俳句庵

4月『松の花』全応募作品

(敬称略)

高知県     野中泰風
コロナ禍に戦禍で遠や松の花
あるがまま生きれる幸や松の花
祖母に向け吾が願望や松の花
戦無き平和な星よ松の花
戦禍に女児や生求む松の花
愛媛県     砂山恵子
松の花お宮参りの赤産着
駆け落ちの多き家系よ松の花
松の花父の癇症譲りうけ
松の花四代続く古物商
松の花見えぬ県境超えてゆく
千葉県     柊二
三本の空や地蔵の松の花
大阪府     藤田康子
松の花愚直のままの忠魂碑
新潟県      近藤博
防風林ところ余さず松の花
松の花花粉避くに道を変へ
煙ごと花粉飛び散る松の花
兵庫県     岸下庄二
海分かつ天橋立松の花
松花粉城の廊下を汚しけり
須磨浦に芭蕉の足跡松の花
銃眼の並ぶ城壁松の花
赴任地へ旅立つ吾子や松の花
滋賀県     村田紀子
松の花母と遊んだ丘の家
亡き人の声を聞けよと松の花
松の花兄もいたよと喋りだす
人け無き里に雀と松の花
滋賀県     村田紀子
幼き子飛び跳ねた手に松の花
愛知県     飯田 夷佐久
地に積もる平和の祈り松の花
岡山県     名木田純子
湖の風音にちる松の花
浮島は園の中心松の花
広重の望みし富士や松の花
滋賀県     東野眞知子
芭蕉も見たり松島の松の花
境内の四百年の松の花
松の花蝶待つでなく風を待つ
松の花盛りと言えど村静か
みな同じ雲を見ている松の花
大阪府     木山満
松の花小家(しょうけ)の庭に煙りけり
てっぺんに薄紫や松の花
電線のささくれのごと松の花
松の花雄々しく聳え天を突き
五百羅漢頭上に置きし松の花
東京都     岩崎美範
半世紀ぶりの生家や松の花
ひもすがら秘湯に遊ぶ松の花
穏やかにけふも暮れゆく松の花
被災地に祈る復興松の花
残生を案ずる齢や松の花
長野県     矢島健
老松の花芽摘みたる老庭師
くねくねと幹曲がりくる松の花
長野県     木原登
朝な飲む錠剤六粒松の花
俤の木曽の梯松の花
松のみの気比の松原松の花
円空仏路傍に笑まふ松の花
長野県     木原登
実生せし苗にリボンや松の花
岐阜県     金子加行
松の花建前唄にこぼれけり
初出社スーツにこぼる松の花
百年を村出ぬ家や松の花
一里塚いまだ残れり松の花
返信を書きあぐねしや松の花
神奈川県     志摩比呂樹
松の花太平洋の波鎮か
遠富士の峰まだ白し松の花
埼玉県     ダック
我が吾子に夢を託して松の花
雨しずく乾くを待ちて松の花
老松の子はすくすくと松の花
松の花山神様の蓮座かな
松の花咥え煙草でトラクター
東京都     衣川洋子
たそかれの蹲踞に浮く松の花
奈良県     平松 洋子
松の花谷底の風吹き上げて
恋文を結ぶ唐崎松の花
松の花咳払ひして話題変へ
大阪府     森 佳月
志摩の海真珠眠りて松の花
股のぞく天橋立松の花
天平の風も揺らせし松の花
奈良県     彬楽
三味の音は松の緑か松の花
七十路に逢魔が時の松の花
もう一度書きとどめたき松の花
可愛げに影も届かぬ松の花
泣き笑ひ色変えずして松の花
神奈川県     川島欣也
糟糠の妻特養へ松の花
神奈川県     川島欣也
青春の夢の羽搏く松の花
青年の決意揺るがぬ松の芯
托鉢や松の花粉を払いつつ
蘇る津波の痕や松の花
石川県     未掲載
産土の玉砂利ふみて松の花
浜に咲く誰も気付かぬ松の花
土塀越しや時空の中に松の花
松の花弓道場の墨の文字
愛媛県     三好城
城山へ続く道野辺松の花
崖すがる一本だけの松の花
神奈川県     志摩比呂樹
東海道五十三次松の花
神奈川県     塚本治彦
手水舎の柄杓に松の花浮きぬ
線描の仏足石や松の花
半島の半農半漁松の花
風紋の残る砂浜松の花
松の花濡れ身で帰る海女の径
東京都     秋人
松の花空に向かふは潔し
徳島県     白井百合子
松の花ブルーシートを屋根にかけ
亡き夫の靴底に付く松の花
座禅組み小指は無なり松の花
居眠りの宇宙遊泳松の花
夫の死を認めたその日松の花
神奈川県     神長誉夫
松の花兄より長生きだけの吾
押し寄せる黒雲睨み松の花
松の花傑物ばかりの家絶えて
松の花赤子抱えて兵士立つ
神奈川県     神長誉夫
松の花猛きを貴ぶ家に生き
広島県     老人日記
降る雨の濡らすともなく松の花
平凡という幸せも松の花
余生とふ人生はなし松の花
この先は癌つれそふて松の花
三重県     後藤允孝
松の花こぼさぬやうに鳥の声
風さそふ風に委ねて松の花
川渡る風に音あり松の花
小さくとも句碑に歳月松の花
酒蔵の大きな錠や松の花
兵庫県     えいえい
教科書をずっと眺める松の花
静岡県     城内幸江
子と歩く思ひでの道松の花
直立の家族写真や松の花
ずかずかと入る庭師や松の花
岡山県     岸野洋介
松の花これが花かと独り言
鳥の声聞こえた先に松の花
妻の亡き歳月寂し松の花
新枝の天辺に咲く松の花
傘寿過ぎしみじみ見あぐ松の花
千葉県     峰崎成規
豪商の栄枯は知らず松の花
漣のひかり烟らす松の花
賑やかな鳥語の間を松の花
松の花潮香潮騒伴ひて
街道は今や裏道松の花
沖縄県     渡嘉敷五福
松の花四阿の子ら歌ひ出す
愚に返るおだやかな日や松の花
沖縄県     渡嘉敷五福
大の字になりたき雲や松の花
まつたりと光りをまとふ松の花
青空に天女待つごと松の花
東京都     内藤羊皐
惣堂を零れる儘に松の花
忌中札貼りたる家を松の花
道灌の先陣跡や松の花
十返りの花を片方に黒鳥居
土葬墓に祖母を送りて松の花
神奈川県     井手浩堂
江の島の見ゆる新居や松の花
鎌倉の海の青さや松の花
火口湖の高きに散るや松の花
松の花散る源氏池平家池
埼玉県     北川清
松原の 波音遠き 松の花
松の花 三保の松原 帰国船
春深し 松の花散る 古城かな
さみだるる 庭の松の木 松の花
公園の 野点の傘に 松の花
神奈川県     猪狩鳳保
江の島の海明らけし松の花
勝鬨は空耳なるや松の花
庭すずめふりむきもせず松の花
読経の声いづこより松の花
つくばひに映る碧天松の花
宮城県     林田正光
松の木の雌花雄花や共生し
手招きをしているような松の芯
いつか咲く一本松の奇跡かな
松の花三保の松原風立ちぬ
宮城県     林田正光
松の花果実の如き花咲かす
兵庫県     汰久鷺羽
松の花周りの花が俺を待つ
山梨県     森下博史
松の花アパート共同洗面所
松の花下の囁き声を聞く
下山口その天蓋の松の花
さあやっと弁当タイム松の花
松の花帰宅の君の細い肩
神奈川県     沼宮内薫
華道部や手こずるヤニの松の花
植林の向かうはすでに松の花
岸壁に返す白波松の花
門外に金粉ちらり松の花
凛と建つ白き城壁松の花
兵庫県     髙見正樹
深き谷張出す枝に松の花
青空に聳ゆる天守松の花
城山の木立の色や松の花
神奈川県     矢神輝昭
弥次喜多の腰の弁当松の花
鼻柱自慢の数の松の花
ピノチオの鼻有頂天松の花
松の花藁巣に睦ぶ十姉妹
藪漕ぎや道案内は松の花
香川県     辰野
待合の窓は大きく松の花
再婚の決意五十路の松の花
松の花紙飛行機を押し上げる
松の花10分かけて墨を磨る
静岡県     磯野昭仁
東海道行けどもいづれ松の花
象潟は眠るがごとく松の花
静岡県     磯野昭仁
海なりのあまたを数え松の花
植木屋の梯子の下の松の花
過ぐ人の吸う息を聴く松の花
東京都     豊宣光
海風や松の花散る三保の浜
待ちわびし結納の日や松の花
平和への願いは永久に松の花
松の花百年の計まだ成らず
やがてくる実を結ぶ日を松の花
長野県     矢島健
老松の花芽摘みたる老庭師
くねくねと幹曲がりたる松の花
福岡県     須賀利通
いさな待つ沖つ松浦松の花
よきころの唐津街道松の花
千葉県     徳翁
孫遠しズームで帰郷松の花
老松や降り積もるほど松の花
静岡県     いたまきし
松の花風力発電は撤去
大阪府     津田明美
橋立に自転車漕ぐや松の花
松の花空を指したる羅針盤
晩鐘の風に乗り行く松花粉
橋立と天上結び松の花
高塀の空押し上げて松の花
埼玉県     小玉拙郎
奪い合う鳥の影あり松の花
夕暮れにヤニの匂いや松の花
風は風松の花咲く防風林
蝶飛ばぬ梢あたりに松の花
野の鳥を梢に招く松の花
茨城県     小松崎孝志
風任せ二百ヤードや松の花
茨城県     小松崎孝志
松の花古き門扉の南京錠
三段の枝のつんつん松の花
古民家や竹垣上の松の花
亡き友に譲られ今日も松の花
東京都     佐藤富幸
戦火止み松の花咲く時を待つ
大皿に松の花置く活きづくり
風去りし鴉の口に松の花
松の花並木杖つく老夫婦
白砂に寄せる波間の松の花
東京都     佐藤美智子
海原に兵器許さず松の花
見送りの厚き子の手や松の花
カプセルの割れし薬や松の花
曳船の白き引き波松の花
禁煙の成就めでたし松の花
東京都     勢田清
松の花千本浜に光る海
母と二人公園静か松の花
いっせいに空に向きけり松の花
ベンチにて母とコーヒー松の花
はだいろの若々しさや松の花
徳島県     長楽健司
ヤングケアラー深夜咲く松の花
松の花侵攻記事の黒き文字
まんまるの月一突きや松の花
砂灸の足跡松の花の影
初出社息子見送り松の花
三重県     平谷富之
松の花実力発揮球児たち
愛媛県     加島一善
松の花笑ふこの世はめでたしと
愛媛県     加島一善
震災の浜に今年も松の花
天守無き名護屋の城に松の花
薄暗き鎮守の杜に松の花
松の花城の石垣くずれけり
東京都     たま走哉
八百年続く牛突き松の花
戒名に位階のあるや松の花
松の花最後に拾ふ喉仏
藩校に縁の坂や松の花
大学の砂丘農場松の花
東京都     右田俊郎
十一年月日は流れ松の花
この戦いつ果てるのか松の花
忌わしきあの日あの町松の花
松の花瓦礫の街を哀しめり
松の花戦いつづくウクライナ
埼玉県     飛翔
これ以上待つのは無理よ松の花
コロナ禍の終息待つや松の花
松の花粉に病める人多かりき
長老の自我通すなり松の花
ポンプ井戸のこる屋敷に松の花
東京都     山﨑勝久
橋立や股から覗く松の花
築山の頂を越ゆ松の花
工場の煙突並び松の花
千葉県     伊藤博康
松の花今更老いを止められず
白髪の増へ行くばかり松の花
日を受けて飛び立つ支度松の花
曇天の山道行けば松の花
千葉県     伊藤博康
松の花難しきことさておひて
埼玉県     水夢
松の花口いっぱいの握り飯
菩提寺は海の匂ひや松の花
松の花前垂れ赤き六地蔵
松の花はちみつ色の空の色
松の花ここから見ゆる海はるか
埼玉県     宥光
松の花天を指したる女人の手
トウシューズ履き初む舞台松の花
木登りに長ける少年松の花
高窓にかかる満月松の花
すり足の能狂言師松の花
神奈川県     龍野ひろし
石垣のなき本丸や松の花
ブラジル     西山ひろ子
若き日の夢に遊びて松の花
松の花健康長寿目指したり
松の花巻頭と云ふ贈り物
松の花百寿の席に輝きぬ
静岡県     大澤定男
松の花十徳風も古着にて
松の花朝夕散歩旧街道
松の花いつか虫歯の親不知
松の花父祖父叔父に肩車
松の花孫に教える肥後守
埼玉県     小安章代
盆栽も野に放たれしも松の花
産土に荼毘所建ちをり松の花
静岡県     五十 理化
風寄するプリンス岬松の花
千葉県     伊藤順女
うつすらと塵のごとしや松の花
松の花川に沿ひたる松並木
福岡県     西山 勝男
西山の樹齢六百松の花
松花粉まとひて詣づ札所かな
山内の松の並木や松の花
弁慶の墓とは石や松の花
象潟や苗田けぶらふ松の花
千葉県     風泉
・三猿を一途に雨の松の花
・あくる秋傘々毬や松の花
・色彩を厭う素朴な松の花
大阪府     鈴木千年
華やぎのなきが風情や松の花
松の花けぶるや古墳香しき
坪庭の町家暮しの松の花
松の花仰ぐ一等三角点
松の花地震に深傷を負ひながら
大阪府     鈴木三津
これがかの三鈷の松か松の花
ローマに通ずアツピア街道松の花
高くたかく風媒たのむ松の花
もう咲かぬ陸前高田一本松
すでにして松毬の形松雌花
神奈川県     飯島まゆみ
祖父母亡き後の歳月松の花
ほろほろと粉降る宵や松の花
北海道     風花美絵
郷土史に十返りの花載りにけり
迎へしは十返りの花皇居前
頤和園の長廊けむる松の花
栃木県     鹿沼 湖
松の花白寿の父の長眉毛
神奈川県     原川篤子
越前の怒涛を聴くや松の花
ひたすらに海を臨みて松の花
神奈川県     原川篤子
みはるかす群青の海松の花
厳めしき門扉に適ふ松の花
小流れの橋は飛石松の花
岐阜県     ときめき人
松の花手先器用な亡き父ぞ
埼玉県     守田修治
縁側に日だまりひとつ松の花
鎌倉の五山歩くや松の花
会釈してかざす両手や松の花
回向院髷の匂いや松の花
松の花玉川上水水速し
東京都     岩川容子
松の花天女の舞うが如く散る
松の花こぼるるたびに跳ねる鯉
家系図は裾広がりや松の花
杖をつく白寿の父や松の芯
北海道     風花美絵
街道の松の花散る舞ひあがる
埼玉県     哲庵
松の花メトロノームのように揺れ
退院の日決まりけり松の花
松の花鎮魂の海浪高し
実朝の海は穏やか松の花
松の花の下国賓馬車が行く
滋賀県     別役昌子
砂白き松原に散る松の花
松の花真副体の整うて
写経会の閑を離れて松の花
門灯に被りし松の花の色
浜風に触れて落ちたる松の花
ブラジル     林とみ代
別荘地の三角屋根や松の花
貸札のかかる旧家や松の花
ブラジル     林とみ代
高原の街の並木や松の花
欧米の移民植ゑたる松の花
天に向き咲く勇ましさ松の花
愛知県     香坂泉
数珠の玉数へてゐたり松の花
山門の急勾配や松の花
箒目に松の花早やこぼれけり
松の花僧に合はせて合掌す
ままごとの飯にもなれず松の花
埼玉県     釜田眞吾
潮風の今日は乾いて松の花
天芯へ我も我もと松の花
神奈川県     亀山酔田
松の花朝から磨く部屋の家具
松の花玄関先に客の足
松の花玄関引戸固く閉め
松の花ほこりほこりと景色変へ
酒杯手に思ひ出話松の花
岡山県     岸野洋介
傘寿過ぎしみじみ見つむ松の花
新枝のとっさきに咲く松の花
四阿は風の十字路松の花
妻の亡き歳月寂し松の花
松の花野点の席にこぼれけり
大阪府     酒梨
いにしへの海沿いの道松の花
連れ添うて御礼参りや松の花
松の花男子なれども薄化粧
赤々と籠松明や松の花
羽衣の色とどめをり松の花
神奈川県     重兵衛
城下町見晴らす丘や松の花
神奈川県     重兵衛
床山の結ひ上げし髷松の花
組紐の立つが如くに松の花
松の花結ひ上げられし大銀杏
新調の学生服や松の花
和歌山県     尾嵜 眞蛬
松の花代理母でも母は母
遺伝子の素朴に強き松の花
恐竜は散り今年また松の花
松の花移民申請結果待つ
膝ほどの若木に松の花ひとつ
神奈川県     海野優
結論は議長裁定松の花
松の花維新の志士の若きかな
朝の鐘余韻をこぼす松の花
兵庫県     みんみん
私だけ置いてけぼりや松の花
徳島県     井内胡桃
松の花峠の茶屋の丸太椅子
松の花母校開校百周年
松の花喜寿の祝いの吟醸酒
正面に堂々として松の花
読経の声重なりぬ松の花
東京都     中田ちこう
羽衣を黃に染め返す松の花
埼玉県     武田知佳
改札に二本の傘と松の花
松の花庭の夫へ昼餉の香
松の花常滑鉢の烏泥かな
目覚ましの要らぬ週末松の花
松の花ベランダ越しにお喋りを
東京都     長岡馨子
開帳へ列長々と松の花
愛知県     いちご一会
十歳児書写褒められて松の花
茨城県     長洲研志
新品のランドセルたち松の花
登校の横断歩道松の花
兵庫県     汰久鷺羽
松の花きれいに染まりすんばらしい
愛知県     紅紫あやめ
蝋燭を初めて立てる松の花
松の花始筆の前の一呼吸
中国     加良太知
兄弟のばらばら住めり松の花
待つ人のさみしさを知る松の花
松の花鐘の鳴らざる法隆寺
家からの手紙の厚み松の花
松の花母の生辰知らぬなり
福岡県     多事
夜の海の寂しからずや松の花
松の花砂で覆ひしたき火あと
指の間に砂つめたくて松の花
神奈川県     髙梨裕
松の花風の道にもこぼれけり
海鳴りや子は帰らずに桜の花
松の花こぼるる開港浦賀沖
技振りを誉め称えてや松の花
後北条眠る城跡松の花