創業170年を超える山本海苔店。伝統ある食品メーカーでありながら、実は現場の工場では、子育て中の女性社員が働きやすいようフォローし合う風土があり、挑戦したい人には積極的に機会を提供する環境があります。
今回お話を伺ったのは、2018年に品質管理として中途入社し、そこから約10年で佐賀工場の工場長に就任した吉田雅美(よしだ まさみ)さんです。
「出世欲はなかったんです」と語る吉田さんですが、知らないことをそのままにしない姿勢と、新しいことに挑戦する機会に飛び込み続けた結果、1年刻みで役職が上がっていきました。
女性として、子育てをしながら、現場のトップになるまでどんな経験をしてきたのか。
山本海苔店が大切にしている「謙虚で貪欲」という価値観を体現するキャリアの歩みを伺いました。
「子育て」と「仕事」どちらも大切にできる場所で、新しい挑戦を。

▍山本海苔店へ入社を決めた理由を教えてください。
品質管理室で求人を募集しており、その内容に興味を持ったことがきっかけです。
大学では化学を専攻しており、検査機器の取り扱いや報告書の作成には慣れていたので、「学んできたことを活かせるかもしれない」と思いました。
それともう一つ大きかったのが、面接のときに「子どもの行事や体調不良でお休みをいただくことがあります」と正直にお伝えしたところ、「それはもちろん大丈夫ですよ」とすごく理解を示していただけたことです。
子育てと仕事の両立に理解のある会社なんだなと感じて、入社を決めました。
▍子育てとの両立について、入社後もその印象は変わりませんでしたか?
変わらなかったですね。
実際にお休みをいただいたときも「いいよ、やっとくね」と快く引き受けてもらえて、とてもありがたかったです。
世の中的にはまだ「子どものことで休みにくい」と感じる方も多いと思うんですが、山本海苔店はとても寛容でした。
▍山本海苔店に入られる前は、どんなお仕事をされていたのでしょうか?
大学を卒業してすぐはMRの仕事をしていました。
その後、子育てとの両立を考えて大学事務をしたり、ビジネスホテルのフロントであったり、正社員以外の働き方も経験しています。
ホテルでは夜勤のときに翌日の部屋割りを考えたり、清掃のスケジュールを組んだり、細かな段取りを行う仕事もありました。
様々な職種を経験しましたが、今の工場長の仕事――スケジュール管理や人の配置、業者さんとのやりとり――にすごく活きているなと思います。
“やってみたい”を原動力に。品質管理から工場長へのキャリアアップ。
▍元々は品質管理での入社と伺っています。そこからどのような流れで、工場長になられたのですか?
最初の数年は品質管理室で検査業務や報告書の作成をしていました。
その頃は、関東から一時的に佐賀工場に配属になっていた社員も何名かいたのですが、その方たちが関東に戻るタイミングで、「製品グループの仕事も少しやってみませんか?」と声をかけていただきました。
そこからしばらくは、品質管理と製品グループを兼任する形で、実際の製造の現場にも入るようになっていきました。
役職としては、兼務する前に「品質管理室のアシスタントマネージャー」→「品質管理室のマネージャー」になっており、その後「製品グループのマネージャー」も兼務するようになりました。
兼務した後は、「課長」→「工場長代行」→「工場長」という流れで、1年ごとに役職が上がっていったと思います。
▍このスピード感で工場長になれたのはなぜでしょうか?
「出世したい」という気持ちは正直あまりなかったです。
どちらかというと、知らないことに対して「どうなってるんだろう?」と好奇心が湧くタイプで、製品グループに声をかけてもらったときも「どういう作業をしているのか知りたい」という興味関心が強かったです。
なので、製造スタッフさんの手が空いている時に「これってどういうことですか?」と聞いたり、差し障りのない作業を実際にさせてもらったり、そういうことはよくしていました。
おそらく、そういった「知らないことに挑戦し、経験値を上げていく」といった姿勢を評価してもらえたのかなと思います。
▍子育て中に役職がどんどん上がっていくことへの不安はありませんでしたか?
全くなかったわけではないです。
ただ、品質管理のころから子どもの用事でお休みをいただくことに理解を示してもらっていたので、「仕事は増えるけれど、休みたくなったときに休ませてもらえるだろう」という安心感はありました。
なので「大丈夫かな…」という不安よりも「やってみよう」という気持ちが強かったですね。
安心して挑戦できる。”互いを支え合う風土”が山本海苔店の成長環境。

▍山本海苔店の成長を後押ししてくれる環境は、どんなところにありますか?
社員の「やりたい」という気持ちを尊重し、会社としてサポートしてくれるところですね。
品質管理時代も、微生物検査の手技を学ぶ講習会に参加したり、資格を取りたいと相談したときも止められたことはありませんでした。
工場長代行になったときは、会計数字の見方など初めて聞く言葉も多かったので、本社の経理の方に「これってどういうふうに見るんですか?」と聞いて、教えていただきました。
トップダウンで「これをやりなさい」と命令されるのではなく、自分から「参加したい」「勉強したい」と言うと支援してくれる。そこがすごく成長しやすいところだと思います。
あとは、私自身が子育てをしていたこともあり、やはり子育てに理解を示してくれる風土にはとても支えられています。
▍特に、どういった点で子育てと両立がしやすいと感じますか?
一番は、急なお休みに対しても周りがすごく寛容なところです。食品工場は、誰かが休むとラインが止まってしまうこともあるので、本来は休みづらくなりがちですが、「今日は私がやっておくね」とか「早く帰っていいよ」とか、そういう声かけを自然にしてもらえました。
佐賀工場は女性スタッフが多く、子育て中の方やお孫さんの面倒を見ている方もいます。なので「お互いさま」という感覚がもともとあるんだと思います。
私が入社したときの工場長もとても理解のある方で、その姿勢が引き継がれて今もそのような風土があるのだと思います。
本社でも、育児休暇のあとに時短や在宅を取り入れている方がいらっしゃると聞いています。
佐賀工場だけではなく、会社として育児と両立がしやすい制度・風土があると感じています。
▍工場長になられてから意識していることはありますか?
有給取得をしやすくすることは意識しています。
せっかく付与された有給が消えてしまうのはもったいないので、なるべく消滅しないように、前もって取れるようにスケジュールを組んだりしています。今はほとんどの社員が有給を消化しています。
あとは、工場が少し高齢化しているので、若い人たちが入ってきやすい雰囲気づくりも大切にしています。
入社の時に感じた“一枚の海苔の感動”。その感動を届け続ける。
▍最後に、今後の目標について教えてください。
入社したときに前任の工場長にすごくおいしい海苔を食べさせてもらったことを、今でも鮮明に覚えています。
以前働いていたホテルでも海苔を提供していましたが、あまり美味しいイメージはなかったのですが、山本海苔店の海苔を食べた瞬間に「こんなに違うんだ」とすごく感動しました。
そのときの感動を、お客様にも味わっていただきたいという気持ちはずっとあります。
産地・生産者・等級などによっても味が全く異なり、海苔はとても奥深い世界です。
お客様から「山本海苔店の海苔はこうだよね」と言っていただけるものをこれからも作り続けていきたいと思っています。