だけに
夕焼と背中合わせで立つ厨
山口県     ひろ子
夕焼けを浴びて散歩の遠回り
夕焼けや下校チャイムへ駆けだす子
滋賀県     村田紀子
夕焼けは母の温もり塩の味
雨上がり夕焼け空に秋刀魚の香
二重跳びやっと跳べたと夕焼けに
夕焼けに語りかけてる野球帽
夕焼けに向かって走る子等の声
大阪府     森 佳月
大夕焼瞼の裏も朱に染まり
石段を下から染めて夕焼す
吾死なむ夕焼のなか夢のなか
白鷺城朱鷺色に染め大夕焼
夕焼や人さらい来ると母の言う
東京都     石川昇
夕焼けのシートノックやあと五本
老人のひと日の重み夕焼空
沖縄県     稲福達也
夕焼の赤日よぐる機影かな
夕焼や波止をもとほる翁ゐて
いしぶみの細き文字まで夕焼けて
夕焼や水切り競ふ子らの声
在り在りて見飽かぬ島の大夕焼
三重県     藤田ゆきまち
夕焼けをもてなしてゐる出窓かな
ラーメン屋初日完売大夕焼
ゆふやけや漁船を包み込むやうに
埼玉県     水夢
竹林の奥へ奥へと夕焼ける
夕焼のうさぎ島への帰り船
夕焼が流れドナウのカルレ橋
夕焼や君がそろそろ戻る頃
尾道に帆布織る音や夕焼空
千葉県     長谷川ぺぐ
泣き崩る北ウイングの夕焼かな
大阪府     木山満
夕焼けや地球の果てに足伸べて
夕焼けや母膨らみて風に舞う           
不意に鳴る聖堂の鐘夕焼けり
山並みも街並みも皆夕焼けり 
夕焼けて明日(あした)に弾む命透く
千葉県     伊藤博康
夕焼に鴉が急ぐ家路かな
夕焼に応へてをりぬ沼の精
夕焼や空に続きし海と陸
夕焼のシャッターチャンス逃したり
天地を包む夕焼の広がりぬ
東京都     右田俊郎
下駄を蹴るやっぱり表夕焼ける
夕焼の空をゆるりと観覧車
ごはんよと母の呼ぶ声大夕焼
夕焼の路地に豆腐を売る喇叭
夕焼や家路うながすチャイムの音
大阪府     津田明美
石一つ蹴って夕焼に返しけり
夕焼空明日又ねと弾む声
ひぃふぅみぃ夕焼に帰る子等の影
夕焼や幼き日々の原風景
遠き日の夕焼を背にガキ大将
群馬県     塩原香子
夕焼の退せぬ間に子よ帰り来よ
群馬県     塩原香子
夕焼や紅玉色に染まりけり
草ゆれて妣の居さうな夕焼かな
夕焼やひと声鳴きて鳶舞へり
束の間の満山燃ゆる大夕焼
広島県     老人日記
夕焼見る余命知りたる者同士
何ひとつ解けぬ人生大夕焼
八雲立つ出雲一国夕焼ける
黒々と富士眠らせて大夕焼け
東京都     勢田清
夕焼ぬ五重塔も斑鳩も
薔薇色の空夕焼の日本海
夕焼の別れ連山遥かなり
夕焼の色褪せるまで妻と我
鰯雲空一面の夕焼に
埼玉県     宥光
白虎門ぬけて夕焼中華街
眼裏を染めて夕焼ことのほか
大夕焼光の層のミルフィーユ
夕焼けて産土砂州のその黄金
夕焼やこれから起きるめぐり逢い
宮城県     林田正光
夕焼の太陽の塔輝けり
大夕焼逆光富士の雄姿かな
廃校の消えゆく歴史大夕焼
今日の日が旅路の終わり大夕焼
去りがたき夕焼雲の消ゆるまで
千葉県     峰崎成規
喧嘩してひとり帰る子夕焼雲
大夕焼多色の街を一色に
石蔵の石のざらつき梅雨夕焼
夕焼を白き卓布へ招き入る
千葉県     峰崎成規
予期できぬ明日を託す大夕焼
岡山県     岸野洋介
夕焼や居間に夕刊開けしまま
手で日除け夕焼け突っ切る一輪車
瓜蔓を引けば夕焼寄って来る
妻の墓這う子蜥蜴も夕焼ける
蜘蛛の網包みきれない大夕焼
東京都     佐藤富幸
夕焼や検査結果の足重し
夕焼やワクチン接種の人の列
夕焼や黒き甍に灯る窓
夕焼や急ぐ家路の米五キロ
夕焼や紅き十字の飛行雲
東京都     佐藤美智子
飛行機の轟く空や夕焼す
夕焼の閉店文字を染めにけり
小仏を抜ける車窓の大夕焼
しぶきにも夕焼浴びて海豚跳ぶ
夕焼を海の温泉引き寄せり
神奈川県     猪狩鳳保
夕焼やこころの芯も染めあげて
人住まぬ垣根を染めて大西日
手渡しに受ける新聞大夕焼
閉門の山城黄金に大夕焼
陶匠の目を休めたり大夕焼
大阪府     八王寺宇保
夕焼や宅配便はまだ途中
夕焼や工具準備の保線員
花街に人気少なし梅雨夕焼
夕焼やパソコン閉じるテレワーク
病窓の夕焼雲は濃紫
東京都     内藤羊皐
焼香の列の掉尾の夕焼かな
東京都     内藤羊皐
吉祥天棲みし汀の夕焼ける
夕焼の跡を留める船板塀
夕焼に妻が黒髪梳る
夕焼に吉見百穴耀へり
三重県     後藤允孝
天と地の粋なはからひ大夕焼
大夕焼江の島黒く沈みゆく
夕焼や農機具しばし立ててをく
ご飯よの母さんの声夕焼空
暮染むる街に静寂の夕焼雲
神奈川県     塚本治彦
夕焼や鹿煎餅の店仕舞
林立の麒麟の首の夕焼けて
夕焼や牛を急かせる牛追女
大漁の予祝のごとき大夕焼
夕焼や三蔵行きしガンダーラ
埼玉県     いまいやすのり
対岸へ手漕舟ゆく夕焼かな
ビルの壁刻々動く夕焼かな
夕焼見て夕焼け小焼け口ずさむ
山あひに夕焼消えゆく奥穂高
大夕焼瀬戸の小島は静かなり
兵庫県     髙見正樹
薄曇り煙るがごとく夕焼ける
海夕焼クルーズ船のシルエット
雨近し夕焼雲の色映ゆる
東京都     二川昌弘
夕焼けは胡瓜をかじり涼むもの
夕焼けで鳶も家に帰る頃
夕焼けよ暑さを全部持って行け
夕焼けはコロナとともに西に入り
夕焼けを追う蝉の声鳴りやまず
香川県     辰野
夕焼のブレーキ音や聞き分ける
夕焼やレスキュー目指す覚悟嗚呼
神奈川県     沼宮内薫
大夕焼いつもカレーは金曜日
うそ泣きの涙を映す大夕焼
撮り鉄の脚立も染める大夕焼
夕焼けに力をもらふ野良仕事
夕焼けをおんぶしてゐる肩車
三重県     北村英子
夕焼の明日も晴れか気味悪し
スーパーの外の夕焼家事の待つ
夕焼の外来医師はよすがなり
夕焼の移ろひしかと車窓より
夕焼や愛する者の住みかへと
福島県     松井くろ
新幹線の止まらない駅大夕焼
岐阜県     雅風
浜に寄す波まで焦がし大夕焼
江ノ電の窓より美しき夕焼かな
伊吹嶺に座る夕焼雲一朶
みはるかす大佐渡小佐渡夕焼けぬ
夕焼の海沸かすかに大炎上
埼玉県     小玉拙郎
鉄棒で逆さに夕焼け見ている子
売り切って夕焼け仰ぐ豆腐店
夕焼けの唄思い出し思い出し
楽器ごと夕焼け揺れるブラスバンド
地球儀を東にめぐる夕焼けかな
東京都     猪俣ま悠
夕焼やローカル線に近き海
夕焼ける校舎時計は二時のまま
夕焼を挟むゲーテの詩集かな
三匹の猫夕焼ける待合所
静岡県     いたまきし
東から西にかけての夕焼かな
東京都     服部かつこ
夕焼に硝子の虫が鳴きにけり
夕焼や空弁当の音がする
埼玉県     釜眞手打ち蕎麦
朱黒の夕焼の黒の中の家
夕焼の湖と空とを分つ橋
夕焼雲鉄橋渡る武蔵野線
東京都     安藤ゆき子
大夕焼駱駝の目指す地平線
白猫の親子のあくび夕焼雲
トランペットの余韻抱きし夕焼雲
三重県     平谷富之
帰り道 夕焼け色に 染められて
神奈川県     矢神輝昭
曳舟の黒黒河口や大夕焼
ケチャダンス寺は夕焼けて始まりぬ
夕焼へ流るる河口マグマかな
夕焼に一日の絵巻広がりぬ
擬宝珠には擬宝珠の安堵夕焼け空
神奈川県     安藤 真青
夕焼けへダイブのドライブ高架橋
人口の白砂青松夕焼ける
小屋そばのピークに立ちて大夕焼
千葉県     長谷川ぺぐ
夕焼に消えゆく翼なみだ色
愛知県     新美達夫
海中に都さぶらふ大夕焼
遥拝の伊勢神宮も夕焼かな
湧きおこる感謝の心夕焼かな
広島県     Dr.でぶ
初孫の報せ届きて大夕焼
神々のケンカの後の大夕焼
夕焼けに穴の開きたるコンバース
廃線の錆の香りて夕焼ける
岐阜県     ときめき人
夕焼や光と闇の共演美
東京都     山﨑勝久
大夕焼われ立ち尽くし須臾の宙
夕焼に突放禁止の貨車の行く
あの犬がそろそろくるよ夕焼け雲
神奈川県     龍野ひろし
配達を終へ夕焼のバイクかな
夕焼や自転車に乗せ子と帰る
どんな色この夕焼の裏側は
夕焼の砂場に残る熊手かな
神奈川県     亀山酔田
シチリアの島よ夕焼雲の中
夕焼けや石段下りて買うおかず
夕焼けやシチリアワイン濃く渋く
夕焼けや巨船を留めたロープ解く
夕焼はローマの真上歴史燃ゆ
東京都     豊宣光
夕焼や遊び疲れて子ら帰る
山里に夕焼雲と晩鐘と
夕焼や凶事の知らせ来るごとく
夕焼やかつて空襲ありし街
キャンバスに夕焼描く赤絵具
島根県     
古紙に出す旅のカタログ大夕焼
島根県     
湖の端から端へ大夕焼
島根県     
夕焼や八雲旧居の板硝子
島根県     
谷底の村の短き夕焼かな
茨城県     小松崎孝志
夕焼や線路に動くシルエット
夕焼撮る人の仕草の影絵なり
夕焼や月に寄り添う紅い星
夕焼を右に急ぐや東北道
列車来る夕焼雲を連結し
神奈川県     原川篤子
大夕焼明日は帰国の地中海
神奈川県     原川篤子
接岸の白き巨船や大夕焼
火の鳥のごとき雲飛ぶ夕焼かな
五十五階なるこの窓の大夕焼
校庭に終鈴響く夕焼かな
茨城県     長洲研志
献立はのらりくらりと夕焼雲
敗戦の夕焼昨日より紅く
夕焼や思い出したる母の声
夕焼や白きご飯の炊ける頃
夕焼や青いトートの女の子
大阪府     永田
最終のバス夕焼を連れ去りぬ
大阪府     鈴木千年
夕焼を見し目東の空を見る
夕焼や明日を約して老三人
夕焼や勅額の文字きはやかに
夕焼の雲の百態見て飽かず
夕焼の大海原のあるばかり
大阪府     鈴木三津
夕焼の海へまつすぐ夕焼川
晩鐘や天も琵琶湖も夕焼けて
夕焼荘厳巌頭に合掌す
夕焼やボールを探す子供達
もう灯さぬ堺灯台夕焼くる
埼玉県     石塚彩楓
甲高き機械音せり大夕焼
馬洗ふ川の濁りや夕焼す
山々の形変はらず大夕焼
もう一度叱って欲しい大夕焼
夕焼のゴールへシュート父待つ子
ブラジル     林とみ代
夕焼くるピサの斜塔や茜色
夕焼の彼方に友は逝きにけり
ブラジル     林とみ代
原始林真っ赤に染めて大夕焼
夕焼や子等散りぢりに園去りぬ
夕焼の里に別れし母偲ぶ
神奈川県     立野音思
夕焼や影を追ひかけ子ら帰る
夕焼や喜怒哀楽の溶けてゆき
夕焼や校舎の影の長々と
夕焼や山にこだまの鐘の音
束の間の夕焼のとき喫茶店
静岡県     大澤定男
夕焼や片帆を畳む祖父ありぬ
夕焼や就職列車に続々と
夕焼や美空ひばりの七つの子
夕焼や地磯へ卓袱台母と子と
夕焼や祖母に二つの砂時計
静岡県     城内幸江
忘れ物ベンチで待つて夕焼る
夕焼は溢れ私の街に来た
夕焼や町の時報は変わりなく
小窓には窮屈さうな大夕焼
夕焼や部屋の数ほどいない人
大阪府     酒梨
グランドキャニオンと妻と大夕焼
夕焼に癒されてゐる吾がゐる
ジェット機を呑み込んでゆく夕焼雲
夕焼ける君の瞳もゆふやける
夕焼の中から帰還ドクターヘリ
東京都     中田ちこう
野仏と不知火の海夕焼けて  
夕焼けやににぎのみことこうりんす
神奈川県     井手浩堂
マンションの間に富士の夕焼かな
就中酒田の沖の夕焼かな
神奈川県     井手浩堂
夕焼やグランドキャニオンめく谷間
千葉県     伊藤順女
夕焼や昭和はけふも切なくて
夕焼やまだまだ釣れる堤防に
夕焼や波に崩るる砂の城
北海道     飯沼勇一
大仏の勤めを終へし夕焼かな
テレワーク終えてひと息大夕焼
岸壁に舟待つ猫や大夕焼
ヤッホーに峰越し応ふ夕焼かな
火の波の寄せ来る浜辺大夕焼
愛知県     いちご一会
見に来いと呼ぶ顔も染め大夕焼
惜しみなく天をプロマピ大夕焼
千葉県     徳翁
夕焼や不動のままに身を焦がす
地平へと夕焼追うは旅人よ
夕焼やしゃがむ犬へと語りかけ
夕焼けるカレーの匂い小走りに
愛媛県     加島一善
寄り添ひて夕焼見送る五六組
何色をもつと足そうか大夕焼
堤防のふたりを包む大夕焼
空と海すべて使つて大夕焼
大夕焼ケチャックダンス始まりぬ
千葉県     四葩
夕焼や若き父押す乳母車
夕焼雲母を待つ子と見てゐたり
福岡県     川崎 日知
不条理や今日の夕焼の赫きこと
鉄棒を回り夕焼に着地せり
をさなごにとはれてをしふゆふやけと
千葉県     渡邉竹庵
夕焼やシャッター街は我が故郷
滋賀県     別役昌子
血糖を測るナースと夕焼空
滋賀県     別役昌子
鉱山の朽ち果てし跡大夕焼
太陽を海へ落として夕焼雲
石山の岩へ淡海の大夕焼
妙心寺山一帯の大夕焼
東京都     岩川容子
花買って大夕焼のなか帰る
知らぬ世へ迷い込みそう大夕焼
夕焼や優しいことを子に言われ
夕焼へ自転車を押す坂の町
埼玉県     飛翔
今日ひと日五回笑ふて大夕焼
夕焼をスマホにをさめ急ぐ家
よき昭和思い出す為夕焼ける
夕焼を背負いて帰る部活の子
よく回るサインポールも夕焼し
埼玉県     小安章代
夕焼の山桃色に燃えし日よ
物欲のなき身の軽さや夕焼雲
歪み硝子に明治の夕焼夢心地
夕焼やワクチン躊躇の身でありし
ブラジル     玉田千代美
夕焼に生きる喜び手を合す
夕焼や心に沁みて幸祈る
千葉県     風泉
・玄関へ燃える夕焼け金魚鉢
・西の窓染める夕焼け吾の墓標
・夕焼けに染まるリビング額の富士
・夕焼けの染める四畳に溺れけり
・夕焼けの消えて車窓に妻の顔
神奈川県     海野優
夕焼やひとつふたつと団居の灯
夕焼や逢魔が時の摩天楼
夕焼て帰り促す七つの子
神奈川県     光南
球場の灯の点り初む夕焼かな
尖塔の黒く聳えて大夕焼
大夕焼五重塔の黒き影
大夕焼今日一日の暑さかな
ひとり見る二人で眺めし夕焼かな
東京都     水野邦彦
思い果つ夕焼雲のむこうがわ
夕焼と並び笑う子たくましき
夕焼けと鬼に見つかりかくれんぼ
夕焼を描く絵の具の多さかな
燃え盛る夕焼裂けやほうき星
愛知県     斉藤浩美
逃げ場なき都会に生きて夕焼空
夕焼に解けてみようか自暴自棄
アングルを決めかねている夕焼雲
下車ひとり校歌の夕焼撮りにゆく
祈りだけでは償えぬ夕焼雲
埼玉県     守田修治
大漁旗振りまわさんか大夕焼
夕焼や沖に広がる東尋坊
夕焼て路地に子ら呼ぶ「ごはんだよ」
息をのむ大夕焼けやゴッホの絵
天守より夕焼ながむ松江かな
徳島県     井内胡桃
夕焼へひたすら走る大男
ふたつ目のチョコのくちどけ大夕焼
あてもなく大夕焼の消ゆるまで
校庭にただ一人だけ大夕焼
なぞなぞを大夕焼の消ゆるまで
神奈川県     池田恵美
鎌洗ふ男の背の夕焼かな
大夕焼ほらを吹きたくなつたるぞ
神奈川県     池田恵美
串のもの食らふ子どもや夕焼けて
鳥取県     475俳句
校庭に靴あと固く梅雨夕焼け
自転車の少年止めて大夕焼け
夕焼けに走りゆく君追えぬ君
夕焼けを飲みほしてなお海光る
大夕焼け彼方燃ゆるか里の空
秋田県     丹野励起子
夕焼に瞑想したる家鴨かな
夕焼やそろりそろりと教習車
福岡県     多事
大夕焼夜も飽きずにたまごめし
ぐしよぐしよのカッターシャツに大夕焼
踏み絵とは回心たるか島夕焼
夕焼と風へ置かれて打瀬舟
大観音包みて静か夕焼雲
福岡県     世良日守
夕焼は電話ダイアル戻る音
北海道     小殿原 あきえ
海底に呑み込まれゆく夕焼かな
夕焼やビスクドールを染めて果つ
母の背は小さくなりぬ夕焼に
東京都     豊島仁
大夕焼今決断の九十九里
夕焼に背番号3今も燃ゆ
夕焼に手も足も出ぬ我ヶ家かな
風よきて夕焼よきて明日よきて
夕焼の家へ帰らう都すて
神奈川県     髙梨袴
農良上がる古希一日の夕焼かな
夕焼けのビルの小窓やキスの影
外風呂に薪足す夕焼けの大地
夕焼けや自転車の父待つ母と
夕焼けや車窓に残る里帰り