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- 俳句庵 2021年09月 優秀賞発表
- 俳句庵 2021年09月 作品一覧
俳句庵
9月『梨』全応募作品
(敬称略)
- 千葉県 柊二
- サファイア婚梨を喰む子の梨を浴ぶ
- 東京都 岩崎美範
- 梨をむく余命わづかな愛犬に
- 梨供ふ六地蔵にもひとつづつ
- 単身の北の下宿に梨届く
- 何事も起きぬ幸せ梨をむく
- 梨むけば必ず母を思ひ出す
- 新潟県 近藤博
- 梨一顆地蔵尊にも供へあり
- 梨剥くに切れぬ包丁研ぎ直す
- 梨剥くに果汁べったり掌に
- 山梨の友より宅配梨届く
- 梨の木の一顆を啄む鳥の居て
- 長野県 木原登
- 豊潤な梨てふ水を食うべけり
- 老いてなほ自前の歯なり梨齧る
- 東仙丈西は木曽駒梨実る
- ドヌーブもベベも懐かしラ・フランス
- 脳漿に滋養足すべく梨を剥く
- 山梨県 森下博史
- 梨礫知っているから書く手紙
- ザラザラの梨のジャリジャリ君想う
- 飲み過ぎた初カロリーの梨を食う
- 梨篭の娘閃く世界革命
- 女房のビンタを食らう梨ンガーゼット
- 大阪府 藤田康子
- 梨もげば枝のかすかに抗ひて
- 持ち寄りし茶請けに梨の混ざりをり
- 富山県 岡野 みつる
- 箱入りの梨が全国デビューする
- この列は何ぞや梨の直売所
- 富山県 岡野 みつる
- 梨狩りへ矢印辿る車列かな
- 岐阜県 金子加行
- 梨を剥くナイフや土佐の鍛へ物
- 百寿への母へ小さく梨を割く
- だう泣けばよきかの夜に梨を剥く
- 梨剥きて軽く話を収めたき
- なまくらな庖丁の音梨を剥く
- 東京都 石川昇
- 有の実や水にゆかりの名も清し
- 詰め物に地元新聞梨届く
- 島根県
- 大山の泉の如き梨を剥く
- 愛知県 西谷寿
- 梨をむく母の手を見て涙でる
- さわやかな梨の花びら子の顔に
- 時たてば梨の子どもは人の親
- 泣く子ども梨を渡して笑顔かな
- テレビみて梨食べたいと子がねだる
- 大阪府 多田由佳里
- もてなしの梨てんこ盛り漁師町
- ぬく寿司に梨添えてをり島の昼
- 広島県 木染湧水
- じゃりじゃりと剥いて梨食むじゃりじゃりと
- 実家より梨の来るころ買はで待つ
- 梨送る送り状一枚増える
- 栃木県 鹿沼 湖
- うつすらとくちびる濡らす梨の汁
- 埼玉県 北川清
- 梨園で 赤白帽子 汁たらし
- お茶がわり 出された梨に 長話し
- 梨食うて すっぱき芯味 人の妻
- しゃりしゃりと 梨の皮むき 蜜匂う
- 梨むくや 甘き香りに 紅さして
- 大阪府 多田由佳里
- デザートは口どけやはし黄なる梨
- 黄の梨の光の重さ掌にあふる
- 大阪府 多田由佳里
- 汐鳴りを梨もぎながら聴く夕べ
- もてなしの梨てんこ盛り漁師町
- ぬく寿司に梨添えてをり島の昼
- 長崎県 入口弘徳
- 梨ひとつ剥いて闇夜に放り投ぐ
- 神奈川県 鴨野箸
- 似ていると曲げし内肘剥いた梨
- 神奈川県 鳥井原弘
- 友来たり梨切れ分けて汁光る
- 梨の皮きれず繋がり風にゆれ
- 神奈川県 神長誉夫
- 梨食めば苦き記憶の透きとほる
- 不安げな無人露店の梨三つ
- 惑星の如く孤独な梨を捥ぎ
- 饒舌な幟や梨売り夢の中
- 梨食みて星降る夜の香知る
- 東京都 松本征枝
- 袋掛け自ずと弾け梨仕上ぐ
- 梨の名に新甘泉あり言い得て妙
- 青い梨食んだ青春硬き頃
- 今いずこ昭和の梨の長十郎
- 梨半分上手に剥いてくれる夫
- 神奈川県 神長誉夫
- 饒舌な幟や梨売り夢の中
- 梨食みて星降る夜の香知る
- 梨食めば苦き記憶の透きとほる
- 不安げに露店に残る梨三つ
- 惑星の如く孤独な梨をもぎ
- 奈良県 堀ノ内和夫
- 梨一つ兄弟四人喧嘩せず
- あれこれと昔の味の梨探す
- 神奈川県 猪狩鳳保
- 山門をくぐる両手に梨抱へ
- 梨剝いてくれたる指の細さかな
- 梨剥きつ真旅のみやげ話など
- 神奈川県 猪狩鳳保
- 多摩川の渡し場いづこ長十郎
- 長十郎その名なつかし梨園かな
- 東京都 伊藤訓花
- 梨を剥く介護の夜の静寂かな
- 喧嘩して爪で落書き梨の肌
- 洋梨や真白き皿のコンポート
- 南武線稲城の郷の長十郎
- 夫と子の話の接ぎ穂梨を剥く
- 大阪府 八王寺宇保
- 一個ずつ梨を冷やせり老夫婦
- 園庭の体操服やラフランス
- 出荷せぬ小粒の梨のジャム作り
- 万葉のゆかりの地にて梨齧る
- 梨の実の色に採り入れ計る朝
- 東京都 内藤羊皐
- 見舞へとゆけぬ病棟ラ・フランス
- 梨狩や再び転ぶ老いし母
- 洋梨やアクアリュウムの水眩し
- 有の実のすつぱき片を食ふをさな
- 梨食うて母の小さき嘘逸らす
- 宮城県 林田正光
- 梨を食べ水分補給なりにけり
- デザートは妻の好物梨五切れ
- 梨を切る妻の左手白きこと
- プレハブの梨直売所人の列
- 梨を剥く器用不器用皮の量
- 岡山県 岸野洋介
- 袋掛けした梨の実をまず探し
- 梨棚を出てまず腰を伸ばしけり
- 捥ぎたての梨にがつがつ齧りつき
- 梨を捥ぎ友と疎開の話など
- 亡き妻へ初物の梨供えけり
- 島根県
- 赤梨の口内炎に優しくて
- 早緑の梨の流るる夜の卓
- 山口県 ひろ子
- はらからの梨狩り昔となりにけり
- しゃりしゃりと梨食む夜の寡黙かな
- いろどりもさやかサラダに梨加え
- 奈良県 平松 洋子
- 二切れの小皿の梨をひょいと食ふ
- 籠り居に梨の歯触りころころと
- 切る程に梨の香りの満ち満ちて
- 東京都 佐藤富幸
- 梨食らひ顎の雫を拭ひけり
- たわわなる長十郎の九十九道
- 干乾びし梨の皮有り門の上
- 田舎道地蔵様にも梨の籠
- 孫の手の届かぬ先に梨の籠
- 東京都 佐藤美智子
- 梨求む訛なつかし直売所
- 梨デッサンただ黙々とペンの音
- 梨むくや酢飯程よく光りおり
- 梨供え警蹕響く地鎮祭
- 梨のある絵手紙隅に「梨」とあり
- 沖縄県 稲福達也
- 梨園に立ち寄る旅の無計画
- 手秤で梨を見分ける媼の手
- 梨を剝く話し上手の剥き上手
- 梨ひとつ剝いて小昼の老二人
- 岐阜県 ときめき人
- 梨の香や土間を抜けたる城下風
- 徳島県 白井百合子
- 体重の梨三個分増えてをり
- 梨が好き甘味と酸味シャリシャリも
- 梨狩りの園いっぱいにはしゃぐ声
- 仏壇の団子の前に梨据わる
- 徳島県 白井百合子
- 梨狩りの腰屈めたり伸ばしたり
- 静岡県 いたまきし
- 梨にさす爪楊枝はや湿りをり
- 千葉県 徳翁
- 路に沿い梨園並ぶのぼり旗
- 母想う皮一枚に梨を剥く
- 何事ぞ桐箱入りの梨届く
- 梨食べるシャリシャリッと妻の居る
- 香川県 辰野
- 発熱の夜の冷蔵庫酒と梨
- 梨かじる甘き光の雫飲む
- オンラインツアー土産の梨供ふ
- 大阪府 木山満
- 千切れずに剥くを褒めれば梨は無し
- 雨の夜や梨剥くは夫喰うは妻
- 独り居や汁零し食ぶ気楽さよ
- 荒尾梨赤子の頭噛む心地
- 梨狩りやズボンで擦(こす)りかぶり付く
- 神奈川県 立野音思
- 梨食ぶや世紀を跨ぐ懐古談
- 差し入れの梨の甘さや祝退院
- 埼玉県 岸保宏
- 父の梨届き正座で箱を開け
- 濁流が避けて通るや梨畑
- 梨をもぎ植田眺めてかぶりつき
- 千葉県 峰崎成規
- 葛飾の梨街道の梨御殿
- 梨の名に水の名多し水の星
- 廿世紀旨み旧びず吾がどちも
- 地下鉄で行ける故郷梨熟るる
- 諍ひの鎮もる卓に夜の梨
- 大阪府 津田明美
- 山の端にかかる夕月梨育つ
- 梨たわわ薄暮をセピア色に染め
- 世界一 冠たる梨を 持て余す
- 大阪府 津田明美
- 凸凹の愛嬌も又梨の味
- シャリシャリシャリ リズム正しく 梨を食む
- 滋賀県 船岡房公
- 座りよき洋梨ひとつ表紙絵に
- 洋梨が動くかダリの静物画
- 三重県 後藤允孝
- 穫れたよと妻に二個ほど長十郎
- 梨狩や高さに合わす肩車
- 梨四つ祖母の遺影に供えけり
- 梨食えば餓鬼の記憶の蘇り
- 梨園の甘い香りのする少女
- 神奈川県 塚本治彦
- 酸き顔の梨の芯まで齧りけり
- 梨の皮齧り捨てつつ丸齧り
- パティシエを目差す少女や梨タルト
- 捥ぎたての日向の匂ふ梨齧る
- 梨齧る猿のごとく歯を剝きて
- 静岡県 城内幸江
- 一日を終えてゆつくり梨を剥く
- 梨剥いて夫に言われたありがとう
- 梨一つあげる若手のセールスマン
- 東京の娘に丁寧に詰める梨
- 梨の皮けふは疲れて厚くなり
- 東京都 右田俊郎
- 熱のある子の枕元梨をむく
- 梨をむく滴る果汁惜しみつつ
- むいてよと重たげな梨差し出す子
- 梨をむく祖母の手元を見つめる子
- シャクといふ音小気味よく梨を割る
- 広島県 老人日記
- 梨一つ食べてふくるる老いの腹
- 梨齧れば自ずと怒り収まりぬ
- 梨剥くや無口な夫に慣れしとて
- 広島県 老人日記
- 梨啜る地球の水の味啜る
- 茨城県 小松崎孝志
- 道端の梨の幟や直売所
- 梨届く一年ぶりの長電話
- もぎたての梨の試食や棚の下
- 山形の洋梨五キロ届くなり
- 五Lの梨送るひいきの相撲部屋
- 千葉県 小泉正行
- 梨園より産地直送千葉の梨
- 妻剥きて二人で食べる甘き梨
- 今年又子等に送るや千葉の梨
- 山梨の梨にぞ勝る千葉の梨
- 兵庫県 髙見正樹
- スーパーに梨の特売選る媼
- 甦る原風景や梨齧る
- 剥く梨の滴る果汁丸齧る
- 神奈川県 沼宮内薫
- 梨を剥くらせんの皮をしたらせて
- 梨かじる前歯かわいい一年生
- 新妻やつまみにさつと梨を出す
- 掌の俄かの皿や梨食ぶる
- 梨かじり議論激論沫(あわ)とばし
- 東京都 よしだ悠
- 好物の梨を待たずに妻逝けり
- 大阪府 永田
- 実、皮、芯ピノキオ梨を喰ひ尽くす
- 神奈川県 矢神輝昭
- 「梨」ありの看板見つつ銭湯へ
- 衝動で買ひたる梨の持て余し
- 梨売りの小屋の落書き主への字
- 梨売りの小屋の落書き赤青黄
- 地場産の触れこみに乗り梨を買ひ
- 兵庫県 岸下庄二
- 推敲の気分転換梨を剥く
- ややこしき話の前に梨を剥く
- 兵庫県 岸下庄二
- 試食して梨を一盛り買ひにけり
- 梨を剥き話の継ぎ穂探りけり
- 梨食べて一食抜かす妻の留守
- 大阪府 森 佳月
- 梨剥けずかぶりつきたる子供かな
- 仏壇のお下がりふたつ梨を剥く
- 二十世紀少し遠のく梨を剥く
- 福井県 山本晟瑚
- 水被害‼過ぎて希望の梨甘く❗
- その他 西山ひろ子
- 口にあふ子の悪阻にと梨を剥く
- 陽のぬくみ袋を通し梨一つ
- 梨を剥く遠き人ほど懐かしく
- 梨狩りや昭和は遠くなりにけり
- 有りのまま生きて行かんと梨を食ぶ
- 東京都 長岡馨子
- 籾殻を探る有りの実ずつしりと
- 神奈川県 井手浩堂
- さくさくと梨噛む音やひとりの夜
- 牛の声風にのり来る梨畑
- 初梨や薩摩切子の皿に盛り
- 群馬県 塩原香子
- 梨園の篭盛りの梨風ゆれる
- 仏頂面の洋梨鋳物のやうに置かれをる
- 花もよし実もよしあまき梨かじる
- 梨食めばあふれる果汁滴りぬ
- 歯ざわりのちよつと苦手梨を食ぶ
- 埼玉県 宥光
- ほとばしる梨汁甘き皮剥き器
- スカートの裾でひと拭き梨屋の子
- ラ・フランス白亜な家の令夫人
- 有りの実の里に嫁いで半世紀
- 初恋の人の畑の長十郎
- 東京都 笹木弘
- 食べたくて自分で剥きし梨一つ
- 東京都 笹木弘
- 不細工な梨ほど美味いものは無し
- 梨買へばおまけの一個歪なり
- 梨の食べ放題と言ふ困りもの
- 梨剥いてマニュキアの指に滴れり
- 岐阜県 雅風
- 梨剥くや皮切らさずに肥後守
- 噛むほどに梨のいのちのみづみづし
- 梨盛りて産地誇示する道の駅
- 幸の水豊かに含む梨を食ぶ
- 剥くほどに刃に滴るや梨の水
- 三重県 藤田ゆきまち
- キズありの梨懇ろに剥くゆふべ
- 愛知県 斉藤浩美
- 梨園の梨のかたちに千の風
- モチーフの洋梨は横座りして
- 収穫を終え梨園の空碧し
- 俳人の粋よ有の実と云いかえて
- 洋梨は画材素描の時間なる
- 埼玉県 いまいやすのり
- 梨を捥ぐ青空見ゆる又ひとつ
- 文机にとろくる香りラフランス
- 長十郎誰の名前と子に聞かれ
- はや十年ここがふるさと梨を捥ぐ
- ビール函並べ梨売る裏参道
- 東京都 勢田清
- シャリシャリと梨の歯触り汁多き
- 奥山に山梨あると昔より
- 梨の木や金の果実の鈴生りに
- 運動会の昼は剥き梨重箱に
- 透明に滴る梨の果汁かな
- 千葉県 伊藤博康
- 初めての挑戦梨のコンポート
- 稼ぎ時車少なき梨街道
- 千葉県 伊藤博康
- 梨狩りは矢張り中止と報せあり
- 梨かじり顎の滴りあつ落ちる
- 梨剥きて皮の長さを競ひけり
- 福井県 山本晟瑚
- 想ひ出や郷里の味の梨畑
- 梨を食べ金運アップ望む吾子
- 東京都 豊宣光
- 梨食らう少年の日のかくれんぼ
- 皿に盛る梨の素肌のみずみずし
- 梨加え色が整う静物画
- 顔見世や梨園の家の御曹司
- 旬の梨都会へ送るゆうパック
- 神奈川県 龍野ひろし
- 蔕を見て尻確かめて梨を買ふ
- 島根県 杤谷治
- 梨を食む石の記憶の螺旋めく
- 山口県 ひろ子
- しゃきしゃきと触感満たす梨うれし
- 愛知県 香坂泉
- 洋梨とマズル持つ手のやはらかさ
- 畑の隅梨の木の切り跡平ら
- 梨の香や居間に犬まで座り込み
- 分け合つて新高梨の肉食らふ
- 父見舞ひ梨の半分軽くなり
- 愛媛県 加島一善
- シャリシャリと赤梨食むや紀寿の母
- うたた寝の吾子の抱いたる梨ひとつ
- 梨ひとつ辻の地蔵の手のひらに
- 青梨やガキ大将の頭に似
- 梨三つ横一列に実りけり
- 福岡県 西山 勝男
- 味聞きて豊水梨を進物に
- 梨の里発ちて滔天生家訪ふ
- 献饌の先ずは身近の荒尾梨
- 梨狩りを旅の順路に加へけり
- 福岡県 西山 勝男
- 梨を食み媼の会話限りもなや
- 徳島県 井内胡桃
- 軽トラのゆっくり走る梨畑
- サリサリと梨を食む子の前歯かな
- 折り合いをつけて夕餉の梨甘し
- 梨を食ぶそしてそれぞれ好きなこと
- 生ぬるき梨の歪を八等分
- 静岡県 大澤定男
- 梨ーつ剥いて父母へと祖父母へと
- 梨ーつ剥いた絵日記釣瓶井戸
- もう半分食べ足りぬ梨ーつ剥く
- 夜半醒めて仏の梨をーつ剥く
- 鎌研いで梨のーつを試し剥く
- 千葉県 風泉
- ・仰ぎ待つ母の笑顔や梨の皮
- ・梨狩りや両手に蜜の重さかな
- ・三密を避けて捥ぎ取る梨の蜜
- 兵庫県 田駆路有
- 梨たべてしゅわっと口に広がって
- 大阪府 鈴木千年
- さりさりと瑞を奏づる梨を食ぶ
- 梨食べて今日の一日を締めくくる
- 梨剝くや瑞の光の滴れり
- 梨を嚙みゐて福耳となつてゐし
- 梨剝くや滴る山河思ひをり
- 大阪府 鈴木三津
- ひとまづは仏に供へ巨大梨
- いかにせむ二人暮しに巨大梨
- 梨食ぶる水より淡き老夫婦
- 豊水・幸水・新水これみんな梨
- 武骨なる肌したしき長十郎
- 三重県 平谷富之
- 夕餉には季節の梨をデザートに
- 滋賀県 村田紀子
- 梨を手にマスク下から笑みこぼる
- 滋賀県 村田紀子
- 縁台で梨を剥く手に六つの目
- 梨届く古里の風友の声
- 半世紀変わらぬ友と梨の味
- 友を待つ机の上に梨一つ
- 山梨県 天野昭正
- 客減りし梨畑に来て星仰ぐ
- 今生の忘れぬ味や柿熟るる
- 多摩川の瀬音聞きつつ梨を剥く
- 丸かじりする手に落つる梨の汁
- 空腹や疎開地の柿盗みけり
- 埼玉県 水夢
- 梨の香や火星に水のあるといふ
- 梨を剥く独りの夜のセレナーデ
- 梨を食む夜のしじまに砂時計
- 梨狩に声の弾みし日曜日
- 暁のペルシャの風に梨を食む
- 神奈川県 原川篤子
- 梨棚の隙間に覗く青き空
- 上ぐる顔に日の斑受けて梨を捥ぐ
- マニキュアの赤濡らして梨を剥く
- 車より梨を選りをり梨街道
- 抱き上げて子供に捥がす梨大き
- 兵庫県 えいえい
- 梨かじりあとは子供のこおり水
- 千葉県 伊藤順女
- 梨をむく今や自分のためだけに
- 虫食いの梨は旨いと母いへり
- 神奈川県 亀山酔田
- 馴れぬ手の弄りまわして梨を剥く
- 梨を食ぶふっと君いる思いして
- 月光を含む露なり梨美味し
- 余生には自分の梨の剥けるよう
- 眼前に素描の梨の腐りつつ
- 埼玉県 石塚彩楓
- 梨をむき夜勤帰りの子の話
- 梨食めば一人居の母思ほゆよ
- もぎたての手に余る梨賜ひけり
- セザンヌの画集に青きラ・フランス
- 老農夫ナイフに刺して梨一片
- 東京都 山﨑勝久
- 洋梨や似ている貌と美術館
- セザンヌの洋梨の蔕巴里を指し
- 愛媛県 山家志津代
- 梨食むや女にもある喉佛
- 梨買うは今日の言い訳成立す
- 白き喉こくりと落ちる梨の片
- 神奈川県 川島欣也
- 木漏れ日の揺らぐ梨えん昼下がり
- むき終えぬ梨に手を出す幼かな
- 抱き上げる幼もぐ梨手に余る
- お持たせの梨や氷に浸されり
- 梨一つ持て余しており老い一人
- 愛媛県 砂山恵子
- くたびれた季節の記憶梨を剝く
- 皮剥き派四つ切り派をり梨を切る
- ふるさとの水の詰まつた梨を剥く
- 梨を喰む再び水に還るため
- 連休の朝や梨でも剥こうかの
- 埼玉県 守田修治
- 梨とどく一つ一つに力士顔
- 御持たせの梨八当分し客前に
- 旅役者芸売りつくし梨をむく
- お経終え老僧にだす地元梨
- 梨の名は聞き漏らしたがタオルくれ
- 神奈川県 池田恵美
- 仲人を訪ふや長十郎抱へ
- ラ・フランス香る窓辺に人を待つ
- 東京都 安藤ゆき子
- ラフランス年経るごとに訛る母
- 徳島県 井内胡桃
- 生ぬるき梨の歪を八等分
- 梨を食ぶそして其々好きなこと
- 平穏な一日の夕餉梨甘し
- 軽トラの梨の満載発車せり
- サリサリと梨を食む子の前歯かな
- 東京都 山本貴士
- 白き手や梨もぐおさげ肩の上
- 梨剥く子二人羽織の母の指
- 故郷の見慣れた文字と梨届く
- 子の椅子の下に昨夜の梨の種
- 閉店の貼り紙に買う梨三つ
- 埼玉県 小安章代
- 梨熟す日々知れり朝の近道
- 今日ひと日何が出来たか梨重し
- 滋賀県 別役昌子
- 赤梨も青梨も実りて豊か
- 前籠に梨重し坂道下る
- 梨棚へ正午のチャイム腰伸ばす
- 梨剥くや研ぎ直したる肥後守
- 梨捥いで梨一つ分青き空
- 東京都 岩川容子
- 俎に渦をなしたる梨の皮
- 梨ひとつ分け合い昔話など
- 湯上りに冷えた梨出す旅の宿
- 梨剥けば厨に白き朝の風
- 茨城県 長洲研志
- 試合後の差入れの梨負けの味
- 亡き父の背から見上げし梨の尻
- 合宿所の梨の差入れ青い空
- その他 林とみ代
- 梨剥けば滴ぽたぽたこぼれけり
- 梨熟れて出荷準備の真っ最中
- その他 林とみ代
- 梨棚よりちょきちょき聞こゆ鋏音
- 梨作りの苦労話を聞かさるる
- 朝市の屋台に香る日本梨
- 埼玉県 七島
- 洋梨のとろりとろりと広がりて
- こそばゆし梨もぎたての毛に触れて
- 祖母の手の包丁のあと梨にあり
- 不揃ひの梨それぞれの味がして
- 顔ほどの梨切り方を思案して
- 福岡県 川崎日知
- 梨三つ下げて舅の筑後弁
- 父の手のおほきさに在る梨ひとつ
- 梨食ふて義父の青年期の話
- 梨を剥く手に梨の香の滴れり
- 神奈川県 光南
- 梨冷たし明日は手術といふ夕べ
- 父母と子等を想ひて梨を剝く
- 暑き日を振り返る夜や梨を剝く
- 梨を剝くベッドの上の母無言
- フォーク刺す梨透き通り手術前
- 埼玉県 小玉拙郎
- 地方紙にくるまれ並ぶ箱の梨
- 梨の名は激動の世紀丸のまま
- やすやすと楊枝の刺さる過熟梨
- サリサリと刃と歯に当たる冷えた梨
- 東京都 田畑整
- この楊枝わたしのしるし梨を食う
- 梨を剥く一人で食べるにゃちと多し
- 昼寝より梨が剥けたの声きこゆ
- 梨を剥く糖度12度べたついて
- 梨をもぐ時々くびをコキコキと
- 北海道 森野樹
- 仏壇に剥きたての梨供ふ母
- 北海道 森野樹
- 剥きたてを包丁に刺し梨渡す
- その中に肥満児も居り長十郎
- 長十郎百五十歳まだ死なぬ
- 父違ふきょうだいが捥ぐラ・フランス
- 大阪府 酒梨
- 水もらふやうに初梨もらひけり
- 梨園の土に精出す主かな
- 食べごろの梨のめり込む梨畑
- 道すがら梨ほめて梨もらひけり
- 梨を剥くとりとめのない話して
- 東京都 中田ちこう
- 明の鐘夫婦互いに梨かじる
- 東京都 内山岱鵬
- 踏んばって老婆やリヤカー梨市場
- 箱いっぱい届いた梨に腕を組み
- 指す楊枝くるりと梨の滑り落つ
- 下駄の先梨のかけらに蟻並ぶ
- 客帰り仏壇の梨ひとつ減り
- 京都府 村田稔子
- 部活終え 口いっぱいに 梨果汁
- 東京都 水野邦彦
- 梨の実の重さ知るごと半生記
- 梨一片頬張る吾子の成長記
- 落ちる実は動じもせずや長十郎
- 剝く梨の実回るごと笑み溢れ
- 埼玉県 飛翔
- 梨狩りの陽のぬくみある甘さかな
- 艶艶の梨が並ぶや無人店
- 真顔なる肩馬の子や梨を捥ぐ
- 宅急便梨と一緒に訛り文
- 梨狩りに名前呼びあい梨かざす
- 千葉県 長谷川ぺぐ
- そばかすの少女時代や梨を剥く
- 北海道 風花美絵
- 熱高き子に一切れの梨を剥き
- 北海道 風花美絵
- 青空に汁を飛ばして梨を剥く
- すれ違う宅配便に梨の絵が
- 鳥取県 475俳句
- 梨届く父の内緒の仕送りと
- たえきれず滴る白き梨の肌
- 山水をみな掻き集め梨太る
- 奥の歯に残る昨夜の梨甘し
- 梨もぐや枝のまにまに日を宿し
- 神奈川県 水野伸一
- 庭仕事梨頬張りて第二幕
- しゃくしゃくと梨齧る音笑う孫
- 床に臥し梨二切れの熱冷まし
- 福岡県 多事
- 噛み切れぬ梨の白さよ床の祖父
- 午後一の部活紹介梨しやりり
- しやりと割れさりりと抗す梨ですな
- 重箱の一段が梨徒競走
- 梨の香に薄く潰れて母の文
- 東京都 猪俣ま悠
- しゃりしゃりと梨三毛猫のうとうとと
- 収穫の補助や土産の梨甘し
- 喜びのぎっしり詰まる梨は朝
- 送らるる梨添え状の太き文字
- 福岡県 世良日守
- 弥栄の一本背負いラ・フランス
- 東京都 豊島仁
- 梨食へば風は荒浜九十九里
- 梨狩りや流るる雲の果てに富士
- 神奈川県 髙梨裕
- 恋掴むその手剥かれて君の梨
- 洋館のロダンの首やラフランス
- 介護士に剥かれし梨の甘きなり
- 青き梨摘まむ一片姉の紅
- 梨剥いて泣く子取り合う子は七人